(Photo:@LassoGuillermo/ Twitter)
第78回国連総会に参加し19分間演説を行ったギジェルモ・ラッソ(Guillermo Lasso)は演説の冒頭で、平和、外交的紛争解決、人権と自由の尊重など、国連に生命を与える理想と原則へのコミットメントを再確認した。また、エクアドルが直面している世界的な課題についても言及し、「解決策は国家の資金力ではなく、指導者の政治的意志にかかっている」と指摘した。
そんな彼は今非難の渦中にいる。国家元首は、この最高レベルの本会議での発言において、気候変動、慢性的な子どもの栄養失調、人間の移動、最も緊急な安全保障上の脅威といった分野におけるこれらの課題に対処するために、エクアドルが行っているビジョンと取り組みについて述べたものの、演説の多くを自分の貢献報告に割き、皆が本来聞きたかったことから目を逸らし、またたいした提案もなかったことによる。
専門家が指摘する、ラッソが都合よく伝えなかったことともに、彼の語ったことを以下見ていくこととする。
組織犯罪
大統領は国際的な組織犯罪、特に麻薬密売と、それが国民生活に及ぼす影響の増大といった新たな脅威に対応するため、政府が行動を起こしたことを強調した。「これはエクアドルだけの問題ではなく、世界の問題なのだ。敵が増殖する能力を持っているならば、私たち国家はさらに努力を増大させなければならない」と出席者に呼びかけた。
大統領は、エクアドルがいかに世界から取り残されていないかを強調した。エクアドルは現在世界で3番目にコカインを押収している国であることを背景に、麻薬密売との戦いへの協力も求めた。また、2日前にグアヤキルで起きた、国際マフィアを捜査していた検事が射殺された事件を例に挙げ、犯罪との闘いへの協力も求めた。
「国境を越えた犯罪には国境を越えた解決策が必要であり、我々の法律をあざむくために数カ国で連携して行動する敵から別々に苦しむか、団結して打ち負かすかのどちらかを選択しなければならない」とラッソ大統領は述べた。
しかし、彼はエクアドル全土が依然として非常事態下にある理由である国内で毎日発生している殺人や強盗の数の増加について 話す事はなかった。また、非常事態のきっかけを作った刑務所の状況についても語らず、ましてや、ロス・チョネロ(Los Choneros)のリーダー、ホセ・アドルフォ・マシアス(Jose Adolfo Macias)※、通称 「フィト(Fito)」がグアヤス地方の刑務所内で録画した最新のミュージックビデオについて語ることもしていない。
大統領は、2年間で500トンの麻薬を押収した誇りを示しているにもかかわらず、8月23日にスペインのアルヘシラス港で9,436キロ(9.5トン)のコカインを押収したことに触れることはなかった。麻薬はエクアドルからバナナの木箱で到着し、ヨーロッパ向けに到着したものであった。
彼は「国際組織犯罪は腐敗した殺人システムであり、社会と国家に浸透し、私たちの国の民主主義の安定に挑戦し、ものすごいスピードで進んでいる」と強調し、麻薬密売は「エクアドルだけの問題ではない」と語った。その意味で、麻薬取引に加え、人身売買、違法武器取引、強制移住、違法採掘は「地球の大部分」に影響を与える問題であり、そのため、これらと闘うための共同政策の必要性を主張した。「共に戦わなければ、我々は孤独に苦しみ続けることになる。敵に増殖能力があるのなら、我々の努力もさらに増殖させなければならない。犯罪組織を取り締まるための永続的で強力かつ効果的なメカニズムを作り出すことが、国家の将来の存続にとって不可欠なのだ」と締めくくった。
専門家が口を揃えて批判するのは、国際社会が団結して戦う必要性を指摘する一方、彼の主張には他国をまとめるイニシアチブなどの提案がないと言うことだ。これは他のアジェンダについても言えることである。
気候変動やエコロジーへの転換
ギジェルモ・ラッソ政権が発足して以来、政府は自然遺産を保護し、低排出循環型経済への転換を図るため、歴史的なエコロジカル・トランジション政策を打ち出した。この分野での最も重要な功績と遺産は以下の通りである。
ガラパゴス諸島の保護のために6万平方キロメートルを追加する 「ニュー・エルマンダッド海洋保護区(Nueva Reserva Marina Hermandad)」の創設、コロンビア、コスタリカ、パナマと一体となった世界最大の越境保護区である東部熱帯太平洋海洋回廊の強化、ガラパゴス諸島の自然保護のための人類史上最大かつ最も重要な1億6,000万ドルの債務交換などである(詳細はこちら)。
国家元首は「我々は革新的なイニシアチブの実施において先駆者である(…)」と断言した。私たちは、負債とその財政的な重みをいかにしてチャンスに変えることができるかを世界に示している」と述べた。
2023年の最終四半期に発生が予想されているエルニーニョ現象について懸念を表明し、予防に優先順位を置いていることを示し、そのために「多国間組織からの資金援助を求めている」と述べた。しかし、ヤスニとチョコアンディーノの搾取にについて言及することがなかった。そもそも彼自身が民意を無視し、 搾取を扇動し続けていると言う事情もある。
子どもの栄養失調
「社会問題や子どもたちに投資しなければ、成長も経済発展もない」と大統領は述べ、子どもたちの幸福と発達を確保するために、包括的、部門間、制度間の配慮を保証する公共政策を実施することの基本的重要性に言及した。
このため、エクアドルは6億5,000万ドルを投じて、「エクアドル、子どもの栄養失調なくして成長する」という国家戦略を通じて、この問題を根絶するための国家的取り組みを開始した。「わずか28カ月間で、2歳未満の子どもの栄養不良率を23.6%から20.1%へと3.5%減少させました(中略)2万人以上の2歳未満の子どもが慢性的な栄養不良から解放されました」と述べた。
彼によると28ヶ月間で子どもの栄養不良率は23.6%から20.1%へと3.5%減少した。
人の移動
国家政府は安全で責任ある移住の促進に努めている。というのも、エクアドルはこの現象のあらゆる側面を経験する数少ない国のひとつであるからだ。大統領はダリエン地形を経由して出国する何千人ものエクアドル人移民に関するデータは示さなかったが、エクアドルに居住する外国人の永住プログラムに登録している人の多さについては数字を示しながら語った。同国政府による「移民資格に関係なく外国人のための移民登録プロセス」推進は、その結果「登録された市民は201,000人に達し、そのほとんどが飢餓と権威主義から逃れてエクアドルに来たベネズエラ人」だったことを示した。このプロセスは人権保障に尽力する政府によって移民が滞在を正規化し、より容易に社会に溶け込めるように導入された。ラッソ大統領は「彼らのすべての権利を保証することによって、彼らにより良い未来を与える」ことを約束し、「解決策は国家がどれだけの資金を持っているかではなく、指導者がどれだけの政治的意志を持っているかによって決まる」と語った。貧困のために国を離れた50万人のベネズエラ人を受け入れており、その現実に対処するための支援が必要だと強調した。「庇護を求めるこの人々を保護するために、私たちは両手を広げてきた。書類の有無にかかわらず、子どもたちは学校に入り、公立病院ではすべての人が診察を受けている」とラッソ大統領は述べた。彼はまた同国に定住した数千人のベネズエラ人移民を歓迎するために国際社会の協力を呼びかけた。
安全保障理事会
エクアドルが31年ぶりに安全保障理事会に参加したことにも言及し「私たちは、紛争の平和的解決と民間人の保護、女性、平和と安全保障の課題、そして違法な武器取引との闘いを優先し、極めて複雑な現象に見舞われた人類にとって危機的な状況の中で、安保理に参加してきた。
演説を非難する専門家によれば、エクアドルは行動を提案する機会を逃し、そのメッセージは正当性が見向けられない。彼はウクライナ紛争に関する立場を示すこともなく、エルニーニョ現象に立ち向かうための活動についても述べられていない。
大統領は国連の目的を正しく理解しておらず、彼のコミュニケーションラインはむしろ説明責任の一つであったと考えている。 大統領はこの国際的な議論の場を混乱させ、彼が行ったことは、この訪問を自身の今後の去就と結びつけ、その意味で、ここ数ヶ月のネガティブなメッセージに対抗するメッセージを位置づけようとしたのだ、そう専門家は一般討論演説について評価した。
第78回国連総会に関する他の記事は#UNGA78から。
※殺害された大統領候補者フェルナンド・ヴィジャヴィセンシオ(FernandoVillavicencio)はフィトから脅迫を受けていた。
参考資料:
1. Ecuador pide ayuda a la ONU para seguir acogiendo a migrantes venezolanos
2. SEGURIDAD, LUCHA CONTRA LA DESNUTRICIÓN INFANTIL Y TRANSICIÓN ECOLÓGICA, ENTRE LOS TEMAS DE ECUADOR DURANTE LA 78ª ASAMBLEA GENERAL DE LA ONU
3. Lasso en ONU: Ecuador ayuda al mundo y espera reciprocidad
4. «Ecuador es un Estado que encara el violento asedio del narcotráfico»: Guillermo Lasso ante la Asamblea de la ONU
5. Lasso en la ONU: Un discurso inadvertido y con resultados lejos de la realidad
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