(Photo:Cesar Munoz / AP)
2025年1月25日の夜、エクアドルの人気リゾート地サリナスのチピペビーチで、エクアドル運輸委員会(Comisión de Tránsito del Ecuador:CTE)の職員ロナルド・ガンチノ(Ronald Gancino)が、友人たちと一緒に過ごしていたところを殺害された。
ガンチノの殺害理由はいまだ謎に包まれている。ガンチノは頭と胴体を4発撃たれている。国家警察は、サリナスのサンタロサ港で活動する犯罪グループとの関連を疑って捜査している。
ガンチノは、2025年に入ってから26日間にエクアドルで発生した658件の暴力死犠牲者の一人である。2025年に入ってから、エクアドルでは平均して1時間に1人が殺されている。
犠牲者の中には、CTE代表のほか、実業家、犯罪者と疑われる者、さらにはアレニジャスの前市長エベル・ポンセ(Eber Ponce)も含まれている。
エクアドルでは、犯罪による暴力が記録を更新し続けている。2023年と2024年は治安面でエクアドル史上最悪の年であった。2025年はそうでなくて欲しかったが、残念ながら最悪の年明けとなっている。
2022年、2023年、2024年の1月を比較すると最初の26日間で、それぞれ275件、433件、423件の殺人があった。それに対し、2025年には658件の暴力的な死亡事件が発生しており、前年と比べて56%の増加となっている。
これは2011年以降2025年1月が、月終わりまでまだ5日(27日から31日)残ってはいるものの、エクアドルで8番目に暴力的な月となったことを示している。
暴力事件が最も多かった6つの地域
今のところ、政府も警察も2025年1月の暴力による死亡者数の詳細を公表していない。PRIMICIAS紙は、国土の行政組織区分であるゾーン別の数字にアクセスし、その状況を確認した。
エクアドルは9つのゾーンに分かれている。治安維持を目的に、ゾーン5はさらに2つに分けられている。合計10のゾーンを比較し見てみると、6つのゾーンで、2024年の同時期と比較して1月の暴力的死亡者数が増加している。
最も増加率が高いのは、コトパクシ、トゥングラワ、チンボラソ、パスタサを含むゾーン3である。2025年1月1日から26日にかけて、この地域では14件の殺人事件が発生した。増加率は367%である。
次に、エル・オロ、ロハ、サモラ・チンチペを含むゾーン7が続く。犯罪件数は13件から60件に増加し、増加率は361%である。ゾーン4(マナビとサント・ドミンゴ)では163%の増加で、2024年には41人の暴力死があり、2025年には108人が死亡した。
また、ゾーン8(グアヤキル、ドゥラン、サンボロンドン)では、暴力による死亡が36%増加し、犯罪件数は179件から244件となった。 一方、グアヤスの残りの地域、サンタ・エレナ、ガラパゴスを含むゾーン5では、死亡が51件から100件となり、96%増加した。
最後に、ゾーン5スペシャル(ロスリオスとボリバル)では、2025年には64件の殺人事件が発生し、2024年には62件が報告されており、増加率は3%となった。
2023年、2024年の状況
2023年には8,237件の凶悪犯罪が発生し、殺人発生率は46.18%であった。これは、ある地域における犯罪や暴力を測定する際に最も重要なこの指標が16%減少したことを意味する。
一方国家警察の公式発表によると、2024年は365日間に6,964人の暴力的な死者が出ており、これは人口10万人あたり38.76人の殺人事件が発生したことを意味する。この数字は2023年と比較して7.42人減少したことを意味する。減少はあったものの、依然として世界最悪の水準にある。ポータルサイト『Datos Macro』によると、2023年に38.76を上回ったのは、エクアドルのほか、ジャマイカ、南アフリカ、レソト、セントビンセント、ハイチ、トリニダード・トバゴの6カ国だけだった。エクアドルでは1時間15分に1人が殺害されている。
2025年1月9日でダニエル・ノボア(Daniel Noboa)大統領が国内武力紛争の存在を宣言してから1年が経つ。2024年の暴力的な年明けの後、大統領は軍隊を動員して約20の犯罪組織に「宣戦布告」する決定を下した。この措置は大きな影響を与えた。宣戦布告後の数日間で、殺人は93件と63%減少し、暴力の封じ込めは翌月にはさらに深まった。2月の犯罪件数は384件で、2022年4月以降で最も平和な月となった。しかし、減少がトレンドになることはなかった。2024年3月以降、2023年の水準には達しなかったものの、暴力による死亡者数は再び増加に転じた。2024年8月、暴力による死亡者数は617人で、2023年同月より16人多くなっている。しかし2024年12月には殺人事件がさらに増え688件となっている。12月が2024年で最も暴力的な月であり、2024年2月(最良の月)と比較すると、増加率は79.17%であった。
TCテレビジョン襲撃事件から1年
2024年1月が、9日間で247人が殺害されるというエクアドル史上最悪のスタートであったという事実以上に、世間を一変させる出来事が2024年にはあった。1月9日正午過ぎ、ロス・ティゲロネス(Los Tiguerones)と称する武装グループがグアヤキルにあるTC Televisiónの本社に侵入し、同局のスタッフが拉致された。国家警察の介入で犯行容疑で11人の若者が投獄され、テロ容疑で起訴された。さらに2024年2月、検察庁は逃亡中だったロス・ティゲロネスのリーダー、ウィリアム・アルシバル(William Alcívar)、通称ネグロ・ウィリ(Negro Willy)が事件に関与していると決定した。2024年10月、同人をスペインのカタルーニャで捕まえた。弟の通称ロンコ(Ronco)も捕まえた。アルシバルは2023年9月、ブラジルのサンパウロからの航空便でスペインに入国した。彼らはベネズエラのパスポートを使い、身分を偽って入国した。ベネズエラではビジネスマンに偽装していた。エクアドルとスペインの当局は、ネグロ・ウィリとその弟のエクアドルへの身柄引き渡しを逮捕から3ヵ月後もまだ手続き中ではあった。このため、TCテレヴィシオン事件におけるテロ容疑での彼らの裁判は中断されている。しかし、他の被告については前進している。2024年9月6日、組織犯罪専門裁判所は、11人の被告人に対し、それぞれ懲役13年と罰金27,600米ドルを言い渡した。さらに、襲撃に参加した2人の若者に懲役8年の判決が言い渡された。
参考資料:
1. Un asesinato por hora desde el 1 de enero: Ecuador vive el inicio de año más violento desde que hay registros
2. Ecuador cerró 2024 con la segunda peor tasa de muertes violentas de su historia, pese a una importante reducción
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