エクアドル:米州機構事務総長、治安分野における協力合意に向け訪問

米州機構(Organización de Estados Americanos:OEA)の事務総長アルベルト・ラムディン(Albert Ramdin)が、公式訪問のためエクアドルに到着した。滞在は2025年10月20日(月)までを予定している。

スリナム出身のラムディンは、米州機構の多次元安全保障局(Secretaría de Seguridad Multidimensional)の長であるイヴァン・C・マルケス(Iván C. Marques)を伴って訪問している。マルケスはブラジル出身の公共安全および人権の専門家であり、ブラジルの公共・民間部門において、制度間関係、戦略的計画、市民安全保障、人権保護、暴力削減の分野で長年協力してきた経歴を持つ。また、国連のコンサルタントを務めた経験もある。

今回の訪問の目的は、ダニエル・ノボア(Daniel Noboa)政権との間で、治安分野における協力合意の強化を図ることにある。会談は10月19日(日)および20日(月)に実施される予定であり、エクアドル国内で深刻化する犯罪的暴力および都市型テロリズムへの対応として、制度間の連携強化を目指すものとなっている。

なお、この訪問は、先住民による抗議活動が全国で活発化している情勢の中で行われており、エクアドル国内での重要な制度改革を問う国民投票を目前に控えた極めて重要な時期にあたる。

 

ラムディン事務総長は滞在中、多次元安全保障事務局の枠組みの下で、了解覚書(Memorando de Entendimiento)に署名する予定である。ラムディンによれば、この了解覚書は、エクアドルが市民の安全保障分野における米州機構の技術的支援能力へアクセスするための枠組みを提供するものであるという。また、エクアドル政府が宣言した「国内武力紛争(conflicto armado interno)」という文脈において、極めて重要な支援となると強調している。

 

この了解覚書は、制度強化プログラムの実施および組織犯罪に対する政府の対応能力の向上に向けた制度的基盤を築くものである。これは、米州機構が加盟国に対し、法の支配および人権を尊重しつつ、包括的な安全保障戦略の策定を支援する姿勢を示していることによるものである。

 

ラムディン事務総長は「今回の協定は、エクアドルに対して米州機構の安全保障に関する技術的能力を提供するための基盤を築くものである」と強調し、「事務総長の使命は、加盟国からの要請に応じて、市民安全保障および制度強化に関わる複雑な課題に対して、制度的な対応策の設計と実施を支援することである」と述べた。

また、ラムディンは自身の公式X(旧Twitter)アカウントにおいて、「この合意は、エクアドルが治安対策において持続可能な制度的対応を構築するための支援を目的としたものであり、これは地域全体の民主的安定を脅かす課題である」との見解を示した。

エクアドル外務・人の移動省のガブリエラ・ソマフェルド(Gabriela Sommerfeld)大臣はラムディンのメッセージを共有し、「アメリカ大陸の安全保障に関する重要なプログラムの始動に向けて、実り多い日々となることを期待している」と語った。

滞在中、ラムディンはエクアドル外務省での実務会議に臨むほか、中米工芸・民俗芸術センター(CIDAP)との協力協定署名も予定されている。外務・人の移動省は今回の訪問について、「エクアドルの民主主義を支持するOEAの強力な証し」であると位置づけており、エクアドルの多国間主義の推進および支持という国益に沿った関係強化が目的であると説明している。

 

ラムディンはまた、2025年10月14日(火)にグアヤキル市内で発生した自動車爆弾による爆発事件について、「アメリカ大陸において容認されるべきではないテロ行為である」と強く非難した。また、「民間人や公共空間を標的とする攻撃は、民主主義、平和、法の支配への冒涜である」と述べた。この攻撃は、ショッピングセンターおよびノボア家所有のオフィスビル前で発生し、タクシー運転手1人が死亡、30人以上(うち2人は重傷)が負傷した。

エクアドル政府によれば、このテロ攻撃は国内最大の犯罪組織「ロス・ロボス(Los Lobos)」によって実行されたものであり、北部地域における違法採掘に対する政府の取り締まりに対する報復であったとされている。

一方、グアヤキルの市議会議員らは、この事件の発生を受けて、政府に対し「成果の欠如」を理由とする厳しい批判を展開している。エクアドルでは、2024年から「国内武力紛争(conflicto armado interno)」状態が宣言されており、これはノボア大統領によって、テロリストとみなされる犯罪組織との対決を目的として発令されたものである。政権は、こうした犯罪組織が暴力の激化および中南米におけるエクアドルの殺人率上昇の主因であると指摘している。現在、エクアドルはラテンアメリカにおいて殺人率で最上位に位置づけられている。この殺人の波は2025年に入ってさらに深刻化しており、今年上半期だけで4,619件の殺人事件が報告された。これは、2024年同時期の3,143件から47%増加した数値である。

 

米州機構の議題とは別に、エクアドル国内では社会的緊張が高まっている。これは、エクアドル先住民族連盟(Confederación de Nacionalidades Indígenas del Ecuador:CONAIE)による抗議活動の呼びかけが背景にあり、運動は現在27日目に突入している。

このような状況下で、エクアドルは2025年11月16日に予定されている国民投票に向けて、カウントダウンの段階に入っている。同投票では、市民が外国軍基地の設置の是非や、新たな憲法制定議会の招集の可能性について意思表示を行うことになる。

CONAIEは、これらの項目について「反対(ノー)」票の投票を呼びかけている。一方、政府側は、国民的議論が全国規模のストライキに集中することを避けたい構えを見せている。先住民運動は現在、米州機構との制度的接近を踏まえ、今後の戦略の再評価を進めており、自らの要求の前進につながる可能性を模索している。

#米州機構 #LosLobos #DanielNoboa #CONAIE

 

参考資料:

1. El Secretario de la OEA visita Ecuador para analizar temas de seguridad
2. El secretario general de la OEA llegó a Ecuador para firmar un acuerdo de cooperación en seguridad con el Gobierno de Noboa
3. El Secretario general de la OEA visitará Ecuador el domingo tras el coche bomba de Guayaquil, ¿para qué viaja al país? 

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