エクアドル全国ストライキ2025:9月22日の初日に起きたこと

エクアドルにおける2025年全国ストライキは、9月18日にエクアドル先住民族連盟(Confederación de Nacionalidades Indígenas del Ecuador:CONAIE)が呼びかけたものである。しかし、ここ数日で、統一労働戦線(Frente Unitario de Trabajadores:FUT)、全国農民・先住民・アフロ系・モントゥビオ組織連合(Confederación Nacional de Organizaciones Campesinas, Indígenas, Negras y Montubias:FENOCIN)をはじめとするさまざまな社会団体および先住民組織がストライキに加わり、その規模と可視性は全国に広がっている。

全国ストライキ初日である9月22日正午、CONAIE会長マルロン・バルガス(Marlon Vargas)はビデオ声明にて「本日、我々は憲法によって認められた『抵抗の権利(derecho a la resistencia)』に基づき、全国ストライキを開始した」と述べた。バルガスは今回の決断が容易なものではなかったとしつつ、ノボア政権の政策が人々をストライキへと追い込んだと語った。ディーゼル燃料の値上げだけでなく、保健・教育分野の危機や自らの領土に対する尊重の欠如も抗議の理由であるという。さらに同氏は、デモ参加者は「犯罪者でもテロリストでもない」と強調し、ノボア大統領に対して国民の声に耳を傾け、誠実な対応を取るよう求めた。「我々は、すべての社会運動に団結を呼びかける。祖国の未来のために、集団として声を上げるべきである」とバルガスは訴えた。

 

全国ストライキ初日の様子

9月22日午前0時より、ピチンチャ(Pichincha)県とインバブラ(Imbabura)県の県境に位置するカハス(Cajas)、カヤンベ(Cayambe)郡において、市民が主要道路に集結し抗議を開始した。しかし、間もなく警察部隊により排除された。

これに対し、CONAIEは「カハスにおけるコミュニティへの残虐な弾圧」を非難し、「正当な権利としての移動および抗議を行う人々への攻撃を直ちに停止せよ」と強く要求した。国家緊急対応機関ECU 911の報告によると、同日午前9時時点で、インバブラ県内のオタバロ(Otavalo)およびサン・ラファエル(San Rafael)において道路封鎖が確認されている。また、キト(Quito)北部郊外のサン・ミゲル・デ・エル・コムン(San Miguel de El Común)でも抗議活動に伴う封鎖が発生した。キト地域調整局(Coordinación Zonal de Quito)が共有した写真には、警察官が燃えた枝を道路から撤去する様子が写っている。

この抗議現場であるパナメリカン・ノルテ高速道路(Autopista Panamericana Norte)では、報道機関テレアマソナス(Teleamazonas)の取材班が生中継中に暴行を受けた。これは2025年全国ストライキにおける報道関係者への初の攻撃であるとされている。同局によれば、現場の記者は放送中に「抗議者らが石を投げ、棒を振りかざし、発煙筒(bengala)を点火して威嚇してきた」と報告している。

 

ダニエル・ノボア(Daniel Noboa)大統領の支持者たちは、「逆行進(コントラマルチャ)」という名の集会を行った。その同じ朝、エクアドル2025年全国ストライキに加わったコトパクシ先住民・農民運動(Movimiento Indígena y Campesino de Cotopaxi:MICC)は、ラタクンガ(Latacunga)市への平和的行進を実施すると発表し、これを「ラタクンガの占拠(toma de Latacunga)」と名付けた。MICCもまた、ディーゼル補助金の撤廃に強く反対している。「補助金撤廃を定める政令126号(Decreto 126)は、エクアドル国民の家計に対する攻撃である」と、同団体は公式SNSで発表した声明に記している。さらに、同組織は抗議者に対する「弾圧(represión)」をも非難している。

 

全国ストライキを口実としたワオラニ領土への治安部隊の侵入

ECU 911は、同日午前10時時点で、アマゾン地域のオレジャナ(Orellana)県にある国営石油会社ペトロエクアドル(Petroecuador)の第31ブロック周辺でも道路封鎖が発生していると報告した。

その前日、9月21日、エクアドルのワオラニ・ネーション(Nacionalidad Waorani del Ecuador:NAWE)は声明を発表し、ヤスニ国立公園(Parque Nacional Yasuní)内の第31および第43ブロックにおける「社会的および環境的補償義務の不履行」に抗議するデモが複数のコミュニティで行われたことを明らかにした。その抗議活動の中で「公的治安部隊による弾圧」があったと彼らは報告しており、また、ワオラニの住民2名が不当逮捕されたとNAWEは訴えている。さらに、NAWEの指導評議会(Consejo de Gobierno)は「現在に至るまで、当局から我々の仲間の健康状態についての説明は一切ない」と懸念を表明している。

CONAIEによると、治安部隊はオレジャナ県のアマゾン地域に位置するワオラニ・コミュニティに暴力的に侵入し、軍人たちはコミュニティ内で発砲、上述の通り2人を逮捕したという。SNSに投稿された映像には、2発の銃声が聞こえ、人々が走り回り叫び声を上げている様子が映っている。その遠くには、10人以上の警察官と軍隊のメンバーが乗る4台のピックアップトラックが近づいているのが確認できる。

 

先住民団体、ノボア政権による弾圧を非難

9月22日正午、エクアドルのキチュア・プエブロによる連盟(Confederación de Pueblos de la Nacionalidad Kichwa del Ecuador:ECUARUNARI)は、インバブラ県オタバロ(Otavalo)において、ノボア政権による自らのコミュニティへの「深刻な弾圧」が行われたと非難した。この声明には、負傷した2名の写真が添付されていた。

 

その約1時間後、CONAIEもまた、インバブラ県ゴンサレス・スアレス(González Suárez)郡のピハル(Pijal)にて、警察が民家に侵入し発砲したと告発した。「突撃銃のような軍用火器が使用され、子ども、女性、高齢者の命を著しく危険にさらしている」と述べている。CONAIEはこの発表に際し、国家および国際的な人権機関に対し、こうした攻撃の監視を要請した。声明には、弾丸の薬莢を映した映像や、警察官が民家に向かって発砲する様子が収められた動画も添えられていた。

同日午後、テレビ局エクアビサ(Ecuavisa)の報道によれば、警察はカハス地区で3名を逮捕したという。さらに、カヤンベ・プエブロ連盟(Confederación del Pueblo Cayambi)の代表デニス・デ・ラ・クルス(Denise de la Cruz)は、カヤンベでの抗議行動において少なくとも6名が拘束されたと明らかにした。

また、CONAIEの政治部門であるパチャクティク運動(Pachakutik)のコトパクシ県コーディネーター、アパウキ・カストロ(Apawki Castro)は、自身がラタクンガ(Latacunga)への先住民行進を主導したと発表した。目的は市中心部への到達であったが、県知事府(Gobernación)は軍および警察によって封鎖されていたという。カストロは「我々はこれから、今後の行動を決定するための議会を開く」と述べ、さらに「ノボアの行為は、国民同士を争わせようとする卑劣な策である」と非難した。これは、ノボア大統領が大統領府を、先住民の拠点とも言えるコトパクシ県に移転したことを指している。

 

内務省が初日の状況を報告

2025年9月22日、全国ストライキ初日の状況について内務大臣ジョン・ラインベルグ(John Reimberg)が報告を行った。彼によれば、抗議は全国の複数地域で実施されたが、規模は大規模とは言えず、参加者数は20名から多くて100名程度であった。道路封鎖は局所的なものであり、例外的にオタバロではより大きな集会があったという。

ラインベルグ大臣は、警察は弾圧を目的としておらず、各地で警察が抗議者に対して法に反する行為であることを説明し、話し合いの上で道路を開放するよう促したと述べている。さらに、インバブラ県には警察の増強部隊を派遣し、主要道路の開通に向けて機械作業も進められているという。

また、抗議参加を強要する脅迫が存在するとの情報についても調査中であるとし、一部の「偽指導者」が住民を操作し、水の供給停止や80ドルの罰金、先住民法による処罰をちらつかせて道路封鎖を強要している可能性があると指摘した。政府としては国民を守る立場にあると強調した。

また、内務大臣ジョン・ラインベルグは、CONAIEの会長マルロス・バルガス(Marlos Vargas)が抗議を扇動する発言をしているとされる件について言及した。ラインベルグは「バルガスという指導者がエクアドル国民を『愚か者』と呼んだことに驚かされた。これが彼らの本質を示す明確な証拠である」と述べている。さらに、「大統領のメッセージは極めて明確であり、我々はあらゆる分野と対話を続けている。エクアドルは働く必要があり、我々はそのために動いている。道路封鎖を許すつもりはない」と強調した。

抗議活動によって50名以上が逮捕されたことについても報告があった。ラインベルグは、全国で少なくとも24名が警察および軍により拘束され、夜までにその数は50名以上に達したと確認した。「逮捕者の多くは警察官に対して攻撃を加えた者たちである」とラインベルグは述べた。また、オタバロでは20名の逮捕者が出ているという。

なお、13時15分に記者会見でラインベルグは、抗議の現場において「道路封鎖に参加しなければ基本的な公共サービスが停止される、または先住民法で処罰される」といった虚偽の情報が流布されていると指摘し、「国家の介入は弾圧を目的とするものではなく、コトパクシ、インバブラ、チンボラソ、オレジャナ、ピチンチャといった影響の大きい県において、市民の移動の自由を確保するためのものである」と述べた。なお、「オタバロの警察署襲撃事件後に行った作戦で、20名を逮捕した。そのうち2名はベネズエラ国籍であり、『トレン・デ・アラグア(Tren de Aragua)』に所属していると見られている」とラインベルグは述べた。9月22日月曜日23時時点で、全国ストライキに伴う道路封鎖は以下の5県で継続されている:

アスアイ県
・クエンカ:シモン・ボリバル通りおよびルイス・コルデロ通り

コトパクシ県
・ラタクンガ:グアイタカマ地区

チンボラソ県
・グアモテ:イエルバ・ブエナ集落

インバブラ県
・オタバロ:サン・ラファエル入口、ピジャル、サン・エロイ、コタカチ集会所、ゴンサレス・スアレス–カルキ、ペグチェ信号、エウヘニオ・エスペホ、パナメリカーナ通りおよびセリアーノ・アギナガ通り、スクレ通りとEE.UU通り、バジェ・デル・アマネセール司令部、リオ・ブランコ橋(キロガへの農村道)
・アントニオ・アンテ:サン・ロケ、ナタブエラ信号、サン・ルイス・デ・アグアロンゴ

ピチンチャ県
・カヤンベ:パナメリカーナ北部、サンタ・マリア・デル・ミラン(オヤコト料金所)、クスバンバ、オトン、ラ・ボラ・デ・グアチャラ

 

全国ストライキの背景

2025年9月12日、ノボア大統領は、ディーゼル燃料に対する補助金を廃止する方針を発表した。この措置により、燃料価格は1ガロンあたり1.79ドルから2.80ドルへと急騰した。この決定は即座に、シエラ中央部で最も影響を受ける輸送業者や農民からの反発を招き、公共輸送サービスの停止が宣言された。その後、これらの団体は政府との「対話の場(mesas de trabajo)」に参加することに同意し、一時的にストライキを停止したものの、9月15日にはすでに各地で道路封鎖が再発していた。

9月18日、CONAIEはチンボラソ県のリオバンバ市にて臨時総会を開催し、「即時かつ無期限のストライキ」の開始を宣言した。同時に、政府に対して10項目の要求を発表した。この中でも特に重要な要求は、以下の2点である:

  • 政令126号の撤回、すなわちディーゼル補助金の復活

  • 付加価値税(IVA)の税率を、現行の15%から12%へと引き下げること

 

政府側の対応と憲法的緊張

ノボア大統領は新たな非常事態令を発令し、「公共サービスの停止を目的とする集会・デモの禁止」を命じた。加えて、ノボア政権は国民投票を経ずに憲法改正を目指す「制憲議会(Asamblea Constituyente)」の設置を推進している。これに対して憲法裁判所(Corte Constitucional)も「正当な憲法手続の尊重が不可欠である」と再三にわたって警告を発している。

大統領府の本部は、9月13日よりコトパクシ県のラタクンガへと移された。一方、副大統領府はインバブラ県のオタバロに設置されている。

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参考資料:

1. ¿Qué se espera en el segundo día del paro nacional indígena en contra del Gobierno?
2. Paro nacional iniciaría con el Killa Raymi
3. Así avanza el paro en Ecuador: protestas, vías cerradas y detenidos
4. Paro nacional deja más de 50 detenidos en su primer día, confirmó Ministro del Interior

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