以下はコミュニカン(Observatorio en Comunicación y Democracia:Comunican)および ラテンアメリカ統合財団(Fundación para la Integración Latinoamericana:FILA)による分析の日本語訳である。コミュニカンは、スペイン語圏において活動する組織であり、メディア、情報、民主主義に関する監視・分析・提言を行う「コミュニケーションと民主主義のための観測所」のこおである。この団体は、報道の自由、情報の透明性、メディアの責任、そして市民参加の促進など、民主主義の質を高めることを目的として活動している。特にラテンアメリカ地域における政治的・社会的プロセスに対する批判的かつ建設的な分析を提供しており、シンクタンクや市民社会団体、研究者ネットワークと連携することもある。報道・論説活動を通じて、メディアによる情報操作、検閲、フェイクニュース、政治権力との癒着といった課題を明らかにし、民主主義の健全性を守るための政策的・教育的提言を行っている。
本記事を掲載したNODALは本分析が自身の編集方針を必ずしも反映するものではないものの、地域の包括的理解に寄与するため重要であると述べている。
中国、日本、インド、スウェーデン、イギリス、フランス、ロシア、アメリカ合衆国……原子力発電所の新設を進めている、あるいは高度な計画を有する国々のリストは長く、従来からの主要国だけでなく、新たに原子力クラブに加わろうとする小国も含まれており、安価なエネルギーを得て健全な経済を目指している。
現在、合計33か国において稼働中の原子炉は422基あり、これは世界の電力のおよそ10.5%を生産している。国連の国際原子力機関(Organismo Internacional de Energía Atómica:OIEA)によると、2022年12月時点のデータでは、18か国で58基の原子炉が建設中であり、その国々には中国、インド、大韓民国(韓国)、ロシア、トルコが含まれている。
これらの国々は、エネルギーおよび環境問題に対する課題を認識した上で、原子力発電が自国の現在および将来にとって不可欠な電力源であると判断し、新たな発電所の建設を進めている。また、専門家によれば、原子力分野では研修プログラムが増加し、過去10年以上見られなかった規模の雇用市場の拡大が起こっているという。
中国は世界で最も多くの原子炉を建設している国であり、現在55基の原子炉が稼働中で、さらに19基が建設中である。中国に次ぐのはインドであり、8基の原子炉を建設中である。また、ロシアおよびトルコがそれぞれ4基、韓国が3基の原子炉を建設中である。2022年にはエジプトが初の原子力発電所の建設を開始した。これは2021年のアラブ首長国連邦(UAE)に続き、原子力を有するアラブ諸国としては2か国目である。
昨年開催された国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)では、20か国が原子力エネルギーの強化に賛成を表明し、二酸化炭素(CO2)排出量の削減に向けて、2050年までに世界の原子力発電能力を3倍にすることを約束した。
この声明は、原子力技術が気候危機に対する解決策の一部であるという完全な方向転換とその認識を意味していた。さらに、この声明は、多くの国々が原子力エネルギーに対する姿勢を変えたことを示している。原子力は、2011年のフクシマでの事故以来、軽視されてきた。
アメリカ合衆国政府は、今後10年間で核兵器に1兆ドル(約100兆円)を費やすことを提案しており、アメリカの核兵器の近代化にかかる総費用は今後30年間で2兆ドルに達する可能性があると政府は試算している。ただし、この巨額の資金の大部分は国防総省(ペンタゴン)に支出されるのではなく、軍需産業に注がれる予定である。
16人の民主党所属の上院議員は、ドナルド・トランプ(Donald Trump)に宛てた書簡の中で、新たな核政策が核軍拡競争のリスクを高め、核紛争の現実的可能性を増大させ、また、核兵器の不拡散に関する条約(Treaty on the Non-Proliferation of Nuclear Weapons:NPT)第6条に対するアメリカの約束を完全に無視していると表明した。この条項は、署名国に対して核軍拡競争を止め、軍縮を達成するために努力することを義務づけている。
この書簡の中で彼らは、新たな核ドクトリンは核兵器の使用可能性を高める政策を設計していると指摘している。その理由として、威力の小さい新型兵器(すなわち、使用される可能性が高い兵器)の配備を想定していること、ならびに核兵器の使用が想定される状況の範囲を拡大していることが挙げられており、これが新たな核軍拡競争を引き起こしかねないとしている。
ノースロップ・グラマン(Northrop Grumman)、ジェネラル・ダイナミクス(General Dynamics)、ロッキード・マーティン(Lockheed Martin)という三大防衛企業は、施設の改修、新型爆弾および最先端の発射機構の開発に関する新規契約で数百億ドルを受け取ることになる。近代化のための支出の多くは既存のシステムの改修に充てられるが、それらは特定の地域社会や政治的影響力を持つ産業部門を支えている。
そして、この莫大な支出はアメリカの軍事費全体のほんの一部にすぎない。なぜなら、トランプが議会に要請した今年度の連邦予算は、2026年9月までに合計1兆ドルの支出を含んでいるからである。
ドナルド・トランプは、ジョー・バイデン(Joe Biden)政権およびバラク・オバマ(Barack Obama)政権による、いわゆる核兵器および軍事核プログラムの「近代化」提案を引き継いだ。この近代化にかかる今後10年間の総費用は9,460億ドルであり、新型の大陸間弾道ミサイル、原子力ミサイル搭載潜水艦、そして新たな核爆弾工場の開発と製造が含まれている。これは、核兵器の不足という実態がまったく存在しないにもかかわらずである。
世界全体の核弾頭の保有数は依然として極めて高い水準にあり、アメリカ科学者連盟(Federación de Científicos Estadunidenses:FAS)という独立系研究機関によれば、2025年初頭の時点で9か国が合計約12,331発の核弾頭を保有していた。アメリカとロシアだけでその90%を占めており、アメリカが3,700発、ロシアが4,299発を保有している。これだけで地球上の生命を滅ぼすに十分な規模である。その他の核保有国には、フランス、イギリス、イスラエル、パキスタン、インド、中国、北朝鮮が含まれている。
その一方で、トランプは核戦争の危険性についての警告を繰り返し、核軍縮のための交渉を再開する意向を示してきたが、これまでのところ、その方向に向けた具体的な行動は一切取っていない。彼の初めての大統領任期中には、核関連装備への支出を20%増加させ、1980年代以来初めての新型核兵器の製造を開始し、W93ミサイルの開発に着手した。
米国とロシアは、主要な軍備管理条約から相次いで離脱している。両国とも、弾道弾迎撃ミサイル制限条約(ABM(Anti-Ballistic Missile Treaty)条約)および中距離核戦力条約(INF(Intermediate-Range Nuclear Forces Treaty)条約)を破棄している。戦略兵器削減条約(Strategic Arms Reduction Treaty:START)は現在も有効であり、各国が配備できる核弾頭の数を制限しているが、この条約も2026年2月に期限を迎える予定であり、現在のところどちらの国も延長の意志を示していない。
米政府は、イランのような他国に対しては核兵器の取得を避けるべきだと繰り返し警告しており、ロシア、中国、北朝鮮による核の脅威を強調し続けているが、その一方で自国の核兵器庫の拡大を選択している。
トランプが再び政権に復帰し、ヨーロッパにおける軍事支出の増額を要求していることにより、ヨーロッパは米国の「安全保障の傘」から脱却すべき時が来たとの認識が次第に強まりつつある。米国がヨーロッパを見捨てるか否かに関わらずである。その一方で、トランプは関税による圧力を維持し続け、「ヨーロッパ連合(EU)は“米国をぶっ潰すため”に設立された。EUの目的はそれであり、彼らはその目的を非常によく達成している」と発言している。
近年のヨーロッパ再軍備に関する議論では、必要な兵力数や兵器の種類が論点となっている。核問題も議題に上がっており、「核武装したヨーロッパ」という構想が浮上している。実際、米国は現在も複数のヨーロッパ諸国に核兵器を保管している。
冷戦の最も緊迫した時期において、ヨーロッパには最大で7,000発の核弾頭が配備されていた。これはゴードン・S・バラス(Gordon S. Barrass)が指摘したことであり、彼はロンドン・スクール・オブ・エコノミクス冷戦研究センター(London School of Economics Center for Cold War Studies)の理事会メンバーとして、これらの核兵器が1945年から1990年代にかけて抑止力として機能していたことを強調している。
現在でも、戦術核兵器であるB61爆弾の古いバージョン100発以上が、NATO加盟国であるベルギー、ドイツ、イタリア、オランダ、トルコの地下にあるWS3型格納庫に保管されている。当時、これらの国々はNATOの核攻撃任務を担っており、ドワイト・D・アイゼンハワー(Dwight D. Eisenhower)大統領時代の1950年代には、ヨーロッパの平穏を保つための抑止手段として機能していた。
これらの爆弾は二重鍵(デュアルキー)方式で運用されており、すなわち、ホスト国の承認とワシントンの許可がなければ使用できない。要するに、「二重の承認」が必要である。
この核兵器保管国リストにポーランドも2024年に加わることを希望し、「自国の東側防衛線を強化し、ウラジーミル・プーチン政権のロシアを抑止するために、核兵器の配備を受け入れる用意がある」と表明した。
エベン・ハレル(Eben Harrell)記者は『タイムズ・マガジン(Times Magazine)』において、これらの兵器を「秘密の核爆弾」と呼んでいる。というのも、これらの兵器を保有している政府は、その存在を公に認めてはいないものの、事実上「公然の秘密」となっているからである。
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