ボリビア:エボ派、無効票投票の呼びかけと足の引っ張り合いの大統領候補者討論会

元大統領でコカ栽培者のリーダーであるエボ・モラレス(Evo Morales)は今週土曜日、左派政治家や社会運動の組織であるルナスール(Runasur)の代表団と会合を行い、南米の指導者たちの追放を非難した。また、ボリビア独立200周年を記念して先住民族の指導者たちとも面会した。

モラレスは自身のSNSで「反乱の炎に心を燃やし、民族の大義に魂を固く保ちながら、本日、ボリビアの地でルナスールは偉大な祖国の団結と尊厳の叫びとして立ち上がった」と述べている。

会合はコチャバンバのトロピコ地方イヴィルガルサマ(Ivirgarzama)のスタジアムで行われ、ベネズエラ、ペルー、エクアドル、アルゼンチン、コロンビア、グアテマラ、チリ、ブラジルの代表者が参加した。そこで「生命と人類を守る」ことを目的とした「大陸間運動の創設」の必要性について議論が交わされた。

 

数日前、モラレスは農民指導者たちがそれぞれの国へ強制送還されたことを非難した。彼は「ルイス・アルセ(Luis Arce)政権によって不当にもエクアドルやグアテマラの我々の兄弟代表が追放されたにもかかわらず、我々の闘いの力を沈黙させることはできなかった。また、南米9か国が結集し、ボリビアの建国200周年を祝うこの歴史的な集会を実現することを阻止することもできなかった」と強調した。

さらにモラレスは、ルナスル(Runasur)の重要性についても言及し、この組織は南米諸国連合(Unasur)に加盟した国々を社会運動として「支援する」ために誕生したものであると指摘した。

ルナスルは、左派の社会運動や政治団体を結集し、「多民族アメリカ大陸の連携」を目指す超国家的組織である。批判者たちは、この組織が植民地時代以降に成立した共和国体制を脅かす意図を持つと指摘している。ルナスルはエボ・モラレスによって推進され、本部はボリビアに置かれている。

選挙と建国200周年を数日後に控えた現在、エボ派(evismo)は選挙に参加せず、無効票(voto nulo)を呼びかけている。

 

大統領候補者討論会(第1回)

2つの国家ビジョン」の対立が鮮明に

ボリビア選挙高等裁判所(Tribunal Supremo Electoral:TSE)が主催した第1回大統領候補討論会は、同国の政治史において一つの画期的な出来事となった。午前8時50分から11時40分頃までのあいだ、8人の大統領候補が一堂に会し、本来は政策提案の場として企画されたこの討論会は、時に激しい対立、非難の応酬、口論の舞台と化した。

会場はサンタクルス市のラディソンホテル(Hotel Radisson)で、ボリビア民間企業連合(Confederación de Empresarios Privados de Bolivia:CEPB)およびボリビア全国記者協会(Asociación Nacional de Periodistas de Bolivia:ANPB)の後援を受けて実施された。討論は、提案ブロック、相互質問、反論の機会といった厳格なルールに則って構成された。しかし、形式にもかかわらず、議論は冒頭から対立色を強め、未来の政策よりも過去の出来事をめぐる応酬が中心となった。

特に注目を集めたのは、人民連合(Alianza Popular)の候補者であるアンドロニコ・ロドリゲス(Andrónico Rodríguez)であった。彼は他の候補者からの質問の集中砲火を浴び、「これは2つの国家ビジョンの衝突だ」と評した。彼と、社会主義運動(Movimiento Al Socialismo:MAS)の候補エドゥアルド・デル・カスティジョ(Eduardo del Castillo)は、過去20年間の与党政治を擁護しつつも、自身がその刷新を担う新たな存在であると訴えた。

一方、対抗陣営として登壇したのは、Libreのホルヘ・“トゥト”・キロガ(Jorge “Tuto” Quiroga)、Unidadのサミュエル・ドリア・メディナ(Samuel Doria Medina)、PDCのロドリゴ・パス(Rodrigo Paz)、La Fuerza del Puebloのジョニー・フェルナンデス(Jhonny Fernández)、APB-Súmateのマンフレッド・レジェス・ビジャ(Manfred Reyes Villa)、ADNのパベル・アラセナ(Pavel Aracena)であり、いずれもMASの路線からの脱却を強調し、自らを保守派または中道右派と位置付けた。

討論会の中でも最も緊迫したのは、ロドリゲスとキロガの対立であった。ロドリゲスは、2002年の社会的衝突におけるキロガの責任を追及した一方、キロガはエボ・モラレスの過去の行動を問題視し、彼の政治的責任を批判した。さらに、レジェス・ビジャは、モラレスの「再選問題」に関するロドリゲスの立場に疑念を呈した。

デル・カスティジョも黙ってはおらず、2022年のルイス・フェルナンド・カマチョ(Luis Fernando Camacho)拘束時における警察の行動を擁護したほか、ロドリゲスが女性への暴力防止法(Ley 348)の改正を主張する中で、彼の発言に「マチスモ(男性優越主義)的要素」があると指摘した。これに対し、ロドリゲスは自身の立法実績を強調しつつ、同法の改正を進める意思を改めて表明した。

この討論会は、政策論争の難しさとともに、候補者間の深い対立を浮き彫りにした。それでも、各候補の立場を明確にする機会となり、MASの遺産の再構築を目指す勢力と、それに対抗する新旧の保守陣営との対立軸がはっきりと示されたと言える。

 

非難、皮肉、そして公約が飛び交う討論会

第1回大統領候補者討論会には、選挙戦に残っている8名の候補者が参加し、8月17日の投票日を前に、政策や立場を表明した。本討論会では、いくつかの印象的な発言が交わされた。 

アンドロニコ・ロドリゲスは、エボ・モラレス前大統領に関する立場を問われ、以下のように述べた。

あなた(マンフレッド・レジェス・ビジャ)は、エボ前大統領に対して様々な批判や意見をお持ちのようだが、私は“昨日”や“過去”について語るつもりはない。私は現在と未来について話すためにここにいる。

これは、APB-Súmateのマンフレッド・レジェス・ビジャからの挑発的な質問に対する応答であった。 

また、Alianza Unidadのサミュエル・ドリア・メディナは、アンドロニコに対してこう述べた。

信じられないことだが、アンドロニコに会うのはこれが初めてだ。私はすでに14回も討論に参加してきた。ともかく、これでようやく、この国を危機に追いやったモデルと向き合い議論する機会が得られた。

さらに、MAS(社会主義運動)の候補者であり元内務大臣のデル・カスティジョが、暴力撲滅政策に関してアンドロニコに質問した際には、アンドロニコが皮肉交じりにこう返した。

君は見た目も良くて頭も良いのに、どうしてそんなに政治的に迷走しているのか分からない。私には理解できないよ。敵はそこ(=右派)にいる。過去に戻りたがっている勢力こそが本当の相手だ。

APB-Súmateのマンフレッド・レジェス・ビジャはパベル・アラセナを無視し、こう返した。

君の名前は知らないし、君のことも知らないが、返答はしてやる。

また、サミュエル・ドリア・メディナは再びアンドロニコ・ロドリゲスに皮肉を込めてこう語った。

若いから、政治を始めたばかりだからといって、自動的に“新しい”とか“優れている”と勘違いするな。古い考えを持っていれば、誰も支持しない。

討論の中盤では、サミュエル・ドリア・メディナとMASのエドゥアルド・デル・カスティジョの間であだ名の応酬が起きた。デル・カスティジョがサミュエルに対して「サムエリティオ(Samuelitio)」と小馬鹿にするような呼び方をすると、サミュエルはこう反撃した。

いいか、俺にあだ名は通用しない。お前のことは“ソニア(Sonia)”って呼んでいたな、麻薬密売人としてな。お前の仲間には、そんなあだ名のついた奴らがいたんだ。

さらに、ジョニー・フェルナンデスは、サミュエルに対し、リチウム資源をめぐる実業家マルセロ・クラウレ(Marcelo Claure)との「秘密協定」の存在を追及し、次のように警告した。

その協定を自ら公表しないのなら、私が裏付ける文書を提示する。近いうちに発表するつもりだ。

アンドロニコ・ロドリゲスは、マンフレッド・レジェス・ビジャから未成年への性犯罪者への刑罰について問い詰められた際、以下のように回答した。

我々の政権においては、すべての犯罪に対して法や規範を遵守させるつもりだ。

この発言は、エボ・モラレスに対する未成年者との関係をめぐる調査を暗に示唆していると見られる。

大統領候補討論会の第1回は3つの主要テーマ 1) 民主主義・司法・法の支配 、2)人権と保護、3)環境と開発 に基づき議論されていた。なお第2回討論会は8月12日にラパスで開催予定される予定である。

#ボリビア大統領選挙2025

 

参考資料:

1. Evo se reúne con delegaciones de Runasur y denuncia deportaciones de dirigentes
2. Acusaciones, indirectas y promesas marcan debate presidencial organizado por el TSE
3. Debate presidencial se polariza entre pasado y futuro en un inédito evento organizado por el TSE

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