「Derechos Digitales」を含む20以上の市民社会団体および学術機関が、包括性、透明性、人権の尊重を基盤としたデジタル変革の実現を求め、共同提案書を提出した。この文書は、2025年12月にドミニカ共和国で開催される第10回米州サミット(X Cumbre de las Américas)に向けたものである。今回のサミットは「安全で持続可能、かつ繁栄を共有する半球の構築」をテーマに、地域の主要課題を議論するために、米州各国の国家元首が一堂に会する予定である。
第10回米州サミットのコンセプトノートでは、新技術に関わる課題が明確に盛り込まれていないものの、この分野は地域の将来にとって極めて重要である。共同提案書では、サミットが掲げる「繁栄」と「安全」は、包摂的かつ公正なデジタル変革なしには実現できないと明言されている。その際の基本原則として「社会正義」が据えられるべきであるとした。この目的を達成するために、提言では各国が優先的に取り組むべき6つの重要分野が特定されている:
- インフラと接続性: 特に農村部や辺鄙な地域を含め、すべての人々がインターネットやデジタルツールにアクセスできるように、技術インフラと接続性を改善すること。
- デジタルリテラシー: 人々が新しい技術を効果的に理解し、活用できるようにデジタル教育を推進し、デジタル技術による社会的排除を防ぐこと。
- 国家の監視: 政府による監視技術の使用に対する規制を強化し、プライバシーや自由の権利を守ること。
- 国家のデジタル化: 公共サービスのデジタル化を推進し、技術へのアクセスがなくてもサービスを受けられるよう、インクルーシブなデジタル化を進めること。
- データ保護: 個人データの保護に関する明確で強固な枠組みを設け、情報の使用が倫理的で透明性を持ち、同意に基づく形で行われることを保証すること。
- 地域協力: 各国が共同で、最良の実践を共有し、共通の課題に取り組み、デジタル政策が人権に一致した形で調整されるような地域協力の仕組みを強化すること。
Este 2025, en coordinación con la OEA, República Dominicana tendrá el honor de ser sede de la X Cumbre de las Américas, bajo el lema: “Construyendo un hemisferio seguro, sostenible y de prosperidad compartida”. pic.twitter.com/cS4xn8n8qH
— Embajada de la República Dominicana en Perú (@RDenPeru) April 30, 2025
デジタル市民空間の強化と監視技術に対する警鐘
提言文書の主要な柱の一つは、デジタル市民空間の強化である。提言に署名した各団体は、安全で、手頃かつ普遍的なインターネット接続の保障が、すべての人々がオンライン上で権利を行使するための不可欠な前提条件であると強調している。
しかしながら、接続環境の整備だけでは不十分である。これに加え、ジェンダーの視点を取り入れたデジタルおよびメディア・リテラシー教育の実施や、市民の参加と意思決定の透明性を促進する政策が求められている。こうした取り組みを通じてのみ、デジタル領域の中で、既存の社会的排除や不平等が再生産される事態を防ぐことができると提言は指摘する。
また、団体は監視技術の乱用のリスクについても警告している。過去10年間、地域のいくつかの国々はますます侵襲的なシステムを導入しており、多くの場合、適切な監視が行われていない。この状況は、プライバシーや表現の自由といった基本的な権利を脅かし、批判的な声に対する虐待を招く恐れがある。このため、違法または不釣り合いな監視活動を禁止し、独立した監視と司法の承認を保証し、技術が重大なリスクを伴い、軽減できない場合にはモラトリアムを設けるよう呼びかけている。また、市民の安全は、アメリカ州人権システムの基準に適合する規制枠組みの中でのみ維持できることを再確認している。
このような現状に対し、文書では以下の措置が必要であると提言している:
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違法または過度な監視行為の禁止
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独立機関による監視と、司法による許可の義務化
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重大かつ回避不能なリスクを伴う技術の導入に対するモラトリアム(導入一時停止)
さらに、市民の安全保障は、人権の国際基準――とりわけ米州人権システムの規範――と整合する法的枠組みの中でのみ成立し得ることを、改めて強調している。
国家のデジタル化とデータ保護に関する提言
提言文書では、国家のデジタル化も重要な論点として取り上げられている。多くの政府が、公共行政の近代化を目的として、AI(人工知能)や自動化システムの導入を推進しているものの、これらの施策が人権に与える影響について、適切な診断や影響評価を行わずに導入された事例が多く見られる。
ブラジル、チリ、コロンビアの近年の事例は、こうした技術の展開が、差別的な結果の発生、行政の不透明化、そして技術的主権の弱体化を引き起こす可能性を示している。
このような背景から、提言では以下の措置が求められている:
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明確な法的枠組みの整備
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公共契約における透明性条項の導入
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オープンかつ監査可能な技術ソリューションの推進
また、個人データの保護とサイバーセキュリティの強化も、喫緊の優先課題として明示されている。現在、公的機関による機微な個人情報の収集が進む一方で、情報漏洩やデータベースの流出が頻発しており、既存システムの脆弱性が浮き彫りとなっている。
これに対し、提言では以下の対策が求められている:
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データ保護法の強化
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監督機関の独立性の確保
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個人情報の目的外利用の禁止、特に同意なしにAIシステムの訓練目的で再利用することの禁止
地域協力と既存の国際的枠組みの実行に向けて
提言文書は最後に、これらの課題に対し、いかなる国も単独で対応することはできないという点を強調している。地域的な協力体制の構築こそが、次のような取り組みを前進させる鍵であるとされている:
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データ・ガバナンスに関する共通基準の策定
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人権を侵害する監視技術に対する、国際協力機関による投資の停止
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地域のデジタル未来に関する、多分野・多主体による対話の推進
Derechos Digitalesも、この取り組みに賛同し、米州各国政府および米州サミット事務局に対し、これまでに採択された各種合意を「単なる意図表明」に終わらせないよう呼びかけている。
具体的には、以下の文書および枠組みが、地域における技術政策の前進において極めて重要な参照基準であるとされている:
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第9回米州サミットにおいて採択された「デジタル変革のための地域プログラム」
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第7回科学技術担当大臣級会合で採択された「AIに関する宣言および行動計画」
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「データおよび人工知能のための米州ガバナンス・ガイドライン」
私たちはこれらのプロセスに貢献してきた組織として、今後も、人権の視点を基軸とした技術開発およびデジタル変革政策の強化に、引き続き積極的に関与していく所存である。
参考資料:
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