エクアドル:プニャイ山で行方不明だった少年、愛犬ハチとともに生き延びた4日間

(Photo:Teleamazonas)

チンボラソ(Chimborazo)県の山中で11月9日(日)に行方不明になっていた11歳のルカス・カンパニャ(Lucas Campaña)少年が、12日(水)に洞窟の中でシャツに包まれた状態で無事に救出された。4日ぶりに家族と再会した少年の命は、地域住民、救助隊員、救援関係者が参加した大規模で集中的な捜索、そして四本足の英雄によって救われた。少年の失踪、それに続く発見という出来事は信念と連帯に満ちた物語へと変わった瞬間であった。

 

チュンチ消防隊(Cuerpo de Bomberos de Chunchi)は、この救出劇を「奇跡」と表現し、チュンチの住民はこの幸せな結末を祝い、国全体もまたルカスの強さ、勇気、生き抜こうとする精神を称えた。一時は山中で少年の衣服の一部が発見されたことで安否への懸念が高まっていた。この衣服の発見は、少年がなんとか前へ進んでいたことを示す重要な証拠であったが、同時に状況がさらに危機的になっていることも意味していた。そのため捜索範囲はより緊迫した形で険しい区域へ広げられた。

そして何より、地元メディアのチュンチ・デジタル(Chunchi Digital)が報じたように、犬のハチ(Jachi)が、ルカスがプニャイ山で生き延びるうえで重要な存在となっていた。ルカスとハチの物語は、近年のエクアドルで最も胸を打つ出来事のひとつとして刻まれた。

 

野生のベリー、雨水、そして犬― それが生存の鍵だった

ルカスは地元テレビ局の取材に対し、自分が生き延びることができたのは、道中で見つけた自然の食料と水のおかげであると語った。雨でできた水たまりの水、そして野生のブラックベリー(moras silvestres)を口にして命をつないだという。しかし、少年の証言には全国を驚かせた重要な事実が含まれていた。それは、失踪していた間、少年がほとんどの時間をひとりで過ごしていたわけではなかったということである。一匹の犬がつき従い、寒さ、暗闇、疲労のなかでも落ち着きを保てるよう助けてくれた。ルカスは「神さまが遣わしてくれた天使だと思う」と語った。

チュンチでは、地元メディアがその犬をハチであると特定した。ハチはサンタ・ロサ(Santa Rosa)集落でよく知られた犬で、普段からプニャイ山(cerro Puñay)の周囲を歩き回る習性がある。その飼い主は、少年が行方不明になった時期と一致して、犬が自宅から2日間姿を消していたと述べていた。地域の人々はこの犬を「プニャイの英雄犬ハチ(Jachi, el perro héroe del Puñay)」と呼んでいる。

一方で、近隣住民のなかには、少年に寄り添っていた犬はハチとは異なる特徴を持っていた可能性があるとの見方もある。それでも、地域住民はいずれも、犬の存在がルカス少年の生存に決定的な役割を果たしたという点では一致している。

 

「僕は生きてるの?」──11月12日(水)、少年ルカス・カンパニャ(Lucas Campaña)は、プニャイ山の茂みの中で複数の住民に発見された際、怯え、混乱した表情のままそう問いかけた。即席の避難場所に横たわり、膝まで届くTシャツを身につけ、身を隠すようにしていたルカスのそばには、一匹の犬が寄り添っていた。

月曜日には、少年のバックパックやポンチョといった最初の手がかりが見つかった。その後、靴も発見され、捜索隊は少年の居場所を突き止めるため、複数の方向に分かれて捜索を行った。地域住民のオルガ・ペニャフィエル(Olga Peñafiel)は捜索に参加しており、険しい道を歩いていた際に助けを求める叫び声を聞いたと語る。「彼は私たちに『パパとママは、まだ僕のことを好きでいてくれる?』と聞いてきた。すると、彼のパドリーノ(padrino:名付け親・後見人)が『お前を愛しているからこそここに来たんだ。私はお前のパドリーノだよ』と言った」と、ペニャフィエルは話した。

住民によれば、少年は「助けてくれてありがとう。でも、ぼくのせいなんだ」とすすり泣きながら口にしたという。周囲の人々は彼を介抱し、慰め、パドリーノが衣服を着替えさせて体を温めた。少年を発見したのはおよそ6人の住民で、彼らはルカスにリンゴを渡し、水と塩を混ぜたものを数口飲ませ、水分とミネラルの補給を行った。腫れ上がった自分の足については、「靴が痛かったから脱いだのだ」とルカスは説明した。

「胸がいっぱいで、本当に幸せです。皆さんが私たちのためにしてくださったことは、胸に入りきらないほどです」と、ルカスの母ステファニ・カルバチ(Stephanie Calvachi)は語った。

 

ルカスの失踪

ルカスは両親と2人の姉妹とともにプニャイ山を登っていた。日曜日、下山の準備をしていた際、家族は写真撮影と祈りのために、より高い場所へ移動することを決めたが、ルカスはそれに参加しなかった。母親の証言によれば、ほんの数秒のうちにルカスは姿を消した。母親はメディアに向けて、「もう下山しようとしていました。写真を撮るためにより高い場所に上がったとき、私の子どもは私から約2メートルのところで芝生の上に横たわっていました。私たちは祈りを捧げました。振り向いたときには、もう私の子どもはいませんでした」と肩を落として語った。

ルカスを見つけられなかったため、家族は彼が自分で下山したのではないかと考えた。姉は急いで彼の所在を確かめようとした。「姉の一番上の子が、1時間もかからずに走って降りてきて、下から私に叫びました。『ルカスがいない』って。私は持っていたものを全部置いたまま、夫に電話しました。黒い岩の近くにいた夫に、『息子がいない』と伝えました」と、母親は涙ながらに振り返った。夫婦は再び高い場所へ戻って探したが、手がかりは得られなかった。消防隊が到着するまで、地域の人々が捜索を手伝ったものの、子どもの痕跡は見つからなかった。

火曜日には、ドローンの助けを借りて、ルカスの帽子、ジャージ、ポンチョ、そしてカバンに入っていたお菓子が発見された。さらに数メートル下では、ある住民が彼の靴を見つけた。母親は、ルカスを捜索する人々に向けて懇願した。「もし見つけたら、傷つけないでください。無事に返してください。彼は無垢な子どもです。まだ11歳です」と。

 

少年の守護者となった犬

ルカスとその家族は、上述の通り精神的な活動に参加するため、キト(Quito)を出発し、チュンチを訪れていた。11月9日、午後に行われた集団祈祷の最中、少年はその場から数メートル離れて草むらの中へと姿を消した。家族の間にはすぐに強い不安が広がり、捜索隊が即座に編成された。消防隊(Bomberos)、国家警察(Policía Nacional)、そして50人以上のコミュネロが加わり、危険な斜面、渓谷、岩の多い地帯、密林地帯まで広範囲にわたって捜索が続けられた。夜間の寒さと複雑な地形は、捜索活動の困難さをさらに増していた。

ルカスは、失踪当初からひとりではなかったと明かした。初日から1匹の犬が彼のそばに現れ、ずっと寄り添っていたという。その犬は、ルカスが方向を失って歩き続けていたあいだ彼に寄り添い、山の寒い夜には自らの体温で温めながら彼のそばで眠り、転倒を繰り返して足を骨折し、前へ進めなくなったときも離れずにそばにいた。

「ハチ、ルカスを守った四つ足の天使(Jachi, el ángel de 4 patas que cuidó a Lucas)」という言葉は、瞬く間にSNSで拡散され、希望と感謝の象徴となった。

脱水症状のほか、擦り傷や切り傷、複数回の転倒による足の骨折が確認された少年は、その場で応急処置を受けて状態が安定し、その後キトにあるバカ・オルティス小児病院(Hospital Pediátrico Baca Ortiz)へ搬送された。現在も経過観察が続けられている。

#英雄犬

 

参考資料:

1. Así sobrevivió el niño Lucas Campaña, junto al perro Jachi, por tres días en el cerro Puñay
2. ‘¿Estoy vivo?’; así reaccionó el niño Lucas Campaña al ser rescatado en el cerro Puñay
3. Tras cuatro días de búsqueda localizan al niño de 11 años que estaba perdido en el cerro Puñay
4. Lo que se sabe de Jachi, el perrito que cuidó a Lucas Campaña en el cerro Puñay
5. Padres confirman que hallaron prendas de Lucas Campaña que desapareció en el cerro Puñay

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