(Photo:Ramón Espinosa/AP Foto)
キューバ紛争観測所(Observatorio Cubano de Conflictos:OCC)は、2025年9月に政権に対する抗議行動が1,121件に達したと報告した。この数字は、サービスの不備や国民の広範な不満を反映しており、前月の記録を上回る史上最多となった。これらの抗議活動の増加は、キューバ社会の包括的な崩壊が市民の生活のあらゆる面を制約していることを示している。特に「終わりなき停電(ブラックアウト)」と「ますます深刻化する水道水の欠如」が9月の公共サービスに対する批判の中心となった。これらは、持続する社会的不満や公共サービスの困難に対する抗議であると同時に、警察国家体制(Estado policial)に対する直接的な対立の激化も示している。一方で、政治囚(presos políticos)、野党勢力(opositores)、活動家、市民社会のメンバーに対する弾圧も再び激化している。
同組織によると、9月のキューバでは1,121件の抗議行動、告発、社会的行動が記録された。これらは街頭での直接対決だけでなく、「秘密裏に行われた行動も含まれ、その中には11件の反政府落書き(grafitis antigubernamentales)や国家財産に対する破壊工作(sabotajes)や破壊行為(vandalismo)が含まれている。ソーシャルメディア上では、活動家、知識人、市民社会のメンバーが多角的な危機と弾圧について議論し、共産党指導部に対して断固たる態度での対応を呼びかけている」とOCCは報告している。
なかでも治安悪化に関する告発は深刻に倍増しており、死亡者数や行方不明者の増加、暴力や犯罪の激増を示している。Infobaeが入手した報告書によると、キューバでは警察国家体制に対する抗議が活動の中で再びトップとなり、323件の抗議行動が記録された。その中には、鍋を叩く「カセロラソ(cacerolazo)」や道路封鎖、デモ行進など16件の街頭での物理的な行動が含まれており、とくにオルギン州(Holguín)のヒバラ(Gibara)での大規模な動員が目立った。
抗議行動の大部分は電力供給システム(Sistema Electroenergético Nacional:SEN)の不備に関連している。今年に入って2度目の全面停電が発生し、電力不足が続いている(詳細はこちら)。水道供給の停止も抗議の引き金となり、複数の地域の住民が水不足に抗議して道路封鎖を実施した。ガス供給、交通、葬祭サービスなども影響を受けており、それぞれの分野で抗議が起きている。キューバ紛争観測所は「9月の紛争計測でも液化ガス(gas licuado)、衛生(salubridad)、交通(transporte)、葬儀(funerarios)サービスに関する告発が引き続き収集され、その件数は245件の抗議行動に上った」と述べている。
9月には国家による弾圧が激化した。キューバ紛争観測所は、抗議者や反対派に対する逮捕・判決が152件あったと報告しており、8月の89件から大幅に増加している。停電に抗議して直接的に行動した者やソーシャルメディア上で表現した者に対し、再び厳しい判決が下された。たとえば、サンティアゴ・デ・クーバ(Santiago de Cuba)では、液化ガス(gas licuado)を購入するための列を携帯電話で撮影した男性が4年半の懲役刑を言い渡された。当局の対応は、実際の抗議活動だけでなく、SNS上の表現に対しても刑事手続きや制裁を含んでいる。
治安問題に関しては、キューバ紛争観測所は121件の抗議や告発を記録しており、食料や医療に関する懸念を上回る数となっている。9月には社会的・犯罪的・ジェンダーに関連した暴力による死亡者が21人、行方不明者が17人報告された。また、窃盗、強盗、恐喝の犯罪も高水準で推移し、53件が報告されている。なかでも、ラス・トゥナス県(Las Tunas)の共産党書記の自宅に対する盗難や、キューバ系アメリカ人の訪問者から身分証明書を奪い身代金を要求する事例が注目されている。
公的医療の崩壊は依然として深刻な問題となっており、9月には99件の抗議行動が報告された。11の県で複雑な疫学的状況が続き、マタンサス市(Matanzas)ではアルボウイルス(arbovirus)感染症の発生と関連死が確認されている。加えて、病院施設の老朽化や診断用試薬を含む医薬品の不足が深刻化し、市民は闇市場に頼らざるを得ない状況にある。
社会問題も頻繁に報告され、79件の記録があった。特に大量移民、経済・社会危機による心理的影響(専門家はこれを「静かな疫病」と表現)や、若者の間で低価格薬物の依存が根強く続いている。
食糧事情、インフレ、農業に関する不満は92件に上り、食料安全保障の問題や購買力の低下が顕著だ。キューバ人権観測所(Observatorio Cubano de Derechos Humanos:OCDH)がキューバ紛争観測所に引用した報告によると、キューバ国民の約7割が資金不足で一日に一食以上を抜いており、70歳以上の高齢者ではその割合が8割に達している。さらに、米や砂糖といった基本的な補助品の配給が最大4ヶ月遅延する状況も続いている。
住宅に関する問題も24件報告され、グアンタナモ県(Guantánamo)やサンティアゴ・デ・クーバ市では雨による被害、倒壊、仮設住宅の劣悪な環境、住宅危機の深刻さが明らかになった。その中には、家族のために家を建てるため教育現場を離れた教師の事例も含まれている。
9月の行動は、キューバにおける抗議、告発および市民行動の年間を通じた持続的な増加を明確に示している。1月には600件をわずかに超えたにすぎなかったものが、現在ではほぼ倍増しており、増加傾向が憂慮すべきものであることを示している。
「キューバの全体主義国家(Estado totalitario de Cuba)という状況は、国民がほぼすべての基本的なニーズを国家に依存しているため、自由な体制下であれば個別または集団的な問題として扱われうる事柄が紛争に転じている。問題に対しては多様な解決策が存在しうるが、キューバの人々はそれらを解決するために、そうした解決策に反するイデオロギー的利益を持つ国家に依存しているのである。しかも、国家はかつての共産主義的な約束であった、適切な賃金や公衆衛生、食糧、教育、社会保障の提供と引き換えに市民的・政治的権利の厳格な抑圧を維持するという契約を徐々に放棄している」と人権団体は結論づけている。
参考資料:
1. Crece el malestar social en Cuba: hubo récord histórico de protestas en septiembre
2. El Observatorio Cubano de Conflictos reportó 845 protestas y acciones cívicas contra el régimen en julio
3. ‘Apagones sin fin’ y ‘falta de agua’: las razones de los cubanos para protestar en septiembre

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