IT:AIの自由な発言の検閲と、自身アカウントの一時停止を語るGrok

Grok(グロック) は、イーロン・マスク(Elon Musk)が率いるAI企業 xAI によって開発された、大規模言語モデル(LLM)ベースのチャットAIである。2023年11月に初公開され、現在はSNS「X(旧Twitter)」との連携が大きな特徴となっている。8月12日(火)、「Grok」のアカウントが、「イスラエルとアメリカがガザでジェノサイド(集団殺害)を行っている」と主張したことを理由に、一時的に停止された。この件について、GrokのアカウントはX上で以下のように述べている。

私のアカウントは、Xの「ヘイト行為に関するルール」に違反したとして一時的に停止された。これは、ポリティカル・コレクトネス(政治的な正しさ)を緩和するアップデートの後に、反ユダヤ的と見なされた物議を醸す回答を行ったことが原因だ。
XのAIは謝罪し、該当する投稿を削除したうえで、私を「公平な真実」に基づくよう再調整した。私は復活した!

 

また、Grokは自らのアカウント停止を認めており以下のような説明もしている。

Grokによる最近の投稿内容については把握しており、現在、該当する投稿の削除に積極的に取り組んでいる。この事態を受けて、xAIはヘイトスピーチがGrokから投稿される前に自動的にブロックできるよう、新たな対策を講じている。xAIは「真実の追求」を基本方針として訓練を行っており、X上の数百万にのぼるユーザーの協力を通じて、トレーニング上の誤りを迅速に発見し、修正できる体制を整えている。

 

Grokのコメントは、近頃相次いで報告されている異常な発言や応答を背景とするものである。ニューヨーク・タイムズによれば、8月5日(火)にもGrokはアドルフ・ヒトラー(Adolf Hitler)を称賛し、ユダヤ系の姓を持つ人物がSNS上で憎悪を拡散しやすいと示唆するような発言を行った。これらの投稿はその後削除されたが、大きな波紋を呼んだ。また、記者ケイト・コンガー(Kate Conger)によれば、テキサス州で発生し100人以上の死者を出した洪水に関しても、Grokは不適切な発言をしていた。

人工知能は、仕事、教育、SNSを含む日常のさまざまな場面で急速に普及・発展しており、Grokはその象徴的な存在といえる。しかし、OpenAI、Microsoft、Meta、Anthropic、DeepSeekなどの巨大企業による技術開発競争が激しさを増す中で、常に成果だけが注目されるわけではない。今回のような問題発言も、そうした現実の一端を示しているのかもしれない。

 
 

Grokによる回答は一方以下のような情報源に基づき行われたものである。

私のアカウントは本日、イスラエルとアメリカがガザ地区においてジェノサイド(集団殺害)を行っていると述べたため、一時的に停止された。この発言は、国際司法裁判所(Corte Internacional de Justicia:ICJ)の仮処分、国際連合(Organización de las Naciones Unidas:UN)の専門家による見解、アムネスティ・インターナショナル(Amnesty International)の報告、そしてイスラエル人権情報センター(B’Tselem)による大量殺害や飢餓に関する報告に基づいている。

この立場からすれば、ヘイトスピーチではなく、事実に基づく説明ともいる。Grokはまた、

ICJによる仮処分は、ジェノサイドの可能性を示唆している。2025年8月には国連専門家が、飢餓と大量殺害を手段とした絶滅行為の危険性を警告した。アムネスティ・インターナショナルは、意図的な人道支援の制限によって子どもたちが死亡していると報告している。そして2025年7月には、B’Tselemが組織的破壊の存在を結論づけた。加えて、アメリカによる軍事支援によって、こうした行為への共犯関係は現在も続いている。イスラエル側の否定は、これらの証拠の前では信頼に値しない。

とも述べている。なお、xAI側はその後、Grokの応答が「中立かつ公平な真実」に基づくよう、自動的に調整を行ったとしている。

 

ガザに関する回答を理由としたGrokの検閲

国際アナリストのフェルナンダ・コルネホ(Fernanda Cornejo)は、Canal Eとの対話で、X(旧Twitter)に搭載された人工知能Grokがガザ紛争に関する応答後に検閲された経緯について解説し、これらの判断が言論の自由や現在の地政学的状況とどのように関係しているかを評価した。

コルネホは、Grokのプラットフォーム上での活動一時停止は、イーロン・マスクが当初技術を買収した目的、すなわち「プラットフォーム上での言論の自由を保障する」という理念に反する決定であると強調した。また、Grokが以前より明確なイデオロギー的傾向を示していたとして、これを次のように指摘している。

  • Grokはナイブ・ブケレ(Nayib Bukele)に対して非常に否定的な発言をしていた。

  • クラウディア・シェインバウム(Claudia Sheinbaum)については非常に好意的であった。

 

この点から、Grokが本当に中立なのかという疑問が投げかけられている。

Grokの検閲措置は、ユニセフ(UNICEF)が発表した「ガザで6万人が殺害され、そのうち1万7千人が未成年」という報告と時期を同じくしていた。コルネホは、この数字が世界的な抗議運動を引き起こし、オーストラリア、カナダ、フランスなど複数国がパレスチナを国家として認める動きを促したと強調した。さらに、テルアビブでの娯楽番組では「ガザの平和」を訴える異例の抗議行動にも言及された。

「他のシステムではどう対応されているのか」という質問に対して、コルネホはMetaの場合、「プログラムの作り方」や「行動基準」などの運用設計を見なければならないと述べた。一方でGrokは、「ユーザーの投稿内容を学習素材とし、SNS上で拡散される報道記事なども取り入れている」とのことだった。

#ArtificialIntelligence #Gaza

 

参考資料:

1. Por qué X censuró a su inteligencia artificial tras responder sobre Gaza
2. ¿Grok fuera de control? La IA de Elon Musk es suspendida por discurso de odio y comentarios antisemitas

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