(Photo:EFE)
エクアドル最大の人口を抱え、同国で最も危険とされる刑務所である 「ペニテンシアリア・デル・リトラル(Penitenciaría del Litoral)」 で、少なくとも10人の受刑者が死亡した。死因は結核(tuberculosis) とみられると、内務省 が11月19日(水)に発表した。
内務省広報部門の関係者は「死因は結核であり、これは慢性的な疾患である。現在、法医学による正式な検死が行われている。いずれにせよ、自由を奪われた成人および少年院対象者への包括的対応を行う国家機関(Servicio Nacional de Atención Integral a Personas Adultas Privadas de la Libertad y a Adolescentes Infractores:SNAI) に確認してほしい」と述べた。
SNAI は受刑者10人の死亡を確認し、「死因は結核である可能性が高い」と説明した。同機関は「公式な判断を得るため、法医学(medicina forense) の結果を待っている」と強調し、これらの症例が11月14日(金)から昨日までの期間に発生したものであると付け加えた。SNAI によれば、死亡した受刑者は19歳から49歳であった。
今回の事案は、エクアドルの刑務所制度における最近の動きの中で発生したものである。ここ数日、政府は「高い危険性」があると分類した約300人の受刑者を、全国の各刑務所から新設の 「エル・エンクエントロ刑務所(La Cárcel del Encuentro)」 に移送した。この施設は、先週から国家レベルの最高警備刑務所として運用が始まったばかりである。
同刑務所は依然として建設段階にあるものの、上述の通りすでに収容を開始している。急ピッチで整備が進められた背景には、近年エクアドルの刑務所を襲っている深刻な犯罪暴力への対応がある。2021年以降、対立する犯罪組織間の抗争により600人以上の受刑者が殺害されており、政府は事態の収拾に向けた緊急措置として最高警備施設の稼働を進めている。
エクアドル大統領のダニエル・ノボア(Daniel Noboa)は、「ラジオ・スクレ(Radio Sucre)」のインタビューで、「刑務所はまだ完成していないが、現在の進捗率は35〜40%であり、2週間以内には80%に達するだろう」と述べた。France 24によると、「エル・エンクエントロ」の収容能力は最大736人で、現在は新たな移送後に420人の受刑者を収容している。ノボア大統領が発表した計画では、同刑務所の近隣に最大1万5,000人を収容できる大規模刑務所を建設する予定で、これは深刻な暴力危機に直面するエクアドルの刑務所制度を強化・再編する方針に沿ったものである。
沿岸地方サンタエレナ(Santa Elena)の人里離れた場所にある同刑務所は、ノボア大統領によって「Cárcel del Encuentro」と改称された。これは、彼が2023年の選挙キャンペーンで公約した、いわゆるエルサルバドルの「ブケレ(Bukele)式」モデルに基づく二つの刑務所建設計画のうちの一つである。エクアドルの刑務所制度は現在、収容能力を約30%超過しているとSNAIは報告している。政府は、刑務所の治安維持にはSNAI職員ではなく、警察官や退役軍人を配置する方針で、これは国内の他の刑務所における犯罪組織の管理不備や腐敗への批判に対応するためである。
内務大臣ジョン・レインバーグ(John Reimberg)は、「エル・エンクエントロ」が「あらゆる技術的対策を備えており、施設内に持ち込むべきでない物品は一切持ち込めないようになっている」と説明した。また、大臣は「医療対応に必要な設備を完備しており、受刑者が外部の病院に行く必要がない」と指摘。さらに、「受刑者は施設内で他者と一切接触や通信ができない独房(celdas)に収容されている」と強調した。
SNAIは、今回「CPL Guayas Nº1 で記録された死亡者は、結核に関連する慢性疾患を抱えていた者である」と発表している。結核は特に刑務所内で高い罹患率を示す疾患であり、その主な要因は感染力の高さ、過密収容、医療サービスの不足にあるとされる。
2025年7月には、リトラル刑務所で結核と診断された400人以上の受刑者が、治療を受けるため隣接する別の施設へ移送されている。また、この移送の2か月前、人権恒久委員会(Comité Permanente por la Defensa de los Derechos Humanos:CDH) は、Penitenciaría del Litoral の病棟として使用されている建物の一棟について、「全ての独房で電力と飲料水の供給が欠如している」と告発していた。
エクアドルは歴史上最悪の治安危機に直面しており、殺人事件の多発や主要都市へのギャング(pandillas)の急速な進出が続いている。さらに刑務所内での暴力も深刻な問題となっている。2025年には、この状況がさらに悪化しており、上半期だけでエクアドルでは4,619件の殺人事件が発生した。これは、2024年同期間の3,143件と比べ、約47%の増加にあたる。
一方、刑務所は2021年以降、500人以上の死者を出す凶暴な受刑者間衝突の舞台となっている。直近では先週末、マチャラ(Machala)の刑務所で暴動(motín)が発生し、31人が死亡、そのうち27人は絞殺(ahorcamiento)によるものであった。BBCの分析によると、エクアドルの刑務所における暴力の主因は、麻薬取引をめぐる対立ギャング間の争いである。この状況を受け、いくつかの刑務所は軍の管理下に置かれ、また別の刑務所は国家警察の管理下に置かれた。これは、ノボア大統領が2024年に宣言した「内戦状態(conflicto armado interno)」の一環であり、国内で暴力を拡大させる犯罪組織と闘うことを目的としている。
民間および刑務所内の治安状況は、ノボア大統領が推進した11月16日の国民投票の直前にさらに悪化したとされる。この国民投票では、麻薬取引と闘うためにアメリカ合衆国の軍事基地設置が提案されていた。エクアドルの刑務所専門家である学者ホルヘ・ヌニェス(Jorge Nuñez)はBBCに対し、「エクアドルにおいて、現在国内で活動する犯罪組織の起源は刑務所にある」と述べている。
ヌニェスはさらに、「受刑者を刑務所に入れ続ければ、ギャングはさらに増長する。基本的に国家としてノボア大統領が採用しているのは、リクルートを助長しているのと同じである」と2024年に指摘した。では、実際にエクアドルの刑務所では何が起きているのだろうか。
元エクアドル治安長官ワグナー・ブラボ(Wagner Bravo)はCNNに対し、同国の刑務所問題は暴力の増加とともに複雑化していると指摘した。また、刑務所のインフラの問題も影響しており、地元の刑務所は高度危険犯罪者を収容するようには建設されていなかったと述べている。「数年前に決定されたことだが、犯罪者は外の街中で悪事を働くよりも、刑務所内の方が安全である場合がある。そしてそれは、インフラや手続き(procedimientos)に関わる問題による」とブラボは説明した。さらにブラボは、「我々が話しているマチャラの刑務所は、40年前に刑務所施設として整備された建物である。当時は現在ほどの暴力はなかった。これは受刑者のリハビリを目的としており、我々が持つ30の刑務所も同様で、しっかりと建設され適切な施設はごくわずかである。刑務所制度全体の再構築には、まだ十分に取り組めていない」と付け加えた。
エクアドルで最も深刻な刑務所内暴力事件は、2021年10月にグアヤキルのCentro de Privación de Libertad Número 1で発生したものである。この事件では、血なまぐさい暴動が起こり、116人の受刑者が死亡、さらに約80人が負傷した。
El crimen quiso desafiar al Ecuador y empezar su campaña. Hoy, el Ecuador le respondió con hechos.
— Daniel Noboa Azin (@DanielNoboaOk) November 10, 2025
Los primeros 300 PPL más peligrosos ya fueron trasladados a la Cárcel del Encuentro. pic.twitter.com/fu3OJQ7fhC
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参考資料:
1. Al menos 10 presos muertos en la cárcel más poblada de Ecuador: investigan si se trata de un contagio de tuberculosis
2. Diez presos mueren de tuberculosis en una cárcel de Ecuador
3. La compleja situación carcelaria de Ecuador: violencia, motines y más de 500 muertes en tres años

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