(Photo:VIRGINIA MAYO/AP)
欧州連合(EU)は7月10日(木)、イスラエルとの合意を発表し、ガザにおける国際人道支援へのアクセスおよび配布が、これまでよりも大幅に拡大されることとなった。これまで同地域では、ベンヤミン・ネタニヤフ(Benjamín Netanyahu)政権によって、緊急の人道的ニーズがあるにもかかわらず、支援の流入が大きく制限されてきた。
合意の詳細は多くは明らかにされていないが、来週火曜日にブリュッセルで予定されているEU外相会合を前に、その存在が明らかとなった。 EUが発表している内容によるとこれらの措置は、今後数日内に実施される予定であり、大規模な援助が直接住民に届けられるべきであるという『共通理解』のもと、また、援助がハマスに横流しされないよう引き続き措置が取られるという理解に基づいている。
これらの措置には、食料品および非食料品をガザに運ぶための毎日のトラック数を大幅に増加させること、北部および南部にいくつかの国境通過点を開設すること、ヨルダンおよびエジプトからの援助ルートを再開すること、ガザ地区全体でパン屋や公共炊き出し場を通じて食料供給を行うこと、人道支援施設で使用される燃料の供給を運用可能なレベルまで再開すること、人道支援関係者の保護、重要インフラの修復および促進(例:海水淡水化施設への電力供給の再開)などが含まれている。 欧州各国の外相は、イスラエルとの二国間関係を規定する「連合協定(Acuerdo de Asociación)」について、今後どのような対応を取るかを決定することになっている。これは、イスラエルがガザに対する攻撃によってガザの人々の人権を侵害したとEUが正式に認定したことを受けてのものである。
この協定枠組みに関する具体的な対応策は、『エル・パイス(EL PAÍS)』が入手した5ページにわたる文書に記されている。そこには10項目の選択肢が提示されており、イスラエルの閣僚に対する個別制裁から、武器禁輸措置に至るまでが含まれている。しかしながら、その大半は加盟国の全会一致を必要とするため、実現の可能性は極めて低いと見られている。
「本日、我々はガザへの人道支援を拡大するため、イスラエルとの合意に達した」と、EUの外交・安全保障政策上級代表カヤ・カラス(Kaja Kallas)はSNS上で発表した。彼女の事務所は同日、EU加盟各国の首都に対し、イスラエルとの「連合協定(Acuerdo de Asociación)」の今後に関する選択肢を記した提案文書を送付し、各国外相がイスラエルに対してどの程度の圧力をかけるかを判断できるようにした。
Today, we reached an agreement with Israel to expand humanitarian access to Gaza.
— Kaja Kallas (@kajakallas) July 10, 2025
This deal means more crossings open, aid and food trucks entering Gaza, repair of vital infrastructure and protection of aid workers.
We count on Israel to implement every measure agreed.
EUの「対外行動庁(Servicio de Acción Exterior:SEAE)」によれば、今回の人道合意には「ガザ地区に食料品および非食料品を運ぶトラックの数を大幅に増加させること」などが含まれている。ただし、具体的な台数については言及されていない。2023年10月7日のハマス(Hamás)によるテロ攻撃およびそれに続くイスラエルの軍事攻撃以前には、1日あたりおよそ500台のトラックがガザへ人道支援物資を届けていた。EUの交渉に関与した関係筋によれば、今回の新たな合意により、今後は少なくとも1日100台以上のトラックによる支援物資の搬入が可能になる見込みである。
この合意にはまた、ガザ地区の北部および南部における複数の国境通過地点の開設、ならびにヨルダンおよびエジプトからの人道支援ルートの再開も含まれている。さらにイスラエルは、ガザ全域において、パン屋や公共の炊き出し所を通じた食料供給を許可し、人道支援施設で使用される燃料の供給を、運用可能なレベルまで再開させる必要がある。また、海水淡水化プラントの電力供給網といった重要インフラの修復および建設作業の促進・支援も義務付けられている。加えて、EUは、イスラエルが人道支援関係者の安全を保証することを求めている。
「これらの措置は、すでに実施されているか、あるいは今後数日以内に実施される予定であり、大規模な支援が直接住民に届けられるべきであるという共通認識、ならびに支援物資がハマス(Hamás)に横流しされないようにするための措置が引き続き講じられるという理解に基づいている」と、カヤ・カラス(Kaja Kallas)上級代表の事務所は声明で強調した。なお、カラスは現在マレーシアを訪問中である。エストニア出身の彼女はまた、X(旧Twitter)上でも「我々は、イスラエルが合意したすべての措置を履行すると信じている」と述べた。 これは単なる警告ではない。来週火曜日にブリュッセルで開催予定のEU外相会合では、「連合協定(Acuerdo de Asociación)」をどのように扱うかが正式に議論される予定である。この協定については、スペインをはじめとする一部の加盟国が、イスラエルによる人権侵害を理由に全面停止を主張している。EUはすでに、イスラエルがガザにおいて人権侵害を行っていると公式に確認している。
この可能性が議題に上るとしても、実現の可能性は極めて低いとされている。というのも、この種の措置は全会一致を要し、イスラエルに対する批判的対応を避けたいと考える複数の国々――ドイツ、オーストリア、ハンガリー、ポーランドなど――の反対によって合意が遠いからである。しかし、この協定の見直しは確かに火曜日の議題に含まれており、カヤ・カラス(Kaja Kallas)が加盟国に提案した対応策リストの中に明記されている。
ただし、これは唯一の選択肢ではない。他にも9つの選択肢があり、その中には、加盟国の全会一致を必要とするものから、欧州委員会による「委任行為(acto delegado)」で実行可能なもの、さらには「特定多数決(mayoría cualificada)」によるものまで含まれている。この「特定多数決」では、加盟国の55%が賛成し、かつEU全体の人口の65%を代表する必要がある。例えば、連合協定の商業的な部分の一部を停止するにはこの方式が適用される。しかしながら、交渉関係者によれば、このような支持を集めるのは難しいとのことである。
検討されている選択肢の中には、人権侵害を理由とするイスラエル閣僚への個別制裁、貿易制限、武器禁輸(すでに複数の国が公然と要求している)、科学技術や学術分野の協力プログラム――例えば「エラスムス・プラス(Erasmus+)」や「ホライズン(Horizon)」など――の停止も含まれている。だが、連合協定の完全な停止と同様に、これらの措置も全会一致を必要とする。
カヤ・カラス(Kaja Kallas)が提示した文書からは、たとえイスラエルによる人権侵害が確認されていたとしても、EUが実際にイスラエルに対して行動を起こすための多数派を形成するのは非常に困難であることが明らかである。というのも、大半の措置には全会一致か、あるいは特定多数決が必要であるからだ。唯一、比較的容易に実行可能なのは「査証(ビザ)発給の停止」である。これは欧州委員会の単独判断で可能である。しかし、紛争中を通じてイスラエルに対して融和的な態度をとり続けてきた欧州委員会委員長ウルズラ・フォン・デア・ライエン(Ursula von der Leyen)の姿勢を考えると、加盟国から強い圧力がなければ、彼女がこの措置を実行することは難しいと見られている。
EU加盟27カ国のうち17カ国は、5月末の時点で連合協定第2条の見直しに合意していた。この条項は、「両当事者間の関係は人権および民主的原則の尊重に基づくものとする」と定めている。そして1カ月後、カヤ・カラス(Kaja Kallas)の事務所の法務部門は、イスラエルがこの第2条に基づく人権尊重の義務に違反している可能性があることを指摘する報告書を提示した。
それにもかかわらず、27カ国はいまだに決定的な措置を取っておらず、むしろ慎重なアプローチを選択してきた。まず最初に、彼らはカラスに対して、上記の報告書をイスラエル政府に提示するよう求めた。その理由について、複数の外交筋は次のように説明する――目的は必ずしもベンヤミン・ネタニヤフ(Benjamin Netanyahu)政権に対して制裁を科すことではなく、ましてやイランとの対立が激化する中でそれを行うことは避けるべきであるという立場もある。むしろ、イスラエルの姿勢を変えさせ、ガザへの人道支援物資の十分な搬入を一刻も早く実現させることが目的だというのである。
そして、この文脈において今回発表された合意が重要な意味を持つ。そもそも、この合意は前週末までに承認される予定であり、それにより合意が本当に実行されるかを見極める時間を確保するはずだった。しかし、時間的猶予は極めて限られており、イスラエルの政策に実質的な転換があったと断言するには至っていない。それでも、多くの国々――特にイスラエルの態度変化を引き出すこと自体を目的としていた国々――にとっては、すでに任務が達成されたと受け止められる可能性が高い。したがって、連合協定そのものに手を加える必要はないと判断するかもしれない。
EUは、現地で活動するすべての関係者、国連機関およびNGOとの調整を行い、これらの緊急措置が迅速に実施されることを確実にする準備ができているという。また同連合は再度、即時停戦を呼びかけ、すべての人質の解放を求め、エジプト、カタールおよびアメリカ合衆国による仲介努力を支持するとしている。
#Gaza #BenjaminNetanyahu #genocide
参考資料:
1. La UE anuncia un acuerdo con Israel para ampliar el acceso a la ayuda humanitaria en Gaza
2. Israel/Palestine: Statement by the High Representative/Vice President Kaja Kallas
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