(Photo: Foro Mundial de las Economías Transformadoras)
本記事はマグダレナ・レオン・トゥルヒジョ(Magdalena León Trujillo)によるコラムの日本語訳である。マグダレナ・レオン T(Magdalena León T)として知られる彼女は、エクアドルの経済学者・研究者であり、フェミニスト経済学、連帯経済、そして「良き生活(Buen Vivir)」を従来の開発パラダイムの代替とし、経済的影響について研究している。
彼女は「経済を変革する女性ネットワーク(Red de Mujeres Transformando la Economía:REMTE)」 のコーディネーターであり、「Grupo Nacional sobre la Deuda de Ecuador」 のコーディネーター、さらに「社会研究・行動・参与財団(Fundación de Estudios, Acción y Participación Social:FEDAEPS) 」の会長を務め、「ラテンアメリカ社会科学評議会(Consejo Latinoamericano de Ciencias Sociales:CLACSO)」所属のワーキンググループ「ラテンアメリカおよびカリブにおけるフェミニズムと変革(Feminismo y Cambio en América Latina y El Caribe)」及び 「フェミニズム、抵抗、そして解放(Feminismos, Resistencias y Emancipación)」のメンバーでもある。彼女はまた、2009年から2013年にかけては、エクアドルの 「国民の良き生活に関する国家計画(Plan Nacional para el Buen Vivir)の策定チームに加わっていた。2019年以降は、「変革的経済に関する世界社会フォーラム(Foro Social Mundial de Economías Transformadoras) の組織委員会の一員として務めている。
エクアドルにおける国民投票(Consulta Popular)は、国民の代替的市民意思の確認と政治的転換点を示すものとなった。
2025年11月16日(日)に実施された国民投票では、外国軍基地の設置承認や、2008年から施行されている「Buen Vivir憲法(Constitución del Buen Vivir)」の廃止と憲法制定議会(Asamblea Constituyente)の招集を求める政府の意図に対して、国民は明確に反対の意志を示した。全国17県のうち16県で、政府提案に対し60%以上の「NO(反対)」票が投じられ、勝利した。
「国民に人気のない問題」と「さらに不人気な問題」を組み合わせ、共通の反応を誘導すると言う既知の手法であるが用いられた。今回の国民投票では、他の2つの質問として、政党への公的資金の廃止および立法府議員数の削減が提案された。しかし、いずれも国民からは否決されおり、これは国民の不満が国家の深刻な状況に向けられていること、そして権利・正義・主権を重視する憲法の枠組みに対する支持が示されたことと同義と言える。
選挙上の意味では、この結果は、2023年8月および2025年4月の二度にわたる大統領選決選投票でノボア(Daniel Noboa)に有利となった流れ(ただし、これらには不正の疑惑も含まれる)の後、重要な政治的転換点を示すものとなった。
この国民投票は、進歩的10年間(2007-2017)の成果を破壊し、ネオリベラリズムの復活を掲げた2つの政府に先行する出来事であった。
政治的野党のダイナミクスの観点からも、転換点が明確に見て取れる。ここ数年、厳しい迫害の条件下でも、さまざまな手段で一貫して堅実に野党活動を展開してきたのは、市民革命運動(Movimiento Revolución Ciudadana:RC)である。同運動は依然として第一の政治的選挙勢力としての地位を保持しており、その周囲の支持基盤も含めてはいるものの、野党の役割を果たしてきた。
一方、先住民運動は、基盤組織の支えによって、2019年および2022年における大規模な民衆蜂起の中心に位置していた。
これまで盲目的に反コレア(anticorreísmo)だった勢力は、以前は同盟関係にあったが、エクアドルで前例のない規模の寡頭制による略奪、権威主義、私物化(patrimonialismo)、国民に対する戦争状態が続く状況の中で、レニン・モレノ(Lenín Moreno, 2017-2021)、ギジェルモ・ラッソ(Guillermo Lasso, 2021-2023)、ダニエル・ノボア(2023–2025)の各政府に対し、野党として反対する立場に自然と傾いている、ということだ。
もう一つの転換点は、市民レベルにおいても見られる。それは、犯罪や公権力による暴力、軍事化された治安政策、経済調整策による生活条件の不確実性・悪化によって生じる恐怖に立ち向かう一歩を市民自身が踏み出したことである。
こうして、NOへ票を投じることを求めるキャンペーンは、新しい怒りとともに、以前からある市民意識の復活を反映した。市民は権利を持つ主体としての自己を取り戻し、欺かれた有権者という不名誉な運命から脱したのである。
また、政府運営の特徴である体系的な虚偽(falacia sistemática)、公衆衛生および教育への重大な影響、「麻薬テロリズム(narcoterrorismo)」を口実とした国民への暴力の激化、とくに2025年10月の全国先住民ストライキを支えた地域への軍事的対応なども告発された。さらに、戦略的部門の民営化の差し迫った危険や、労働権・社会権・自然権の解体についても警告が発せられた形となった。
参考資料:
1. Consulta popular en Ecuador: punto de inflexión y afirmación de alternativa ciudadana

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