エクアドル:犯罪組織による違法燃料取引が国家にとって第3の脅威に浮上する

(Photo:Defensa)

エクアドルにおいて燃料の違法取引が、麻薬取引および違法採掘に次ぐ国家安全保障上の「第3の重大な脅威」として浮上している。これは2025年10月2日、国防省が公式に発表したもの。国防省の報告によれば、この違法燃料取引は犯罪組織に巨額の利益をもたらしており、国際的な犯罪ネットワークとも直接的な関係を持っている。

エクアドル軍合同司令部(Comando Conjunto de las Fuerzas Armadas)に所属する石油・ガス分野の専門家であるある将校は、次のように述べている。「燃料の窃盗は非常に高い収益性をもたらす。なぜなら、盗まれた燃料は正規の市場価格と同じ値段で販売されるからである」。この盗まれた燃料は、組織犯罪だけでなく合法的な販売業者にも流れている。「われわれは、盗まれた燃料が大量にガソリンスタンドに供給されていることを把握している。国家炭化水素規制庁(Agencia de Regulación y Control Hidrocarburífero:ARCH)によって割り当てられた月間供給量を超える燃料を受け取っている場合、それは違法な供給がある明確な証拠である」。事実上、国家のエネルギー管理体制を掻い潜る構造がここに成立していわけである。

この将校はさらに、盗まれた燃料が複数の犯罪活動に用いられていると述べた。「この燃料は、外洋での麻薬運搬に使用される高速船(narcolanchas)の再補給、隣国との間で価格差を狙った密輸(contrabando)、そして銀行口座を使わない非合法な現金取引など、資金の追跡を避けるための活動に利用されている」。国境地域では、車両数が少ないにもかかわらず、異常に大量の燃料が販売されているガソリンスタンドが確認されており、これは不正流通の存在を示す明確な兆候である。

この違法ビジネスの背後にある犯罪ネットワークは、広範かつ組織的である。「運転手やその輸送手段も違法ネットワークの一部である。穿孔を行う者から輸送し、受け渡しを行う者まで、全員がシステムの中にいる。さらには、正規の配送伝票を持つ許可タンクローリーまでもが、24〜48時間有効な伝票を利用して、不正燃料を合法に見せかけて運搬している場合がある」。この将校は、「彼らはどこに運ぶかを既に把握しており、燃料は即座に目的地へと届けられる」と指摘する。

国防省の発表によれば、この違法燃料取引には以下の六つの犯罪組織が関与しているとされる:

  • ロス・ロボス(Los Lobos)
  • ロス・チョネロス(Los Choneros)
  • 国境コマンド(Los Comandos de Frontera)
  • ELN(Ejército de Liberación Nacional)
  • オリバー・シニステラ戦線(Frente Oliver Sinisterra)
  • ラテン・キングス(Latin Kings)

 

これらのグループは武器や爆発物の密輸にも関与しており、国内の暴力事件、殺人、組織的殺人と直接結びついているとされる。さらに、一部の公務員や政治関係者の関与・共謀が指摘されており、脅迫や賄賂によって燃料の不正流通が可能になっているという。

 

国防省の対応と成果

2025年に入り、エクアドル軍(Fuerzas Armadas)は燃料の違法取引に対して本格的な軍事作戦を展開している。国防省によると、同年中に34,215回の軍事作戦を実施し、以下の成果を挙げた:

  • 押収した燃料:100万9,433ガロン
  • 破壊した不正設備:1,101箇所
  • 犯罪組織に与えた経済的損失:2,150万米ドル超

直近では、2025年9月16日から30日までの2週間で、3,360回の作戦が実行され、34,265ガロンの燃料が押収された。

 

主な被害地域

以下の地域では、犯罪組織による支配の度合いが高く、燃料の違法流通ルートの中心地ともなっている。軍の人員が集中的に配備され、監視と取り締まりが強化されている。違法燃料取引が特に深刻な影響を及ぼしているのは、以下の7県である:

  • オレジャナ(Orellana)県
  • グアヤス(Guayas)県
  • スクンビオス(Sucumbíos)県
  • サント・ドミンゴ(Santo Domingo)県
  • サンタ・エレナ(Santa Elena)県
  • エスメラルダス(Esmeraldas)県
  • マナビ(Manabí)県

 

際立つ秘密の掘削による燃料窃盗

2024年6月15日の報道されたのは国営石油会社ペトロエクアドル(Petroecuador)がサンタ・エレナ県のモンテベルデ(Monteverde)―エル・チョリージョ(El Chorrillo)間のガスパイプライン上のバルブ番号9と10の間に新たな秘密掘削が発見されたという事実であった。2024年1月から5月にかけて、国内のポリダクトでは合計335件の秘密掘削が記録され、それらによって燃料が盗まれている。同社は2024年6月14日、この秘密掘削を検知すると即時対策を講じたと発表した。陸軍工兵隊(Cuerpo de Ingenieros del Ejército)の支援を得て、この区間の修復作業を継続している。「専門チームと重機を配備し、作業を中断なく進めている」と同社は述べている。

ペトロエクアドルはこのような犯罪が露呈したにも関わらず、サンタ・エレナ県モンテベルデからの液化石油ガス(Gas Licuado de Petróleo:GLP)の配送を、オートタンクローリーを用いて拡張時間帯で継続している。これは、修復作業が完了するまでの間、市民の需要に応えることを目的とするものである。同社はまた、「ペトロエクアドルは国内市場を十分に供給できる国家規模の石油派生製品の在庫を確保している」と付け加えている。エクアドル国内のポリダクト網(燃料輸送用多目的パイプライン)の配管に対する秘密掘削の件数は、2024年の最初の5か月間で、2023年通年に記録された334件をすでに上回っている。この犯罪行為による経済的損失は、2023年だけで7,590万ドル(約115億円)を超えた。

 

抗議活動と燃料不足

北部エクアドルに位置するカルチ(Carchi)県およびインバブラ(Imbabura)県ではディーゼル補助金の廃止に反対する先住民族運動による全国ストライキの直接的影響として、深刻な燃料不足が発生している。

石油派生製品販売業者全国商工会議所(Cámara Nacional de Distribuidores de Derivados del Petróleo:Camddepe)の報道官が、2025年9月25日(木)に国際通信社EFEへ語ったところによれば、特にインバブラ県が抗議の影響を最も受けているとされている。インバブラ県では燃料の供給が大幅に滞っており、多くのガソリンスタンドが営業を停止せざるを得ない状況である。これにより、運転手や輸送業者は代替手段を持たず、地域の交通インフラに深刻な影響を与えている。

一方で、2025年9月25日(木)、国防大臣ジャン・カルロス・ロフレド(Gian Carlos Loffredo)は、アマゾン地域に位置するスクンビオス県において、違法燃料貯蔵拠点の摘発作戦を実施したことを発表した。この作戦では、6,000ガロンのディーゼルが押収された。これらの燃料は違法に流通しており、月あたり最大14万4,000ドル(約2,160万円)もの不正利益を生んでいたとみられている。

 

ダニエル・ノボア(Daniel Noboa)政権は燃料密輸との闘いはマフィアの資金源を断ち、違法採掘を食い止め、国家の領土支配を取り戻すための核心的な戦略として位置づけている。政府は、軍の力と治安対策連合(Bloque de Seguridad)の支援をもってこの闘いを継続する方針だと発表している。

#LosLobos #LosChoneros #ELN #違法取引

 

参考資料:

1. Seis bandas lideran el tráfico de combustibles, ‘tercera amenaza de seguridad en Ecuador’
2. EL TRÁFICO DE COMBUSTIBLE ES CONSIDERADO LA TERCERA AMENAZA DEL ESTADO EN ECUADOR
3. Robo de combustibles a través perforaciones clandestina es más continuo en Ecuador
4. Desabastecimiento de combustibles en Carchi e Imbabura por paro en Ecuador

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