(Photo:Eduardo Yumisa / Flickr)
「ディアブロ・ウモ(Diablo Humo)」として知られる「アヤ・ウマ(Aya Huma)」の表象は、エクアドルでは頻繁に目にするものである。そのユニークさからTシャツにプリントされ、また、毛糸で作られた仮面はお土産として非常に人気が高い。ビデオクリップや祭りにも登場し、その場を盛り上げる存在でもある。アヤ・ウマはアンデス地方のキチュアの宇宙観に深く根ざした存在であり、一方で非キチュアの人々にも親しまれている存在であると言える。本ブログでは、「アヤ・ウマ」、つまりアンデス・キチュアにとって重要な精神的存在の物語を取り上げ、その解説を加える。
インティ・ライミ 〜命のおまつり〜
伝説によると、太陽の神インティ(Inti)は人間たちにこう言った。
「私に大きな祭りを開き、私が与えた命を祝ってほしい。」
しかし、男も女も、どうやってそのお祭りをすればいいのか分からなかった。すると、神さまはある戦士に向かって言った。
「おまえは最も勇敢な戦士だ。そして、おまえの心には私が与えた光と熱の光線が宿っている。おまえが私の祭りのダンサーたちを導くのだ。」
それがインティ・ライミ(Inti Raymi)というお祭りの始まりだった。
「おまえは、すべての力を超えて、心を込めて踊るのだ。男も女も、太陽が昇ってから沈むまで踊り続けることになる。彼らは疲れるだろうが、おまえは疲れてはならない。その日、踊りは決して止めてはいけない。なぜなら、踊りこそが命そのものであり、祝われ、更新され、変わりながら動き続けるものだからだ。」
こうして、インティは戦士に二つの顔を持つマスクを贈った。
そのマスクは、みんなを見渡せるように、またみんなからも見えるように作られていた。それは胸と背中にかけるほど大きく、これまで見たことのない美しい色の糸で織られていた。その色は、虹の色を模していた。マスクには12本の角(カチョス)がぶら下がっていて、それは1年の12か月を表していた。そしてそれは、「種まきの緑の月」「収穫の黄色とオレンジの月」「大地の色をした月」を象徴していた。
マスクを贈った後、インティは戦士に儀式を教えた。その儀式は、彼の精神を高め、踊りを強化するためのものだった。この儀式を通して、戦士は自然の力を得て、収穫の世界、労働の世界、そして心の世界を代表する力を手に入れることができると言った。
「このマスクをつけられるのは、8日間の断食で心と体を清めたときだけだ。その間、水とチチャ(chicha)だけを口にしなさい。その間、マスクは水の中に入れておき、8日間、石の下に埋めておきなさい。そして、毎朝早く、滝で浄化のための水浴びをして、自然のエネルギーを受け取るのだ。」
「さらに、おまえにマルシャル(marcial)という儀式用の杖を授けよう。それは力と権威の象徴だ。もし誰かが私の民の進行を阻んだら、その杖で道を開くのだ。おまえの持っている袋(アリャ/alforja)には、いつも食べ物が入っている。そして、おまえのシャツは、誰よりも美しく、細かい刺繍が施されている。それが、おまえが特別な者である証しだ。」
「私の祭りの日には、口を閉ざしなさい。なぜなら、話す者よりも、聞く者のほうが賢いからだ。」
そう、太陽の神インティは言った。
戦士は、神さまの言う通りに行動した。
そして、選ばれたその日、彼はマスクをつけず、シドラ(帯)を胸にかけて、跳ねながら出発した。彼は手の合図を送り、力強く口笛を吹きながら進んでいった。踊るたびに、彼の足はまるで地面から浮いているようにも見えた。
こうして、みんなも彼に続いて踊り続け、休むことなく歩いた。
こうして大地の母「パチャママ」に豊かな収穫を感謝し、太陽の神「インティ」に命という奇跡を与えてくれたことに感謝した。
その日こそが、インティ・ライミだった。
「アヤ・ウマ」は、主にエクアドルの先住民族であるキチュアに伝わる精霊的な存在で、特にインティ・ライミ、つまり太陽神への感謝を込めて収穫と命を祝う6月または7月の祭りで重要な役割を果たしている。また、先住民族の文化とカトリックが融合した夏至の祭り「サン・フアン(San Juan)」にも登場する。アヤ・ウマは、こうした祝祭でダンサーたちの中心に立ち、跳ね回りながら群衆を導く存在でもある。
キチュア語で「Aya」は自然の霊やエネルギーを意味し、「Huma(Wuma)」は頭、リーダー、そして導き手を意味する。アヤ・ウマは、先住民族のアイデンティティや自然との調和、そして祖先の記憶を体現する存在であり、宗教的儀式や社会的な絆の中で重要な役割を果たしている。
アヤ・ウマの姿は非常に特徴的で、以下のような要素を持っている:
- 二つの顔(前後に顔がある):全方向を見渡す象徴
- 角が12本:1年の12か月を表し、自然のサイクルや季節を象徴
- 鮮やかな色彩と刺繍:虹や大地の色を模したもの
その仮面と衣装はすべて手作りで、神聖な存在とされる。
2つの顔は、過去と未来、昼と夜、そして人生における対極を象徴し、2つの耳と2つの鼻は、東西南北の4つの方角を示し、舌は「口承の重要性」を示している。仮面に施された虹の色は、「叡智の全スペクトル」を表す。ムチは、神聖な空間を守るための強い意思の象徴であり、重いエネルギーを浄化し、邪悪な霊を追い払うために使われる。
アヤ・ウマは単なる仮装キャラクターではなく、以下のような深い意味も持っている:
- 自然界の力や精霊の化身
- 災厄を追い払う守護者
- 祭りのリーダー、舞踊を通じて人々と神をつなぐ存在
- 善と悪、死と再生、昼と夜のバランスを象徴する存在

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