(Photo:RSF)
2025年、エスメラルダスで1人のジャーナリストが殺害され、2022年には3人が殺害された。この2年間で、少なくとも15人の記者が脅迫のために国や都市を離れなければならなかった。
ジャーナリストのパトリシオ・アギラル(Patricio Aguilar)は2025年3月4日に殺害された。海岸沿いのエスメラルダス県キニンデ(Quinindé)のフンド・リモン(Fundo Limón)地区を取材中に武装集団に待ち伏せされ、30発の銃弾を浴び殺害された。殺害は新しい墓地の一画で殺し屋によって行われたとされている。そのほとんどが口径9ミリの薬莢が現場には残っており、犯人を特定するのに役立つその他の弾道証拠も発見されている。30年間ジャーナリストとして働き、コミュニティ紙「エル・リベルタドル・デ・エスメラルダス(El Libertador de Esmeraldas)」の編集者だったアギラルはグアヤキルの2つのメディアの特派員でもあった。殺される前日、アギラル記者は事件現場となったキニンデでの銃撃事件についてソーシャルネットワークで報告していた。彼は、同地域の暴力に関する報道が原因で脅迫を受けていたとされる。
近年殺害されたジャーナリストは彼だけではない。エクアドルの報道の自由を守るための団体「フンダメディオス(Fundamedios)」によると、2022年には3人のジャーナリストが殺害されている。殺人事件以外にもエクアドルのジャーナリストは危機に晒されている。2023年から2025年にかけて、少なくとも15人の記者が命を守るために国や出身地を離れることを余儀なくされた。その全員が、ジャーナリストとしての仕事を理由に脅迫を受けていた。
ジャーナリストの安全に対する組織犯罪の影響
数年前までは、ジャーナリストに対する暗殺や殺害予告といったこの種の暴力は、エクアドルでは問題にならなかった。これはジャーナリストへの迫害が軽視されていたと言うわけではなく、この国において再発するような問題ではなかったからである。
2018年、エル・コメルシオ(El Comercio)紙のパウル・リバス、ハビエル・オルテガ、エフライン・セガラの3人の記者が誘拐、殺害された。この事件はエクアドルに衝撃を与えた。コロンビアやメキシコなど、組織犯罪や麻薬密売が浸透している他の国とは異なり、そのようなニュースは一般的ではなかったからだ。この凶悪犯罪以来、エクアドルは記者の命が危険にさらされてしまう国のリストに加わった。ジャーナリストの安全に関する問題が目につくようになっている。この先例となる事件は、デモ行進の原因となった。あれから7年、捜査は続行されず、事件は未解決のままである。
2024年5月、ダニエル・ノボア(Daniel Noboa)大統領政府は、憲法裁判所の命令に従い、殺害されたジャーナリストの親族に、それまで機密だった文書を渡した。しかし親族たちは、そのファイルには「切除」と「矛盾」が含まれていると訴えた。
誘拐殺人事件発生当時の政権レニン・モレノ(Lenín Moreno)も続くギジェルモ・ラッソ(Guillermo Lasso)前政権も、この情報を秘密にしていた。このような対応はジャーナリストに対する侵略事件の司法にとって恐ろしい前例となった。
エル・コメルシオの記者に対する事件後の2019年から2021年にかけては彼らの仕事に対する報復として記者が殺害される事件はなくなった。しかし状況は2022年に変わった。この年は、メキシコとハイチを筆頭に、この数十年で最も多くのジャーナリストが殺害された年となった。ロイター・ジャーナリズム研究所によれば、ジャーナリストにとって最も死者が多いのは紛争地域ではなく、ラテンアメリカである。
ジャーナリストの保護に関する連携テーブル(Mesa de Articulación para la Protección de Periodistas:MAAP)は、2022年の殺人事件と2023年の脅迫事件の大半は組織犯罪によるものだと報告している。MAAPはメディアと社会組織の連合体である。この団体は報道の結果、生命と自由が危険にさらされているジャーナリストを支援するために設立された。
ジャーナリストにとってこのようなリスクは、この国で最も暴力的な年に発生する。2023年の暴力による死亡者数は、人口10万人あたり44.9人と史上最高だった。2023年、エクアドルは世界で最も犯罪が多い国のトップ10に入った。2024年はエクアドル史上2番目に暴力的な年であり、75分に1人が故意的に殺人を犯している。ジャーナリストが殺害されたり、命を狙われたりするこのような暴力の状況は、同国の報道の自由を脅かしている。
2023年10月、海岸沿いの都市マンタでは生放送をしていたジャーナリストたちが、組織犯罪グループの署名入りパンフレットによって脅迫を受けている。パンフレットには「我々は報道関係者を完全に特定している」と書かれていた。「警告しておく、マフィアに関わるな」とそこには書かれており、用紙の両側には銃弾も描かれていた。この殺害予告は、特に治安の悪化や暴力を取材する記者を狙ったもので、約14のメディアが報道を中止せざるを得ないほどの恐怖を引き起こした。
2022年に殺害されたジャーナリスト
2022年、エクアドルで3人のジャーナリストが殺された。1人目はマナビの記者ケルビン・マイク・カブレラ(Kelvin Mike Cabrera)で、2022年7月24日にマナビの県都ポルトビエホ(Portoviejo)で殺害された。彼はパートナーや友人と一緒にいるところを6発撃たれた。カブレラは、ネクソ・デジタル(Nexo Digital)チャンネルを設立し、毎日カントンや県のニュースを生放送で伝えていた。
2022年8月10日、海岸沿いの都市マンタの市民革命(Revolución Ciudadana)から市議会議員を目指していたジャーナリストのへラルド・デルガド(Gerardo Delgado)が、運転中のマンタ-モンテクリスティ間の高速道路で殺害された。彼は娘の目の前で撃たれた。デルガドはデジタルメディア「オラ・マンタ・TV(Ola Manta TV)」を設立していた。そこで彼は、市内での暴力、基本的なサービスへのアクセス不足、市民の不満などを取材していた。
2023年12月、メタスタシス事件の捜査の一環として、検察庁は、麻薬密売人レアンドロ・ノレロがジャーナリストのパトリシオ・アンチュンディア殺害について語ったチャットを、記者が所持していたビデオを通じて暴露した。しかし、誤ってデルガドは殺害されたとされている。
2023年12月、メタスタシス事件の調査の一環として、検察は麻薬密売人レアンドロ・ノレロ(Leandro Norero)のチャットを公開した。その中では記者が所持していたビデオをきっかけとした記者パトリシオ・アンチュンディア(Patricio Anchundia)の殺害計画が言及されていた。しかし、誤ってデルガドは殺害されたとされている。
2022年11月13日、エンリ・ビバンコ・カストロ(Henry Vivanco Castro)は自宅で死亡している状態で発見されている。彼はペルーとの国境にあるエル・オロ県ワキジャス(Huaquillas)に住んでいた。彼の兄弟によると、遺体には拷問の痕跡があった。ビバンコは全国ジャーナリスト連盟(Federación Nacional de Periodistas:Fenape)のメンバーだった。2022年のエル・オロ県エル・グアボ(El Guabo)郡で地域の文化や伝統を祝う一環として開催された女王選出大会の陪審員であった。彼はこの美人コンテストにおける不正行為を糾弾していた。
2023年から2025年にかけて追放されたジャーナリストたち
2023年だけでも、9人のジャーナリストが脅迫のために、国や故郷を離れなければならない状態に追い込まれた。最初に国外に出たのは、GKに勤務していたカロル・ノロニャ(Karol Noroña)だった。2023年3月24日、ノロニャは命を狙われているという情報を入手した。この1年半、記者は国内の刑務所危機を取材していた。国内の刑務所内では2021年から2025年にかけて、500人以上が殺害されていた。
2023年4月、「鎖なきジャーナリスト財団(Fundación Periodistas Sin Cadenas)」は、身元が明らかにされていないジャーナリストの2例目を報告した。この記者は、8ヶ月に及ぶ脅迫の後、国外に出なければならなかった。この記者は検察庁に脅迫を報告したが、効果的な対応は受けられなかった。彼の訴えは「脅迫」として登録され、「殺害予告」としては登録されなかった。
2023年6月、「マヘスタ・テレヴィシオン(Majestad Televisión)」のジャーナリストでニュースキャスターのリセット・オルマサ(Lissette Ormaza)が交通事故の被害にあった。彼女はまた、ジャーナリストとしての仕事に関する脅迫も受けていた。彼女は命を守るため、働いていた街を離れなければならなかった。
その1ヵ月後の2023年7月、ポータルサイト「ラ・ポスタ(La Posta)」のオーナーであるモニカ・ベラスケス(Mónica Velásquez)とアンデルソン・ボスカン(Andersson Boscán)は、自分たちと娘の命に対する脅迫を受け、エクアドルを去っている。
9月には、アマゾンのジャーナリスト(匿名)も、複数の犯罪行為と殺害予告の被害に遭い、国を離れた。このジャーナリストは、7月に武装したフードをかぶった男たちに襲われている。背後から近づいた男たちはパソコンとハードディスクを渡すよう脅迫したと、ジャーナリスト保護協会のチームに話している。その人物の仕事に対する脅迫はこれが初めてではなかった。Fundamediosの警告によると、このジャーナリストはすぐに地域警察隊にこの襲撃を報告した。そこで彼は、加害者の身体的特徴を示すよう求められた。しかし結局、警察への被害届は提出されず、検察庁への告発も失敗に終わった。なぜなら「不法に、ジャーナリストは明らかに知らない加害者の名前と姓を提出するよう求められたからである」とFundamediosの報告書は述べている。
2023年10月、あるジャーナリスト(匿名)が、家族と一緒に命を狙われる脅迫を受け、別の都市に移動を余儀なくされている。このジャーナリストはある組織犯罪グループから脅迫を受けていた。その人物は特定の犯罪者集団だけを取材しており、それ以外のギャングの犯罪は取材していないと非難されていた。
同じ10月、アマゾニアのラジオ局の創設者である2人のジャーナリストが、直接的な脅迫を受け、転居を余儀なくされた。両名は「口封じ」の対象者リストに入っていると告げられたという。
メタスタシス事件の一環として、麻薬密売人レアンドロ・ノレロのチャットが公開されるも、その中で、汚職ネットワークへの関与が疑われ、司法から逃亡中のハビエル・ホルダン(Xavier Jordán)が、ノレロに対して、自分に批判的な記事を書いたジャーナリストたちを攻撃するよう依頼していたことが明らかになっている。
2023年12月27日、同国の沿岸地方で、安全上の理由から名前を伏せたジャーナリストが襲撃を受けた。彼の車は公共施設の外で有毒物質で破壊されている。このジャーナリストは数カ月前から、自治体が土壇場で発注する契約の不正を告発していた。発表から8日後、彼の自宅に「黙るか、死ぬかだ」という脅迫状が届いた。このジャーナリストは、半年前に最初の脅迫を報告していた。しかし、カントンの検察は何もしなかった。脅迫はますますひどくなり、ジャーナリストは転居を余儀なくされた。彼は2024年に追放された最初のジャーナリストとなった。
2024年1月19日、MAPPは国外追放されたジャーナリストの2例目を報告した。キャサリン・エレディア(Katherine Heredia)はキト市とピチンチャ県を調査していた。最初の事件は2023年8月に発生し、彼女は何者かに尾行されていた。その9日後、最初はホームレスだと思った路上生活者が、彼女にコインを要求してきた。この脅迫は、彼女がピチンチャ県知事で市民革命のパオラ・パボン(Paola Pabón)が約束した公共事業と票の交換に関する報告書を発表した後のことだった。脅迫は激しさを増し、運転中に銃を突きつけられたこともあったとエレディアは述べている。2023年8月24日、彼女の両親の家は破壊され、彼らは押し入ろうとさえしたと言う。2023年10月3日、自宅に駐車していた両親の車のフロントガラスに、彼女のIDカードのコピーと、彼女に対する暴力的な殺害予告が書かれたメモが入った封筒が残されていた。メモには組織犯罪グループの署名があった。それをもって彼女は検察庁に告発をしている。
2024年1月25日、「人権のための連合(Alianza por los Derechos Humanos)」のために働き、「採掘のないキト(Quito sin minería)」などのいくつかの集団に参加してきたジャーナリスト兼活動家、エルサ・ベハラノ(Elsa Bejarano)の亡命が発表されている。その6か月前、彼女は「地中の鉱物ではなく、お前を埋めたらどうだろう」という脅迫メッセージを受け取った。彼女は検察庁にこの脅迫を糾弾したが、2023年12月以降、彼女への嫌がらせや脅迫がさらに悪化した。知らない番号からの電話が頻繁にあり、彼女の住むマンションの警備員が「彼女を探しに来た人物がいたが、彼女が不在だと分かると立ち去り、記録を残さなかった」と報告している。このようなことが少なくとも2回あ離、2023年12月末、彼女は命の危険が高いため、出国を決意した。
4月26日、MAPPは今年4人目の亡命者を報じた。この記者の名前は伏せられている。その数日前、この記者は「地元の関心を引く内容」を掲載したところ、殺害予告の電話を受けた。
2024年5月21日、TC Televisiónのジャーナリスト、ホセ・ルイス・カルデロン(José Luis Calderón)が、1月9日のテロ攻撃で精神的に深刻な影響を受けたため、亡命することを決めたことが明らかになった。生中継されたこのテロ事件で、カルデロンは、ショットガンを首に向けられ、上着にダイナマイトを仕掛けられながら、犯人たちと話し合い、事態を収拾しようとした。襲撃から1週間以上後、彼が住んでいた団地の監視カメラには、警備員に銃を渡す2人の男が映っていた。翌日、警備員は解雇されている。ジャーナリストは安全を感じられず、TCに戻ることができなかった。さらに、心的外傷後ストレス障害と診断された。
2024年11月4日、MAPPはジャーナリスト、ホルヘ・ナバレテ(Jorge Navarrete)の生命と尊厳を守るため、国外への緊急移送のプロトコルを発動した。その年の10月22日、ナバレテはエクアドル北部の国境にあるとされるコカ・プランテーションに関する報告書を発表していた。出版直後、ナバレテは出版物の削除を要求する殺害予告を受け取った。その1週間後、さらに警告を受けている。11月2日には、3度目の殺害予告と、住んでいる街を離れるよう要求する警告を受けた。
2023年から2024年にかけてのジャーナリストに対するその他の脅迫
2023年11月24日、ある沿岸地方のジャーナリスト(匿名)が、テキストメッセージで殺害予告を受けている。彼は「ヒキガエル(sapo)」と呼ばれ、情報を公開し続ければ殺されると警告されている。自宅に手榴弾を仕掛けるとまで言われたという。このジャーナリストは、こうした脅迫を検事総長に3度報告しようとしたが、電気が通っていなかったため、対応してもらえなかった。そして11月30日、ついに彼は訴状を提出した。
2024年1月12日、ラジオ・インテグレイシオン(Integración)のジャーナリスト(匿名)が、国境沿いのカルチ県トゥルカン市で、裁判官、協同組合の経営者、国立銀行、最高裁判所(エクアドルには存在しない機関だが)に宛てた犯罪集団からのメッセージが書かれた脅迫パンフレットを読まされた。ものを読むよう要求したものたちは緊急に情報を伝えるよう言った。文章には、「判決」を受けたとされるさまざまな当局の名前が書かれていた。
2024年4月6日、JipiTVテレビ局のニュース番組『エル・エステラル(El Estelar)』の司会者でありジャーナリストのハベル・ブラボ(Jaber Bravo)の家のガレージの床に4発の銃弾が投げ込まれた。その2日前、彼はニュース番組内で、ヒピハパ市の公園が照明不足であることを批判し、さらに「市は他の些細なことに気を取られている」と述べ、陥没穴に人が転落した事故についても言及していた。このような脅迫を受けたため、彼は自分の生活と家族を守るために調査活動を中止する決断を下した。
2024年8月、ジョナサン・ケサダ(Jonathan Quezada)は、エルナン・チェレス(Hernán Cherres)判事の名誉を侮辱した容疑で15日間の禁固刑を言い渡された。判決が批准された2日後、彼は命に対する深刻な脅迫を受けている。ケサダは、ボリバル県と彼の町グアランダにおける司法の不始末を調査していた。
数字で見るエクアドルのジャーナリスト事情
2025年3月5日、表現の自由特別報告者事務所は、エクアドルにおける主に組織犯罪グループによる暴力とジャーナリストの安全に対するリスクの状況に関するコミュニケを発表した。
声明によると、犯罪組織は2023年から2024年にかけて、ジャーナリスト、メディア、コミュニケーション従事者を複数の方法で攻撃した。報告者団は、脅迫、ソーシャル・ネットワーク上での攻撃、身体的・言葉による攻撃、襲撃を記録した。
エクアドル・コミュニケーション評議会(Consejo de Comunicación de Ecuador)によると、2024年の間に131件の攻撃に関する警告を受け、2023年から2024年の間に少なくとも15人のジャーナリストが追放された。また、RELEはコミュニケの中で、少なくとも25人のジャーナリストが監視されていると組織や記者が報告していると述べている。
Fundación Periodistas Sin Cadenasの登録では、2023年から2025年の間に19人のジャーナリストが追放されている。2024年、同財団はエクアドルでのジャーナリストに対する229件の攻撃を報告した。また、2025年1月だけでも、ジャーナリストに対する襲撃事件が10件報告されている。
ジャーナリストを保護しないエクアドル国家
2022年11月、エクアドルの国民議会は新しい「通信法(Ley de Comunicación)」を承認した。これは、当時の大統領ギジェルモ・ラッソが以前の法律を廃止した後のことである。2013年にラファエル・コレア(Rafael Correa)政権下で制定された以前の法律は、国際的な表現の自由擁護団体から「制限的」と見なされており「口封じ法(Ley Mordaza)」として知られていた。改革された2022年法が施行されるためには、その運用方法を定める規則が必要だった。これらの規則は2023年5月に準備されることになっていたが、2023年8月にようやく公表された。
同国のメディアを規定するこの規則には、ジャーナリストの保護と予防の仕組みが概説されている。Fundamediosのエグゼクティブディレクター セサル・リカウルテ(César Ricaurte)は2023年9月、GKに対し「これは、ジャーナリストが保護されることについて国家が責任を負うことを意味する」と述べている。同規定はまた、ジャーナリストの防止と保護のためのメカニズムを担当する「コミュニケーション開発・促進評議会(Consejo de Desarrollo y Promoción de Comunicación)」の設立も求めている。機構は以下のメンバーで構成される:
検事総長室
国防省
内務省
外務省
女性・人権省
リスク管理事務局
全国選挙評議会(CNE)
市民社会組織代表
メディア関係者代表
これらの機関は毎月会合を開き、緊急事態が発生した際にも対応する。ジャーナリストへの殺害予告などがあった場合、フォローアップを行う。しかし、予算不足のため、機構は十分に機能していない。ジャーナリスト保護機構の会長であり「Nos Faltan 3」のディレクターであるリカルド・リバス(Ricardo Rivas)は、2024年と2025年の予算が財務省に却下されたと語る。リバスは、「財務省の要求に応じて、構造的および法的な調整を進めており、予算配分の可能性を探っている」と述べた。予算がない中でも、ジャーナリスト保護の仕組みは通信評議会と連携し、活動を続けている。たとえば、攻撃警報やジャーナリストへの暴力に関する統計データを収集し、警報ビジュアライザーにまとめている。「以前はそのようなデータは存在しなかった」とリバスは付け加えた。この機構はジャーナリストが暴力を受けている場面に遭遇した際の対応方法について、ジャーナリストや軍隊を対象とした研修を実施している。また、暴力防止の一環として、民主主義研究所(Instituto de la Democracia)の支援を受け、738人の公選候補者に対する研修も行っている。同協議会には、脅されている記者の移転を支援する資金はないが、その他の支援は行っている。例えば、2024年には30件の告訴を検察庁に提出し、脅迫された記者のケースについて23件の起訴を検察庁とともに行った。また、精神的なサポートも行っている。リバスは予算不足が国家レベルでの機構の存在と人員不足に影響していると説明する。しかし「我々の可能性の範囲内で大きな貢献」をしているという。「1年間で、我々は資金を必要としない特定の事柄において多くの進歩を遂げることができましたが、それは資金を提供する国の責任を奪うものではない」と彼は付け加えている。
国家の行動不足を補うため、2023年9月初めにMAPPが設立された。この市民社会によるイニシアチブは、Fundamedios、Periodistas sin Cadenas、Nos faltan 3という3つの組織と、GKおよびPlan Vという2つのメディアが結集して構成されている。この連携テーブルは、脅迫を受けたジャーナリストを支援し、その生命と自由を守ることを目的としている。具体的には、脅威にさらされている記者が安全な場所に移動できるよう支援している。また、出版物を通じて事件の可視化も行っている。
国連教育科学文化機関(UNESCO)は、世界的な啓発活動、能力開発、「ジャーナリストの安全と不処罰問題に関する国連行動計画」の実施調整を通じて、ジャーナリストの安全確保を推進している。3月4日のパトリシオ・アギラルの殺害を非難し、犯人が裁判にかけられるよう完全かつ徹底的な捜査を求めている。このような犯罪に対する不処罰は、地域社会から必要な情報を奪い、ジャーナリストを黙らせようとする者を増長させるだけであるため、容認してはならないとユネスコ事務局長のオードリー・アズレイ(Audrey Azoulay)は述べている。
地元では有名なジャーナリストであったパトリシオ・アギラルの殺害は、疑問を投げかけ続けている。当局が可能性のある犯行原因を調査する一方で、ジャーナリストの経済状況について新たな事実が判明した。司法審議会の扶養年金統一システム(SUPA)からの情報によると、アギラルは1年以上扶養料の未払いで借金を抱えていた。公文書によると2024年1月以降停止された支払いは2,924.53ドルに相当する。この負債が、彼の殺人に直接関係しているかどうかは断定されていないが、捜査線の一部である可能性は否定できないとされている。また、捜査当局はジャーナリストに対する個人的な対立や脅迫が過去になかったかどうかも調べている。扶養手当の借金が明らかになった今、彼の個人的、経済的な背景にも捜査の焦点が当てられるかもしれない。 この借金が彼を弱い立場に追いやったり、脅したりしたのか、それとも彼の凶行とは無関係なのか。答えはまだ司法の手に委ねられている。その一方で、パトリシオ・アギラールの犯罪は、ジャーナリストという職業と、この事件の解明を求めるキニンデの地域社会に騒ぎを引き起こし続けている。
参考資料:
1. Asesinatos y exilios: la crítica situación de los periodistas en Ecuador
2. Asesinan a balazos a periodista en Esmeraldas
3. Fundamedios/ALERTAS
4. UNESCO Director-General condemns the killing of journalist Patricio Ernesto Aguilar Vásquez in Ecuador
5. Asesinato de Patricio Aguilar, en Quinindé: ¿El periodista tenía una cuantiosa deuda?
6. 27 JOURNALISTS KILLED IN 2025: consult CASUALTIES
7. Ecuador: RSF condemns the murder of journalist Patricio Aguilar and calls for an urgent investigation
8. Ecuador: Lissette Ormaza Wounded In Assassination Attempt Disguised As Traffic Accident
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