(Photo:CONAIE)
エクアドル共和国のダニエル・ノボア(Daniel Noboa)大統領は、2025年9月17日(水)、ディーゼル燃料に対する補助金の廃止を擁護した。この措置は、政府が「犯罪経済」を根絶することを目的とし、ペルー共和国およびコロンビア共和国への燃料の密輸や違法採掘の防止を狙ったものであると説明している。ノボア大統領は、同月、エル・オロ(El Oro)県においてラジオ・ガビオタ(Radio Gaviota)のインタビューに応じた際、「仮にペルー国内でディーゼル1ガロン(約3.78リットル)の価格が4.24ドルであり、エクアドル国内では1.85ドルであれば、国境沿いの多くのガソリンスタンドが大量の燃料を補給し、それをペルーやコロンビアに密輸していた」と語った。
さらに彼は、補助金の恩恵が本来支援すべき国内の農民や貧困層には届いていなかったと指摘し、「その資金はすべて国外に流出していた。我々はそれを止めた」と強調した。ノボア大統領によれば、燃料の密輸によって国民経済は年間で数億ドル規模の損失を被っていた。これに対し、「密輸業者や違法採掘者が得ていた利益を断つことで、政府はその分の資金を公共事業や医療、教育などの分野に再分配することができる」と述べた。
ディーゼル補助金の廃止をめぐって、エクアドル国内では社会的緊張が高まっている。週の初めには、カルチ(Carchi)県や首都キト市(Quito)などで道路封鎖や抗議行動が発生した。ダニエル・ノボアはこれらの動きを一蹴し、「燃料密輸業者や違法採掘者が政治的な扇動者を利用し、混乱を引き起こしている」と非難した。また、かつて大統領を務めたラファエル・コレア(Rafael Correa/在任期間:2007年〜2017年)が、補助金廃止を「悪質な措置」と批判している現状に対し、ノボア大統領は疑問を呈した。「コレア元大統領はかつて補助金の廃止を一貫して主張していた。それにもかかわらず、現在その支持者が反対しているのは理解できない」と語った。ノボア大統領は、今回の措置が「厳しいものであることは承知している」としながらも、節約された財源は国民に還元されると主張している。たとえば、小規模農家10万人に対して1,000ドルの給付金を支給しているほか、運送業者に対する補助も実施している。
今回の補助金廃止は、ノボア政権が進める財政赤字削減のための緊縮策の一環である。政権発足時、エクアドルの財政赤字は約50億ドルであり、これは国内総生産(GDP)の約5%に相当していた。また、政府は国際通貨基金(International Monetary Fund:IMF)と、2024年から2028年にかけて50億ドル規模の融資協定を締結しており、この協定の目標を達成するために緊縮政策の実施が求められている。
なお、ディーゼル補助金の廃止に先立ち、ノボア大統領は、国内で最も消費されていたガソリンであるオクタン価(ガソリンがエンジン内で異常に早く(自己)着火する「ノッキング」を起こしにくい性質(アンチノック性)を数値で表した指標)85の「エクストラ(Extra)」および「エコ・パイス(Eco País)」に対する補助金も撤廃している。これにより、政府はガソリン価格の半自由化を進め、価格帯システムを導入し、国際市場価格に段階的に連動させる体制を整えている。さらに、ノボア政権は政府の省庁数を19から14へと削減し、約5,000人の公務員の解雇を発表するなど、大規模な行政改革にも着手している。
エクアドル先住民族連盟の反応
このような政府の決定を受け、エクアドルにおける重要な社会集団であるエクアドル先住民族連盟(Confederación de Nacionalidades Indígenas del Ecuador:CONAIE)は、リオバンバ(Riobamba)にて開催された臨時総会において、政府の最近の政策、特にディーゼル燃料補助金廃止に対する明確な立場を示した。同日、共和国大統領ダニエル・ノボア(Daniel Noboa)も同市で公務を遂行していた。
2025年9月18日(木)、CONAIEの指導者たちは、会長マルロン・バルガス(Marlon Vargas)を中心に、政府によるディーゼル補助金撤廃措置について議論するためリオバンバに集まった。この措置は2025年9月13日(土)より施行されている。協議の結果、CONAIEは即時かつ無期限の全国ストライキを決議した。マルロン・バルガスは、組織として全国的なストライキを宣言したものの、具体的な動員開始時期については明言しなかった。彼は、ディーゼル価格の上昇に反対するだけでなく、国民投票や憲法制定議会(Asamblea Constituyente)の招集を目指す政府の意図にも抗議していると述べた。
臨時総会招集通知内容:
我々の組織構造、社会組織、そして市民の皆様へ
我々先住民族及び諸ネーションは、幾世紀にもわたり不正義に抗い続けてきた。闘いの力は団結と集団的組織にこそあると確信している。
ダニエル・ノボア政府は、国際通貨基金の指導のもと、新たな新自由主義政策を強制し、ディーゼル補助金を撤廃した。この措置は生活費を押し上げ、運輸業、農業、そして働く家族に深刻な打撃を与え、貧困と社会危機を一層悪化させている。
この攻撃に対し、我々は次のことを断固として要求する。
・大統領令第126号の即時廃止。
・全国の諸プエブロ、コミュニティ、各セクターによる動員の支持。
・2025年9月18日、リオバンバ市にて我々の組織構造による臨時総会を開催し、この危機に対する具体的な行動を集団で決定すること。
我々は組織の団結を強化し、総会を組織し、闘争の精神を準備するよう強く呼びかける。権利の防衛には政治的明確さと集団的戦略が不可欠である。
歴史が示す通り、諸プエブロとネーションが立ち上がるとき、それは明確で力強く、確かな成果をもたらす。今日、我々は組織、団結、そして戦略をもって闘いを築くことを再確認する。
⭕[COMUNICADO] La #CONAIE exige la derogatoria del Decreto 126. Convoca a una Asamblea Extraordinaria este jueves, 18 de septiembre, en Riobamba para definir accione, llama a la unidad nacional y respalda a los pueblos y sectores movilizados#EnUnidad #Diésel #Subsidios pic.twitter.com/wBS8c2GiQJ
— CONAIE (@CONAIE_Ecuador) September 16, 2025
10:00 臨時総会への参加者の到着
参加者たちは次々に会場へ到着し、受付を済ませてから講堂の座席に着いた。およそ150名の指導者が出席しており、その中には以下の人物が含まれる:
- マルロン・バルガス(Marlon Vargas)――エクアドル先住民族連合(Confederación de Nacionalidades Indígenas del Ecuador:CONAIE)会長
- ギジェルモ・チュルチュンビ(Guillermo Churuchumbi)――パチャクティック運動(Movimiento Pachakutik)調整役
- ホセ・エサチ(José Esach)――アマゾン先住民族連合(Confederación de Nacionalidades Indígenas de la Amazonía Ecuatoriana:CONFENIAE)会長
また、サルバドール・キシュペ(Salvador Quishpe)やウンベルト・チョランゴ(Humberto Cholango)などの元政府関係者の姿もあった。
11:00 臨時総会の開始
臨時総会は、大統領ダニエル・ノボアによるディーゼル補助金撤廃の決定に対する批判から始まった。この決定が経済危機を招くとの声が多く上がった。カヤンベ(Cayambe)の代表者らは、リオバンバでの開催が動員を困難にしたとして会議地の選定に疑問を呈した。また、一部の参加者は、政府がCONAIEを分断しようとしていると懸念を示した。CONAIE会長マルロン・バルガスは、「議題はただ一つだ。我々は動員するのか、それとも動員しないのか」と明言した。この臨時総会において、ディーゼル補助金撤廃に抗議する即時かつ無期限の全国ストライキが正式に決議された。
アマゾン地域先住民族連盟の反応
アマゾン地域においても、先住民族連盟(Confederación de Nacionalidades Indígenas de la Amazonía Ecuatoriana:CONFENIAE)は、2025年9月17日に拡大会議を開催した。この会議には、以下の傘下組織の会長らが参加した:
PAKKIRU、NAE、NASHIE、NAPE、NASE、OWAP、FENASH-P、FOIN、NAOQUI、FICSH、NASHE、FEPNASH-ZCH、FEPNASH-O、FEPCESH-S、ONWAN、ONWO、NAWE、FONAKISE、FCUNAE、OCKIL、ONISE、NO’AIKE、NASIEPAI
会議の結果、ディーゼル補助金の撤廃およびその他の経済政策に反対し、無期限の抗議行動を実施することが決議された。会議後に発表された声明において、CONFENIAEは燃料価格の引き上げに強く反対し、これは「諸プエブロ(pueblos)および先住民ネーション(nacionalidades)に直接的な影響を及ぼすものである」と断じた。
本評議会は、エクアドル共和国憲法第57条第9号および第10号、ならびにCONFENIAE規約第35条および第38条に基づく管轄権の行使として、また独自の慣習法と固有法の枠組みに則り、満場一致で以下の決議を採択する。
決議事項:
- エクアドル共和国憲法およびCONFENIAEの規約に定められた自律性と独立性の原則に基づき、傘下組織の組織的構造の団結と強化を再確認する。また、これをCONFENIAEの政治的・理念的プロジェクトと整合するものとして位置付ける。
- 政府が発令した大統領令第126号(Decreto Ejecutivo 126)および国民に深刻な影響を及ぼすすべての経済政策を強く拒否する。
- 先住民ネーションおよび諸プエブロの各領域から、恒常的かつ段階的な抗議行動(動員)を実施することを決定する。また、アマゾン地域全体において非常事態を宣言し、国家治安部隊(Fuerza Pública)の当該地域への立ち入りを厳格に禁止する。
- CONFENIAEに所属する23の傘下組織が、2025年9月18日にリオバンバ市のカサ・インディヘナ(Casa Indígena)にて開催される、エクアドル先住民族連盟による臨時総会に参加することを正式に決定する。
CONAIEの臨時総会では、「ディーゼル補助金の撤廃および国全体における危機に対し、実際的な行動をいかに集団的に定義するか」が議題として掲げられている。これは、組織自らが公開した招集通知に明記されているものである。
CONFENIAEの会長ホセ・エサチ(José Esach)は、選挙期間中においてダニエル・ノボア大統領を支持していたことを認めたが、現在の政府の政策決定が支持継続を不可能にしていると述べている。
ダニエル・ノボア大統領もリオバンバに滞在している。彼は公務として農業生産者へのトラクター配布を行った。さらに、ディーゼル価格上昇に対する補償措置として導入される「ルーツ給付金(Bono Raíces)」にも言及した。ノボア大統領はまた、水利組合(juntas de agua)に対する不当な圧力や恐喝を防ぐため、担当閣僚に現地訪問を命じたと語った。「いかなる組織のリーダーであろうと、農民に対し灌漑の停止や水の供給を人質に取り、我々が築いてきたものを破壊しようとする行為を許してはならない。そうした者はテロリズムで告発されることになる」と警告した。
#CONAIE #CONFENIAE #DanielNoboa #全国ストライキ
参考資料:
1. Noboa dice que están “acabando con economías criminales” al quitar subsidio al diésel
2. La Conaie convoca a un paro nacional inmediato e indefinido por la eliminación del subsidio al diésel
3. La Confeniae declara estado de emergencia en la Amazonía y convoca a movilización indefinida contra las medidas económicas de Noboa
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