全国ストライキの4日目となる9月25日、エクアドル北部地域では一部の道路封鎖が続き、ガソリンの供給にも支障が生じている。この抗議行動は、ピチンチャ(Pichincha)、コトパクシ(Cotopaxi)、サモラ・チンチペ(Zamora Chinchipe)など複数県に拡大した。特に、オタバロ‑コタカチ、タバクンド‑カハス、クスバンバ‑カヤンベといった区間では、道路封鎖が継続されている状況である。
エクアドル内務省(Ministerio del Interior)の発表によれば、同日までに逮捕者数は85人に達し、前日から15人増加した。その中には、犯罪組織との関与が疑われる外国人も含まれているという。
エクアドルの首都キト(Quito)で開催された民族異文化議会(Parlamento Intercultural de los Pueblos)は、エクアドル先住民族連盟(Confederación de Nacionalidades Indígenas del Ecuador:CONAIE)の公式アカウントを通じて声明を発表した。声明では、生活費の高騰に抗して抵抗を続ける姿勢を改めて示すとともに、ダニエル・ノボア(Daniel Noboa)率いる政権を「権威主義的」と位置づけ、これに対する明確な抵抗の立場を表明している。
声明は、先住民族コミュニティおよび庶民層の統一的行動こそが現在の闘争の基盤であることを強調した。また、特に農村部および社会的弱者層において生活条件が急速に悪化していることを指摘し、政府に対して具体的かつ即時的な対策の実施を求めている。さらに、集団的権利の尊重、平和的抗議活動の保障、および当局との透明かつ誠実な対話の確立も強く要請している。
加えて、CONAIEの公式アカウントは、インバブラ県の県都イバラ(Ibarra)にて、キチュアのカランキ(Pueblo Karanki)が他の社会団体と連帯し、ストライキの一環として街頭デモを行っていることを伝えた。本投稿では「この闘いは農村部にとどまらず、都市部にも広がっており、国民的な結束による尊厳と集団的権利の擁護が体現されている」と強調されている。
CONAIEは、軍の装甲車がオタバロのペグチェ(Peguche)村に進入し、空き地にカモフラージュして待機していると報告した。この軍事的行動は地域住民に恐怖と威圧感を与えている。CONAIEはこの措置を「過剰な武力行使」であると断じ、抵抗を続ける先住民族コミュニティの人権に対する深刻な脅威であると厳しく非難した。同連盟は本件に関して、米州人権委員会(Comisión Interamericana de Derechos Humanos:CIDH)および国際連合(United Nations)に対し緊急介入を求めている。この動きは、政府の経済・政治モデルに反対する全国の先住民族による一連の抗議行動の一環である。CONAIEは、政府が集団的権利を侵害し社会危機を深刻化させていると指摘している。
中部トゥングラワ県の先住民族、全国ストライキ参加を表明
エクアドル中部トゥングラワ県(Tungurahua)の先住民族は、政府に対する抗議として全国ストライキへの参加を表明した。この発表は、ノボア大統領が同県の県都アンバト(Ambato)を訪れ、トラクターや補助金の配布、次期憲法制定会議(Asamblea Constituyente)に関する発言を行ったタイミングでなされたものである。
トゥングラウア先住民族・農民運動(Movimiento Indígena y Campesino de Tungurahua:MIT)は、9月25日(木)の朝、「トゥングラワ県には怠け者もおらず、国民を後退させる者も存在しない。我々の県はエクアドル全国生産の60%を担っている」との言葉とともに、同県が「即時的に」CONAIEによる全国ストライキへの参加を決定したことを明らかにした。MITが政府への抗議に加わったのは、上述の通り大統領がアンバトを訪れその場で農業従事者に対し、1,000ドル相当の「ボノ・ライセス(Bonos Raíces)」を11,000件配布し、さらにトラクターの提供も行った日と同日のことである。MITの指導者らは、地域内の各民族リーダーおよび代表者との会合を経て、ダニエル・ノボア政権によるディーゼル補助金撤廃に抗議するため、CONAIEが呼びかけた全国ストライキに合流することを決定したと発表した。なお、MITは前週金曜日にCONAIEが全国ストライキを呼びかけた際には参加を見送っていた。
MIT代表のファウスト・チャンゴ(Fausto Chango)は、「政府に対して選挙中に掲げた公約を48時間以内に履行するよう要求した。約束した以上に待ったが、成果は何もなかった」。そのため「トゥングラウアは抵抗を活性化し、全国ストライキに参加する」と述べた。MITによる全国ストライキ参加の決定は、地域の複数団体との協議を経て行われたものである。参加が決定された主な団体は以下の通りである:
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トゥングラウア福音派先住民族諸団体連盟(Federación de Organizaciones de Pueblos Indígenas Evangélicos de Tungurahua:AIET)
※全国組織「Feine(エバンジェリカル連盟)」に加盟 -
トゥングラウア先住民族運動(Movimiento Indígena de Tungurahua – MITA)
※全国組織「Fenocin(全国先住民族・農民・黒人民族連合)」に加盟
拠点はアトーチャ(Atocha)
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MITAのハイメ・パチャ(Jaime Pacha)も政府に対し、「政治的意思を欠いている」と非難し、危機の深刻化に歯止めをかけるための「包括的かつ異文化間対話」を求めた。さらに政府が導入した「ルーツ給付金(Bono Raíces)」の配分に関しても、「本来届くべき共同体ではなく、一部の特定指導者のみに給付されている。
このやり方は無責任であり、地域社会の分断と社会構造の切り崩しをもたらしている」と指摘した。同じくMITのフランクリン・カシカナ(Franklin Casicana)は、「トゥングラワ県における我々の先住民運動の基盤には分裂は存在しない」と説明した。また、政府の代弁者が1人か2人いるが、「真の指導者による正式な代弁は、5人の先住民知事および先住民運動の各代表に委ねられている」と付け加えた。さらに、基盤となる人々を強制的に動員に参加させることは一切なく、むしろ「義務ではなく尊厳のために」この闘争に参加するよう意識を高めていると強調した。最後に、指導者たちはすでに基盤との協議を通じて今後の行動方針を策定済みであり、今後の情報はすべて公式なチャンネルを通じて発信していくと述べた。
一方国内中部の重要な二つの先住民組織、つまり、トゥングラワ県のエバンゲリカル先住民組織・民族評議会(Consejo de Organizaciones y Pueblos Indígenas Evangélicos Quisapincha:COPIEQ)と、同県ペリエロ(Pelileo)のキチュア族サラサカ(Salasaka)は全国ストライキに参加しないことを表明した。COPIEQは、約24の福音派教会、約5,000人の信者を擁している。同評議会代表のファウスト・プアラシン(Fausto Pualasín)は、今日の先住民族は教育アクセスの向上により、かつてのような脅しや強制による動員参加が困難であると指摘した。これは過去の指導部が行ってきた慣習であり、もはや時代遅れの住民に圧力をかける手法であるとの認識を示している。プアシンは、かつて教会が政治勢力の道具として利用されてきたことを批判し、自身はトゥングラワ・エバンゲリカル先住民組織協会(AIET)および全国先住民エバンゲリカル連盟(FEINE)と意見が対立していると明かした。その理由として、「我々は神の働き人であり、互いの間に争いが起きないように祈るべきである」と強調した。プアラシンは、街頭に出るのではなく、地域社会に利益をもたらす提案やプロジェクトの企画書を作成する方が良いと述べた。彼は、もはや群れのように導かれる時代ではなく、一部の者がこうしたストライキを利用して「取引(negociados)」を行い、集団の福祉を顧みていないことを批判した。最後に、「我々をこれ以上利用されるままにしてはならない。全員がストライキを望んでいるわけではない」と強調した。また彼によるとこの決定は、長年にわたり「先住民が利用されてきたが、教区やコミュニティに実際の支援が届いていない」ことに基づくものである。
9月21日時点で全国ストライキに加わらない姿勢を示していたサラサカ(Pueblo Salasaka)の元先住民知事サントス・モレタ(Santos Moreta)は、9月23日(火)、「我々もMITと同様に政府の対応を見守っている。必要に応じて再度会合を開き、国の現状に応じた決議を下していく」と発言し、今後の動向に含みを持たせている。
先住民団体の分断
政治アナリストのジュゼッペ・カブレラ(Giuseppe Cabrera)は、トゥングラワ県に限らず全国的に見られる先住民運動内部の分裂は、2023年の大統領選挙決選投票(第二回投票)の結果に起因すると指摘している。彼によれば、当時の先住民指導層の一部は中立の立場を取らず、「市民革命(Revolución Ciudadana)」派に同調する動きを見せた。この判断は、ダニエル・ノボア支持のアマゾン先住民連盟(Confederación Amazónica)など複数の組織から疑問視されたという。カブレラは、「現在、ストライキに賛成する立場と反対する立場が共存しているのは、決選投票時に先住民運動が分裂したことの結果であり、その影響は未だに続いている。問題は統一された立場が示されなかったことであり、一部のグループはある候補者を支持し、別のグループは別の候補者を支持した。この分裂状態はいまだに解消されていない」と述べている。
さらにカブレラは、現政権であるダニエル・ノボア政権の「大胆な動き」にも注目している。具体的には、政府本部のラタクンガ市への移転、副大統領府のオタバロ市設置、リオバンバ市でのトラクター配布や各種給付金の発表など、一連の行動が予測不可能であり、今後の展開を左右する重要な要素であると指摘している。
ジュゼッペ・カブレラは、現政権の大胆さ、すなわち「何をするのか分からない」という予測不能性こそが、先住民運動を混乱させている要因だと指摘している。カブレラは「相手の動きが予測できない状況では、自らの戦略を組み立てられず、連携も難しくなる」と述べている。また、アンバト市やトゥングラワ県はキト市やクエンカ市のような抗議活動の盛んな地域ではなく、動員に対しては消極的な傾向が強いと強調し、「政府本部をこの地域に移したのは戦略的に優れた判断だ」と評価した。さらに、トゥングラワ県の先住民指導者および地域代表者は社会主義的思想を持っておらず、むしろ自由主義や資本蓄積に近い立場にあると分析される。この点は、同県の先住民の生活状況にも反映されており、チンボラソ(Chimborazo)やカニャル(Cañar)県のような極端な不平等に直面している地域とは異なる現実を抱えている。
一部の先住民組織や運動体が構成員に対して動員への参加を強制しているとの指摘がある中、弁護士のクリスティアン・ペレス(Christian Pérez)は、抵抗権についても述べている。エクアドル憲法第98条には、「抵抗権(derecho de resistencia)」が明記されている。この条文は、憲法上の権利を侵害、またはその侵害のおそれがある公的権力や非国家主体による行為・不作為に対し、個人および集団が抵抗することを認めるものである。さらに、抵抗する権利に加えて、新たな権利の承認を求める権利も含まれている。しかし抵抗権の行使はあくまで自発的であるべきだと強調した。ペレスによれば、公共権力の行為や不作為が憲法上の権利や人権を侵害する場合に認められる「抵抗権」は、共同体が持つ「自由な選択の権利」を尊重しながら行使される必要があるという。したがって、強制や条件付け、脅迫などによって動員への参加を促す行為は、抵抗権の正当性を失わせるだけでなく、場合によっては「恐喝」として犯罪に該当する可能性があると指摘する。さらに、先住民コミュニティの構成員であっても、あるいは国家機関の一部であったとしても、動員への参加を強制される状況にある場合は、憲法で保障された「良心的拒否権(objeción de conciencia)」を行使できると述べた。良心的拒否権とは、自らの良心に反する行動を拒否する権利のことを指す。
トゥングラワ県の県知事マヌエル・カイサバンダ(Manuel Caizabanda)は、「人々はすでにストライキに疲れており、望んでいるのは仕事である」と述べた。過去のストライキについては「たった10セントのために18日以上も動員が続いた」と振り返り、現在では多くの市民がこうした状況に不満を抱いていると指摘した。また、「もっとも重要なのは、運賃が上がることはないという点である」と強調した。
一方、アンバト市長のディアナ・カイサ(Diana Caiza)は、「我々の行政の最優先事項は、社会組織と国家政府との対話の架け橋となることである。責務は橋を架け、耳を傾け、市民全体に利益をもたらす合意を築くことだ」と述べている。
サンタ・ロサ教区の教区委員会法務担当フェルナンド・ティサレマ(Fernando Tisalema)は、指導部において革新的なアイデアを分析すべきだとし、教育へのアクセス向上により若者たちが異なる視野を持つようになり、明確かつ堅実な提案がない限り動員に参加しにくい傾向が強まっていると指摘した。しかし、「抵抗の呼びかけは依然として有効であり、国内情勢の進展に応じて参加は段階的に拡大していく」とも述べている。また、「組織が参加しないと決めたわけではなく、明確な提案をもって行動するため最良の判断を下そうとしている段階だ。単にディーゼル補助金撤廃の撤回を求めるだけではなく、より本質的な提案を模索している」という声もある。
CONAIEは、過去にも2019年および2022年に大規模な抗議行動を主導し、当時の大統領であったレニン・モレノ(Lenín Moreno、在任:2017–2021)およびギジェルモ・ラッソ(Guillermo Lasso、在任:2021–2023)に、燃料補助金の撤廃方針を撤回させた実績を持つ。これらの政策は、国際通貨基金(Fondo Monetario Internacional、略称:FMI)との融資契約における財政調整目標を達成するために推進されたものであった。
しかしながら、現職のダニエル・ノボア大統領(Daniel Noboa)は、今回の補助金撤廃について「決して譲歩しない」と明言している。彼によれば、この措置は、最も脆弱な層に対する補償金や社会支援策の財源を確保するために不可欠であり、政府の試算では、ディーゼル補助金は国に年間11億ドル(約1,100 million USD)の支出を強いているという。
#DanielNoboa #CONAIE #エクアドル全国ストライキ2025
参考資料:
1. Ecuador: la Conaie insiste en el paro nacional, mientras las protestas siguen focalizadas
2. Indígenas de otra provincia de Ecuador se suman al paro nacional durante visita de Noboa
3. Movimientos Indígenas de Tungurahua se unen al paro nacional
4. Tungurahua: división en organizaciones indígenas por respaldo al paro nacional
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