エクアドル:2025年の国民投票と国民諮問で問われたこと、そしてその結果

(Photo:Fernando Villar/EFE)

2025年11月16日、エクアドルで国民投票(referéndum)および国民諮問(consulta popular)が実施された。この投票は、ダニエル・ノボア(Daniel Noboa)大統領が推進する二回目のものであり、前回投票は2024年4月に行われた。これらは、同国の政治的および憲法上の枠組みを変更することを目的としたものである。

今回の投票結果は、ノボア政権にとっての政治的な指標となるだけでなく、複数の提案が元大統領であるラファエル・コレア(Rafael Correa)の推進した政策の見直しや撤回を目指しているため、コレア主義(correísmo)の遺産をめぐる議論にとっても試金石となるとし注目されていた。

1978年に始まった民主化移行期以来、今回の国民投票はエクアドルで十五回目の全国規模の諮問となる。コレア自身もこの仕組みに何度も依拠してきた。ノボアにとっては、2024年4月に実施された安全保障および制度改革に関する一連の質問に続く、任期中で二度目の諮問プロセスである。2024年の投票では、治安、司法、雇用に関する11の質問が投票にかけられ、その結果、9項目が「賛成(SÍ)」、2項目が「反対(NO)」と、ダニエル・ノボアの提案の多くが賛同を得た形となっている。

 

今回提案された変更の中で特に注目されるのは、国外軍事基地を自国領内に設置する可能性であり、これはエクアドルを地域で最も暴力的な国にしてしまった安全保障危機の文脈において提示された措置である。

今回投票には約1,400万人が招集された。投票用紙には四つの質問が記載されており、そのうち三つは国民投票(referéndum)、一つは国民諮問(consulta popular)で、いずれも承認された場合は拘束力を持つものである。

提案を支持するもの、反対するものたちのキャンペーンは2025年11月1日に始まっており、ノボア大統領もまた「賛成」を推進する活動のために11月7日から13日までの間、休暇を取っていた。

 

提案内容とその詳細、投票結果

国立選挙評議会(Consejo Nacional Electoral:CNE)のポータルサイトで結果が公表されるにつれ、傾向が明らかになっていった。ダニエル・ノボア大統領の提案を大多数が承認しないことを選択し、結果ノボア政権は4問すべてにおいて敗北した。しかし、政府の敗北の度合いは、県や質問によってわずかに異なっていた。

2025年11月16日22時10分時点で、16県で4つの質問すべてに「反対」を示していた。その県の一つが、直近の全国ストライキの中心地となっていたインバブラ(Imbabura)であった。

4つの設問においてすべて「反対」を示した県は以下のとおりである:
アスアイ(Azuay)、ボリバル(Bolívar)、カニャール(Cañar)、カルチ(Carchi)、コトパクシ(Cotopaxi)、エル・オロ(El Oro)、エスメラルダス(Esmeraldas)、グアヤス(Guayas)、ロス・リオス(Los Ríos)、マナビ(Manabí)、モロナ・サンティアゴ(Morona Santiago)、スクンビオス(Sucumbíos)、オレジャナ(Orellana)、サント・ドミンゴ・デ・ロス・ツァチラス(Santo Domingo de los Tsáchilas)、サンタ・エレナ(Santa Elena)

一方、4つの質問すべてで「賛成」を示したのは唯一トゥングラウア(Tungurahua)県のみで、ピチンチャ(Pichincha)、チンボラソ(Chimborazo)、サモラ・チンチペ(Zamora Chinchipe)では、国会議員削減に関する質問で「賛成」が勝利した。一方、ロハ(Loja)、ナポ(Napo)、パスタサ(Pastaza)、ガラパゴス(Galápagos)では票が拮抗した。これらの県では、国会議員の削減と政治組織への公的資金の廃止には「賛成」が投じられ、一方で制憲議会と外国軍基地には「反対」が投じられていた。

 

A. 外国の軍事基地の設置を禁止する規定を撤廃

外国軍事基地、または軍事目的を持つ外国施設の設置に対する禁止、ならびに国内の軍事基地を外国の軍隊または治安部隊に譲渡することに対する禁止を、当該質問の付属文書(Anexo)に従って憲法を部分的に改正することで撤廃することに、あなたは同意するか。

  • この質問が承認されれば、政府は外国軍の展開に道を開くことになる——アメリカ合衆国はマンタ(Manta)とサリナス(Salinas)への基地設置を想定している——が、ブラジルとの安全保障協力に関する協議も進んでいる。米国国土安全保障長官(secretaria de Seguridad Nacional estadounidense)クリスティ・ノーム(Kristi Noem)が最近これら二つの地点を訪問したことは、その方針を示すものである。とりわけマンタは、2008年に外国基地が禁止される以前、1999年から2009年まで米軍基地が置かれていた場所である。
  • ノボア政権に反対する勢力は、この措置が国家主権を損ない、暴力の根本原因に取り組むことなく外部の利益を優先させるものだと警告していた。

 

 

B. 政党への公的資金提供の廃止

国家が一般国家予算(Presupuesto General del Estado)から政治組織に資金を割り当てる義務を、当該質問の付属文書に従って憲法を部分的に改正することで撤廃することに、あなたは同意するか。

  • 本設問は、政治組織に対して国家が資金を拠出する義務を撤廃し、これらの組織が加入者および支持者からの拠出によって自立運営すべきであると提案するものであった。

 

 

C. 国会議員数を151人から73人に削減

国会議員(asambleístas)の数を削減し、次の基準に従って選出することに、あなたは同意するか:全国区の議員10名、各県から選出される議員1名、そして最新の国勢調査に基づき40万人ごとに追加される州議員1名。

  • 県および国レベルの代表基準を厳格に定め、国会議員の数を減らすことを提案している。これは、権力の集中と、立法府における声の多様性の縮小を意味する可能性があった。

 

 

D. 新しい憲法を起草するための制憲議会を招集

付属の制憲法規に定められた選挙規則に従い、その代表がエクアドル国民によって選出される制憲議会(Asamblea Constituyente)を招集し設置することに、あなたは同意するか。この制憲議会が共和国の新憲法を起草し、その憲法は、後に実施される国民投票でエクアドル国民によって承認された場合にのみ発効する。

  • 唯一の国民諮問では、新たな憲法を起草するための制憲議会の招集が提案されている。新憲法は後の国民投票(referéndum)で承認された場合にのみ発効することになる。承認されれば、国立選挙評議会(Consejo Nacional Electoral:CNE)がまず制憲議会代表の選挙を実施し、最終的に完成した憲法草案を国民投票に付すことになる。

 

 

反対勢力

ノボアは結果について「楽観的」であると述べたが、野党側は、政府が巨額の資金をこのプロセスに投入していると非難している。また、最大の反対勢力、ルイサ・ゴンザレス(Luisa González)が率いる「市民革命(Revolución Ciudadana)」は今回の国民投票が最近の政府への批判を「逸らすための策略」に過ぎず、具体的な解決にはつながらないとしていた。また、同運動はラファエル・コレア(Rafael Correa)大統領の下で2008年に制定された憲法の維持を支持していた。

「賛成(Sí)」を支持する陣営の先頭に立っているのは、与党のアクシオン・デモクラティカ・ナシオナル(Acción Democrática Nacional:ADN)であった。他方、上述の通りコレイスモ系の運動である市民革命や、「セントロ・デモクラティコ(Centro Democrático)」、「愛国社会(Sociedad Patriótica)」、「エクアドル先住民族連盟(Confederación de las Nacionalidades Indígenas del Ecuador:CONAIE)」、さらに各種の社会団体や労働組織が、この改革パッケージを拒否していた。

 

ノボア、投票結果を認める

2025年11月16日20時30分を過ぎた頃、首都キト(Quito)にある与党アクシオン・デモクラティカ・ナシオナル(ADN)の本部は空であった。20時頃には与党から声明が出ると予想されていたが、支持者の姿はなく、いたのはわずかな報道関係者のみであった。報道陣は20時46分頃、ADNの「指令部」を立ち去り始めた。

大統領ダニエル・ノボアは、自身のソーシャルメディア「X」のアカウントを通じて声明を発表することを選んだ。「これが結果である。エクアドル国民に尋ねたところ、彼らは声を上げた。我々は約束を果たした:直接、国民に問いかけたのだ」と書き込んだ。

さらに次のように付け加えた。「我々はエクアドル国民の意思を尊重する。我々のコミットメントは変わらない、むしろ強化される。我々は、皆が受けるにふさわしい国のため、持てる手段を尽くして休むことなく戦い続ける。」

 

エクアビサ(Ecuavisa)の取材に登場したのは政府の同盟者の一人である元内務大臣ホセ・デ・ラ・ガスカ(José de la Gasca)であった。敗北を残念に思う一方で、彼は「これほど抜本的な措置、例えば補助金の廃止のような措置を生き延びた政府はこれまでない (…) 我々がその代償を払っているとは思わないが、むしろ『非常に厳しい措置の後の国の実際の体温計』を目の当たりにしているのかもしれない」と強調した。さらに彼は、この措置は必要であったと指摘し、より脆弱で決断力の乏しい政府であれば「倒れていただろう」と述べた。

 

与党議員は政府への後退とは見なさない

与党の複数の国会議員は、サンタ・エレナ(Santa Elena)県オロン(Olón)で行われた、2分余りの記者会見で意見を表明した。その中の一人が国民議会議長ニールス・オルセン(Niels Olsen)である。オルセン議長は「大統領は、すべてのエクアドル国民に国民諮問を行うという選挙公約を果たした。結果は、我々に各市民のために力強く働き続ける責任を課すものである」と述べた。しかしオルセンは、これをダニエル・ノボア大統領に対する後退とは見なしていない。「決して後退ではない」と述べ、むしろこれは「我々が民主的な政治プロジェクトであることを示すものだ。結果を尊重し、大統領が公約を守ることを示すものである」と説明した。

一方、バレンティナ・センテノ(Valentina Centeno)は、結果を尊重するとともに、「大統領が描いたプロジェクトのもとで、我々の持つ手段を使って行動する責任がある」と述べ、組織犯罪、麻薬取引、治安の悪化、そして残念ながらこの国の前進を妨げようとする「忌まわしい過去」に対抗して戦う姿勢を示した。

 

メキシコ大統領、エクアドル国民の「反対」意思を地域的な姿勢と関連付ける

11月17日(月)、クラウディア・シェインバウム(Claudia Sheinbaum)大統領は、エクアドルで行われた国民投票の結果について言及した。「エクアドルで起きたこと、つまり先日の日曜日に行われた国民投票で、エクアドル大統領が国民に米軍基地の設置を求めるよう呼びかけた件であるが、これを投票にかけたところ、多数は『No、望まない』と答えた。これはラテンアメリカ全体の感情も示している」と彼女は述べている。またシェインバウムによれば、多数派の「反対」意思は地域における外部軍事勢力への歴史的な立場を示すものであり、複雑な政治的・社会的文脈と関連している。

ノボアがエクアドルにおける組織犯罪の増加を受けて推進した外国基地の設置に関する質問や、その他の制度改革に関連する質問は、米国との軍事協力や、この種の安全保障協定の範囲に関して、地域全体で激しい議論を巻き起こしていた。ノボアが犯罪組織と戦う手段として外国部隊の受け入れを許可する提案を提示したためである。CNEが公表したデータでは、上述のとおり4つの質問すべてで「反対」が勝利しているが、軍事基地設置に関する質問と、憲法改正議会の招集に関する質問は、拒否の割合が最も高かった。

ノボアは国民が外国部隊に頼る選択肢を棄却したにもかかわらず、利用可能な手段で犯罪組織に対処する計画を維持する意向を示した。シェインバウム大統領は、この決定をラテンアメリカ全体における外部軍事プレゼンスを疑問視する傾向の一環として位置付け、地域諸国が自国の安全保障や開発の仕組みを強化し、介入的と解釈されかねない措置を取らずに対応すべきであるという考えを擁護した。

 

コロンビア大統領、国民投票の失敗を受け対話こそが解決策だと指摘

コロンビア大統領グスタボ・ペトロ(Gustavo Petro)は、ノボアが推進した国民投票の失敗について言及した。彼によると、エクアドル国民は「進歩的な憲法を維持したい」と望んでおり、変革を推進するためには対話が道である。

ペトロ大統領は投票結果を受け「政府の提案に対する反対票が60%に達したことは、私がノボアに個人的に伝えたことを示している。エクアドルでは、国を支配するマフィアから守るための国民的対話が可能である」と「X(旧Twitter)」に投稿した。

ペトロは、外国軍基地の設置に対する反対を受けて地域協力を呼びかけた。「国民はエクアドル領内における外国軍基地に対して『No』と投票した。マフィアが最大の敵である以上、我々の軍・警察力を調整するためのより良い制度的手段を模索すべきである」と述べた。

ペトロは「グラン・ボリボリビアーナ(Gran Bolivariana)」の構想を再び提起した。コロンビア大統領であるペトロは、歴史的なグラン・コロンビア(1819年から1831年まで、現在のコロンビア、エクアドル、ベネズエラの領土が統合されていた連合)をよく引き合いに出すが、3か国共通の課題に直面している現状において、「多民族国家であるグラン・ボリボリビアーナ(Estado plurinacional gran bolivariano)」への前進が可能だと述べた。「今、私は、かつてグラン・コロンビア(Gran Colombia)の一部であった諸国民に与えられた立憲権力(poder constituyente)を、以前にも増して強く信じている。これにより、共通の課題を解決できる連邦制を築き、連邦国家としてより大きな力を得ることが可能になるだろう」とペトロは述べた。

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参考資料:

1. Las cuatro preguntas del referéndum que definirán el rumbo del gobierno de Daniel Noboa en Ecuador
2. Así quedan las cuatro preguntas de referendo y consulta popular en Ecuador
3. El ‘No’ triunfa en las cuatro preguntas del referéndum y consulta en Ecuador
4. Claudia Sheinbaum vincula el ‘No’ de ecuatorianos a bases extranjeras con una postura regional
5. Gustavo Petro señala que el diálogo es la salida tras el fracaso del referendo de Daniel Noboa

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