(Photo:Cortesía)
ガラメディオス社(Galamedios S.A.S.)は、2025年7月にグアヤキル(Guayaquil)で設立された新興企業である。同社は、設立からわずか1か月足らずで、「ラ・ポスタ(La Posta)」および「ラジオ・セントロ(Radio Centro)」の2つのメディアを相次いで買収し、エクアドル国内のメディア環境における存在感を一気に強めた。
両メディアの買収総額は2.6百万ドルに上り、いずれもガラメディオス社が取得した。なお、同社の資本金はわずか5万ドルであり、その唯一の株主は、ダニエル・ノボア(Daniel Noboa)大統領が率いる政党、国家民主行動(Acción Democrática Nacional:ADN)に所属する代議員(補欠議員)ルイス・アルバラド・カンピ(Luis Alvarado Campi)である。この事実は、報道機関の所有が政治家に集中することへの懸念や、編集方針への政治的影響をめぐる議論を巻き起こしている。
ガラメディオス社による買収の第一弾は、2025年8月22日に実施された。「ラ・ポスタ民事信託(Fideicomiso Civil La Posta)」は、代表のルイス・エドゥアルド・ビバンコ(Luis Eduardo Vivanco)のもと、同信託が保有していた「レヴァスカン社(Leváscan Cía. Ltda.)」の全持分(100%)をガラメディオス社へ譲渡した。レヴァスカン社は、デジタル報道サイト「ラ・ポスタ」の運営母体である。
この取引額は100万ドルであり、支払いは3回に分けて実施される契約となっている。内訳は、契約締結時に50万ドル、翌2026年に30万ドル、さらに2027年に残りの20万ドルが支払われる予定である。
ガラメディオス社による「ラ・ポスタ」の買収に先立つ2025年8月16日、同社はホールディングビジョン社(Holdingvision S.A.S.)の株式80%(普通株800株)を取得した。ホールディングビジョン社はラジオ・セントロ(Radio Centro)の親会社である。この取引は、パメラ・アレハンドラ・チリボガ・バレイロ(Pamela Alexandra Chiriboga Barreiro)が代表を務めるベネルヘ社(Benerge S.A.S.)との間で締結されたものであり、取引総額は160万ドルに上った。
ガラメディオス社の法定代理人は、チリ国籍のビクトル・エドゥアルド・ギベルナウ・エスコベド(Víctor Eduardo Guivernau Escobedo)である。ただし、実質的な支配権はルイス・アルバラド・カンピ(Luis Alvarado Campi)にあり、同氏が企業の経営権全般を掌握しているとされる。
エクアドル会社登記局(Superintendencia de Compañías)の記録によれば、アルバラド・カンピは現在も別の2社で代表職を務めており、積極的な企業活動を展開している。また、彼は2025年7月2日から7月30日までの約1か月間、ガラメディオス社の総支配人(Gerente General)を兼任していた。その後、現在の代表であるギベルナウがその役職に就任している。
注目すべきは、ルイス・アルバラド・カンピが直近の資産申告において、株式および持分としてわずか1,598ドルのみを保有していると記載している点である。一方で、彼が所有するガラメディオス社は、資本金5万ドルを有している。これらの一連の買収により、国家民主行動に属する政治家が全国規模のメディアに積極的に関与していることが明らかになった。これを受け、エクアドル国内ではメディアの多様性、編集の独立性、そしてメディア権力の集中について新たな議論が巻き起こっている。
そのような中買収されたラジオ・セントロ(Radio Centro)側は声明を発表し、「確かに、ラジオ・セントロの制作会社の株式は売却されたが、我々は言論の自由と編集上の独立を保持している。編集方針は現在も我々の手中にある」と述べている。
買収資金はどこから出たのか
ガラメディオス社は、設立から間もない新興企業であるにもかかわらず、短期間で260万ドル規模のメディア買収を実施したことから、資金調達の実態や背景に対する疑念が高まっている。その資金の出所や買収に至る経緯が依然として明らかにされていない。
これらのメディアを買収したガラメディオス社は2025年7月24日に設立されたばかりの簡易株式会社(Sociedad por Acciones Simplificada, S.A.S.)で、本社所在地はグアヤキルにある。現在のゼネラルマネージャー(Gerente General)は、ビクトル・エドゥアルド・ギベルナウ・エスコベド(Víctor Eduardo Guivernau Escobedo)であることが、エクアドル会社登記局(Superintendencia de Compañías)の登記記録から確認されており、企業の定款上の業務内容には、「ラジオおよびテレビの番組の編集・出版活動」や「広告枠の販売」など、広範なメディア関連事業が掲げられている。
ガラメディオス社は、資本金わずか5万ドルで設立されたにもかかわらず、2025年8月22日にデジタルメディア「ラ・ポスタ」を100万ドルで買収し、さらに同年8月16日には「ラジオ・セントロ」の株式800株を160万ドルで取得している。合計260万ドル規模の買収を1か月のうちに実行したことにより、同社の資本規模に見合わぬ急速な拡大が国内外で注目を集めている。
同社の筆頭株主であるルイス・アルバラド・カンピ(Luis Alvarado Campi)は、現在、グアヤキル大学(Universidad de Guayaquil)で非常勤講師(docente a medio tiempo)として勤務している人物である。社会コミュニケーション学士(Licenciado en Comunicación Social)およびコミュニケーションと開発の修士号(Magíster en Comunicación y Desarrollo)を取得しており、その学歴は高等教育省のポータルサイト(portal de Educación Superior)で確認されている。また、2025年8月1日に国家監査庁(Contraloría General del Estado)に提出された最新の資産報告書によると、アルバラド・カンピの総資産は66,279ドルとされ、うち株式および会社持分の評価額はわずか1,598ドルにとどまっている。
こうした報告内容と、短期間で数百万ドル規模のメディア買収を実施した事実との間には大きな乖離があり、資金の出所や実際の出資構造に対する疑念が高まりつつある。なお、アルバラド・カンピは現職の補欠議員(asambleísta alterno)として、憲法上の縁故採用禁止(nepotismo)や、その他の資格制限および職務上の禁止事項に該当しないことを申告済みである。
ガラメディオス社による相次ぐメディア買収をめぐっては、資金の出所や政治的背景に対する憶測が広がっている。買収に関与した筆頭株主のルイス・アルバラド・カンピおよび、所属政党である国家民主行動(ADN)は、これまでのところ一切の説明を行っていない。特に注目されているのは、同党を率いるダニエル・ノボア大統領との関係性である。
アルバラドは2023年から2025年まで正規の代議士を務め、現在は補欠議員として活動している。一方、その妻であるジャニナ・リッツォ・アルベアル(Janina Rizzo Alvear)は、グアヤス県選出のADN現職代議士であり、同時にアルバラドの代議士代行でもある。妻リッツォはノボア・グループ(Grupo Noboa)との深い関係を持つことも判明している。彼女は、同グループ傘下企業の一つであるインダストリアル・モリネラ(Industrial Molinera C.A.)の常務取締役(directora titular)として登記されているほか、同じくノボア系企業のインテラメリカーナ・デ・テヒドス(Interamericana de Tejidos C.A.、通称インテラマ/Interama)では主要取締役(directora principal)を務めている。なお、インテラマの主要株主は、前述のインダストリアル・モリネラである。
ガラメディオス社のゼネラルマネージャーは、上述の通りチリ国籍のビクトル・エドゥアルド・ギベルナウ・エスコベド(Víctor Eduardo Guivernau Escobedo)である。そして、その息子であるアルバロ・イグナシオ・ギベルナウ・ベッカー(Álvaro Ignacio Guivernau Becker)は、政界およびノボア家の企業群と深く関わっている。アルバロ・ギベルナウは、国民議会第一副議長であり、政権与党である国家民主行動(ADN)の書記を務めるミシェル・マンチェノ(Mishel Mancheno)の夫である。さらに、アルバロは会社監督局(Superintendencia de Compañías)において、「エクスポルタドーラ・ノボア(Exportadora Noboa S.A.)」のゼネラルマネージャーおよび、「ノボア・トレーディング CO TCN S.A.」の社長として登記されている。いずれの企業も、大統領ダニエル・ノボア一族が率いるノボア・グループ(Grupo Noboa)に関連する企業である。なおノボア・トレーディング社に関しては、ヨーロッパ向けのコカイン輸送に関与している疑いで、捜査機関による調査対象となっていることが一部報道で報じられている。
また、アルバロ・ギベルナウとミシェル・マンチェノ夫妻は、2024年5月14日に設立された法律業務を主たる目的とする法人「エイアイジービー(AIGB S.A.S.)」を共同で所有しており、その関係性は政界、企業、メディアの三領域にまたがるネットワーク構造を形成している。こうした事実関係は、ガラメディオス社によるメディア買収をめぐる資金源の透明性や、政権中枢とのつながりに対する社会的懸念と疑念を一層強める要因となっている。
「ラ・ポスタ」の元オーナーであるルイス・ビバンコ(Luis Vivanco)およびアンデルソン・ボスカン(Andersson Boscán)、さらに「ラジオ・セントロ」の前オーナーであるフアン・ハビエル・ベネデッティ(Juan Xavier Benedeti)らは、今後もそれぞれのメディア製作物の運営を継続すると表明している。彼らは共に「これらメディアの編集方針は変更されない」と強調した。
「ラ・ポスタ」の共同創設者であるルイス・ビバンコは、2025年9月29日に公開された動画内で、「我々が売却したのは設備(fierros)であって、私の脳みそは売っていない。そして、この口から出る言葉には今も私自身が全責任を持っている。この売却は、1か月以上前に行われたにもかかわらず、多くの視聴者には気づかれなかった。買収した企業側(ガラメディオス社)からは、我々が引き続き編集チームと編集方針を指揮することを望むとの明確な意向が示され、我々もそれを受け入れた。そのために、編集の自由を確保するための重要な条項を盛り込んだ契約を締結している。もし将来、それが機能しなくなる日が来たならば、我々は潔く一歩引く覚悟である」と述べている。
「ラジオ・セントロ」の元オーナーであるフアン・ハビエル・ベネデッティも、出演した番組内で「広告枠は販売されるが、報道や意見のスペースは売り物ではない。これこそがこのラジオ局の本質である。私たちのリスナーに対して敬意を示すためにも、一部で広がっている不正確な情報について明確にしたい。ガラメディオス社が取得したのは800株であり、これはラジオ・セントロの制作会社の所有企業の資本の80%に相当する。この取引は民間間の戦略的な合意であり、今後の分野拡大やメディア展開に向けた多角化の一環である。なお、周波数(frecuencias)は交渉の対象に含まれていない。今回の交渉は、ラジオ局の編集方針や報道内容に一切の影響を与えるものではない」と強調した。
このように、表面上は経営権の移転が行われたものの、実質的な編集体制は維持されていると各メディア関係者は説明している。しかし、資本構造の変化により、報道の独立性や編集の自由が今後も担保されるかどうかには、依然として注視が必要である。
不正蓄財の疑いで告発
国民議会(Asamblea Nacional)では、市民革命(Revolución Ciudadana)議員団長のフアン・ゴンザレス・アルベアル(Juan González Alvear)が、ガラメディオスに対する不正蓄財の疑いについて監査を開始すると発表した。ゴンザレスは、検察庁(Fiscalía)、国家監査院(Contraloría General del Estado)、および財務経済分析ユニット(Unidad de Análisis Financiero y Económico:UAFE)に対し、可能性のある犯罪の調査を要請する手続きを進めていると報告している。
なお、新聞「エル・ウニベルソ(EL UNIVERSO)」は、本件の詳細および取引に関する見解を求め、ルイス・アルバラド・カンピへの接触を試みたが、返答は得られなかった。また、彼の妻であり国会議員のジャニナ・リッソも、コメントを控えた。
ラジオ・ラ・カジェも売却か
偶然にも、ガラメディオスが「ラ・ポスタ」を取得した同じ2025年8月22日、「グルーポLC(Grupo-LC)」が所有するデジタルメディア「ラジオ・ラ・カジェ(Radio La Calle)」の売却も発表された。購入者の一人はアンドレア・ベレン・カレラ・モラレス(Andrea Belén Carrera Morales)であり、現時点で彼女が政府または政権与党と関係しているという記録は確認されていない。このタイミングの一致は偶然とされているが、複数のメディアが短期間のうちに所有権を変更していることから、エクアドル国内では報道の独立性や透明性に対する懸念が高まりつつある。
参考資料:
1. ¿Noboa está detrás de la compra de La Posta y Radio Centro Digital?
2. Asambleísta alterno de ADN compra La Posta y Radio Centro
3. Esto se sabe de Galamedios, la empresa que tiene como accionista a un legislador alterno de ADN y que compró La Posta y Radio Centro
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