コロンビア:ウリベ元大統領は有罪、一方の米国はまたも内政干渉で犯罪者を支持

(Photo: Center for American Progress / frisker)

2002年から2010年にかけてコロンビア大統領を務めたアルバロ・ウリベ(Álvaro Uribe Vélez)は、左翼ゲリラとの熾烈な内戦期において、強硬な軍事政策で右派から圧倒的な支持を得た人物である。2025年7月28日、ウリベは証人買収および司法妨害の罪で有罪判決を受けた。これにより、犯罪で有罪とされたコロンビア初の元大統領となった。

そして、2025年7月28日(月)、ウリベはコロンビア史上初めて、有罪判決を受けた元大統領となった。

 

検察はサンドラ・リリアナ・エレディア裁判官(Sandra Liliana Heredia)に対し、アルバロ・ウリベ元大統領に対する実刑9年(108か月)の刑罰を科すよう求めている。これは、ウリベが刑事手続において詐欺および贈賄を行ったとして有罪判決を受けたことに基づくものである。一方、国家検察監察庁(Procuraduría General de la Nación)は、同元大統領に対して自宅拘禁の措置を求めている。サンドラ・リリアナ・エレディア裁判官は、ウリベが詐欺と刑事手続における贈賄の罪で責任があると認定したが、賄賂の罪については無罪とした。

エレディア裁判官によれば、検察は、ウリベが弁護士ディエゴ・カデナ(Diego Cadena)を指示し、元準軍事組織員を捜し出して司法に虚偽の証言をさせ、その見返りとして経済的・法的利益を提供するよう求めたことを立証するに至ったとしている。

判決趣旨は7月28日に明らかにされたが、裁判官は今後、新たな審理を招集して、元大統領に科される具体的な刑罰を個別に決定する必要がある。刑罰の量刑は、8月1日午後2時からの審理で最終的に決定される予定である。

 

ウリベと人道的犯罪、テロ組織の関係

ウリベ元大統領とその家族に対しては、数多くの人権侵害やパラミリタリズモ(準軍事組織)との関わりに関する告発がある。ウリベの大統領任期中、数々の重大な人権侵害スキャンダルが明るみに出た。特に「パラポリティカ(Para-politica)」スキャンダルでは、約30%のコロンビアの政治家が右派の準軍事組織、コロンビア自衛軍(Autodefensas Unidas de Colombia:AUC)と関わりがあり、彼らと結託していたことが明らかになった。このAUCは、2001年にアメリカ国務省により「外国テロ組織」として指定されていた。同組織はウリベ政権下で「正義と平和法(Justice and Peace Law)」に基づいて正式に武装解除・解散され、それに伴い米国もまた2014年にテロ指定から解除した。

もちろんこの指定解除については一部の国際NGOや専門家から疑義も出ている。それは指定解除理由の透明性の欠如と、当時の米・コロンビア間の政治的関係の深さを背景とするものである。つまり法的判断というより政治的便宜が優先されたのではないかと彼らは疑っている。当時からウリベ本人やその側近に対する米国の非公式な庇護、情報共有の拒否など存在していた。

また、ウリベの直属の情報機関が政治的対立者、裁判官、ジャーナリスト、人権活動家に対する違法な監視、妨害、迫害を行っていたことも暴露されている。ウリベの多くの同盟者、元政府関係者、家族は調査を受け、拘束されたり沈黙させられたりしたが、ウリベ自身はこれまで司法の手を逃れてきた。

 

米国による内政干渉

このようなコロンビアにおける裁判結果に対し、米国はまたも内政干渉を行っている。例えば国務長官マルコ・ルビオ(Marco Rubio)が、2つの罪で有罪とされたウリベへの支持をX(旧Twitter)上で表明するとともに、「コロンビアの元大統領ウリベの唯一の罪は、自国を懸命に守り抜き、愛国心を持って戦ったことだ。急進的な判事たちによるコロンビア司法の道具化は、極めて憂慮すべき前例を作ってしまった」と投稿していた。同国が犯罪者を支持したり、暴力を助長したり、さらにはCIAの力を使い国家転覆を仕掛けたり、国のリーダーの暗殺をした、暗殺を目論んできた事例は山のようにある。

コロンビア共和国大統領グスタボ・ペトロ(Gustavo Petro)は、ルビオの投稿に対し「他国の司法問題に関する干渉であり、国家の主権への明確な侵害である」と断じた。大統領は、「我が国の判事たちは尊重されなければならない。多くの判事たちが、世界のために尽力したがゆえに命を落としている」と強調した。

グスタボ・ペトロ大統領の発言は、臨時外務大臣ロサ・ビジャビセンシオ(Rosa Villavicencio)のマルコ・ルビオに対する非難と足並みをそろえる形となった。ビジャビセンシオは、「彼のコロンビアにおける司法判断への干渉は、我が国の主権を侵害し、司法の独立を無視するものである」と述べた。

この発言に先立ち、判事がウリベを、手続き詐欺および刑事手続における贈賄の罪で有罪と認定したことを受け、ペトロ大統領はX上で「ウリベ元大統領の支持者であれ、そうでない者であれ、その正義を尊重すべきである。その他の態度は野蛮であり、コロンビアは賢明でなければならない」と述べた。また、報道機関の一部による報道姿勢についても、「その役割はひどいものであった」と非難している。

「政治的な結果を得るために判事に圧力をかけること、さらにはまるでマフィアのように判事を脅迫すること――これは法的ではなく、ほとんど脅迫に近い行為だ。(中略)こうした行動には、民主主義の最低限の規範に対する深い理解の欠如が見られる」と述べたペトロはまた、「強い司法の存在こそが暴力からの脱却を可能にするのであり、ゆえにその司法が機能することを許すべきである。それを黙らせたり、脅したりしてはならない。さもなければ社会を暴力へと沈めることになる。(中略)本政府は、政治的、性的、ジェンダー的、または宗教的な理由によって誰かを迫害するようなことはしない」とも付け加えている。ペトロ大統領が最後に述べたのは、司法は政府から完全に独立しており、圧力をかけるようなことはないということであり、「それとは反するような外国当局の発言は、我々が容認しない侮辱である」ということだった。

 

一方米国民主党の下院議員ジム・マクガバン(Jim McGovern)は、今週月曜日に明らかになったアルバロ・ウリベに対する司法判断を巡る状況について、トランプ政権の立場を厳しく批判しました。マクガバン議員は次のようにX(旧Twitter)上で投稿した:

「トランプ政権は、“トランプに好意的なことを言った”という理由で、外国の指導者は法の支配に服するべきではないと主張している。」

さらに、国務長官マルコ・ルビオに向けて次のように述べている:

「自国の司法によって責任を問われている権力者に対して、免責を支持することは極めて間違っている。あなたも分かっている通り、これは恥ずべき声明である。」

 

イバン・セペダの反応

アルバロ・ウリベ元大統領が証人操作および訴訟詐欺の罪で有罪とされた件に関して、被害者であり、歴史的協定(Pacto Histórico)所属の上院議員でもあるイバン・セペダ(Iván Cepeda)は「この長年にわたる訴訟の末に、非常に満足しているし嬉しい。だが、落ち着いた態度でこの結果を受け止めていることも付け加えねばならない。私は、この件に対して冷静に臨んできたし、それが重要だと思う」と、第一審での勝訴に対する最初の反応を語った。

またセペダは、判事サンドラ・エレディアの判断を尊重すること、そして司法権は独立していることを理解する必要があると主張した。「人は批判を持つことはできるが、それは司法手続きや憲法に基づく手段によって行うべきだ。エレディア判事を貶めようとすることは道ではない。正義を尊重し、それに従わなければならない」と述べた。ウリベへの判決後、セペダは次のようにも語った。「被害者として、我々は過去の暴力的な歴史に対して交渉による解決策を模索する意思がある」。この国が経験してきた流血の過去については、いずれは合意による解決を目指すべきであるとした。

これは、回復的司法(restorative justice)の一形態に当たる可能性があり、「このプロセスにおいて真実を明らかにすること」が求められると述べた。「これは国家の最高責任者たちにも関わることである。我が国には、軍人、兵士、士官や下士官、ゲリラ、パラミリタリーなどに対して、こうした責任を問うメカニズムがある。しかし、そのような出来事に明白に関与してきた他の責任者たちもおり、彼らもまた説明責任を負うべきである」とセペダは強調した。

 

ウリベという人物

ウリベは、背丈が低く、言葉を慎重に選ぶ人物であり、国民の間で賛否が激しく分かれる存在でもある。世論調査によれば、73歳となった今でも国内で最も信頼されている政治家の一人であり、再び暴力が増加する状況の中で依然として影響力を持つ。

彼は、コロンビア西部アンティオキア県で地主階級の家に生まれた。彼が大統領に選出されたのは、貧困と政治的疎外に対抗するゲリラ組織、彼らに対抗するために形成された右派パラミリタリー、そして国家軍の三者が激しく対立する最中であった。

ウリベには、パラミリタリーと密接な関係があったのではないかという疑惑が長年付きまとっている。これらの組織は、しばしば地主層の支援を受けていたとされる。今回の有罪判決の根底には、まさにこの関係性が存在するとされている。彼自身は、こうした疑惑を一貫して否定している。今回の裁判では、彼が証人に虚偽証言をさせようとしたと認定された。

ウリベは、1983年にFARCによる誘拐未遂で父親を殺害されたことを契機に、左翼ゲリラであるコロンビア革命軍(FARC)に対する強硬姿勢を一貫して貫いた。米国の支援を受け、政権下ではFARCの幹部が相次いで殺害され、軍による広範な作戦が実施された。これにより、多くの国民に一時的な治安回復の感覚を与えたが、暴力自体が根本的に終息したわけではなかった。

ウリベは、大統領在任中において、強硬な麻薬対策と堅実な経済成長により、ワシントンから高い評価を受けていた。しかし、批判者たちは、彼を「権威主義的な指導者」であり、「貧困層を見捨てた政治家」と評している。大統領職を退いた後も、ウリベは2014年から2020年まで議員として活動を続け、現在に至るまで右派政治と自身が設立した民主センター党のために選挙運動を展開してきた。

小柄な体格と慎重な話しぶりで知られるアルバロ・ウリベは、評価が真っ二つに分かれる人物である。熱狂的に支持される一方で、激しく嫌悪されてもいる。彼は短気な性格で知られており、かつて記者を侮辱し、暴力をほのめかす発言をした音声が公開されたこともある。それでも、熱心な批判者でさえ、彼の弁舌や行政手腕には一定の評価を与えている。支持者にとって、ウリベは「政治的殉教者」である。

しかし、彼のレガシー(政治的遺産)は、側近たちを取り巻く数々の汚職や諜報活動に関する疑惑によって大きく汚されている。ウリベは現在、自身が大統領として指揮していた時期に、軍によって行われたとされる6,000人を超える民間人の殺害と強制失踪事件について捜査を受けている。また、彼は1995年から1997年にかけてアンティオキア州知事だった当時に発生した、農民の虐殺事件(1997年)に関しても、予備調査の中で証言している。

 

有罪判決を受けて控訴する

アルバロ・ウリベに対する有罪判決を受けて、弁護人ハイメ・グラナドス(Jaime Granados)は、2025年8月11日にボゴタ高等裁判所(Tribunal Superior de Bogotá)に控訴を提出する意向であることを明らかにした。これはウリベ元大統領に対し、刑事訴訟における詐欺および贈賄の罪で有罪、贈賄罪では無罪とした判決に続くものである。

グラナドス弁護士は「現在控訴の準備を進めている。我々は判決文を8月1日(金)に受け取る予定であり、その時点から5営業日以内、すなわち8月11日(月)までに控訴文書を提出することになる」と語っている。また彼は、「文書が提出され次第、その論拠について幅広く議論することが可能になるが、控訴を提出することは明らかである」と述べた。また、「我々の控訴は、いかなる外的事情からも自由であり、純粋に法的論点の分析に基づいたものである」とウリベ元大統領の弁護人は次のように強調し、「法の上に立つ者はおらず、法の下に沈む者もいない。我々が今回の判決に深く異議を唱える理由は、いずれ明らかになるだろう」と締めくくった。

#ÁlvaroUribe #GustavoPetro #MarcoRubio

 

参考資料:

1. Fiscalía pide a juez Heredia imponer una pena de 9 años de prisión contra Álvaro Uribe
2. Jaime Granados, abogado de Álvaro Uribe, confirmó que radicarán recurso de apelación el 11 de agosto
3. Petro asegura que mensaje de Marco Rubio en apoyo a Uribe es una “intromisión” a la soberanía
4. “Intentar deslegitimar a la jueza Sandra Heredia no es el camino”: Cepeda tras fallo contra Uribe
5. Alvaro Uribe: Colombia’s first ex-president convicted of a crime

 

 

 

 

 

 

 

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