エクアドルは、2025年に10万を超えるカカオおよびコーヒー生産者を登録し、欧州連合(Unión Europea:UE)が定める規則に適合することを目指す。これは持続可能な生産を保証し、森林破壊ゼロの輸出を確実にするためである。欧州委員会は、エクアドルを森林破壊リスク「標準」国として分類しており、輸出管理の対象としている。
エクアドル農業畜産水産省(Ministerio de Agricultura, Ganadería y Pesca:MAGP)は2025年9月9日、同国のカカオおよびコーヒー生産者を対象に「統合農業情報管理システム(Sistema Gestor Unificado de Información de Agrocalidad :GUIA)システムへの登録を2025年末までに完了させる計画を発表した。これにより欧州連合向けに10万人超の生産者が登録されることとなる。この登録は、MAGPと植物検疫・動物検疫規制機関(Agencia de Regulación y Control Fito y Zoosanitario:Agrocalidad)が連携して推進する「Mi finca, mi huella(私の農園、私の足跡)」キャンペーンの一環である。
キャンペーンの目的は、生産者が欧州連合の規則1115号(EU Regulation 1115:EURD)に準拠し、森林破壊のない生産方法で作られた製品をEU市場に輸出できるよう支援することである。規則1115(EUDR)は、森林破壊ゼロの製品のみが欧州市場に輸入可能であることを定めている。この措置は、カカオ、コーヒー、大豆、パーム油、木材、ゴム、牛肉などの戦略的作物に適用される。エクアドルは、香り高いカカオの主要輸出国であり、成長著しいコーヒー生産国として、これらの要件に生産体制を適合させる課題に直面している。この規則の遵守は欧州市場へのアクセスを保証するだけでなく、エクアドルの持続可能な生産者としてのイメージを強化し、他の国際市場における商機を拡大することにもつながる。このEURD規則は、2025年12月30日に大企業および中規模企業に対し、2026年6月30日には中小企業に対し施行される予定である。EUはこれにより、森林破壊・森林劣化の削減、温室効果ガス排出の抑制、気候変動緩和、生物多様性保護の促進を目指している。
輸出にあたり、この登録は義務付けられており、登録はAgrocalidadが管理する「GUIA」システムにて行われる。規則の発効期限は、大企業および中規模企業が2025年12月30日、中小企業が2026年6月30日である。この規則は、世界的な森林破壊の抑制、温室効果ガス排出の削減、生物多様性の保護を目的としている。
政府は、MAGPの地方支部やエクアドル全国24州のAgrocalidadの事務所に登録窓口を設置した。生産者は氏名、身分証明書番号、生産品目、住所および農地の境界など基本情報を提出する必要がある。登録は無料である。
「GUIA」とは、エクアドルで導入されている農業生産のトレーサビリティ(追跡可能性)を管理・記録するための公式デジタルプラットフォームである。このシステムは、農産物生産者や関連機関が、生産過程や使用する資材、環境情報(例えば森林破壊の有無や土地利用状況)を登録・管理できる仕組みを提供する。こうした情報をもとに、持続可能な生産を証明し、特に輸出向けに「森林破壊ゼロ」などの基準を満たした製品の認証や報告を可能にする。具体的には以下情報を一元管理する:
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生産者の登録
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生産地の地理的な位置情報(ジオリファレンシング)の記録
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農地の使用状況の監視
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森林破壊に関する報告
GUIAの登録方法
登録拠点は、農業畜産水産省の地方支局および全国24州にあるAgrocalidadの事務所に設けられている。生産者は、登録に際して以下の情報を提出する必要がある:氏名、身分証番号、生産品目、住所、土地のポリゴン(境界線)の登録が必要である。登録されたカカオおよびコーヒー生産者は、2020年12月31日を基準とした森林破壊レポート、農地利用状況、空間的ジオリファレンスによる生産地域のマッピングに無料でアクセスできる。また、農業資材の取得、技術支援、農業保険、能力強化計画への支援も受けられる。さらに、国際市場の要件を満たすための能力向上プロジェクトも展開される予定である。
本トレーサビリティ・プログラムへの登録は無料であり、生産者が容易に参加できるようになっている。「本プログラムへの登録を活用し、その普及を図ることで、我が国が目指す目標――すなわち、欧州連合が求めるトレーサビリティおよび環境保護に対する責任――の達成を実現したい」と、農業畜産水産大臣(Ministro de Agricultura)のダニロ・パラシオス(Danilo Palacios)は述べた。
さらに同大臣は、欧州連合という貿易ブロックが、品質に最も高い対価を支払う市場であること、そして現在は特にトレーサビリティに関して厳しい要件を課していることを強調した。持続可能な生産・流通に関する省庁間委員会(Comité Interinstitucional de Producción y Comercialización Sostenible)は、エクアドル政府によって設置されたものであり、貿易相手国が発行する規制および基準をエクアドルが遵守できるよう、各省庁の取組を調整・統合することを目的としている。
本委員会の下には、以下の4つの専門小委員会が設置されている:トレーサビリティ(MAGP)、土地の合法性(MAG)、森林破壊ゼロ(MAE)、および労働問題(MDT)。また、これらの委員会は、国内歳入庁(Servicio de Rentas Internas:SRI)とも連携している。なお、監視および規制の対象は、コーヒーおよびカカオのほか、牛肉、アブラヤシ(パーム油)、ゴム、大豆、木材にも拡大されている。
省庁間連携戦略
本取り組みは、環境・エネルギー省(Ministerio de Ambiente y Energía)、労働省(Ministerio de Trabajo)などの関連省庁が参加する「持続可能な生産および商取引に関する省庁間委員会(Comité Interinstitucional de Producción y Comercialización Sostenible:CIPCPS)」によって連携して推進されている。
委員会内には、トレーサビリティ、土地の合法性、森林破壊ゼロ、労働問題に特化した小委員会が設置されている。これらの小委員会の目的は、貿易パートナーが求める環境基準および労働基準の遵守を国として保証することである。
農業生産者向け奨励金と恩恵
国際市場の基準を満たすための能力強化プロジェクトも展開され、EUなどの国際市場への農畜産物輸出促進が進められている。エクアドル農業畜産水産省(MAGP)のダニロ・パラシオス(Danilo Palacios)長官は、登録は無料であり、トレーサビリティプログラムへの参加が生産者に開かれていることを強調した。「生産者がこの機会を活用し、品質を認め支払う市場へのアクセスを確保することを望む」と述べた。EUはエクアドル産品の最大の取引圏であり、品質に対して高価格を支払う一方で、新たなトレーサビリティ要件を課していると述べた。
輸出の成長
2025年8月、エクアドル政府は2025年前半の輸出総額が前年比11%増加したと発表。これは主に非石油製品の販売によるもので、経済財務省の報告によれば、2025年1月から6月の非石油製品輸出額は144億9100万ドル(FOB)に達し、2024年同期比で21.1%増加した。特にカカオ、エビ、バナナ、花卉などが好調であった。また、非伝統的輸出品も54億7000万ドル(FOB)で前年同期比10.2%の増加となった。
※FOB(Free On Board/Libres a bordo)は「本船渡し」のことを言う。輸出港で、輸入者の指定する船舶に貨物を積み込むことによって契約が完了し、運賃および保険料は買い手が負担する。売り手は商品を船に積み込むまでの費用とリスクを負う。
参考資料:
1. Ecuador registrará más de 100 mil productores para exportar cacao y café sin deforestación
2. Ecuador registrará a más de 100 mil productores de cacao y café para cumplir normas de la Unión Europea
3. Ecuador abre registro y apoyo a 100.000 productores de cacao y café para no perder ventas a Unión Europea
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