10月10日火曜日の夜、アルタミラノ市の農民少なくとも60人が当局との会合からトゥクストラ・グティエレス(Tuxtla Gutiérrez)市から戻る途中武装グループに待ち伏せされ誘拐された。他の30人は山に逃げ込み、住民に警告を発したという。
最初の報告によると18時頃、メンドサ(Mendoza)市近郊のチャマル(Chamal)ーアルタミラノ(Altamirano)間を数台のアーバン車両で移動中に発生した。ランチョ・ヌエボ(Rancho Nuevo)第31軍区の兵舎から数キロ手前のチャナル(Chanal)市への分岐点で発生した事件は銃を持った20人ほどのフードをかぶった武装集団に約60人を乗せた車が通行を阻止されたことから始まる。襲撃の最中、何人かのエヒダタリオたちはなんとか逃げ延び、サン・クリストバル・デ・ラス・カサス(San Cristóbal de las Casas)の軍事基地に向かったが、被害者たちによると、当局は武装した男たちに多勢に無勢だったため介入できなかったと認めた。
農民たちはトゥクストラ・グティエレス市の紛争について政府事務総局職員に話を聞きに行ったところであった。この土地では自治体の政治権力と市庁舎の支配権をめぐって争われており、当局を訪れたものたちは、別の対立グループと争っているエヒダタリオ(共有地耕作者)のグループの一員だった。誘拐された人々の中には、グループのリーダーでありエヒード委員のロヘリオ・エルナンデス・ゴメス(Rogelio Hernández Gómez)も含まれている。
エヒードは私有地とは異なる。国から土地の利用権を与えられ売買、譲渡、賃貸借、抵当の対象とならない。その利用に伴う権利は親から子へ受け継がれる。1つのエヒードは4つの利用区分(居住地域,耕地,牧草地,山林)から成り、エヒダタリオと呼ばれる住民によって運営され、組織を通じて土地の管理をおこなっている。
捉えられたエヒダタリオたちは、家族にメッセージを送り、捕らわれの身となった者たちの要求のひとつが、自治体へのアクセスの遮断を解除することであることを、自治体の首都にいる同僚たちに求めた。
当局は、この集団誘拐はアルタミラノの2つのグループ間の政治的・社会的対立の結果であると指摘した。ロヘリオ・エルナンデス率いるこのエヒダタリオス・グループは、ガブリエル・モントヤ・オセゲラ(Gabriel Montoya Oseguera)率いるアルタミラノ市評議会と係争中である。国家検事総局(Fiscalía General del Estado:FGE)によると、犯人はアルタミラノのエヒダル刑務所に過去15日間収容されていた人物の釈放を求めている。
水曜日に放送されたビデオの中で、アルタミラノの女性たち(母親、妻、娘)は、ルティリオ・エスカンドン・カデナス(Rutilio Escandón Cadenas)知事に対し、この武装集団に誘拐されたすべての男性を解放するよう要請した。女性たちは、自分たちの親戚の多くが殴られ、他の人たちは病気になっているという報告を受けていると語った。「彼らは私たちの家族を解放すべきだ。そうでなければ、私たちは別の手段をとる」と、ビデオの中のある男性は言った。別の女性は父親フェリシアノ・サンツ・ロペス(Feliciano Santz López)の釈放を求め、州政府に彼の釈放を仲介するよう要請した。
Fuerzas de seguridad resguardan entradas y salidas de Altamiranohttps://t.co/yg2HWGZ3d4@lopezobrador_@BeatrizGMuller@SSPCMexico@RutilioEscandon@Secgob_Chiapas@SEDENAmx@GN_MEXICO_#ProtegerYServir#SSyPCChiapas pic.twitter.com/7HHUjxs2Gn
— Secretaría de Seguridad y Protección Ciudadana (@ssypcchiapas) October 12, 2023
この誘拐事件で住民は、ペベミスタ市長のガブリエラ・ロケ・ティパカム(Gabriela Roque Tipacamú)解任後の2021年10月に設立された市議会の評議員でもあるガブリエル・モントヤや元委員エヒダル・レネN(René “N”)が率いるグループを指弾している。これらが率いる準軍部隊「8月14日(14 de Agosto)」がこの大集団を武力で誘拐した主犯格と言われている。
事実が明らかになった10月11日、アルタミラノの109のコミュニティと11の地区の住民は、町の3つの主要な入り口を閉鎖する封鎖を行った。仲間の捜索を開始するよう当局に圧力をかけるためだ。被害に遭った人々の母親たちは、当局に彼らの捜索を手伝ってくれるよう泣きながら頼んだ。しかし、ジャーナリストのアズセナ・ウレスティ(Azucena Uresti)がMilenioのニュース番組で放送した音声によると、武装集団はデモ隊を脅し、もし封鎖を解かなければエヒダタリオを殺すと言った。「いいか、クソ親父の息子よ、そうしないとお前たちの親戚が黒いナイロン袋にバラバラになって入ってくるぞ、聞こえたか?」と。
数時間後、チアパス州政府のホルヘ・クルス・ピネダ(Jorge Cruz Pineda)次官は、不和状態にある両グループとの交渉が開始されたことを明らかにした。 また、15人が解放されすでに自治体に移送されている。残りの45人も数時間以内に解放されることを望んでいると述べた。そして「治安・市民保護事務局、国家警備隊、国防省は、州都の治安強化に合意した」と述べた。
両者の紛争は今に始まった事ではない。8月8日には、グアダルペ(Guadalupe)地区とカシタス(Casitas)地区の住民は、約束した工事を行わなかったとして、評議員ガブリエル・モントヤの解任を要求するデモを行った。そのとき、同じ準軍事組織が村民に発砲し、1人が死亡した。抗議行動は、8月22日にアルタミラノの3つの主要出口を封鎖して始まり、現在も続いている。9月30日の夜にはエヒダタリオのグループはアルタミラノ(Altamirano)で33軒の家屋と数台の車両を燃やしたとして告発されている。背景に上述の通りアルタミラノ市の市議会議員との意見の相違がある。他のバージョンでは、この焼き討ちはこの自治体から追放されたカシケ、ロベルト・ピント・カンテル(Roberto Pinto Kanter)とその家族がいるとしている。カンテルとその家族はメキシコ環境主義緑の党(Partido Verde Ecologista de México:PVEM)に関係しており、グループはカンテルの釈放を求めているとしている。
緑の党はメキシコ第4の政党とされている。議席の一部は、他党との選挙協力が功を奏して獲得したものであるが2000年の連邦選挙では、国民行動党(PAN)と「Alianza por el Cambio (改革連合)」を組んで選挙に勝利した。2003年の選挙以降は、おもに制度的革命党(PRI)との協力に転じている。緑の党は環境と天然資源の保護、そして腐敗との闘いを党是としているが環境保護団体グリーンピースはPVEMのメンバーはメキシコの環境問題に関心を寄せていないと主張している。
Se refuerza seguridad en Altamirano para atender solicitudes de grupos inconformes: Gobierno de Chiapas. https://t.co/JT46vYiRaz pic.twitter.com/6qqm7HW5HA
— Secretaría de Seguridad y Protección Ciudadana (@ssypcchiapas) October 11, 2023
州の安全保護協議会で合意された戦略の一環として、10月10日火曜日の夜から、150人以上の州の要員が地域の警察力を強化するために派遣されたと報告されている。さらにルティリオ・エスカンドン政府は、紛争中の双方に対して、市民の利益に悪影響を与えないために、それぞれの要求を適切な機関に合法的に提出するよう求めている。
ガブリエル・モントヤは、11日の午後に記者会見を行い、67人の農民の誘拐に関与していないと否定し、住民に平静を保つようにも求めた。一方13日金曜日に約4,000人のツェルタル族とトホラバル族の先住民が集会し、アルタミラノの農地所有者20人の生還を要求するデモを行った。「この行進は正義を求める人々の声であり、政府が私たちの先住民の兄弟を生きたまま返すことを願って集まった人々の意志を反映するものだ。彼らは10月10日にチャナルーウイストラの道路で誘拐された」と、誘拐された人の家族のへニフェル・サンチェス(Jenyfer Sánchez)は述べた。この抗議行動は、組織犯罪、準軍事組織、民兵によって引き起こされる暴力の波の中で起きた。先住民族は、今年に入ってチアパス州での武力紛争による「内戦のような状況」に直面しており、この紛争は殺人、失踪、強制移住を引き起こしている。これらの暴力は先住民族のコミュニティやサパティスタに同調するコミュニティで顕著におきている。デモ参加者は、「誘拐を止め、即時に解放せよ」と「知事よ、アルタミラノに注目せよ、私たちは同僚の即時解放を要求する」というスローガンの入った横断幕、看板、白い風船を持っている。アルタミラノでは政府の権力乱用、強力に武装した準軍部隊による嫌がらせや殺人が起きている。彼らはこの準軍部隊が市民社会に対して武器を使用していると非難している。
国家検事総局(Fiscalía General del Estado:FGE)は、先住民司法検事局を通じて「アルタミラノのエヒダル委員会の保持疑惑についてソーシャルネットワーク上に流れたニュースから派生した注目の捜索を開始した」ことも確認しているという。
15日、解放が遅れていた誘拐されたものたちがすべて釈放された。
En el país donde no pasa nada y todo es felicidad… Llberan a los últimos 20 secuestrados en Altamirano, Chiapashttps://t.co/nqCIGbsrg7
— Joaquín López-Dóriga (@lopezdoriga) October 16, 2023
参考資料:
1. Secuestran a 60 campesinos del municipio de Altamirano, Chiapas (Video)
2. 60 campesinos de Altamirano, Chiapas, fueron secuestrados por un grupo armado
3. Grupo paramilitar liberó a 44 de los 67 ejidatarios secuestrados en Altamirano; despliegan a 150 policías
4. Grupo paramilitar embosca y secuestra a 60 ejidatarios en Altamirano, Chiapas
5. Protestan en Chiapas por secuestro de ejidatarios
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