[ホルヘ・エルバウムへのインタビュー] 米国によるカリブ海での軍事展開はラ米全体に対する侵略

社会学者・ジャーナリスト・作家で経済学博士のホルヘ・エルバウム(Jorge Elbaum)は、アメリカ合衆国によるベネズエラへの攻勢と、それが地域にもたらす影響について語った。また、ベネズエラ沖への駆逐艦と海兵隊の展開、「偽旗」としての麻薬取引の利用、南米における軍事的干渉の常態化、さらにこの支配戦略に対するアルゼンチン政府の立場についても分析している。以下は、ホルヘ・エルバウムとメディア「NODAL」との対談の翻訳である。


アメリカ合衆国がベネズエラの沿岸に駆逐艦と海兵隊を展開することは、ラテンアメリカにとって何を意味するのか? ベネズエラの事例を超えて、地域全体への脅威として捉えるべきか?

アメリカ合衆国によるカリブ海での軍艦展開は、ボリバル共和国ベネズエラへの攻撃であるだけでなく、ラテンアメリカ全体に対する侵略である。ワシントン特有の干渉主義的で暴力的かつ好戦的な論理は、現在ドナルド・トランプ(Donald Trump)第2次政権のもとで再現・拡大されている。これは彼らが軽蔑的に「裏庭」や「西半球」と呼ぶ地域を支配しようとする同政権の焦りを反映している。

この動きは間違いなくラテンアメリカ全体への侵略として理解されなければならない。最近の変化を示しており、BRICSに対するアメリカ合衆国の相対的弱体化のなかでの軍事志向の表れである。米国はブラジルに対して関税を課し、かつてコロンビアを脅迫し、現在はラテンアメリカ大陸全体にその姿勢を示している。さらにメキシコ人を蔑視し、自国領内で移民や労働者を追い回し、メキシコに対しては何度も武力の威嚇を用いているのである。

これはラテンアメリカのすべての民衆に対する明白な侵略以外の何ものでもないと解釈されなければならない。

アメリカ合衆国は、ラテンアメリカのみならず他の地域においても、天然資源や戦略的資源に対し常に功利的かつ暴力的な視点を持ち続けてきた。ヨーロッパがアフリカを略奪してきたように、アメリカ合衆国の覇権主義的視野において、ラテンアメリカは利用され搾取される対象である。

ローラ・リチャーズ(Laura Richards)は1年半前にこう明言した。「私たちは大量のリチウムを持っている、大量の天然資源を持っている」と。まるでそれらが自国の資源であるかのような言い方であった。

アルゼンチン、ラテンアメリカ、あるいはベネズエラがロシアや中国と協力し関係を築く可能性は、アメリカ合衆国にとって戦略的な弱点となる。だからこそ、それを阻止しようとしているのである。

地政学的モデルにおけるこうした矛盾の中で――すなわち、今日ではBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの新興経済国グループ)が大西洋主義ブロックに対してより大きな影響力を示している状況において――帝国に典型的な残虐性、怒り、軍国主義、好戦主義が噴出している。

この意味において、脅威はボリバル共和国ベネズエラの石油や金、莫大な資源に対するものだけではなく、われわれの大陸全体に向けられたものである。そして、ベネズエラが自らを守るかぎりにおいて、それはわれわれ全員をも守っていることになる。

ゆえに、私は民兵(milicias)の動員を歓迎し、それを非常に重要であると考える。それは帝国に対してチャベス主義(tradición chavista)の伝統が恐れを知らず、最も厳しい試練にも立ち向かう力を備えていることを示しているからである。

アルゼンチンから見て、ワシントンが麻薬取引を口実として用いる一方で、実際には石油や重要鉱物といった戦略的資源の支配を狙っているように見えることについて、どのように解釈されているのか?

ワシントンが麻薬取引の主張をどう利用しているかについては、分析者たちの間で共通の見解がある。すなわち、アメリカ合衆国は常に「偽旗(false flag)」の口実を持ち出すということだ。イラクでも、ベトナムでも、中米でも、ニカラグアでもそうだった。

常に何らかの口実が存在し、常に「敵」が作り出される。なぜなら、アメリカ合衆国は戦争なしには存在し得ないからである。アメリカの制度的DNAには支配を維持するための「対立の仮説」が必要であり、それはかつてより露骨で現実的であったが、現在では弱体化しているとはいえ依然として存在しているのである。

そのような状況の中で、「マラス(maras)」や麻薬取引といった口実が持ち出されるが、実際の根本的な問題は、中毒に関連する公衆衛生の危機である。この問題は、孤独や不安、そして個人主義や社会的断絶の結果として自己破壊に陥っているアメリカ合衆国のような社会において、極めて顕著である。

これは明白な偽旗であると、私は改めて強調する。それは恐怖を喚起し、国内では移民、特にラテンアメリカ出身者に対する迫害や民族的浄化を正当化するために仕組まれた、大きな虚偽であり、大きな茶番である。

さらに国外においては、この口実はベネズエラとBRICSとの関係深化を抑制し、統制し、何よりもそれを阻止するために利用されているのである。

 

アメリカ合衆国による軍事的干渉が南米大陸で常態化することは各国にどのようなリスクをもたらすのか?また、地域の民主的かつ主権的なプロセスにどのような影響を及ぼしうるのか?

軍事的干渉の常態化は、すでに我々が経験してきたことである。プラン・コンドル(Plan Cóndor)や、アメリカ合衆国が地元の寡頭政治(oligarquías locales)を通じて民衆支持の政府を転覆させたり、ミラグロ・サラ(Milagro Sala)、クリスティナ・フェルナンデス・デ・キルチネル(Cristina Fernández de Kirchner)、そしてかつてはルーラ(Lula)といった政治指導者を追及したりする行為は、我々の大陸における恒常的な慣行である。

このような干渉は、必ず各国に内部の協力者を見出す。それは支配的なメディア、司法部門、そして巨大な企業群であり、特にアルゼンチン・アメリカ商工会議所(AMCHAM、Cámara de Comercio Argentino-Estadounidense)は他の企業団体と連携して、民衆が彼らに対抗し、多数派の利益に沿った政策を推進する指導者や代表者を持つ能力を制限しようとしている。

この意味において、我々の社会、特にこのアメリカ大陸に暮らす労働者たちに対し、アメリカ合衆国が地域にもたらす絶え間ない「ダモクレスの剣(espada de Damocles)」を受け入れることがいかに有害であるかを教育する必要があると私は考えている。

もしもスペイン帝国、イギリス帝国、そして今日のアメリカ帝国の覇権的論理が存在しなかったならば、この大陸はより幸福で、より統合され、より平等なものとなっていただろう。

ワシントンが地元のファシスト寡頭勢力を保護しているおかげで、我々は今なおマクリ(Macri)やミレイ(Milei)のような人物に苦しめられている。彼らは社会のあらゆる側面から無差別に人々を罰し、搾取しているのである。

 

このような状況下で、アメリカ合衆国によるベネズエラへの攻勢に対するアルゼンチン政府の立場をどのように評価するか?

私のアルゼンチン外務省の役割に対する評価は、まったく批判的である。現在のアルゼンチンの外交政策は国内で決定されているのではなく、アメリカ合衆国で決定されていると言わざるを得ない。外務大臣ヴェルトハイン(Werthein)は、国務省の利益に忠実な操り人形のように、指示に従っている。

ワシントンから発せられるすべての発言は、卑劣なシパヤ(cipayo、属国的追従者)としての論理に基づいて従われている。これは厳しく告発されるべきであると私は考えている。

アルゼンチンは現在、特に中間選挙を控え、常に必死に略奪を繰り返し、他者を腐敗の罪に陥れるファシスト右翼の堕落が明らかになるという重要な局面にある。

この犯罪者たちの政府、すなわち犯罪の共謀者集団の真の姿が暴かれる情報公開の過程を経て、右翼に対抗し、ついに第二の、そして決定的な独立を勝ち取るための国家的・大衆的・進歩的かつ左派的なプロジェクトへの希望が回復されることを私は期待している。

 

「ダモクレスの剣」とは、古代ギリシャ時代の有名な故事に由来する言葉である。

紀元前4世紀初頭、シケリア島を支配していた王ディオニュシオス2世は、権力を羨む若き臣下ダモクレスを自らの玉座に座らせてみせた。しかし、その玉座の真上には、髪の毛一本で吊るされた鋭い剣がぶら下がっていた。この危うい状況を通じて、ディオニュシオスはダモクレスに、権力は一見すると魅力的で華やかに見えるが、常に危険や不安と隣り合わせであることを悟らせたのである。

この故事は、支配者や権力者の幸福が表面的には栄華に包まれて煌びやかに映っても、実際には常に命の危険にさらされ、ひと時の安らぎすら得られないことを象徴している。

この故事は後に、1961年に当時のアメリカ大統領ジョン・F・ケネディが国連での演説において、核兵器の脅威を「頭上に吊るされたダモクレスの剣」に例えて用いたことで、現代においても広く知られるようになった。

※米国によるカリブ海での軍事展開に関する記事はこちらから。

 

参考資料:

1. Jorge Elbaum, sociólogo, periodista y escritor: “El despliegue militar de Estados Unidos en el Caribe es una agresión a toda América Latina”

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