[ダニエラ・パチェコのコラム]エクアドルの大統領選挙は単なる大統領選挙ではない

(Photo:@cnegobec / X)

以下は、ダニエラ・パチェコ(Daniela Pacheco)による記事の翻訳である。彼はコミュニケーター兼ジャーナリストでラテンアメリカを専門とする。進歩的政権の顧問であり、また、エロイ・アルファロ民主主義研究所(Instituto para la Democracia Eloy Alfaro:IDEAL)の協力者である。


エクアドルにおける選挙キャンペーンは、極めて不平等な状況下で展開されている。その中で、大統領候補である現職のダニエル・ノボア(Daniel Noboa)は、ほぼ全権を掌握し、国家のあらゆる資源を自身の利益のために利用している。エクアドルの法律により規定されているにもかかわらず、ノボアは国民議会(Asamblea Nacional)に対して正式な許可申請を行うことなく、選挙活動を続けている。彼の選挙公約は、あらゆる理由をつけてボーナスを配布するというものであり、それはまるで生放送を通じて票を買っているかのようである。

このようなやり方は、選挙キャンペーンに限られたものではなく、彼による国家そのものの運営のあり方でもある。ノボアは、主要な権力機関に対して前例のない統制を確立し、権力の集中を進めることで、民主主義における抑制と均衡の仕組みを弱体化させている。行政府からは、状況に応じた取引を通じて立法府を自身に従わせることに成功しており、司法制度もまた、政権側と完全に歩調を合わせて機能している。このような制度的な覇権により、ノボアは政治的・選挙的アジェンダを大きな障害もなく進めることができており、諸制度の独立性を損なうと同時に、現在の大統領選挙における民主的競争の条件を歪めている。

同様の観点から、国民選挙評議会(Consejo Nacional Electoral:CNE)の役割もまた、共犯的である。民主的公平性の保証機関として機能するどころか、CNEは現職大統領候補の違法行為を容認し、政権による公的行為の選挙利用や、選挙活動が禁止される期間中であっても国家放送を使った宣伝、さらには公的資源の使用を許している。そしてそれらに対して何ら監視を行っていない。

同機関内でわずかに存在する異論の声、たとえばエレナ・ナヘラ(Elena Nájera)委員のような人物は、軽視されるか孤立状態に置かれており、大統領権力に対する制度的な共犯関係が明白となっている。

 

そのような状態にありがながらもダニエル・ノボアとその取り巻きは、世論調査の結果が芳しくない時には、選挙不正の可能性を声高に主張することを自らに許している。そのために、投票所での投票用紙の撮影が禁止される措置が取られた。治安政策もまた、構造的暴力に真剣に対応するものというより、プロパガンダの一環として利用されている。各地の軍事化や「国内武力紛争」状態の宣言といった施策は、華々しく打ち出されたものの、目に見える、持続可能な成果は伴っていない。

データは、エクアドルが依然として組織犯罪に包囲されていることを示しており、憲法上の権利の停止、恣意的拘束の増加、警察や軍による暴力の告発が常態化しつつある。ノボアは、いわゆる麻薬取引撲滅戦争を選挙用のスペクタクルに変えてしまい、強権的な言説が、人権尊重や法治国家の原則を凌駕するようになっている。

その結果は壊滅的である。現在、エクアドルは地域で最も暴力的な国となり、2025年1月は同国の歴史上最も暴力的な月となった。1時間に1件の殺人が発生し、殺人はエクアドルの子どもたちにとって最大の死因となった。それにもかかわらず、ノボアも彼の閣僚たちも「フェニックス計画(Plan Fénix)」と政権が呼ぶ治安対策に関する文書を、たった半ページすらも用意していない。

国家が未曾有の治安危機に直面し、犯罪組織が国家機構を支配するなか、大統領とその一族は、再び注意を逸らすために「市民革命(Revolución Ciudadana)」の指導者たちを追及するという手段に出ている。たとえば、グアヤキル市長アキレス・アルバレス(Aquiles Álvarez)や、キト市長パベル・ムニョス(Pabel Muñoz)など、今回の大統領選挙決選投票で重要な都市を統治する人物たちが標的にされている。

経済・エネルギーの面でも状況は芳しくない。全国の何千もの家庭が影響を受けている停電は、放置されたインフラの劣化の証であり、この危機は軽視され、場当たり的に対処された。エネルギー大臣の辞任(事実上の解任)も、問題の本質的な解決には至らなかった。すなわち、公共資源の管理における計画性、投資、透明性の欠如である。責任を負うべき立場にあるノボア政権は、例によって過去に責任を転嫁し続けているが、その一方で現在の失敗は積み重なる一方である。最も危険な国で、最大14時間の停電が日常となっているのである。

国際的には、ノボアの判断は完全に支離滅裂である。最近のブラックウォーター(Blackwater)――アメリカの民間傭兵企業――との提携は、安全保障支援を装いながらも、倫理的に重大な問題を孕んでおり、国を民間の暴力、準軍事的論理、そして主権の放棄という危険な状況にさらしている。同時に、メキシコ大使館への侵入と、メキシコ政府から亡命を認められていた元副大統領ホルヘ・グラス(Jorge Glas)の逮捕は、戦略的に整合性のある外交ではなく、「金持ちの子どもの気まぐれ」としか言いようのない、極めて稚拙な知性に基づく外交政策を浮き彫りにした。

こうして、エクアドルは地域の中で孤立し、多国間の場での発言権を失い、「市民革命」期に築かれた主権と対話の原則からも遠ざかっている。

このような状況の中で、エクアドルは投票日を迎える。国家権力を制限なしに行使し、国家の資金で選挙運動を行い、政治と国民の苦しみを見世物にしてしまった大統領の下で。今回の選挙は、不平等であると同時に決定的なものである。与党側は、権力と恐怖に支えられた巨大な選挙機械を展開しているのに対し、野党候補ルイサ・ゴンサレスは、希望、再建、社会正義という語りに賭けている。彼女の勝利は、エクアドル史上初の女性大統領の誕生という歴史的な節目であるだけでなく、犯罪に蝕まれ、深く分断され、貧困にあえぐこの国における、政治の方向転換を意味するものである。

今度の日曜日にかかっているのは、単なる選挙ではなく、エクアドルの民主主義の行方である。「新しさ」の仮面をかぶった権威主義政権の継続か、それとも大衆的かつ主権的な基盤を持つ政治プロジェクトの再生か――エクアドル国民は、ただ自らの即時的な未来だけでなく、長年の無政府状態と暴力と欺瞞の果てに、どのような国を再構築したいのかを選ばねばならない。

ラテンアメリカ、そして世界は、エクアドルが再生のチャンスを手にするその瞬間に寄り添うべきである。

#エクアドル大統領選2025 #LuisaGonzales    #DanielNoboa

 

参考資料:

 

1. Ecuador: no es solo una elección presidencial   

 

 

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