チリ:ボリビアの高地出身者に対する差別発言をする議員で精神科医のマリア・ルイサ・コデロ

チリ共和国とボリビア多民族国の間で激しい論争が勃発した。論争のきっかけは、チリ共和国の議員で精神科医かつ無所属のマリア・ルイサ・コデロ(María Luisa Cordero)が、議会の審議中に「ボリビア多民族国の人々はアルティプラノ(高地)で生まれたため、脳内の酸素量が低下しており、慢性的な低酸素性脳症(encefalopatía hipóxica)の保有者である」と発言したことである。さらに同氏は、酸素不足が認知機能の低下(bradipsiquia)をもたらしており、「隣国の人々は慢性的な愚鈍状態(tontorrones crónica)と呼ぶのに等しい」とし、「治療のしようがない」とまで述べた。

この発言は、車両の輸入管理を強化し、同国北部で増加している自動車窃盗を抑制することを目的とした動議の審議の場で行われた。北部での自動車窃盗は増加傾向にあり、窃盗車両が違法にボリビア多民族国へ持ち込まれるケースと密接に関連しているとしている。換言すれば未登録車両つまりチュトス(chutos)は、法的な書類がないまま他国からボリビア多民族国へ持ち込まれ、その多くはチリ共和国で盗まれたものであるとされている。この問題はボリビア多民族国のキリスト教民主党(Partido Demócrata Cristiano:PDC)所属の中道派上院議員で大統領候補のロドリゴ・パス・ペレイラ(Rodrigo Paz Pereira)が未登録車両の正規化を提案していることとも関連し、その多くはチリ共和国から流入している。

 

2025年9月12日、ボリビア多民族国の大統領ルイス・アルセ(Luis Arce)は、マリア・ルイサ・コルデロによる発言に対し、「受け入れがたい人種差別的かつ排外主義的発言」であるとして強く非難し、外交的措置を講じる意向を示した。ルイス・アルセ大統領は自身の公式SNSアカウントを通じて、これらの発言を「許されざる暴言」と位置づけ、「発言はボリビア国民に対する侮辱であるのみならず、チリ共和国国民議会(Congreso Nacional de Chile)と、議員としての倫理に対する冒涜でもある」と述べた。そして、「われわれの国民と歴史に対する敬意を強く要求する」と明言した。アルセ大統領は、ボリビア多民族国とチリ共和国との間には相互尊重と協力に基づく二国間関係が存在しているとし、「このような根拠のない発言は、その関係を著しく傷つけるものである」と警告した。議員の肩書をもってしても、いかなる形であれ差別や排外主義を正当化することはできないと強調した。加えて、アルセ大統領はチリ共和国政府およびチリ共和国国民議会に対して、マリア・ルイサ・コルデロ議員の発言に対する明確な立場の表明と、公的な距離の取り方を要請した。大統領は、「このような発言は、両国民の間にある兄弟的な関係を反映するものではない」と述べた。

 

元政府(内務)大臣で与党元大統領候補のエドゥアルド・デル・カスティジョ(Eduardo del Castillo)は、コデロ議員の発言を「見過ごせない」とし、「ボリビア多民族国民全体を侮辱した」と強く非難した。一方、野党の実業家で元大統領候補のサミュエル・ドリア・メディナ(Samuel Doria Medina)も、コデロ議員の発言を「激しく非難」し、「この段階で人種差別的かつ地理的決定論に固執する者こそが唯一の愚か者だ」と述べた。

 

ボリビア運転手労働組合連合(Confederación Sindical de Chóferes de Bolivia:CSCB)は、近年ボリビア多民族国内への違法車両の流入が増加しており、その多くはチリ共和国から来ていると訴えている。なお、ボリビア多民族国とチリ共和国は、太平洋への主権的アクセス権をめぐる19世紀末の戦争の影響により、1978年以来、大使級の外交関係を持っていない。

 

アルセ大統領は、ボリビア多民族国の外交方針である「いのちのための人民外交(Diplomacia de los Pueblos por la Vida)」を改めて強調し、「いかなる憎悪の言説によっても、友好国との関係が損なわれることを許さない」と述べた。ボリビア多民族国外務省は、すでに外交的手続きを開始しており、「公式な外交チャンネルを通じて深い懸念を表明し、直ちに訂正を求める」との声明を発出し、定められた外交ルートを通じて適切な対応措置を講じると述べている。

#LuisArce #差別主義

 

参考資料:

1. Estalla la polémica entre Bolivia y Chile por las declaraciones xenófobas de una diputada
2. Arce rechaza «enérgicamente» polémicas declaraciones de diputada chilena sobre bolivianos

 

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