チリ:ボリッチ、1973年のクーデター記念式典でガザでのジェノサイドを告発

2025年9月11日、チリにおいて1973年9月11日の軍事クーデターから52周年を迎える記念式典が開催された。この歴史的記憶と精神的な追悼の場において、ガブリエル・ボリッチ大統領(Gabriel Boric)は、イスラエルによるガザでの人道的悲劇およびパレスチナ人民に対するジェノサイド(大量虐殺)を強く非難し、民主主義を損なう言説が正常化されつつある危険性について警鐘を鳴らした。

「我々は、意図的な飢餓政策、市民に対する大規模かつ無差別な攻撃、戦争犯罪、そしてジャーナリストや医療従事者、人権擁護者、子どもたちの殺害といった残虐行為の目撃者である。子どもたちの血が流されている——それは他でもない、子どもたちの血である」とボリッチは述べた。さらに、キューバの詩人ホセ・マルティ(José Martí)の言葉を引用し「もしダンテが今日のガザを見たならば、地獄を描く必要はなかったであろう。彼はそれをそのまま写し取ったはずだ」と述べ、また、「だからこそ我々はガザに心を痛める。だからこそ無関心ではいられない。かつてラ・モネダ宮殿(La Moneda)が爆撃されたとき、世界が見て見ぬふりをしなかったように。あの頃は、今のように情報が即座に届く時代ではなかったにもかかわらず」と語った。

この立場を貫く中で、ボリッチ政権はチリのテルアビブ(Tel Aviv)駐在外交団の大部分を撤収し、イスラエルからの武器購入を凍結した。また、イスラエルの新任大使に対する信任状の受け入れも拒否している。さらに、大統領は「Nunca Más(再びこのようなことがあってはならない)」という民主主義の誓いを維持するためには、人間の尊厳という絶対的かつ無条件の価値を相対化しようとする言説に対して、常に警戒し、行動する必要があると訴えた。「こうした悲劇の多くは、民主主義の侵食や徐々なる弱体化を前触れとして現れる。民主主義やその制度を侮蔑し、それらを私益、経済的利害、あるいは人種的優越思想などに従属させるような言説は、どこであれ軽視してはならない」と述べ加えて、「政治犯は、それがニカラグアであれ、イランであれ、どこであっても政治犯である。ガザであれ、スーダンであれ、ウクライナであれ、あるいは地中海や砂漠を渡る粗末な船の上であれ、飢えに苦しみ、恐怖に麻痺した子どもは子どもである」と強調した。

 

ガブリエル・ボリッチ大統領の演説に先立ち、歴史的な音楽グループ「キラパジュン(Quilapayún)」が登場し、その演奏に合わせて、17年に及ぶピノチェト独裁によって殺害または行方不明となった3,200人以上の犠牲者の名前と写真が舞台上に投影された。深い追悼と歴史の記憶を象徴する、感動的な演出であった。

さらに感動を呼んだ瞬間として、1987年4月にサンティアゴのラ・バンデラ地区(La Bandera)で行われたヨハネ・パウロ2世(Juan Pablo II)の訪問時の映像が上映された。そこで、当時は無名の市民であったルイサ・リベラ(Luisa Rivera)が読み上げた手紙は、当時の民衆が直面していた苦難を赤裸々に訴えるものであった。彼女は次のように語っていた。

私たちの苦しみと、わずかな喜びをお伝えしたくて参りました。
私たちは、家族の幸福を願う母親であり妻です。しかし、それは簡単に見えて、私たちにとってはとても困難です。失業と低賃金のもと、私たちは皆が尊厳ある生活を送れるよう、独裁のない社会を望んでいます。
そのために、政治犯や拷問された人々を訪ね、亡命者の帰還を求めます。拘束されたまま行方の分からない人々の家族に寄り添い、私たちの声が聞かれ、尊重されることを求めています。
そして、追放された神父たちが帰国できるように、あなたの助けを願っているのです。

この言葉を語ったルイサ・リベラは、長年にわたり抵抗の象徴的人物として語り継がれてきたが、2025年8月30日に逝去した。

 

現在、ボリッチ政権は、行方不明者に対する全国的な捜索計画を推進しており、来週には議会において「強制失踪による不在者」の法的地位を創設する法案が採決される予定である。本法案は、家族が直面する生活手続きにおける負担を軽減し、再被害を防止することを目的としており、失踪者の登録制度を設ける内容となっている。

さらに、ガブリエル・ボリッチ大統領は、「記憶の場所(sitios de memoria)」の継続的な保存および公開の重要性を強調し「こうした場所は、民主主義にとって基本的な役割を果たしている。そこは、最も暗い場所においても人間性の芽が花開くことを私たちに教えてくれる」と述べている。また、大統領は昨年、一部の右派勢力が「記憶の場所」に割り当てられていた予算の削減を公然と求めた事実に言及した。結果として削減は実現しなかったが、「彼らはそれにかなり近づいていた」と述べ、民主主義の記憶を脅かす動きに対して警鐘を鳴らした。

 

式典において、ボリッチ大統領はイスラエルによる戦争犯罪として、「意図的な飢餓政策、市民に対する大規模かつ無差別な攻撃、ジャーナリストや医師、人権擁護者、子どもたちの殺害」などを列挙した。

チリ大統領は、パレスチナの大義に対して強く支持的な立場を取っており、2023年に始まったイスラエルの軍事行動以降、同国に対して一貫して批判的な姿勢を維持している。ハマスによる攻撃の1か月後、チリ政府はテルアビブ駐在の大使を召還し、2025年5月には人道状況への抗議として、大使館に配置していた軍事担当者を撤収させた。

さらにチリは、国際的な告発活動にも積極的に関与しており、メキシコおよびコロンビアとともに、ガザにおける戦争犯罪の調査を国際刑事裁判所(ICC)に要請したほか、南アフリカ共和国が推進する国際司法裁判所(ICJ)におけるジェノサイド訴追にも賛同している。演説の最後においてボリッチ大統領は、ガザにおける悲劇は、民主主義の浸食が人道的災害への扉を開くことの象徴であると警告し、次のように結んだ。「多くの場合、こうした悲劇の前兆は、民主主義の徐々なる弱体化である。だからこそ、我々は『常に民主主義を』と唱えるのだ」。

 

ボリッチ大統領は、2025年7月23日にも、ガザにおいて日々発生している飢餓による死を強く非難し、パレスチナ人に対するジェノサイドの責任者を「歴史が裁く」と警告した。同大統領は、イスラエル政府に対し、パレスチナ人の飢餓死、支援物資を得るために列に並んでいる最中に命を奪われる状況、さらには礼拝所(templo)での殺害を含むジェノサイドの即時停止を要求していた。ボリッチは、SNS「X(旧Twitter)」において、次の声明を発信した。

我々は、イスラエル政府が進行中のジェノサイドを即刻中止するよう強く要求する。子どもたちを含むパレスチナ人が日々、飢餓や、支援を得ようと並んでいる列、あるいは礼拝所で命を奪われている。
これは、人権および国際法を尊重するという基本的な問題である。行動するにせよ、黙認するにせよ、この蛮行を許した国家と指導者たちを、歴史は裁くだろう。チリはパレスチナと共にある。

 

同投稿には、パレスチナ自治政府大統領マフムード・アッバース(Mahmoud Abbas)からの書簡も添付されており、国際社会に対してガザ地区での停戦実現と人道支援物資の搬入を訴える内容が記されている。同書簡では、イスラエル占領軍による封鎖が支援物資の搬入を妨げていると非難している。

チリは2024年1月、メキシコと共同で、イスラエルとハマス間の武力衝突に関連して発生した戦争犯罪の可能性について調査を行うよう、国際刑事裁判所検察官に正式な要請を提出した。この紛争ではすでに5万5千人以上の民間人が死亡している。なお、チリは2011年、保守派のセバスティアン・ピニェラ(Sebastián Piñera)第1次政権下(2010年〜2014年)において、パレスチナを「自由で独立し、主権を有する国家」として承認している。

同国は国際刑事裁判所および国際司法裁判所において、イスラエルの戦争犯罪およびガザにおけるジェノサイドについて積極的に告発を続けている。国際司法裁判所は、国連の主要司法機関であり、オランダ・ハーグに本部を置いている。一方で、イスラエル政府はこの訴えを「全く根拠のないもの」として退けており、2023年10月7日に始まったハマスによる攻撃に対する反撃として進めている軍事作戦を中止する意思はないとしている。

#GabrielBoric #Gaza #ジェノサイド

 

参考資料:

1. Boric denuncia genocidio en Gaza en conmemoración del golpe de Estado de 1973
2. Boric denuncia muertes por hambre en Gaza y avisa que la historia juzgará a los culpables
3. Denuncia Boric “crímenes de guerra” de Israel en Gaza en aniversario 52 de golpe de Estado en Chile
4. Boric: “Si Dante hubiera visto Gaza, no habría tenido necesidad de pintar el infierno, lo hubiese copiado”

 

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