(Photo:Enea Lebrun / Reuters)
2日間の対話の末、バナナ労働者の労働組合は国会の各会派の指導者らとの合意に署名し、コスタリカと国境を接するカリブ海側のボカス・デル・トロ州(Bocas del Toro)チャンギノラ(Changuinola)での道路封鎖を解除することに同意した。労働者らは、以前の福利厚生の一部を削減する年金改革に反発し、4月28日からストライキを開始していた。この合意には、バナナ産業労働者の主要な要求のひとつ法律45号の改正審議を国会本会議で実施することが含まれている。労働者たちが求めるのは法律45号の利益を保障するための新たな法制化だ。一方、依然として抗議活動が継続している法律462号の廃止については、国会議員らは約束していない。
国会議長であるダナ・カスタニェダ(Dana Castañeda)は「国会の理事会――これは理事会および国家の第一権力機関を構成する各政党の党首から成る組織である――は、2025年5月22日付の議事録に基づいて行政機関から提出された法案を、憲法および現行法に抵触しない限りにおいて、緊急の重要案件として審議・採択することを決定した。この議事録には、シトライバナ(Sitraibana)およびシトラビ(Sindicato de Trabajadores Bananeros Independientes:Sitrabi、独立系バナナ労働者組合)両労働組合の代表者ならびに、労働・労働開発大臣および商工業大臣によって署名されている」と述べた。
労働者たちにとって重要な争点のひとつは、チキータ社(Chiquita)による解雇通知である。同社は、ストライキに参加し職務を離れた労働者との労働契約を解除したと発表した。裁判所はストライキを違法と判断したが、労働者側は上訴中であり、法的手続きはまだ完了していない。
一方チキータと労働者との分断を前に、カスタニェダは「国会議長は、チキータ・パナマ社(Chiquita Panamá)と連絡を取り、同社の現状および将来的な展望について把握することに努める」と述べている。バモス連合(Vamos)の会派代表であるジャニン・プラド(Janine Prado)は、この点についてさらに詳述した。「国会として、チキータ社との橋渡しを行い、現状および将来の見通し――労働面、経済面の双方について――を把握する努力をしている。なぜなら、我々の関心はボカス・デル・トロ州のみならず、国全体における経済の再活性化にあるからである」。また、民主革命党(Partido Revolucionario Democrático:PRD)の会派も賛意を表明した。同党の会派代表であるハビエル・スクレ(Javier Sucre)は「我々の会派は、労働者やボカス・デル・トロ地域の代表らとの合意内容を明文化した法案であれば支持する用意がある。同地域の状況が改善されること、職を失わず、労働者が職場に復帰できること、そして合意が着実に履行されることが重要だ」と続けた。
バナナ農業・関連企業労働者組合(Sindicato de Trabajadores de la Industria del Banano Agropecuario y Empresas Afines:Sitraibana)の書記長であるフランシスコ・スミス(Francisco Smith)は「国会の会派代表およびダナ・カスタニェダ議長に信頼を寄せ、我々はこの合意に至った。この法案は、多くのバナナ労働者に利益をもたらすものと信じている。また、教員が提起した問題についても国会の議長および会派代表らが取り組むことで合意した。金曜日にはウジョア大司教(Monseñor Ulloa)と対話を行い、国民的和解への道を模索する予定である。金曜または土曜には、労働者に有利な法案が具体化することを期待している」と語った。
上述の通り法律462号の廃止または修正は合意に含まれていない。そのためスミスは「Sitraibanaは教員組合(gremios docentes)と連帯する。国会議長、会派代表と共に、法律462号の再検討と理解を目指して協力していく」と教員組合との連帯を維持する姿勢を強調した。また、同労働組合が教員組合との対話にも参加することを明らかにした。この対話には、国会議長のダナ・カスタニェダおよび会派代表らも同席し、法律462号の見直しに向けた合意を目指すものである。
ここで言う教員組合とは、パナマの公立教育に従事する教師たちが所属する労働組合や職能団体の総称であるが彼らもまた、教育条件の改善、労働権の保護、給与・退職制度の見直し、法律462号への抗議などを目的として、バナナ労働者と連携して抗議行動を行っている。公務員の定年や退職制度、労働条件に影響を与える内容が含まれる法律462号には教師たちが強く反発している。教員組合は、全国教職員統一連合(Unión Nacional de Educadores de Panamá:UNEP)や、独立系の教師組合など複数存在し、パナマ全土で大きな影響力を持っているが、バナナ労働者組合は教員組合と連帯・共同交渉する姿勢を示している。
バモス党のジャニン・プラドは当時バナナ部門に関係する法律45号の復活を目指した法案が、現在行政府(Órgano Ejecutivo)からの送付を待っている状況であると述べていた。また、同議員はさらに、法案の審議がすでに官報(Gaceta Oficial)に掲載されたことで、臨時会期中に本法案を扱うことが可能になったと説明した。「我々はこの法案が国会本会議に提出されるのを待っている。そうなれば、保健委員会(Comisión de Salud)における第一読会が正式に行われることになる」とプラド議員は述べていた。
その言葉の通り同日午後には、ジャケリン・ムニョス労働大臣(Jackeline Muñoz)が、国会本会議にて当該法案を提出した。法案はその後すぐに保健委員会(Comisión de Salud)で第1読会に入り、同日に可決された。この法案は、当該産業における特別退職制度の創設を目的としている。本日中に第2読会が行われる予定である。
なお、当初は高官および機関幹部の承認を目的に6月12日まで予定されていた臨時会期は、6月26日まで延長された。これは、次の通常会期が始まる直前で臨時国会が続くことを意味する。
チキータ・バナナによる数千人の従業員解雇
米国系のバナナ生産大手チキータは、パナマで続いているストライキに関連して大規模な解雇を5月23日にに発表した。同社が説明した解雇の理由は「当社のプランテーションでの業務を正当な理由なく放棄した」ことにある。「すべての」日雇い労働者はチキータの方針により解雇されることとなる。23日の発表はパナマ全土で進行中の社会保障制度改革への抗議行動であり、1カ月以上にわたる労働者たちのストライキを背景とする。チキータは影響を受けた人数の詳細を明らかにしていないが、ロイター通信が入手した匿名情報源の話によると、全従業員6,500人のうち約5,000人が職を失った。チキータ社はこの解雇をストライキにより「取り返しのつかない損害」が発生し、「少なくとも7,500万ドルの損失」が出たと述べていた。
政府は「会社は操業を維持するために必要な人員を解雇しなければならない。これは私にとっても心苦しいが、この(労働者側の)非妥協的な態度は良くない」と説明し、「このストライキは違法だ。労働法典に従えば、次のステップは『正当な理由に基づく解雇』である。なぜなら、これは事実上のストライキであって、合法的なストライキではないからだ」と付け加えた。
バナナ産業労働者組合と、チキータ、そして政府との見解には乖離があった。パナマのテレビ局Telemetroに対し、「462号法案を承認した議員らはバナナ部門に損害を与えた。したがって、ストライキは合法である」と反論していた。3月に可決された462号法案は、社会保障基金に関する改革を導入するものであり、年金の引き下げにつながる可能性がある。そのためこの法律の導入は大きな怒りを呼び、バナナ労働者を含む労働組合が、4月23日に全国的なストライキに加わる事態となった。
ボカス・デル・トロのバナナ労働者をストに追い込んだ法律の詳細
Sitraibanaのフランシスコ・スミスは、4月28日に開始されたストライキの冒頭において、社会保障庁(Caja de Seguro Social)の有機法(Ley Orgánica)改正が、2017年に制定された法律第45号(Ley No. 45)に基づく労働上の権利を侵害していると述べていた。スミスによれば、この改正はとりわけバナナ部門で働く男女に対する各種プログラムに悪影響を与えているという。これは、バナナ労働が伴う労働上のリスクに起因するものである。また彼は、この改革が経済的給付や補助金にも悪影響を及ぼしている点を強調した。教育大臣ルーシー・モリナール(Lucy Molinar)はTelemetro Reportaのインタビューで、法律第462号(Ley No. 462)が法律第45号に影響を及ぼすことを認めた。
2017年に国民議会(Asamblea Nacional)が承認した法律第45号は、2005年の法律第51号(Ley No. 51)に条項を追加するものであり、その改正を通じて法律第462号へと移行した。一方で、法律第45号は、バナナ企業および独立系生産者で働く労働者に対して、特別な権利と給付を認めることを目的として起草されたものである。パナマの法律第51号(2005年)に追加された条項とは以下のようなものであった:
1. 疾病による補助金(法律第51号2005年、第144-A条)
労働者は、疾病により労働が不可能な場合に日額補助金を受け取る権利を有する。この補助金は、直近2か月間に正当に納付された個人口座上の賃金を基に算出され、賃金の80%が支給される。
2. バナナ労働に起因する障害(法律第51号2005年、第158-A条)
心理的、生理的または解剖学的構造に起因する理由により、バナナ労働に特化した労働能力が3分の1以上低下した者は、障害者とみなされる。
3. 特別な基礎賃金(法律第51号2005年、第161-A条)
本部門に対しては、特別な月額基礎賃金が定められており、これは老齢年金の算出方式と類似した方法で計算される。
4. 老齢による早期退職(法律第51号2005年、第168-A条および第170-A条)
バナナ労働の性質上、危険を伴う条件にさらされる労働者は、早期退職することができる。
要件:
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男性は58歳、女性は54歳であること。
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バナナ部門において18年以上の勤務実績があること。
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社会保障庁(Caja de Seguro Social)に対し**少なくとも216回分の納付(クオータ)**があること。
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年金の計算:
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月額基礎賃金の80%が支給される。
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さらに、12回分の追加納付ごとに2%の加算がある。
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5. 制度の資金調達(法律第51号2005年、第168-B条)
この年金制度は、以下の拠出により資金が調達される。
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雇用主による給与の2.5%の拠出
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国家(政府)による給与の6%の拠出
これらの特別条項は、危険性の高いバナナ労働の特性を考慮して導入された社会的保護措置である。現在のストライキは、これらの権利が法律第462号の改正により侵害される恐れがあることに起因している。
経済複雑性オブザーバトリー(Observatory of Economic Complexity)によれば、2023年においてパナマは2億7,300万ドル相当のバナナを輸出しており、世界第13位のバナナ輸出国であった。
参考資料:
1. Bananeros aceptan reabrir calles y diputados hablarán con la empresa Chiquita
2. Dirigentes bananeros abrirán las vías tras acuerdo con la Asamblea Nacional
3. Gobierno prepara propuesta a la Ley 45 en conjunto con los trabajadores de las bananeras
4. US banana giant Chiquita fires thousands over Panama strike
5. Los detalles de la ley que tiene en paro a los bananeros en Bocas del Toro
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