(Photo:@DanielNoboaOk/Twitter)
8月20日に行われたエクアドル大統領選挙は、第1回投票のみで大統領が選出されることはなかった。そのため、第2回投票が10月15日に行われる。
第1回投票で得票数1位、2位になったのは市民革命運動(Movimiento Revolución Ciudadana )リスト5のルイサ・ゴンサレス(Luisa González)とADN(Acción Democrática Nacional)同盟のダニエル・ノボア(Daniel Noboa)(リスト4-35)である。実はこの二人どちらがなってもエクアドル初のタイトルを持つ大統領となる。
ルイサが勝利すれば初の女性大統領となるし、ダニエルが勝利すれば同国史上最年少の大統領となる。8月21日、アクタが95.1%集計された時点でルイサは3,175,320票を獲得(33.42%)、ノボアは2,240,075票で23.58%を獲得していた。ゴンサレスは1979年の民主化以来、共和国大統領選に立候補した8人目の女性である。しかし、第2ラウンドに進んだのは彼女が初めてである。ただしロサリア・アルテアガ(Rosalía Arteaga)は1997年2月、副大統領として共に立候補していた親ロルドス派のアブダラ・ブカラム(Abdalá Bucaram)が倒れた後、一時的に大統領に就任している。翌年、彼女はアリアンサ・ナシオナル(Alianza Nacional)から、一方マリア・エウヘニア・リマ(María Eugenia Lima)も人民民主運動(Movimiento Popular Democrático:MPD)の代表として大統領選挙に出馬していた。2002年の選挙ではイボンヌ・バキ(Ivonne Baki)もMETA運動(movimiento META)から出馬している。元グアヤキル市長で元議員のシンシア・ビテリ(Cynthia Viteri)は、2006年と2017年の2回、社会キリスト教党(Partido Social Cristiano:PSC)の大統領候補となった。2009年の選挙では、RED運動(movimiento RED)のマルタ・ロルドス(Martha Roldós)とティエラ・フェルティル運動(movimiento Tierra Fértil)のメルバ・ジャコメ(Melba Jácome)の2人の女性候補がいた。2021年の選挙では、モベル運動(movimiento Mover)のシメナ・ペーニャ(Ximena Peña)がいた。
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一方のダニエル・ノボアは1987年11月30日生まれの35歳。彼が当選すればエクアドル史上最年少の大統領となる。現時点における最年少記録は民主化後の初代大統領であるハイメ・ロルドス(Jaime Roldós)だ。彼は1979年4月に38歳で当選するも、1981年5月24日に飛行機事故で亡くなった(米国が関与し暗殺されたという情報もある)。
35歳のノボアが決選投票に進むのは一般的に驚きだった。誰一人ノボアを攻撃する者はおらず、それがノボアを次のステージに押し上げた利点のひとつだったともされている。世論調査でも、彼は5位以上にはランクされていなかった。一方のノボアは選挙結果は当然のことのように思われた。ノボアの選挙運動は国内の最貧困地域など現地を回ることで行われた。「私たちは、草の根や社会的ネットワークにおいて、素晴らしいキャンペーンを展開した。私たちに必要だったのは認知度を高めることだけであり、それは討論会で達成された」と彼は語った。なお彼は、自分が獲得した票の多くはコレア主義からのものだと断言した。
ノボアは防弾チョッキを常備し投票に自家用ヘリコプターでやってきた。彼の父親は億万長者の実業家アルバロ・ノボア(Álvaro Noboa)で、アルバロは5回大統領選に挑戦をしている。アルバロ・ノボアはエクアドル一の大富豪で、推定資産は9億1000万ドルだ。彼はバナナ王とも知られる。世界最大のバナナ輸出国でバナナを売り、また、海運、不動産など事業を行っている。ノボアグループは国内第3位のバナナ輸出業者で50カ国に128の会社を持つ。
Tenemos las herramientas y sabemos cómo cambiar al país, las adversidades nunca han sido un impedimento para trabajar por los ecuatorianos, no comas más cuentos. Nosotros sabemos que el Nuevo Ecuador es posible.
Durante esta jornada democrática, confío en que los ciudadanos… pic.twitter.com/AvIbNghC2Y
— Daniel Noboa Azin (@DanielNoboaOk) August 20, 2023
ダニエルの政治家としてのキャリアは2021年に始まった。国会議員になり経済開発委員会の委員長を務めた。18歳の時、ダニエル・ノボアは自らイベント企画会社を設立し、2年後には父親のノボア・コーポレーションに入社、海運、物流、商業分野の管理職を歴任した。ハーバード・ケネディスクールで経営学と行政学の学位を取得。ジョージ・ワシントン大学でガバナンスと政治コミュニケーションの修士号も取得。結婚しており、2人の子供がいる。
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— Vilmatraca (@vilmavargasva) August 21, 2023
世論調査によれば、ノボアは8人の候補者の中で6位につけていたが、大統領討論会の後、何かが変わった。「国に安全保障と雇用を与えるという同じ信念のもと、私たちは国に持続可能性を与えるつもりだ。私たちは新しい世代であり、公契約者でもなければ、前政権の一員でもない」と、投票日の1週間前に行われた公開討論会で述べ、対立候補に対する優位性を示唆した。ノボアは、対立的な言説はなく、むしろ穏やかで、さまざまな問題についての質疑応答では、自身の提案を披露した。彼は、国の流動性の回復、社会保障の強化、雇用の創出と投資の誘致、水源への特別な配慮、農業の近代化、電力の適切な管理について語った。また、他の大統領と同様、治安を回復の条件として優先させた。「雇用が得られれば、私たちは再び街に尊厳と平穏を取り戻し、投資をして前進することができる」と強調した。彼は、包括的な安全保障計画、司法制度と刑法の改革を通じて、軍隊に手段を提供すると述べ、また、適格な市民陪審員制度の創設と、企業や家族が「平和に暮らせる」ように情報システムを統一し、一元化することを提案している。
アナリストでロス・ヘミスフェリオス大学(Universidad de Los Hemisferios)教授のフアン・フランシスコ・カミノ(Juan Francisco Camino)は、ノボアが意外な躍進を遂げた重要な要因のひとつは、母親のアナベラ・アジン(Anabella Azín)が主宰する社会支援財団を通じた静かな活動にあるだろうと述べた。この億万長者の政治家は、特に社会から疎外された農村部に医療援助と食料を提供している。これが強いインパクトを与えたのだろうとフアン・フランシスコ・カミノはAP通信に語った。さらに、都市部では、「若く、スポーティで、穏やかで、何よりも海外で幅広い教育を受けている」というイメージが定着していると同氏は指摘した。
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SEK国際大学(Universidad Internacional SEK)法学・政治学部のエステバン・ロン(Esteban Ron)学部長は「エクアドルでは新たな二極化に直面しており、今は新旧が対立している。これまでの政治慣行に対する一般的な疲労感もある」と述べるとともに、エクアドルの有権者は今、「イデオロギーではなく人」を支持しており、その意味でノボアは「印象的な履歴書…誰もが持っていたいと思うような学問の模範」を持っていると指摘した。
ルイサは選挙結果を受け「平和を望む国の票が反映されたが、同時に医療と雇用を必要とする国の票も反映された。私たちエクアドル人は、尊厳ある条件を求めなければならない」とグアヤキルから支持者に向かって呼びかけた。コレアの支持者たちは対立的な口調で選挙戦に臨んだが、彼女は団結を呼びかけた。労働者、実業家、民衆のすべてのセクターを団結させる必要がある」と。また、「私たちは良心の呵責を感じながら投票しなければならない。我々は国を取り戻す必要がある。最も近いライバルに100万票以上の差をつけられたことに、深く感謝する」と語った。
大統領選における選出者、国民投票を知り、リスクコンサルティング会社ユーラシア・グループはエクアドルを短期的・長期的にネガティブな評価とした。彼らによるとアマゾンの第43鉱区から石油が採掘されなくなることは12億ドルが財政に流入しなくなることを意味する。「財政圧力の増大と限られた財源」によって、次期政権の見通しを複雑にする一因となると指摘した。10月15日のゴンサレスとノボアの投票によって誕生する次期政権の使命は、油田を解体し、歳入を減らして決算を調整することにある。
Muerte cruzadaや国民議会、大統領選挙に関する別記事はこちらから。
参考資料:
1. Daniel Noboa, el millonario y delfín del hombre más rico de Ecuador da la sorpresa electoral
2. “Tenemos que votar bien, pues no queremos un Lasso 2.0”, dice Luisa González
3. Segunda vuelta 2023: Ecuador tendrá a la primera mujer presidenta electa en las urnas o al presidente más joven de la historia
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