映画:ホラーの中にしっかりとしたメッセージのある「Chuzalongo」

映画『Chuzalongo(チュサロンゴ)』は、エクアドルで作成された映画に対してもまた国内の関心が高いことを証明する作品となっている。2024年に最も視聴されたエクアドルの映画Chuzalongoは、国内外のいくつかの映画祭にも出品されたエクアドル発のホラー映画として歴史上最も興行収入を上げた作品でもある。


『Chuzalongo』は伝説とリベラル革命を交差させることで、宗教や人種差別などのテーマに触れ、当時の問題を現在にもつながる形で描いている。それと同時に現代にも通じる普遍的なメッセージを伝えている。本作において重要な要素は以下の通りである。

伝説と幻想:Chuzalongoというキャラクターを通じて、血を吸う子どもという幻想的な要素を取り入れている。シエラ地方のカトリック司祭が迷子の子供を引き取るが、この子は人間の血を欲するという問題を抱えている。

歴史的背景:映画は19世紀末のリベラル革命、つまりエロイ・アルファロの時代に設定され、当時の社会情勢や政治的背景が物語の重要な要素となっている。

社会問題:映画は宗教や人種差別といった当時の社会問題を扱い、これらの問題が現在にも通じることを示している。

地域文化:エクアドルの山岳地帯の風景やキチュア語の使用など、地域文化が色濃く反映されている。衣装、音楽、ロケ地は1895年の歴史的な雰囲気を正確に再現するために細心の注意が払われた。撮影は主にコタカチとピンタで撮影され、トゥパク・ガラルサの撮影はアンデスの風景、農場の外観と内部を利用して、不気味でありながら美しい時代に合った雰囲気を作り出している。

 

この地を徘徊する悪魔は山の子である

当初、この映画は非常にローカルなものと見なされる可能性があった。カヤンベやオタラボの地域で撮影された山岳風景、キチュア語の使用、そして純粋にアンデス地方の伝説であるチュサロンゴに基づいているためである。さらに、タイトルも問題になる可能性があった。しかし、実際には逆の結果となり、ディエゴ・オルトゥニョ(Diego Ortuño)監督兼脚本家は非常に満足している。『Chuzalongo』はペルーやスペインでも公開できるよう監督は努めている。また、映画をストリーミングプラットフォームに配信するための交渉の準備も始まっている。ペルーでは『Chuzalongo』の公開に期待が寄せられている。本作ではペルーの俳優であるブルノ・オダル(Bruno Odar)が主演を務めている。そして、伝説はペルーでは知られていないが、保守派とリベラル派の間の争いというテーマは全世界の視聴者にも共感を呼ぶものである。

 

なぜ主人公が「Chuzalongo」なのか

ディエゴ・オルトゥニョは、先祖たちが世代を超えて口伝えで伝えてきた物語とメッセージを映画として撮影することを決意した。このような伝承は失われつつあるものである。そのため、ローカルな物語でありながら、映画は普遍的なメッセージを伝えることを目指している。彼は、2018年に最初の脚本を書いた。Chuzalongoは、女性、特に長い髪の女性を攻撃する農村の小人として描かれている。オルトゥニョはこのキャラクターの出現を説明するために長期間調査を行った。

監督は「エクアドルのホラー伝説を映画に移すことに興味がある。それは魔法とリアリズムが同居しており、短くて面白い物語を通じて我々の国の現実を伝えることができる。私の映画は善と悪を探求しているのだ」と語る。オルトゥニョはフィクションに鋭い目を持ち、『Chuzalongo』が子どものように偽りの中の優しさを用いて犠牲者の心を掴む姿を描き出すが好きである。そして、山々のささやきと森の闇の中で、人間の血を吸うモンスターへと変わる。

 

本作はエクアドルが停電の危機に直面している最中という、社会的にもくらい時期に公開された。そのような状況と対峙するかの如く国民をパッと明るく照らすのは本作の持つ映像の美しさ、エクアドルの物語の普遍的な視点、そして多くの俳優が先住民コミュニティに属しているということにある。「自分の国、自国の人々を見るのは素晴らしい!」という感覚が効果的な口コミとなり、上映期間後半の成功に繋がった。「アンデスの世界は、風景から人々、伝統から習慣、言語まで、美しい視覚に満ちている。私たちにはまだ探索されていない大きな豊かさがあり、それがあまりにも近くにあるためにその価値を認識していないのかもしれない」とディエゴ・オルトゥニョは語る。

 

『Chuzalongo』はの作成予算はUSD 360,000である。これは公式な数字である。この映画は、Dominio(エクアドル)、Audiovisual Films(ペルー)、Clack Audiovisual(スペイン)、Retrogusto Films(カナダ)の共同制作である。イベロメディアプログラムとBlood Window Labの支援、そしてフィクション長編映画制作のためのクリエイティビティとイノベーションの促進機関からの資金も得た。オルトゥニョは、エクアドル映画ではよくあることだが、さまざまな種類の協力が未計上であると説明している。映画制作は集団的な努力であり、今回はエクアドルの作品でありながら国際的な視点を持つ作品を創り上げることができたのである。

キャストは経験豊富な俳優と新人俳優が混在している。ウォルフラミオ・シヌエ(Wolframio Sinué)は、映画『Prueba de vida』やテレビシリーズ『Los Sangurimas』などで知られるベテラン俳優である。また、ペルーの俳優ブルノ・オダルは、シリーズ『Al fondo hay sitio』や映画『Monos con gallinas』、『Octubre』で有名である。さらに、EnchufeTVでの出演で若者に知られるアレックス・シスネロス(Álex Cisneros)も長い劇場およびテレビの経歴を持っている。新人俳優の中では、トア・ティトゥアニャ(Toa Tituaña)やレニン・ファリナンゴ(Lenin Farinango)、シサ・ファレス(Sisa Farez)といった先住民が参加している。

本作はメキシコのホラーとファンタジーに特化したイベント、マカブロ映画祭で賞を受賞し、また、エクアドルで初めてゴヤ賞のコンペティション作品として出品されたものでもある。日本に来るかは未定である。

他の映画作品等の情報はこちらから。

 

参考文献:

1. La película ecuatoriana ‘Chuzalongo’ estará en el festival de Cannes
2. El ‘Chuzalongo’ llega a los cines de Ecuador para sembrar el terror
3. ‘Chuzalongo’ es la película de Ecuador más vista de 2024, ¿por qué tuvo éxito?

 

作品情報:

名前:  Chuzalongo
監督:  Diego Ortuño
脚本:     Diego Ortuño
制作国: Ecuador
製作会社:Dominion (Ecuador), Audiovisual Films (Peru), Clack Audiovisual (Spain), Retrogusto Films (Canada) 
時間:   95 minutes
ジャンル: Horror、Fantasy、Historical Drama

 

 

 

 

 

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