メキシコ選挙2024:スパイスたっぷりの選挙戦(大統領選挙)

(画像:EE/Nayelly Tenorio)

※Nodalディレクターのペドロ・ブリージャー(Pedro Brieger )による記事の翻訳

メキシコは辛いスパイスで国際的に有名で、どんな料理にも風味を添える。新大統領選挙が6月2日に実施されるが、スパイスとなるのは2人の女性が大統領の座を争うことだ: アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドル(Andrés Manuel López Obrador:AMLO)大統領のモデルを継承するクラウディア・シャインバウム(Claudia Sheinbaum)と、野党の大部分をまとめるソチトル・ガルベス(Xóchitl Gálvez)である。

1989年にベルリンの壁が崩壊した直後、作家のマリオ・バルガス・ジョサ(Mario Vargas Llosa)はメキシコを「完璧な独裁国家(la dictadura perfecta)」と評した。彼が意味しているのは、数十年にわたる一党の支配であり、その頭文字をとってPRI(Partido Revolucionario Institucional)と呼ばれている政党のことだ。しかし、バルガス・ジョサが幅広いセクターを挑発し、困らせている間に、いくつかの地下運動がPRIを弱体化させ始めていた。党は新自由主義的な思想を採用し、民族主義的な思想や左翼的な思想を放棄して、右翼的になりつつあった。一方では、PRIの歴史的遺産を引き継ごうとする人々がPRIを見捨て始めた。かつて全権を握っていたPRIは、その特徴であった強さと覇権を失いつつあった。

 

71年間政権を担った後、2000年にビセンテ・フォックス(Vicente Fox)が右派保守政党である国民行動党(Partido de Acción Nacional:PAN)の大統領に就任、同郷のフェリペ・カルデロン(Felipe Calderón)が後を継いだ。2012年、エンリケ・ペーニャ・ニエト(Enrique Peña Nieto)がPRIを2018年まで政権に復帰させたが、その歴史的な旗印を捨てた今、公然と新自由主義的なプロジェクトを掲げている。

PRI解体の兆候の一つは、PRIの歴史的旗印を奪還しようとしたタバスコ州出身の指導者、AMLOとして知られるアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドルの出現だった。3度の挑戦といくつかの不正疑惑を経て、彼は2018年に国家再生運動(Movimiento de Regeneración Nacional:MORENA)の代表として大統領に就任した。6年の任期を終えた今、彼はクラウディア・シャインバウムに政権を譲り、彼女が民衆多数派に有利な社会変革のプロジェクトを継続することを望んでいる。

メキシコは経済大国であるだけでなく、アメリカとラテンアメリカの間に位置する重要な国である。北には、リスボンからブダペストまで西ヨーロッパを横切る想像上の線を引くような、3,000キロメートル以上の国境を持つ世界有数の大国がある。政治、移民、経済、そして領土の一部を失ったという歴史的な傷に至るまで、米国で起こることはすべてメキシコに影響を及ぼし、逆もまた然りである。南は、常に北の国境で起こることに左右されているように見える国を、不審に思っている地域である。実際、米国とメキシコの二国間関係で最も複雑な問題のひとつは、メキシコ領土を越えて「アメリカンドリーム」を実現しようとするラテンアメリカの他の地域からの何千人もの人々の移住に関係している。ロペス・オブラドルは大統領在任中、ドナルド・トランプ(Donald Trump)とジョー・バイデン(Joe Biden)という正反対の政治信条を持つ2人の大統領を相手にこの問題を経験したが、共和・民主両党はあらゆる手段で移民の流入を食い止めることを優先課題としてきた。AMLOは両者との良好な関係を維持することに成功したが、彼の後を継ぐ者は、2020年と同様に、11月に両者が再び対峙することになるため、両者のどちらかを相手にしなければならない。

よほどのサプライズがない限り、そして世論調査や現地調査がすべて間違っていない限り、シャインバウムが圧倒的な当選候補である。シェインバウムは名門メキシコ国立自治大学(Universidad Nacional Autónoma de México:UNAM)出身のエンジニアで、2007年にノーベル平和賞を受賞した気候変動に関する大規模な科学研究チームの一員であり、大統領選の選挙運動を始めるまでは首都の政府首長を務めていた。ソチトル・ガルベスは野党戦線の候補者である。謙虚で先住民的な経歴を持つが、今日、彼女は先住民の代表としてではなく、テクノロジー企業を設立し、個人の努力による成長への野心を象徴する成功したビジネスウーマンとして登場している。シェインバウムは、社会福祉、経営、緊縮財政で成功を収めたAMLO政権の継続を支持する勢力の候補者という利点がある。6月2日に勝利した場合、彼女がさらなるスパイスをもたらすかどうかが注目される。

 

 

#メキシコ2024選挙

 

参考資料:

1. México: una elección con mucho picante

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