ブラジルのルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルバ大統領(Luiz Inácio Lula da Silva)は、メキシコのクラウディア・シェインバウム大統領(Claudia Sheinbaum)と電話会談を行い、両国間の経済・通商関係について協議した。ルラ大統領は、国際的な不確実性が高まる中で、こうした関係を一層強化する重要性を強調した。
シェインバウム大統領は、ブラジルの政府関係者および企業代表団のメキシコ訪問計画に言及し、「さまざまな分野での協力関係をさらに深める」と述べた。両首脳は、2025年8月27日・28日に、ブラジルの副大統領で産業・通商開発相も務めるジェラウド・アルクミン(Geraldo Alckmin)率いる公式代表団がメキシコを訪問することで合意した。
El presidente de Brasil, Luiz Inácio Lula da Silva, conversó este miércoles por teléfono con su homóloga mexicana, Claudia Sheinbaum, para debatir sobre las relaciones bilaterales entre ambos países.
— André Vieira (@AndreteleSUR) July 24, 2025
Según un comunicado del Palacio de Planalto, el mandatario brasileño destacó la… pic.twitter.com/kJlMR9XYs4
アルクミン副大統領は、両国企業の連携を促進する目的で、さまざまな業種から企業代表を同行させる予定である。ルラ大統領は、この訪問を契機に、ブラジルとメキシコの貿易協定を拡大するための交渉を開始することを提案。プラナルト宮殿は、「両国間の貿易拡大を後押しする内容になる」と発表している。
また、ルラ大統領は自身のX(旧Twitter)アカウントを通じて、メキシコがその地理的優位性を活かし、「港湾大国」となるべきだと強調した。具体的には、マンサニジョ、ラサロ・カルデナス、アカプルコ、サリナ・クルス、チアパス、プログレソ、セイバプレヤ、コアツァコアルコス、ベラクルスの各港に対し、海軍省が5,500億ペソ、民間部門が1兆5,000億ペソを投資していると説明した。
両大統領は、製薬、農業、エタノール、バイオディーゼル、航空宇宙、イノベーション、教育などの分野を戦略的な協力分野として位置づけた。なお、この8月の訪問は、米国による通商圧力が強まる中で実施される予定である。ドナルド・トランプ大統領(Donald Trump)は、8月1日からブラジル製品への関税引き上げを発表しており、数日前にはメキシコ製品にも30%の関税を課している。
アルクミン副大統領は、こうした一方的な通商措置に対し、アメリカ政府および企業との対話を続ける主要な交渉役でもある。
「明白な違反」としてブラジル、WTOで米国の関税措置を非難
ブラジル政府は、ジュネーブで開催された世界貿易機関(WTO)の一般理事会において、米国による関税導入を「恣意的かつ混乱的」であり、国際貿易秩序に対する重大な脅威だとして厳しく非難した。政府代表として出席した外務省経済財政局長フィリップ・フォックス=ドラモンド・ゴフ(Philip Fox-Drummond Gough)は、一部先進国による「一方的な通商措置」が国際秩序を脅かしていると警告した。
ゴフは、「現在、我々はWTOの信頼性および多国間貿易システムそのものへの前例のない攻撃を目の当たりにしている」と述べ、米国の「恣意的かつ混乱的な関税措置」がグローバルなバリューチェーンを破壊し、世界経済を高インフレと停滞のスパイラルに追い込む危険性を強調した。また、ブラジル政府は、多国間主義の再強化と発展途上国の連帯を呼びかけ、外交と対話による解決を優先する姿勢を改めて表明した。
さらに同氏は、これらの一方的措置は「WTOの根幹をなす原則への明白な違反」であり、関税を外交的圧力の道具として用いる動きは「極めて危険な転換」であって、国家主権を侵害する危険な前例を作るものだと非難した。他国の内政に干渉する手段として関税を利用するべきではないと強調している。
ブラジルがこのような主張を展開している背景には、ドナルド・トランプ米大統領が、ブラジルとの「不均衡な貿易関係」や、同国元大統領ジャイル・ボルソナロ(Jair Bolsonaro)に対するブラジル連邦最高裁(STF)の捜査状況を理由に、関税引き上げを正当化しているという事情がある。ドナルドはブラジルがボルソナロに対する「魔女狩り」をしていると非難しており、この理由故ブラジル製品に高関税を課す可能性を示唆していた。
ブラジル最高裁は7月18日、ボルソナロに対し、国外逃亡の恐れがあるとして足首への電子タグ装着と夜間外出禁止を命じていた。ボルソナロ被告は2019~2022年まで大統領を務めたが、2023年1月にルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルヴァ現大統領の就任阻止を狙ったクーデター未遂の疑いで起訴されている。ボルソナロ前大統領は裁判所の措置を「この上ない屈辱」と述べつつ、国外逃亡の意図はないと強調している。
米国によるブラジル製品への新たな関税は、2025年8月1日に発効する見通しであり、ブラジル政府は影響を受ける企業への支援策の検討も進めている。一方で、米国政府との交渉は難航している。今回の議題はブラジル主導で提起されたものであり、ルールに基づく国際貿易体制の尊重が、改めて国際社会に求められている。
#Lula #ClaudiaSheinbaum #JairBolsonaro #DonaldTrump
参考資料:
1. Claudia Sheinbaum y Lula sostienen llamada telefónica; abordan temas económicos
2. Lula propõe aprofundar relações econômicas e comerciais com o México
3. Na OMC, Brasil diz que tarifas não podem ser usadas contra soberania
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