エクアドル:世界が抵抗を示すべきガラパゴス鉱業改革案と環境影響への懸念

新たに国家議会に提出された鉱業法改正案が、国内外で大きな論争を巻き起こしている。議員ヘスス・ダビッド・アリアス・モンタルボ(Jesús David Arias Montalvo)が提案したこの法案は、ガラパゴス諸島における建設資材(砂、石、花崗岩など)の採取を、公共事業に限らず民間目的でも認める内容を含んでいる。この提案に対し、科学者や環境保護活動家、自然権利擁護者たちは即座に懸念を表明。ユネスコの世界自然遺産に登録されたこの諸島での規制緩和は極めて危険な先例を生むと警鐘を鳴らしている。諸島の97%が国家自然保護区の一部として保護されており、この地域の環境に甚大な影響を与える恐れがある。

ガラパゴス県選出のこの人物はガラパゴスという世界遺産における地域開発と環境保護のバランスを問う議論の中心人物の一人となっている。ガラパゴスの地域問題(住民支援、地方自治体との協議、燃料価格、漁業権等)を活動の軸にしているRC‐RETO を背景としていたこの人物は2025年6月、議会での「インテリジェンス法(Ley de Inteligencia)」に賛成票を投じたことを理由に、自身が所属していた市民革命党(Revolución Ciudadana:RC)議員団から追放された。追放理由として、RC側は彼の度重なる議決の不一致行動を「原則への反逆」と批判している。

ガラパゴス特別行政区(Provincia de Galápagos)の持続可能な石材管理体制を強化する目的で、鉱業法(Ley de Minería)の改正案を提出したヘスス・ダビッド・アリアスは、現行法が過度に制限的であると主張している。同議員は、ガラパゴス特別行政区の生態学的価値と特別な行政管理制度を考慮し、これまで鉱業活動はほぼ全面的に制限されており、公共工事に使用する建設用資材のみ自由に採取が許されてきたと説明した。しかしながら、実際には住宅や持続可能な観光インフラ、規制された生産プロジェクトなど、地域の私的工事においても石材が必要であるとともに需要があり、これが資材供給の問題や過剰なコスト、場合によっては無許可採取の原因となっている。「建設業はガラパゴス経済の最も重要な分野の一つであるが、現時点で民間セクターは非再生可能な天然資源を利用できない。したがって、私的工事においても自由な採取が認められる必要がある」。「法の規制によって供給が不安定となり、違法採掘さえ発生している。この改革によって、既に行われている行為を合法化し、管理下に置きたい」と述べている。この文脈のもと、ヘススによる改正案は自由採取の対象を拡大し、環境許可やライセンスを有する私的工事のための石材採取を例外的かつ管理の下で認めることを提案するものである。管理はガラパゴスの地方分権自治政府(Gobiernos Autónomos Descentralizados de Galápagos)が担当し、特別行政区政府評議会(Consejo de Gobierno del Régimen Especial)および所管省庁と連携して行うとしている。

これに対し、市民革命党の議員ベロニカ・イニゲス(Verónica Íñiguez)は、地球上でも最も繊細な生態系の一つであるガラパゴスの自然環境が著しく危険にさらされると懸念を示している。彼女によるとこの法案は範囲が広すぎて環境保護や社会的公正を担保していない。法案は住宅の増築から大手ホテルチェーンによる大規模採掘まで、利用制限や量の規制が曖昧であると指摘する。「ガラパゴスは他の県と同じ基準で扱えない。97%が保護区域だ。厳格な管理のない規則は無制限な採掘を招く」と強調した。さらに、地方自治体はこれまでも管理不十分として処分を受けており、責任を増やすことには懸念を示す。また、住宅建設とリゾート拡張の区別もされていない点を問題視している。

 

ガラパゴスの住民が抱える課題ー観光、開発、経済的圧力

議論の背景には、さらなる緊張が存在する。地元住民は、Airbnbなどのプラットフォームによる陸上観光の増加が建設資材の需要を押し上げていると訴えている。アリアスは、この現実を無視すれば住民は高額な価格を支払うか、コストと環境負荷の高い輸入に依存するしかないと主張する。一方、イニゲス議員は、これは島の受け入れ可能な観光規模を超えたモデルの表れであり、採掘拡大の前に規制が必要だと考えている。住民との対話では以下のような懸念が表明された。

  • 資材の価格は誰が決めるのか

  • 採掘の監督は誰が行うのか

  • 法改正の実際の恩恵は誰にあるのか

 

イニゲス議員は、住民が反対しているのではなく、「過剰採掘を防ぎ、資源が特定のグループだけでなく、全ての人々の生活向上に役立つための明確なルールを求めている」と強調する。国民議会は、法案を第一次審議に進めるかどうかを決定する予定だ。イニゲス議員は、監督機関に対し島の採掘状況に関する公式情報の提供を求め、監査の実施を視野に入れている。

ヘススの提案する法案は鉱業法の第八一般規定を改正し、以下の文言を定めることを求めている。「ガラパゴス特別行政区においては、公共および正当に許可された私的工事のための建設資材に限り、自由採取の許可が唯一認められるものとする」。さらに、本改正の施行から最長90日以内に、所管省庁、特別行政区政府評議会、及びガラパゴスの市町村地方自治体が自由採取特別規則(Reglamento Especial de Libre Aprovechamiento)を発行することを義務付けている。この規則には持続可能性に関する技術基準、市民参加の仕組み、環境管理のためのプロトコル、および資材の採取・輸送を監視するためのデジタル追跡手続き、つまり採掘のデジタルトレーサビリティを盛り込むとされている。

 

社会団体や市民グループも、独自の生態系や固有種を守るため、この法案の可決は許されないと声を上げている。「問題は経済的利益ではなく、世界的な遺産の保護にある」とし、SNS上では「#NoALaMinería(鉱業反対)」や「#GalápagosResiste(ガラパゴスは抵抗する)」といったハッシュタグがトレンド入りしている。現在、この法案は議会で議論中だが、国民の反対と国際的な圧力が今後の行方を左右される可能性もある。多くの人々にとって、この問題は単なる行政判断を超え、失われれば取り戻せない自然の宝を守る戦いとなっている。

今回の改正案が通れば、保護対象であるガラパゴスの自然資源の乱獲や、生態系への不可逆的な影響が生じる可能性が指摘されており、無制限な資源採掘への懸念が強まっている。

#Galápagos

 

参考資料:

1. ¿Impacto ambiental? Reforma minera en Galápagos propuesta por ADN abriría la puerta a una explotación indiscriminada
2. Proyecto De Reforma Minera Enciende Alerta En Galápagos
3. JESÚS ARIAS PLANTEA REFORMA LEGAL PARA EL USO DE MATERIALES PÉTREOS TAMBIÉN EN OBRAS PRIVADAS EN GALÁPAGOS

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