エクアドル:繰り返される政府による権利侵害とパスタサ県におけるワオラニの訴訟

(Photo:@WaoResistencia / X

2019年、パスタサ県裁判所はワオラニ(Nacionalidad Waorani)の主張を認め、エクアドル政府が自由で事前かつ十分な情報に基づく協議(Consulta previa, Libre e Informada、英語でFPIC)を行うことなく彼らの土地を石油採掘のための入札にかけたことを認めた。

本訴訟はエクアドル・パスタサ・ワオラニ民族調整評議会(Consejo Coordinador de la Nacionalidad Waorani de Ecuador-Pastaza:CONCONAWEP)が国家に対する保護措置を求める訴えを2018年に起こしたことから始まった。ワオラニは、同国アマゾン地域に居住する11の先住民族の一つである。彼らの訴えは彼らの土地における石油掘削のための入札を法律で決められたプロセスに則って行われていないことに基づく。自由で事前かつ十分な情報に基づいた協議(FPIC)が行われていないと主張した。この協議はエクアドル憲法で保障されている権利であり、また2007年9月13日の国連総会で採択された先住民族の権利に関する最も包括的な国際文書「先住民族の権利に関する宣言(UNDRIP)」でも基本的権利として規定されている。

2019年に行われた裁判でパスタサ県裁判所は訴訟を起こしたワオラニの16のコミュニティの主張を認め、国家に対して、約18万ヘクタールに及ぶ彼らの領土内(国家が「ブロック22」と呼ぶ区域)で、有効な事前協議なしに入札やいかなる活動も行ってはならないと命じた。その1年後の2020年、憲法裁判所はこの事例を、他の先住民族にも適用可能な先例を策定するためのものとして選定している。すなわちグスタボ・レディン(Gustavo Redín)環境法弁護士が説明するように、他のコミュニティも、自らの事前協議の権利が尊重されていないと考える場合、かつ、その状況が裁判所が定める基準に合致するならば、「パスタサにおけるワオラニの訴訟」を参照してその権利の履行の要求が可能となる、ということを意味する。

 

2025年1月、憲法裁判所はこの訴訟の審理に着手した。これは、ワオラニの訴訟が他の類似ケースにおける参照例(判例)として用いられるのに適切かどうかを検討・判断するためのものである。審理に着手した際、憲法裁判所は、パスタサ・ワオラニ組織(Organización Waorani de Pastaza:OWAP)、エクアドル先住民族連盟(Confederación de Nacionalidades Indígenas del Ecuador:CONAIE)、およびアマゾン地域先住民族連盟(Confederación de Nacionalidades Indígenas de la Amazonía Ecuatoriana:CONENIAE)に対して質問を送付した。これらは、ワオラニの組織形態、コミュニケーション方法、文化、信仰、そして事前協議についての理解を把握するためであった。

質問の内容には、「ワオラニとは何か」「『最近接触した人(ser de reciente contacto)』とはどういう意味か」「彼らの組織構造はどうなっているか」「統治の形態、言語、コミュニケーション手段は何か」「自由で事前かつ十分な情報に基づく協議(FPIC)とは彼らにとってどのような意味を持つか」といった事項が含まれていた。

 

ワオラニと、彼らを支援・助言する組織、たとえばアマゾン・フロントラインズ(Amazon Frontlines)などは、憲法裁判所の判事たちに対し、自分たちの領土を訪問するよう要請した。これは、コミュニティでの暮らしがどのようなものであるかを直接理解してもらい、住民の声を彼らの住まいの場で聞いてもらうことを目的としている。判事たちが現地を訪れることなしにそれらを理解しようとすることをワオラニたちは懸念しており、また、そのような状態の中、事前協議の尊重に関する先例として採用するかどうかの判断をしてしまうことを彼らは恐れている。この訪問を要請するために、ワオラニの人々や先住民族のリーダーたちは、2024年7月と2025年5月に首都キトにある憲法裁判所へ向けて行進を行った。

 

憲法裁判所が本件を通じて判例(jurisprudencia)を創出し、類似の案件に適用できる基準を確立することを決定した場合、事前協議なしに領土が入札にかけられたことが立証された他の民族が、これらの基準に基づいて自らの土地を保護するための法的手段を得ることになる。これは、エクアドルにおいてそのような先例が初めて作られることを意味する。

 

パスタサにおけるワオラニの訴訟、詳細解説

ワオラニを支援する保護措置

2018年、当時のエネルギー・非再生可能天然資源大臣カルロス・ペレス(Carlos Pérez)は、「第12回インターカンポス・ラウンド(XII Ronda Intercampos)」に参加した。このイベントは、石油を生産・購入する国々の代表者たちが外国投資や新たな市場を求めて集うものであった。エクアドルが入札の対象として提示した石油ブロックは、同国のアマゾン南中部に位置し、2025年時点でもまだ開発されていない地域が含まれていた。

この会合において、ペレスは、これらの土地に住むコミュニティに対して改めて協議を行う必要はないと発言した。なぜなら、2012年に、ラファエル・コレア(Rafael Correa)政権下ですでに協議が実施されているからであるという主張であった。

その後、アマゾン・フロントラインズ(Amazon Frontlines)のメンバーたちは、ワオラニの長老たちやエクアドル・パスタサ・ワオラニ民族調整評議会(CONCONAWEP)の構成員と面会し、ペレスが言及した2012年の協議が実際にどのようなものであったのかを尋ねた。また、「石油入札」という概念について、彼らがどのように理解しているかについても話し合った。

アマゾン・フロントラインズ(Amazon Frontlines)のメンバーであるリナ・マリア・エスピノサ(Lina María Espinosa)はGKに対し、「ワオラニにとって2012年の出来事は、協議のプロセスではなく、教育・保健・公共投資の提供のプロセスであった」と語った。彼らは「石油入札」が何を意味するのか理解しておらず、「自分たちの領土は売り物ではない」とも述べたという。

2018年、ワオラニの16のコミュニティはオンブズマン機関(Defensoría del Pueblo)の後援とエクアドル・パスタサ・ワオラニ民族調整評議会(CONCONAWEP)の支援を受け、環境省(Ministerio de Ambiente)、炭化水素省(Ministerio de Hidrocarburos)および国家法務長官事務所(Procuraduría General del Estado)を相手取り、事前、自由かつインフォームド・コンセント(十分な情報に基づく合意)に基づく協議を受ける権利が侵害されたとして、保護措置の申し立て(acción de protección)を行った。

 

2019年4月26日、パスタサ刑事保障裁判所(Tribunal de Garantías Penales de Pastaza)は、この保護措置を認めた。裁判所は、原告であるワオラニ・コミュニティの集団的権利、すなわち自己決定権および事前、自由かつ十分な情報に基づく協議の権利が侵害されたと認定した。その被害回復措置(medida de reparación)として、エクアドル国家は、ブロック22(Bloque 22)において、ワオラニ・コミュニティの領域内でいかなる活動を行うにあたっても、まず事前、自由かつインフォームドな協議を実施するよう命じられた。この協議には、国内外のすべての関連法規が適用されるべきであるとされた。

さらに裁判所は、国家がワオラニの領域を入札に出す際にも、同様の協議を繰り返す必要があると命じた。そのうえで、「明らかに(コミュニティは)この権利を理解しておらず、その内容の把握に到っていなかった」ため、「公務員が協議の前に訓練を受ける必要がある」と判決に記されている。

国家はこの判決に対し控訴したが、訴えは退けられた。一方、ワオラニ側も控訴した。彼らは、自らの権利をさらに広く保護することを求めており、この種の協議にはすべての国内および国際基準が適用されるべきであり、2012年のようにそのプロセスが説明されないようなことがあってはならないと主張した。ワオラニ側の控訴は受理された。

 

2019年7月11日、パスタサ県高等裁判所(Corte Provincial de Pastaza)は第一審の判決を支持し、再確認した。この決定により、国家は、ワオラニに属する18万ヘクタールの領域(ブロック22に含まれる)において、事前、自由かつ十分な情報に基づく協議を再度実施しない限り、入札・探査・石油開発を行うことはできなくなった。さらに裁判所は、「1956年以降に外部との接触を持った民族」であるワオラニのような先住民族の場合、協議は単なる参加の権利ではなく、「意思決定の権利」でなければならないと定めた。これは、アマゾン・フロントラインズのマリア・エスピノサ(María Espinosa)が説明するところによれば、「コミュニティが自らの領土の売却に関して立場を決定でき、その決定が尊重されるべきである」ことを意味している。

2019年8月21日、国家は特別訴訟(acción extraordinaria)を提起した。これは、憲法上の権利あるいは適正手続が侵害されたと主張して、判決に異議を申し立てようとするものであった。しかし、2019年11月18日、憲法裁判所(Corte Constitucional)はエネルギー・非再生可能天然資源省および国家法務長官(Procuraduría General del Estado)によるこの訴えを却下し、県高等裁判所(Corte Provincial)の判決を支持する決定を下した。判決において、ワオラニの権利は確かに侵害されており、また適正手続のすべての保障も適用されていたことが確認された。「特別保護措置」は、2019年4月26日と7月11日に下された二つの判決の執行を阻止する国家側にとって最後の法的手段であった。この決定は、ワオラニ族が国家を相手取り、180,000ヘクタールのアマゾンの熱帯雨林における石油掘削の阻止に成功した歴史的勝利をさらに強固にするものである。CONCONAWEP総調整官であり、原告の一人であるネモンテ・ネンクィモ(Nemonte Nenquimo)は、この勝利を受け「私たちは、石油よりも命が大切だということを世界に示し続けている。この判決を政府が必ず守るよう、私たちの闘いは続いている。私たちの闘いは、パスタサのワオラニの土地を永遠に石油から守ることだ。私たちには決める権利があり、そしてそれが私たちの決断だ」と述べている。

エクアドル先住民族連盟の会長であるハイメ・バルガス(Jaime Vargas)、およびアマゾン先住民族連合(CONFENIAE)の会長も、ワオラニを支持し、本判決を歓迎していた。ハイメ・バルガスは「この判決は、真実が常にワオラニ民族および他の民族の側にあったことを再確認するものである。シナンゴエ(Sinangoe)、ピアトゥア(Piatua)、サラヤク(Sarayaku)、リオ・ブランコ(Río Blanco)などの判決と同様、歴史的闘争に基づいて勝ち取ったすべての判決は、遵守され、実行されなければならない」と述べ、また、マルロン・バルガスも「この勝利は、ワオラニ民族の正当な闘争の再確認である。これはアマゾン全体のすべての民族にとって新たな勝利である」と述べた。

エネルギー・非再生可能天然資源省および国家法務長官が憲法裁判所に対して主張したとされる侵害の根拠には、「法的安定性」「効果的な司法的保護」「動機付けに関する保証および適時に聴取される権利における適正手続き」という憲法上の権利が含まれていた。しかしながら、憲法裁判所は、これらの国家機関が特別保護措置を「新たな審級」として誤って利用しようとしたと指摘した。「これら国家機関は、自らが主張する権利侵害が司法当局の行為または不作為とどのように関連しているかについて、明確かつ一貫した論理を構築していなかった」と同裁判所は指摘し、加えて、パスタサ県控訴裁判所は、ワオラニ判決を憲法裁判所に送付し、全国的な判例生成のための審査・選定を要請した。この点に関し、憲法の効力と最高性を保障するという使命を負う憲法裁判所には、政府に対して拘束力を持つ明確な基準を確立し、先住民族および自然の権利の尊重と保護を確保する責任と機会があるとされる。すでに憲法裁判所は、シナンゴエのA’Iコファン(Comunidad A’I Cofán)の勝訴判決を、その重大性と国民的重要性に鑑みて、全国的な判例生成のために選定済みである。したがって、本ワオラニ判決も、事前・自由・インフォームドな同意の集団的権利の侵害に関するものである以上、同様に選定されることが急務である。そうすることで、先住民族の同意の取得における特有の原則と基準が確立され、すべての先住民族が自らの領土防衛と自己決定権の尊重を認める法制度のもとで、抵抗戦略を強化する重要な一助となる。

 

ワオラニ事件の憲法裁判所による選定

憲法裁判所がワオラニの権利侵害を認め、県裁判所の判決を支持してから6か月後、今後類似の事件に適用され得る判例法(jurisprudencia)として本件を選んだ。これはまた、先住民族の事前協議の効果に関する法的基準(estándares)を確立する機会にもなった。

パスタサ・ワオラニ組織(Organización Waorani de Pastaza)の弁護士でもあるマリア・エスピノサがGKに対し語ったことは「裁判所が選定の枠組みで述べることは、拘束力のある先例(precedente de obligatorio cumplimiento)となる」。つまり、憲法裁判所がワオラニに有利な判決を支持した時点では、それはあくまで当該事件固有のものであった。しかし、「この事件を判例形成のために選定したということは、国家全体に通用する先例を打ち立てようとするものである」と彼女は説明している。

 

憲法裁判所がワオラニに送付した事件選定決定文書によれば、選定の理由は以下のとおりである:

  • 新規性(Novedad):裁判所は、最近の接触を持ったコミュニティ(pueblos de reciente contacto)を含む資源開発の文脈における事前協議に関して、明確な制限や基準をまだ確立していなかった。

  • 機会性(Oportunidad):この事件は、異なる世界観を持つ先住民族の入札プロセスにおける事前協議に関して、異文化間での基準(estándares interculturales)を確立する機会を提供するものであり、効果的かつ敬意あるコミュニケーションを保障するものである。

  • 国家的関連性(Relevancia nacional):多民族国家(Estado plurinacional)であり、天然資源の開発に経済的に依存しているエクアドルにおいて、事前・自由かつ十分な情報に基づく協議のための明確な基準を有することは、諸民族および国民性の権利の実効的な行使を保障するうえで不可欠である。

 

懸念される拡大

2023年、ギジェルモ・ラッソ(Guillermo Lasso)政権下で、エネルギー・鉱山省(Ministerio de Energía y Minas)は、アマゾン地域南東部における新たな石油ブロックの入札の意向を表明した。この地域で稼働中の唯一のブロックはブロック10であるが、住民たちは石油開発の拡大が、長年抵抗してきた他のブロックにも及ぶことを懸念している。その後、「差し違え(muerte cruzada)」によりラッソ政権が終了し、ダニエル・ノボア(Daniel Noboa)大統領が就任した。ノボアは、前政権の新規入札計画を継続し、その中にはブロック22も含まれていた。マリア・エスピノサはGKに対し、彼女たちは同省に対し、入札予定のブロックに関する情報公開請求を提出し、ブロック22にはすでに判決が下っており、入札不可能であることを明確にしたと語った。

しかし、アマゾン地域の諸団体によれば、同省の回答はあいまいであった。「スクンビオス(Sucumbíos)、オレリャナ(Orellana)、ナポ(Napo)における入札対象地域の調査、設計、研究に取り組んでいる」と述べるにとどまり、再び2012年の協議について触れ、「その年の協議では南東地域のブロックも対象となっていた」と主張したが、ブロック22についての明確な言及はなかった。

 

裁判所が事件を再開

2025年1月、憲法裁判所はこの事件を正式に受理(avocó conocimiento)した。つまり、裁判所は事件を詳細に審査し始め、ワオラニ側および国家側の意見を聴取し、「法廷助言人、裁判所の友(amicus curiae)」による意見書も受け付けた上で、最終的な判断を下すこととなった。法廷助言人とは裁判所に対して、当事者および参加人以外の第三者で、事件の処理に有用な意見や資料を提供する人のことを言う。

裁判所の審査開始から1ヶ月後の2025年2月24日、裁判所は以下のような命令を出した:

  • パスタサ刑事保障裁判所(Tribunal de Garantías Penales de Pastaza)およびパスタサ県高等裁判所(Corte Provincial de Pastaza)に対し、ワオラニ事件の保護措置訴訟の原本記録の全提出を命令。

  • 諸民族・国民性の管理・発展事務局(Secretaría de Gestión y Desarrollo de Pueblos y Nacionalidades)、CONAIE(全国先住民族連合)、CONFENIAE(アマゾン先住民族連合)に対して、当該事件に関する保有情報を提出し、ワオラニが「近年に接触を持った民族(pueblo de reciente contacto)」であるという特性、また同様の状況にある他民族に関する報告を作成するよう命じた。

  • CONCONAWEP(ワオラニ・パスタサ領域委員会)およびワオラニの16コミュニティに対しては、日常生活の実態と、その領域内での事業に関して「事前、自由、かつ十分な情報に基づく協議(consulta previa, libre e informada)」をどのように理解しているかについて説明を求めた。

 

マリア・エスピノサによれば、Amazon Frontlines側はこの審査が書面のみに基づいて行われることを懸念しているという。「住民を公聴会に呼ばず、コミュニティとの対話もなく、領域に足を運ぶこともせずに審査するのではないか」と述べている。

2025年2月の裁判所の要請文書を受けた後、Amazon Frontlinesのメンバーはパスタサ・ワオラニ組織(OWAP)の指導者やワオラニの長老たちと集まり協議した。彼らは「16のコミュニティを代表して裁判所の質問に回答するには、まず領域内での相談が必要であり、共同で回答する必要がある」と述べた。これを受けて、Amazon Frontlinesは裁判所に対し回答提出期限の延長を申請し、2025年5月13日までの延期が認められた。その日、ワオラニ120人の代表団がキトに到着し、裁判所に対して回答書を提出するとともに、「裁判官が彼らの領域を訪問することの重要性」を改めて強調した。2025年6月時点では、裁判所は事件に関してまだ判断を下していない。ワオラニと彼らを支援する団体は、「警戒を維持しつつ」、裁判所の決定を待ち続けている。

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参考資料:

1. El caso Waorani de Pastaza, explicado

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