(Photo:@seguridadcrc/X)
コスタリカは2023年、史上最多の殺人件数を記録しそうである。司法調査庁(Organismo de Investigación Judicial:OIJ)の発表によると今年これまでに602件の殺人が記録され、418件であった2022年の同時期より184件多くなった。4月には87件の殺人が発生し、8月には81件発生している。それ以外の月も70件前後発生しているというのが現状で、このままの平均で推移すれば2022年史上初を更新したその殺人件数656件を9月末か10月初頭に超え、コスタリカは新記録を更新する。さらに最悪なのはこのままいけば2023年は900件に近づく可能性があると言うことだ。
国連の持続可能な開発ソリューション・ネットワークの「世界幸福度報告書」によれば、今年3月、ラテンアメリカでトップ、世界で23番目に幸福な国として国際的にその平和な雰囲気が認められているコスタリカにとっては、考えられないことである。背景にあるのは他のラ米諸国同様、麻薬組織の間で縄張りと密売ルートをめぐる抗争だ。
このニュースは、2024年の国家予算審議のさなかに飛び込んできたもので、少なくとも代議員は、マリオ・サモラ・コルデロ(Mario Zamora Cordero)治安相により多くの予算を与えるよう圧力をかけることになるだろう。一方8月中旬、サモラ治安相もパトロールに必要な備品の修理やタクティカルブーツ、その他のスペアパーツの購入に使われるはずだった臨時支出計画から19億円が削減されたことを糾弾している。
「私たちは癌に対処しています。化学療法で癌ンを食い止めることができる段階ですが、ガンが転移して社会全体に影響を及ぼす可能性があることも事実です。今こそ決断を下さなければならない。今がまさに、国内警察と米国麻薬取締局との作戦統合が進む瞬間なのだ。我々はこれにすべてを賭けている」とサモラは述べている。
またサモラ治安相はCNNに対し、コスタリカのような民主主義国家が現在のような殺人事件に直面していることを遺憾に思うと述べるとともに「メキシコ化し、コロンビアやジャマイカのカルテルの影響を受けている」ギャング間の抗争が優勢であるとも付け加えた。
OIJの報告書によると、2023年1月から9月1日までの殺人件数が最も多いのはリモン県で151件(2022年同期比42件増)、次いでサンホセ県が147件(同76件増)、中部太平洋のプンタレナス県が96件(同28件増)となっている。そのため政府はカリブ海沿岸に複数の警察署を建設するために32億コスタリカ・コロン(約600万米ドル)を投資すると発表し、その目的はリモンの人々に平和と平穏を取り戻すことであるとプレスリリースで強調した。
5月25日、同州における犯罪の波に対応するため、治安省はOIJおよび検察庁と連携して「インパクト・リモン2023作戦」を開始した。これは政府が治安の悪化と殺人件数の増加に対処するための国家計画「安全なコスタリカ作戦プラス(Operación Costa Rica Segura Plus)」を打ち出してから15日後のことであり、これには街頭での警察官の増員も含まれている。
国家計画が開始されて以降政府がその功績を「採用された戦略が減少傾向で結果を出していることを示す指標である」と評価していたように4月に記録した殺人件数85件からはその数は減少していた。5月には77件、6月には72件、7月には70件となっていた。しかし上越の通り8月には急増した。8月の殺人事件は2.5トン以上のコカインが押収されたことに関係しているという。「麻薬の大量押収の後には、そのグループのミスが死をもって償われるため、殺人が相次ぐというのがいつものパターンだ」と同高官は語った。
El ministro de @seguridadcrc, Mario Zamora, se refiere al decomiso efectuado por la #PCDCR de 8.3 kg de metanfetaminas (208.675 dosis) en doble forro de la maleta de un pasajero detenido en el Aeropuerto Internacional Juan Santamaría, #Alajuela#OperacióCostaRicaSegura pic.twitter.com/8qV4XPwlLd
— Seguridad Pública (@seguridadcrc) September 4, 2023
一時とは言え殺人事件が減少したのはサモラ大臣によると「警察の存在と、暗殺者を雇うような人々に特別に焦点を当てた」ことによるものだ。 治安維持には道路封鎖と警察の監視が不可欠だが、同時に彼は全国的に予防のための人材が不足していると強調している。なおヒットマンに焦点を当てた取り組みで今年に入り現行犯(delito flagrante)で、85人の容疑者が逮捕されていると言う。麻薬密売に関わる犯罪組織同士の衝突は続いている。しかし、サモラは、リモン2023作戦の下で、この州の中央カントンの代表団は殺人件数が37%減少したとサモラは主張している。
「現在までの結果は、犯罪を封じ込める真の『青い壁』を築き上げた警察官の努力と勇気のおかげであり、前向きで非常に心強いものとなっている。財産犯罪は10%減少した。道路封鎖における警察の行動で最もポジティブな結果のひとつは、逮捕状を持つ人々、すなわち、法に未解決の記録があるにもかかわらず路上にいた人々の逮捕が55%増加したことに表れている」とサモラは述べた。
政府は7月警察が常駐する「主権回復作戦」を開始した。ロドリゴ・チャベス(Rodrigo Chaves)大統領によると、これは「我が国が世界有数のコカイン輸出国となることを容認する事はできないことから、そこで組織犯罪や麻薬取引が行われないように」主権を回復しようとする計画である。麻薬との戦いにおいては、APMターミナル社がコンセッションで運営するカリブ海のモイン・ターミナルに出入りするコンテナをチェックするため、2台のスキャナーを導入した。
議会では、様々な派閥の議員が犯罪の波に対処するための法案を早めようとしている。その中には、外国当局から要請されたコスタリカ人犯罪者の引き渡しを可能にする法案や、電話盗聴技術を改善する法案などがある。
左派政党フレンテ・アンプリオ(Frente Amplio)のプリシラ・ビンダス(Priscilla Vindas)副議長にとって、これらの法案はまだ不十分である。同議員によれば「こうした犯罪の多発は、医療、教育、その他の基本的サービスへの投資不足が原因である」という世界的な研究がある。
ロドリゴ・チャベス大統領は5月10日、治安担当大臣の交代を発表、ホルヘ・トレス(Jorge Torres)大臣を解任した。その後任がマリオ・サモラという有名人だ。彼はラウラ・チンチラ(Laura Chinchilla)政権ですでに同職を務めていた。トレスの解任は「安全なコスタリカ作戦(Operación Costa Rica Segura)」が失敗し、フエルサ・プブリカ(Fuerza Pública)の労働者たちによる抗議運動にまで発展したことによる。
サモラが以前「治安大臣だった頃、コスタリカとパナマの警察力はほぼ同じだった。現在でも、コスタリカには13,500人の警察官がおり、パナマには21,000人の警察官がいる」。これは治安が改善していないことを示す。サモラはこの事象を「政治的な問題ではなく、社会的な問題なのだ」と述べている。
サモラによると犯罪集団はよりプロフェッショナルになり、以前はメキシコのような麻薬カルテルのある国でしか見られなかったような行為にまで手を染めている。「メキシコのカルテルなど、非常に暴力的なカルテルに関連する犯罪現象が専門化しているため、私たちは懸念している。メキシコのカルテルが活動を始めた北の三角地帯で起こったことが私たちの国に及ばないようにしようとしている」と彼は述べた。
なおOIJのデータによると、殺人事件の被害者は18歳から29歳の若者が最も多い。
サモラ大臣はOIJが予測する900件の殺人事件には到達しないと述べた。しかし、この数字は、政府が「国家開発計画2023-2026(Plan Nacional de Desarrollo 2023-2026)」で設定した545件の故意の殺人事件という目標には程遠いものであることも事実だ。
(表:殺人件数/La República)
参考資料:
1. Costa Rica está a un paso de vivir el año con más asesinatos de toda su historia
2. Costa Rica superó los 600 homicidios en lo que va del año y la cifra enciende las alarmas
3. OIJ mantiene la proyección de homicidios: Serán entre 850 y 900 en el 2023
4. CBP moves closer to full Global Entry partnership with Costa Rica
5. Mario Zamora: El ministro que primero fue un teniente
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