エクアドル:暴力により30万人以上が国内避難民となるっている現状

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が発表した最新報告によれば、過去2年間で30万人以上のエクアドル人が国内避難民となった。主因は、組織犯罪の拡大とそれに伴う治安悪化である。UNHCRエクアドル代表のフェデリコ・アグスティによれば、避難を強いられた人々の大多数はエクアドル国民であり、恐喝、殺害、犯罪組織間の衝突など直接的な脅威から逃れるために自宅を離れている。この数字は、約3,000人・922世帯を対象とした全国調査から得られた。調査対象者の13%が、家族の少なくとも1人が避難を経験したと答えており、その原因の42%が「暴力」であった。

 

組織犯罪、貧困、排除――危険な組み合わせ

2024年には一時的に殺人件数が減少したものの、2025年前半には再び「非常に高い水準」で増加に転じたとアグスティは述べた。この現象は、ダニエル・ノボア(Daniel Noboa)が2024年初頭に「国内武力紛争(conflicto armado interno)」を宣言し、非常事態(estado de excepción)を発令、犯罪組織を「テロ組織」として指定した中で発生している。だが、UNHCRは、国内避難の背景には暴力だけでなく、貧困、社会的排除、教育・雇用の機会の欠如といった構造的要因も深く関与していると指摘している。これらの要因が「引き金」となり、国境を越えるのではなく、国内での移動を余儀なくされる事態が広がっている。

ただし国内避難民を生み出している要因の全てを犯罪組織のみに見出そうとするUNHCRの分析は正確ではない。今年に入りパロ・ケマド(Palo Quemado)やラス・ナベス(La Unión)では鉱物をめぐる争いが断続的に発生しており、軍と警が住民を弾圧している。住民は露天掘りに伴う環境破壊や飲み水の汚染から土地を守ろうとしているが、それに対し、政府は抗議活動を「犯罪」として、住民に対する刑罰を科すとともに、武装した警察部隊(Unidad de Mantenimiento del Orden:UMO)を派遣し住民の排除を強行している。 なお、ラス・ナベスにおける金・銅の露天掘り鉱山プロジェクトを行うCurimining S.A. はダニエル・ノボアの家族企業「Grupo Nobis」と関係があるとされる企業でもある。

 

避難元と避難先――主な被害地域

報告によれば、特に避難元として挙げられるのは以下の県である:

  • エスメラルダス

  • グアヤス

  • エル・オロ

  • アスアイ

  • ロス・リオス

 

一方、避難先となっている県には以下がある:

  • マナビ

  • ピチンチャ

  • コトパクシ

  • グアヤス

  • アスアイ

 

特にグアヤスとアスアイは、避難の出発地でもあり、到着地でもある「二重の役割」を果たしている。全避難民のうち22%は単独で移動しており、大多数は家族単位での避難である。このため、政府には教育、医療、女性・高齢者・子どもといった脆弱層の保護を含む包括的な公共政策の整備が求められている。

 

国際支援の減少が人道対応を困難に

問題はさらに深刻化している。というのも、米国による一時的な資金援助の停止を含め、国際資金の縮小がUNHCRの活動に影響を及ぼしているためである。現在、UNHCRのエクアドルでの活動予算は、必要額のわずか17%しか充足していない。これにより以下のような措置が取られた:

  • イバラ、クエンカ、ウアキージャスの事務所閉鎖

  • キトの拠点統合

  • スタッフおよび連携団体との契約の削減

 

UNHCRは、国内避難という「沈黙の非常事態」に対し、国家および地方自治体と協調して持続可能かつ効果的な対応策を立案する必要があると強く訴えている。

#UNHCR #DanielNoboa

 

参考資料:

1. Más de 300.000 desplazados internos en Ecuador por la violencia, según ACNUR

 

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