(Photo:EXPRESO)
エクアドルは現在、エクアドル先住民族連盟(Confederación de Nacionalidades Indígenas del Ecuador:CONAIE)によって呼びかけられた全国ストライキの第2週に突入している。この中で、全国各地の道路封鎖と航空輸送需要の急増が重なった結果、「航空券の価格は上昇するのか」という疑問とともに、不安が生じている。
キト市内の複数の旅行代理店は、「現時点で航空券価格は通常の範囲内だが、燃料補助金の廃止が完全に反映される来月以降、価格上昇の可能性が高い」とコメントを出している。ある代理店は、「これまでの補助金削減による価格上昇は10%程度だったが、今回は最大30%に達することも考えられる」と試算を示した。
大統領府報道官、ディーゼル燃料補助金廃止による運賃値上げを否定
2025年9月19日、カロリナ・ハラミージョ(Carolina Jaramillo)大統領府報道官は、ディーゼル燃料補助金の廃止後に運賃が値上がりするとする一部メディアの報道に対し、「運賃値上げはない」と明確に否定した。
ハラミージョは、自身のX(旧Twitter)アカウントで、政府の決定は国の機関に輸送サービスを提供する商業輸送業者との契約更新に関するものであり、一般利用者向けの料金値上げを意味しないと説明した。さらに「今回の措置は公共旅客輸送の運賃の値上げを目的とするものではなく、運輸業界における労働を正当に評価するためのものである」と強調した。この発言は、燃料補助金廃止に伴う運賃上昇の懸念を払拭し、国民の不安を和らげる狙いがある。
🚨 ATENCIÓN 🚨
— Carolina Jaramillo Garcés (@CarolJaramilloG) September 20, 2025
No a la desinformación. Los pasajes NO subirán de precio.
El Gobierno Central actualizará los contratos con todos los proveedores de transporte comercial que prestan servicios al Estado.
👉 Esto NO significa un alza en los pasajes al transporte público de… https://t.co/yU7EOlJzU2
ディーゼル燃料値上げに関する技術的協議会の設置
エクアドル政府は、ディーゼル燃料補助金の廃止に伴い価格が1ガロンあたり1.80ドルから2.80ドルへ引き上げられたことを受け、すべての輸送形態と国家機関を含む技術的協議会の設置を決定した。通信省によると、この協議会の主な目的は「利用者とサービス提供者の間で経済的なバランスを保証すること」にある。
加えて、政府は地域のコミュニティ交通業者や農村部の運輸業者、小規模所有者向けに最大20,000ドルの融資枠を設けることも発表した。この融資は金融協同組合連合(Corporación Nacional de Finanzas Populares y Solidarias:Conafips)を通じて、貯蓄貸付協同組合により仲介され、初期資金として700万ドルが割り当てられるとされている。この機関は、エクアドルの「第二階層銀行(Banca de segundo piso)」として、主に協同組合や信用組合を通じて、貧困層や中小企業への金融サービスを提供するものである。Conafipsを通じて提供される予定の資金は、地域の路線維持、農作物の回収、地域経済を支える物流サービスの継続を目指して活用される予定である。
2022年6月の抗議では、航空券価格が最大250%まで高騰
過去にも同様の事例が確認されている。2022年6月の全国的な抗議運動の際には、一部の路線で航空券の価格が最大250%まで高騰した。これは、需要の急増と航空便の供給逼迫が主な原因であった。
このときには、通常は運航されていない路線に対してチャーター便が導入され、1区間あたり200ドルからの価格でサービスが提供された。主な利用者は、ビジネス関係者、医療目的の移動者、観光客、そして国外移動を予定していた移民であった。
2022年の抗議時には、道路封鎖の影響により、乗客や航空会社のクルーが空港へ到達できず、キト(Quito)およびグアヤキル(Guayaquil)の空港において、旅客便71便が欠航となった。
現在のストライキによる航空券価格や運航状況への具体的な影響については、今後の政府や航空会社からの正式な発表を待つ必要がある。しかし、過去の事例から見ても、価格の上昇や便の混乱が起こる可能性は十分にあると考えられる。
もっとも、今回のストライキは、状況がやや異なる。航空業界の専門家であるニコラス・ラレナス(Nicolás Larenas)によれば、現在の抗議活動と航空運賃の上昇との間に、直接的な因果関係は確認されていないという。すなわち、「即時の値上げ」を保証するような明確な連動性は存在しないとされている。
ただし、特定の路線においては構造的な要因が価格上昇に影響を与えているとの指摘もある。とりわけ、航空燃料補助金の廃止が、価格形成における重要な要因となっている。
どの目的地が影響を受けているのか?
ニコラス・ラレナスによれば、ロハ(Loja)、コカ(Coca)、サンタ・ロサ(Santa Rosa)などの特定路線では、すでに運賃の上昇が確認されている。一方、これまで航空燃料補助金の適用を受けていた他の目的地では、現時点で価格上昇の兆候は見られていない。
この補助金制度は、航空燃料(Jet A1)1ガロンあたりの価格を40%割引する措置であり、エクアドル民間航空総局(Dirección General de Aviación Civil:DGAC)が管轄するすべての空港、およびクエンカ(Cuenca)市が管理する空港で適用されていた。
この制度の廃止による影響を理解するには、航空燃料が航空会社の運航コスト全体の30〜40%を占めているという点を考慮する必要がある。すなわち、航空会社が運航に100ドル支出する場合、そのうち30〜40ドルが燃料費に充てられている計算であり、燃料は航空業界における最大級の支出項目の一つである。したがって、Jet A1の価格が上昇すれば、その影響は直接的に航空券価格へと反映されることになる。ラレナス氏は次のように警告する。
Jet A1燃料に対する補助金の廃止は、当該割引が適用されていた空港において、航空券価格の上昇を招く要因となり得る。
今回の全国ストライキは、ディーゼル燃料補助金の撤廃に対する抗議として、9月22日に始まったものである。これに伴い、エクアドルのシエラ地方に属する複数の県――主にインバブラ県(Imbabura)、コトパクシ県(Cotopaxi)、ボリバル県(Bolívar)、チンボラソ県(Chimborazo)――において道路封鎖が発生している。
一方、キトのマリスカル・スクレ国際空港(Aeropuerto Internacional Mariscal Sucre)へのアクセスについては、現時点で大きな支障は報告されておらず、2022年のストライキ時のような大規模なフライトの欠航も確認されていない。
航空券価格:現在の動向
新聞社「エクスプレソ(EXPRESO)」がキト市内の複数の旅行代理店に航空券価格の動向を取材したところ、現時点では価格は通常の範囲内にとどまっているという。たとえば、以下の路線の航空券価格は次の通りである。
- キト〜グアヤキル(Quito–Guayaquil)路線:120〜150ドル
- クエンカ〜グアヤキル(Cuenca–Guayaquil)路線:平均120ドル
- クエンカ〜キト(Cuenca–Quito)路線:おおよそ150ドル
これらはいずれも現在の通常価格帯であり、異常な値上がりは確認されていない。
航空券価格の構成:税金と市場の特徴
エクアドルの航空券価格のうち、約45%は政府による税金および手数料であり、航空会社が受け取るのは残りの55%に過ぎない。
この税制構造に加え、国内線市場の競争が限られている点も注目される。現在、エクアドル国内線を運航しているのは、ラタム航空(Latam)、アビアンカ航空(Avianca)、アエロレヒオナル航空(Aeroregional)の3社のみである。こうした環境下では、運航コストの増加がそのまま航空券価格に転嫁されやすいという構造的な課題が存在している。
参考資料:
1. ¿Alza de precio en tiquetes aéreos por el paro nacional en Ecuador? Esto se sabe
2. Gobierno aclara que no subirán las tarifas del transporte público
3. Release of fuel imports will affect air tickets
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