米国:トランプと共和党、「コロンブスの“キャンセル”取り消し」を主張する

(Photo:JIM WATSON/GETTY IMAGES)

2025年、米国大統領ドナルド・トランプ(Donald Trump)は10月9日の大統領令で「宣言」を発し、月曜日をコロンブスの日(Columbus Day)と定めた。トランプは、左派の「急進派」や「放火犯」――おそらく2020年に倒された30体以上のコロンブス像を指すとみられる――が、コロンブスの名誉を貶めようとしてきたと主張した。

大統領令は、コロンブスを「アメリカの最初の英雄、西洋文明の巨人、そして地上を歩いた中で最も勇敢で先見性に富んだ人物の一人(the original American hero, a giant of Western civilization, and one of the most gallant and visionary men to ever walk the face of the earth)」と称えた。しかし、これは現在の歴史的コンセンサスとは一致しない評価である。

十数州では先住民族の日(Indigenous Peoples’ Day)を祝っている。この祝日はネイティブ・アメリカンを称えつつ、神話化されたコロンブスに異議を唱え、入植植民地主義による害を認めるものである。メイン州(Maine)、バーモント州(Vermont)、ニューメキシコ州(New Mexico)、コロンビア特別区(District of Columbia)は、コロンブスの日を完全に置き換えた。

2023年、ジョー・バイデン(Joe Biden)前大統領は、先住民族の日を「先住民族の忍耐と勇気を称える」ため、そして「部族の主権と自治を尊重するという誓いを新たにする」ために制定した。しかし、この宣言に関するウェブページは削除されたようだ。そのリンクはトランプ政権発足後の最初の2週間のうちに切れたとみられている。

一方、今回のトランプ大統領の命令には、先住民(Native people)や先住民族の日についての記述は一切なかった。トランプが称えたのは、病気、植民、奴隷化をもたらしたイタリア人探検家コロンブスであり、彼を「西洋文明の最終的な勝利への道を開いた」と位置づけた。

「コロンブスの日だ。イタリア系のみんな、戻ってきたぞ。我々はイタリア人を愛している」と、トランプは木曜日、宣言文を掲げながら語った。

トランプと共和党(Republican Party)による今回の動きは、驚くべきものではない。6か月前、トランプ大統領は、民主党(Democratic Party)によって台無しにされたと主張するこの祝日を「元の規則、日付、場所のまま」“復活させる”と宣言していた。トランプは4月、Truth Socialで「クリストファー(Christopher)は大復活することになる」と書き込んだ。

一方で、下院共和党議員の一人は、2025年10月10日(金)にコロンブスの日の代わりに先住民族の日を祝う州や地方政府に対する、連邦資金の交付停止を求める法案を提出した。オハイオ州(Ohio)第6選挙区選出の下院議員マイク・ルリ(Mike Rulli)が「イタリアの英雄と遺産法(Italian Heroes and Heritage Act)」を通じて主張するのはコロンブスの日とイタリア系アメリカ人(Italian Americans)の功績を守る必要があるということである。彼に取って「これは包摂の問題ではなく、この国を築き上げるのに貢献した数百万のイタリア系アメリカ人の功績を消し去ることに関する問題である」。「先住民族(Indigenous peoples)は認知されるべきだが、この日は我々を称えるために作られた……イタリア系アメリカ人はアメリカの物語の一部として認められるために戦ってきた。彼らの記憶や名誉の日が消されることを、我々は決して許さない」。「イタリアのすべての息子と娘、コロンブス騎士団(Knights of Columbus)の全メンバー、日曜のパスタディナーのすべて、そしてすべての初聖体拝領(First Communion)を称えるためのものだ」と主張する。オハイオ州では現在、両方の祝日を認めているが、2017年にはバークレー(Berkeley)やロサンゼルス(Los Angeles)に続き学園都市オーバーリン(Oberlin)が州内で初めてコロンブスの日の祝賀を取りやめた。続いでシンシナティ(Cincinnati)やコロンバス(Columbus)を含む複数の都市もまた同じ道をたどった。一方のヤングスタウン(Youngstown)は現在も、10月13日の連邦祝日をコロンブスの日として認めている。「我々は、いかなる米国の自治体にも、連邦政府より上の権限があるなどと思わせるつもりはない」と、ルリはFoxニュースに語っている。ルリの提案――イタリア人かどうかも疑わしい探検家を祝わない自治体を罰するという内容――が可決される可能性は低い。この法案が審議されるのは連邦の祝日が過ぎてからであり、いずれにせよ、議会が再開されるまでは扱われないためである。

先住民族の日は、米国の複数の都市や州で公式に認められた祝日であり、ネイティブ・アメリカンを称え、その歴史と文化を記念する日である。祝日は10月の第2月曜日に行われる。

 

ルリは詐欺疑惑のある人物を擁護する

ルリは詐欺疑惑のある人物を自身の議会事務所に採用した人物としても知られている。ペッペルの過去の経歴や、資金募集当時の東パレスチナ住民がオハイオ州上院のルリ議員の有権者であったことを踏まえ、採用についてコメントを求められた際、ルリ議員は詐欺疑惑には直接触れず、次の声明を発表した。「マイク・ペッペルがコミュニケーションズ・ディレクターとして我々のチームに加わってくれることを嬉しく思う。彼は公共サービスにほぼ10年間従事してきた。マイクの卓越した勤勉さ、忠誠心、地域住民への献身は、私がオハイオ州上院で成し遂げることができたほぼすべての面で私を助けてくれた。ペッペルに対するすべての民事訴訟が棄却されたことを踏まえ、我々は前進し、有能なリーダーがチームに加わったことで、有権者に奉仕することに注力する準備ができている」。それに対しペッペルも「議員の声明に賛同し、我が地区の住民に奉仕するため、議員と共に働くことを楽しみにしている」と述べている。

ペッペルは、ルーリ議員のもとで勤務する前、共和党のビル・ジョンソン(Bill Johnson)のもとで勤務していた。ジョンソンは第6選挙区を13年間代表したが、2024年1月にヤングスタウン州立大学(Youngstown State University)の学長に就任するため辞任した。ペッペルは2017年1月から2019年1月までジョンソンの選挙キャンペーンで政治ディレクターを務め、同時に2017年1月から2018年5月まで事務所の地域連携担当も兼任していた。ルリは一方、ジョンソンの任期満了前の空席を埋めるため、2023年6月11日の特別選挙で当選し、その後11月5日に正式に2年間の任期で選出されている。

東パレスチナ支援の名を語る偽慈善団体

議会事務所のコミュニケーションズ・ディレクターとして雇われたマイク・ペッペル(Mike Peppel)はオハイオ州司法長官デイブ・ヨスト(Dave Yost)が「偽慈善団体(sham charity)」と呼ぶ団体「オハイオ・クリーン・ウォーター・ファンド(Ohio Clean Water Fund:OCWF)」の共同創設者である。ヨストが訴訟提起時に述べたのは「ペッペルは、この広く報道された悲劇から、違法な慈善団体『オハイオ・クリーン・ウォーター』を通じて不正に利益を得ており、極めて欺瞞的かつ詐欺的な行為を行っている」ということである。

この基金は、2023年に発生したノーフォーク・サザン鉄道(Norfolk Southern Railway)の列車脱線事故後に化学物質がコミュニティに放出され、その後の「ベント・アンド・バーン(Burn and Vent)」で有毒の黒煙が大気中に広がったことで、健康への懸念、事業の閉鎖、大量の訴訟が発生した際に、東パレスチナの住民を支援しようとした寄付者から資金を集めていた。基金は「セカンド・ハーベスト・フードバンク(Second Harvest Food Bank)」と連携して活動していると称して寄付を募ったが、フードバンク側はこの団体の存在も知らず、いかなる提携関係も持っておらず、OCWFが自らの代理として資金を集めることも許可していなかった。

訴訟時の情報によると、OCWFは3,200人以上の寄付者から非常用支援やボトル入り飲料水のために14万1,183ドル(後に約14万9,000ドルと判明)を集めた。そしてそのうち91,769ドルは管理費に充てられ、フードバンクに最初に渡ったのはわずか1万ドルだった。これはこれはフードバンク事務局長マイケル・アイベリスが抗議した後に支払われたものである。

 

2023年5月3日、ペッペルおよび団体に対する予備的差止命令が出された際、ヨストは「依然として腹立たしく思っており、(ペッペルを)責任追及するつもりだ」と述べていた。

2023年7月10日の訴訟への回答で、ペッペルの弁護士デイビッド・H・トーマス(コロンバス)は「オハイオ・クリーン・ウォーターのために集められた資金は、主に政治行動委員会のための資金集めを行う第三者団体を通じて寄付者から受領された。その後、第三者団体は通常の手数料を差し引いたうえで残りの資金をOCWFの銀行口座に送金した。ペッペルはこれら第三者団体を管理する権限はなく、またOCWFの銀行口座にアクセスや管理権限も持っていなかった。したがって、ペッペル氏はOCWFの資金の使用方法を監督または管理していなかった」と述べている。

和解契約において、ペッペルは訴訟上の主張を争ったが、「それにもかかわらず、司法長官によるすべての請求に同意することで解決する」こととした。訴訟は2023年8月10日に、コロンビアナ郡普通裁判所で和解したが、これは長期かつ高額な訴訟を避けるためである。ペッペルは、こうした解決により東パレスチナコミュニティ支援のために寄付した市民の意図を尊重することができると表明している。なお同日、ペッペルは自身が設立した団体「オハイオ・クリーン・ウォーター・ファンド(Ohio Clean Water Fund, OCWF)」を解散することに同意し、OCWFはマホニング・バレーのセカンド・ハーベスト・フードバンクに約13万9,000ドルを支払った。

団体の解散のみならずペッペルは、他の被告であるイザイア・ワートマン(Isaih Wartman)とルーク・マホニー(Luke Mahoney)と共に、オハイオ州司法長官事務所から訴訟されている。その合意条件は、イザイア・ワートマンとルーク・マホニーに対しては、セカンド・ハーベスト・フードバンクにそれぞれ2万2,000ドルを支払うことに加え、調査費用および手数料として3,000ドルを支払うことであり、一方のマイク・ペッペルに対しては、民事罰金2万5,000ドルを3日以内に支払うことに加え、オハイオ州内でいかなる慈善団体も設立、運営、資金募集することを生涯禁止することに同意するよう命じられている。また、同氏は州内のいかなる慈善団体においても「理事、受託者、役員、取締役、会員、従業員、独立請負人、代理人、ボランティアとしての役職」に就くことが禁止された(ただし、金銭の取り扱いを伴わないボランティア活動については例外として認められている)。なお裁判記録上、ペッペルはいかなる不正行為も認めていない。

このよな人物をルリが評価し議会事務所に採用したことに対しセカンド・ハーベスト・フードバンクの事務局長マイケル・アイベリス(Michael Iberis)は、ペッペルの採用を知ってショックを受け、失望したと語った。「このコミュニティに大きな影響を与えた。地元の人物が詐欺に関与していたと知り、人々の信頼が大きく揺らいだ」と述べている。

#歴史修正主義  #DonaldTrump

 

参考資料:

1. Trump, Republicans Want to “Un-Cancel” Columbus—and Snub Indigenous Peoples Day
2. Rulli proposes ‘Italian Heroes and Heritage Act’ to preserve Columbus Day
3. Rulli defends hiring man at center of alleged East Palestine fraud scheme in his Congressional office

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