アンデス共同体:オブザーバーとして中国を正式参加させる

2025年10月1日、ボゴタ市で開催された第31回アンデス外相理事会において、アンデス共同体(Comunidad Andina:CAN)加盟国であるボリビア、コロンビア、エクアドル、ペルーは、中華人民共和国の同機構へのオブザーバー参加を正式に承認した。中国は、スペイン、モロッコ、トルコ、ギリシャ、パナマ、ドミニカ共和国に続き、7番目のオブザーバー国として正式に承認されるものである。CANの規定によれば、オブザーバー国は議決権を有さないものの、非機密の会議に出席し、意見を表明することが認められている。これにより、中国は内部意思決定には干渉せずとも、政策協議や多国間対話の場に参加することが可能となる。

全会一致で採択されたこの決定は、中国とCANの関係が新たな段階へと移行することを意味しており、地域における中国の影響力拡大と、南米諸国との戦略的連携強化を象徴するものとなった。今回の決定は、南米における中国の存在感拡大と、ラテンアメリカ諸国にとっての新たな経済的機会の創出を象徴するものと位置づけられる。

今回の承認は、2025年7月に中国の在ペルー大使館がCAN事務局に対して提出した正式な参加申請に端を発するものであり、一連の外交的・制度的プロセスを経て締結された。本措置により、両者は経済的・技術的な連携を一層深化させる基盤を得たと評価されている。

アンデス共同体のゴンサロ・グティエレス事務総長(大使)は、記者会見において「中国の参加は、政治対話の発展と協力の深化を通じて、双方の関係強化に貢献する」と述べ、歓迎の意を示した。

今後は、商業的結びつきの強化のみならず、イノベーション、科学技術、持続可能な開発といった分野における実質的な協力の推進が焦点となる見通しである。アンデス共同体内での中国の関与は、単なる経済利害を超えて、地域統合と多極的国際秩序の形成にも影響を与える可能性がある。

 

長年の関係と「歴史的意義」

中国とアンデス共同体の関係は1999年に始まり、これまでに経済および政治分野における協議メカニズムが着実に構築されてきた。CAN加盟国の代表らは、中国の国際社会およびグローバル・ガバナンスにおける役割を高く評価し、今回のオブザーバー参加を「歴史的に極めて意義深い」との認識を共有している。

現在、CAN加盟国の対域外輸出のうち19.3%が中国市場向けとなっており、中国は同地域にとって最大の輸出先としての地位を確固たるものとしている。こうした経済的背景を踏まえ、中国のオブザーバー国としての正式参加は、経済のみならず技術・戦略分野での協力関係を一段と深める契機となる。

中国の参加により、CANはイノベーション、直接投資、持続可能な開発といった分野における協力の深化を期待している。また、中国の在コロンビア大使館において臨時代理大使を務める張力平(Zhang Liping)は、同国が提唱する「五つの協力プログラム」(連帯、開発、平和、人民による共同プロジェクト、グリーン協力)を中南米諸国と共に推進する用意があると表明した。

中国によるアンデス共同体へのオブザーバー参加には、単なる外交的象徴にとどまらない明確な戦略的意図が存在する。ボリビア、ペルー、エクアドル、コロンビアといったCAN加盟国は、金、銅、リチウムといった、次世代技術に不可欠な鉱物資源を豊富に有しており、人工知能(AI)や電気自動車(EV)といった分野を重点産業と位置づける中国にとって極めて重要な供給地である。アンデス共同体のゴンサロ・グティエレス事務総長(大使)は、「アンデス共同体と中国の新たな関係の段階は、アジア太平洋におけるアンデス地域の存在感を高め、AIなどの革新技術分野における協力を促進する絶好の機会である」と強調した。

また、アンデス共同体は現在、地域観光の活性化を目的とした「カミーノス・アンディーノス(Caminos Andinos)」プロジェクトを推進しており、中国との協力が観光分野に波及する可能性もある。広大な中国市場と観光インフラとの連携により、持続可能な観光開発の道が開かれるとの期待も高まっている。

 

米国一極主義に対抗する「信頼できるパートナー」

中国の接近は南米諸国にとっても魅力的な選択肢となっている。これは、米国による関税措置や経済的圧力といった制約からの脱却を図るものであり、過度な政治的条件なしに市場アクセスや投資機会を得られる点が評価されている。一方で中国は、「グローバル・サウス(南半球諸国)」における秩序の保証者としての立場を強化しつつあり、多国間主義や国際協調を前面に打ち出すことで、米国の一方的政策と差別化を図っている。

専門家らは、この動きについて、象徴的意味合いだけでなく、実利的かつ戦略的な意義があると指摘する。中南米諸国にとっては新たな市場開拓と資源活用の機会となり、中国にとっては将来の産業・技術成長を支える重要資源の安定供給網の構築につながるからである。

中国は近年、中国・CELACフォーラム(中南米・カリブ諸国との多国間協議機構)を通じて中南米諸国との関係を強化しており、米国主導の一極的な国際秩序に対する代替的パートナーとしての地位を高めている。今回のCANへの正式なオブザーバー参加は、地域諸国にとって経済的および投資的選択肢を拡大する契機となり、長年続いた対米依存構造からの脱却を後押しする可能性も指摘されている。

アンデス共同体における中国の影響力は、今後の中南米外交の構図において無視できない要素となりつつあり、その動向が国際社会の注目を集めている。

#アンデス共同体

 

参考資料:

1. China se incorpora como observador a la Comunidad Andina para fortalecer lazos comerciales con América Latina
2. Comunidad Andina
3. China se incorpora como País Observador de la Comunidad Andina

 

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