エクアドル全国ストライキ2025:当局による弾圧と人権侵害に対する国内外からの批判

2025年9月29日、欧州議会の議員で、フランス・アンシュミーズ(La France Insoumise)所属のアンソニー・スミス(Anthony Smith)は、エクアドルにおける先住民による全国的な抗議行動を受けて、同国を訪問していたと報告した。この抗議行動は、エクアドル共和国政府によるディーゼル補助金の廃止に反対するものである。

スミスは、エクアドルが「人権および民主主義の面で深刻な悪化を経験している国である」と述べ、状況がさらに悪化した場合に欧州議会として取るべき措置の必要性を訴えた。彼は2017年以降、同国の民主主義が徐々に後退していることも指摘しており、国際社会による注視と対応の重要性を強調した。

 

スミスは声明の中で、エクアドルが2017年以降、民主主義の漸進的な崩壊を経験していると強い懸念を示した。スミスによれば、その劣化は以下の要素によって顕著である:

  • 著しい経済的不平等の拡大

  • 貧困率および労働の不安定化の増加

  • 公共サービスの質の低下

  • 組織犯罪の台頭とその影響力の拡大

 

これらの社会的・政治的背景の中で、スミスはダニエル・ノボア(Daniel Noboa)大統領率いる現政権が「権威主義的な統治体制を敷き、軍事化、反対派の犯罪化、そして体系的な迫害を進めている」と批判した。これらの措置は、「解決できていない治安危機」を口実として正当化されている。

さらに、スミスは、非常事態宣言の下で、基本的自由に対する制限および深刻な人権侵害を裏付ける多数の訴えが存在していると指摘した。加えて、政府による「経済緊急法案(proyectos de ley con carácter económico urgente)」の適切な説明を欠いたままの迅速な採択、ならびに憲法裁判所(Corte Constitucional)および市民社会への継続的な攻撃が、三権分立の漸進的な弱体化を引き起こしていると述べている。スミスは、エクアドルにおける民主主義と人権の現状が国際的監視および対応を要する深刻な局面に達しているとし、欧州連合(European Union)および国際機関に対して早急な行動を呼びかけた。また、アンソニー・スミスは、欧州議会(European Parliament)の他の議員らとともに、本件に関して欧州委員会(European Commission)へ正式な働きかけを行っていると述べた。

特に、状況がさらに悪化した場合に発動すべき措置について、欧州委員会が準備を進めるよう求めている。スミスらは、エクアドルにおける民主主義と人権の著しい後退に対し、欧州連合としての責任ある対応が求められると強調している。

 

国民議会の人権委員会も人権侵害疑惑に関する監査手続きを開始

9月30日、エクアドル国民議会(Asamblea Nacional)に設置されている立憲保障・人権委員会(Comisión de Garantías Constitucionales, Derechos Humanos, Derechos Colectivos y la Interculturalidad)は、大統領令第126号(Decreto Ejecutivo N.º 126)に抗議する一連のデモにおいて発生した可能性のある人権侵害について、正式な監査手続きを開始した。同大統領令は、ディーゼル燃料への補助金を廃止するものであり、全国的な反発を招いている。

委員会はこの日、インバブラ(Imbabura)県オタバロ(Otavalo)市で9月22日に拘束された12名の被拘束者の家族からの証言を聴取した。家族代表のマリア・ソレダ・ペルガチ(María Soledad Perugachi)は発言の中で、拘束された12名の即時釈放を強く訴えた。彼女は、「政府は彼らをテロリストと呼んでいるが、実際には彼らは職人、商人、そしてストリートアーティストであり、インフォーマル経済に従事して日々の生活を営んでいる」と主張した。また、12人のうち4人は聴覚障害を持っており、その子どもたちは現在無援状態であることを強調した。家族らの聴取を経て市民革命(Revolución Ciudadana)議会会派所属のヘクトル・ロドリゲス(Héctor Rodríguez)議員およびロケ・オルドニェス(Roque Ordoñez)議員が提出した監査開始の動議が可決された。

立憲保障・人権委員会における公聴会では、抗議活動中に発生した暴力行為を記録した映像資料も上映された。その中には、コタカチ(Cotacachi)出身の抗議参加者エフライン・フエレス(Efraín Fuerez)が死亡する瞬間を記録した映像も含まれていた。また、フエレスの遺族とされる人物がエクアドル軍(Fuerzas Armadas)の兵士に暴行を受ける様子も記録されていた。

元先住民指導者のブランカ・チャンコソ(Blanca Chancoso)は発言の中で、エクアドル軍が夜間に民家へ侵入し、女性や子どもたちを引きずり出すなどの行為を行い、家屋を破壊したと証言した。彼女は、国防大臣ジャン・カルロ・ロフレド(Gian Carlo Loffredo)および内務大臣サイダ・ロビラ(Zaida Rovira)を議会委員会に召喚し、行動の正当性について説明させるよう要請した。また、「先住民運動は対話を求めているが、それは政府からの『ノー』を聞くためではない」と語り、誠実な対話の実現を求めた。

コタカチ農民・先住民組織連合(Unión de Organizaciones Campesinas e Indígenas de Cotacachi)のコミュニティ代表マルタ・トゥケレス(Martha Tuquerres)も証言に立ち、抗議行動の背景にはディーゼル価格の引き上げのみならず、医療崩壊、治安悪化、電力・インターネットの供給停止などがあると説明した。彼女は、「女性や子ども、高齢者たちは、安全を求めて谷間に避難し、そこで夜を明かしている」と述べた。また、9月22日にオタバロ市に数百名規模の軍が暴力的に突入し、テロ容疑で12名を拘束した経緯を詳述し、一方で、イバラ(Ibarra)市への配備人数や装備(戦車など)について調査するよう、議会に対して求めた。トゥケレスは最後に、「路上で闘っている人々はテロリストではない」と強く訴えた。

 

「私たちを殺さないで」と言う訴え

国民議会の立憲保障・人権委員会は、同日、エクアドル先住民連合(Confederación de Nacionalidades Indígenas del Ecuador:CONAIE)など、複数の民族・先住民族グループの代表者たちを招き、現在進行中の抗議活動に関する公聴会を実施した。この場で聞かれたのは、統計や政策ではなく、苦痛と悲嘆に満ちた人々の声であった。

9月30日午前11時前、マルロン・バルガスは、米州人権委員会(Comisión Interamericana de Derechos Humanos:CIDH)および国際連合(Organización de las Naciones Unidas:ONU)に対し、現在エクアドルで発生している事態に関する調査と責任追及を要請した。バルガスは、エクアドル共和国政府が政府は国際労働機関(OIT)の第169号条約に対しても「傲慢な態度(actitud prepotente)」を取っていることから、国際的監視、調査、制裁が不可欠であると訴えた。「CONAIEは、この政府による横暴に屈することなく、引き続き闘いを続ける。我々の若者たちは暴徒ではない(no son vandálicos)。不当に拘束されたすべての人々の即時釈放を要求する」と語るとともに、各地で発生している過剰な武力行使や、先住民族に対する差別的対応を指摘し、「これはただの治安維持ではなく、人権の蹂躙である」と主張した。

 

同会議に出席した先住民族の指導者たちは、口々に国家権力による暴力の停止、政治犯の釈放、そして民族の尊厳回復を訴えた。証言は、マリア・ソレダ・ペルガチ(María Soledad Perugachi)をはじめ、多くの関係者によって行われ、公聴会の場は単なる発言の場ではなく、共同の叫びとなった。

マリア・ソレダ・ペルガチが公聴会の場で語ったのは「2025年9月28日(日曜日)に殺害された指導者は、今日、彼の土地に埋葬される予定である。彼は、私たちの自由と尊厳のために声を上げていた。彼の死は、単なる統計ではない。命が奪われたこと、家族が引き裂かれたことを、どうか忘れないでほしい」と言うことであり、「私たちを殺さないで(No nos maten)」──その言葉は、政治の中心に届けられるべき、極めてシンプルで本質的な要求である。ペルガチは、オタバロの12人(Los 12 de Otavalo)の家族代表としての証言である。同氏は、今回の殺害事件が国家権力による暴力と政治的弾圧の一環であるとの見解を示し、透明な調査と責任の明確化を強く求めている。

 

抗議活動中に発生した2人目の死亡事例

公聴会では、さらに2人目の死亡者が確認されたことが明らかにされた。証言を行ったのは、人権地域アセソリー財団(Fundación Regional de Asesoría en Derechos Humanos:Inredh)の元コーディネーター、ルイス・アンヘル・サアベドラ(Luis Ángel Saavedra)である。サアベドラは、「この事例は、直接的に国家治安部隊の行動によるものではないが、先住民による全国的抗議活動の文脈の中で発生したものである」と説明した。「亡くなったのはバイクに乗っていた男性であった。軍の到着を目撃し、逃げようとして急な操作を行った結果、事故を起こし命を落とした」と証言した。この事例は、抗議活動中の軍および警察の存在そのものが、住民に恐怖を与え、間接的に命を奪う状況を生んでいるという点で、重大な問題として指摘された。

 

カロキ共同体(Comunidad Caloquí)の代表であるファビアン・カバスカンゴ(Fabián Cabascango)も委員会で切実な訴えを行った。「私たちを殺さないでほしい。私たちは農民である。通りに出て抗議しているが、麻薬取引の資金提供を受けているわけではない。…弾圧は残酷であり、私たちは追われ、戦争用の銃弾を浴びている」と述べた。

市民革命党の国民議会議員、ブラスコ・ルナ(Blasco Luna)は、この問題が現在の委員会から外され、国家民主同盟(Alianza Democrática Nacional:ADN)の管轄下にある別の委員会に移される可能性を否定しなかった。この日の委員会審議は、2025年9月30日午前12時30分頃に終了した。

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参考資料:

1. Comisión de DD.HH. de la Asamblea inicia proceso de fiscalización sobre posibles abusos y vulneraciones en las movilizaciones
2. “No nos maten” solicitan dirigentes de nacionalidades y pueblos ante la Comisión de Derechos Colectivos de la Asamblea Nacional
3. Integrante del Parlamento Europeo alerta sobre “graves violaciones de derechos humanos” tras represión por paro indígena en Ecuador

 

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