エクアドル大統領ダニエル・ノボア(Daniel Noboa)は、2025年8月26日から始まる日本訪問のため、8月23日(日)に日本へ向けて出発した。この訪問は、ブラジル、ウルグアイ、アルゼンチンへの3カ国訪問を終えた後のアジア地域への新たな外交活動の一環である。
エクアドルによる日本訪問は、日本市場との接近を図る外交攻勢の一環である。その目的は、通商協定を締結し、国内輸出の強化、外国からの投資の誘致、そして貿易収支の改善を実現することである。この訪問には、エクアドル輸出業者連合(Corporación de Gremios Exportadores del Ecuador:CORDEX)および実業界の代表者たちが同行する。エクアドル政府は、日本をアジア市場への進出戦略の中心的パートナーとして位置づけることを目指しており、アジア地域は、特に持続可能性、トレーサビリティ、品質基準を満たす食品製品に対する需要の増加源として注目されている。
ノボア大統領は、まず日本の首相、石破茂との会談を行い、両国間の外交関係を強化する。大統領報道官であるカロリナ・ハラミジョ(Carolina Jaramillo)は、今週月曜日の記者会見にて、両首脳による会談は、両国の外交関係を確立・強化するための戦略的機会であると述べている。
ノボア大統領に同行するのは4人の大臣と2人の事務局長である:
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ガブリエラ・ソメルフェルド(Gabriela Sommerfeld) 外務・人材移動大臣
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ダニロ・パラシオス(Danilo Palacios) 農業・畜産大臣
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ルイス・アルベルト・ハラミジョ(Luis Alberto Jaramillo) 生産・貿易・投資・漁業大臣
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イネス・マンサーノ(Inés Manzano) エネルギー大臣
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イレーネ・ヴェレス(Irene Vélez) 大統領府広報事務局長
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ホセ・フリオ・ネイラ(José Julio Neira) 公共の誠実さ事務局長
エクアドル代表団は、東京で多忙な日程を予定している。主要なイベントには以下が含まれる:
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日本経済団体連合会との会談
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日本貿易振興機構(Japan External Trade Organization:JETRO)との協力覚書の署名
JETROとプロ・エクアドル(ProEcuador)との間で了解覚書(MOU)が締結される見込みであり、ノボア大統領はその立会人(名誉証人)として参加を予定している。この文書は、今後の協議と、両国の経済に相互利益をもたらす通商協定の正式交渉へとつながる土台を築くものである。 -
日本の生産者団体およびスーパーマーケットチェーンとのビジネス会合
また、代表団は東京産業振興センター(Centro de Fomento Industrial de Tokio)も訪問する予定である。同センターはイノベーション、ロボティクス、生産技術開発の分野で高い評価を受けている。
経済連携協定締結に向けて
エクアドルの輸出業界にとって、中心的な目標は、日本との経済連携協定(Economic Partnership Agreement:EPA)へのアプローチを前進させることである。この枠組みにより、中長期的にはエクアドル製品に対するより有利な関税条件を確保できる可能性が開かれる。これは、両国の経済関係を一層強化し、エクアドルにとってアジア市場への橋渡しとなる重要な一歩である。
CORDEXは、このミッションが単に輸出拡大を目指すだけでなく、投資の促進、戦略的提携の構築、そしてエクアドルの競争力を強化するための技術革新の探索をも含んでいると指摘した。
エクアドルの輸出業者にとっての戦略市場、日本
1億2,500万人を超える消費者が存在し、高品質かつ持続可能な製品への需要が高い日本は、エクアドルの輸出多角化にとって鍵となる市場である。CORDEXは、2021年の創設以来、アジア、特に日本との関係強化の必要性を提唱し、官民合同の対話の場を推進してきた。これにより、将来的な通商協定の基盤が築かれてきている。
2025年初頭には、駐日エクアドル大使セサル・モンタニョ(César Montaño)との会談も行われ、その目標達成に向けた共通のアジェンダの策定が図られた。
#CORDEXinforma – 25 de agosto
— CORDEX (@CORDEX_EC) August 25, 2025
Exportadores ecuatorianos acompañarán al presidente @DanielNoboaOk en la misión oficial a #Japón, del 26 al 30 de agosto.
Más info: https://t.co/cgwqenXTUW pic.twitter.com/hQjrQpNiFD
エクアドルは現在、85種類の非石油製品を日本に輸出しており、その代表的な輸出品目にはバナナ、カカオ豆とその加工品、ツナ、エビ、ブロッコリーなどがある。これらの5つの製品は、日本向け輸出総額の90%を占めており、2024年にはその金額が1億8200万米ドル(USD)に達したと、エクアドルのメディア「エクアビサ(Ecuavisa)」が伝えている。日本は歴史的に、品質、トレーサビリティ、衛生認証において世界で最も要求が厳しい市場の一つであるが、同時に新鮮な農産物や水産物を輸出する国々にとっては大きな機会を提供している。エクアドルにとっても、日本市場は重要な輸出先となっている。
しかし、これらの輸出額にもかかわらず、エクアドルと日本との貿易収支はエクアドルにとって不利な状況にある。2025年には、日本からエクアドルに対して、主に自動車やその部品、産業機械、外科手術器具、医薬品などが合わせて3億3200万米ドル相当輸出されている。これらの製品は、多くの場合、エクアドルに輸入される際に有利な関税条件で入ってくる。一方で、エクアドルの輸出品目、例えばバナナは、年初には20%の関税がかかり、年後半には10%の関税が適用されるため、アジア太平洋地域の他の輸出国と比較して競争力が低下している。
エクアドル政府はそのため将来的に締結される貿易協定により、日本市場へのエクアドル製品の参入障壁が取り除かれるか、削減されることを期待している。今回締結を目指す協定は、日本市場へのアクセスをより公平にし、エクアドル製品の流通が円滑になることを目的としている。また、この貿易協定は、日本市場の開放がエクアドルの重要なセクターに対して資本流入を促進することも期待されている。特に、エネルギー、農業、技術、製薬の分野での投資を活性化し、エクアドルの国内開発に大きな推進力を与えると見込まれている。この協定が実現すれば、エクアドルは生産連鎖を強化し、日本の技術を活用して輸出能力を向上させることができる。これにより、エクアドルの競争力が高まり、両国間の経済的なつながりがさらに深まることが期待されている。
日本はすでにエクアドルの戦略的プロジェクトへの参加に関心を示しており、今後、両国はより強固な協力関係を築くことが期待されている。特に、日本はエクアドルのエネルギー分野や技術革新分野への投資に強い関心を持っており、その中でも再生可能エネルギーのプロジェクトに対する関心が高いとされている。報道官のカロリナ・ハラミジョも「日本との関係において、特にエネルギー分野への投資に関心がある」と強調し、また、日本は技術的に非常に進んでおり、「日本との関係には非常に多くの可能性が開かれている」と述べている。
ノボア大統領は、日本訪問後、2025年8月30日から9月1日までベトナムを訪れ、ベトナムの首相ファム・ミン・チン(Phạm Minh Chính)との会談を予定している。ハラミジョ報道官はまた、ノボア大統領がベトナムで他の高官や企業家とも会談する予定であることを明かしているが、詳細については変更の可能性があるため、現時点では公表しないと述べた。
参考資料:
1. Exportadores de Ecuador en Japón buscan abrir mercado y atraer inversiones
2. Daniel Noboa visitará Japón para atraer inversiones y consolidar el comercio
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