(Photo:SBudiMasdar/ Wikimedia)
6月9日、ネット社会がもたらす「負の影響」を最小限に抑えることを目的とし、バドゥイ(Baduy)族は自らの領土におけるインターネットの利用停止を要求した。AFP通信が入手した書簡によるとバドゥイは、インターネットの受信停止か、近くの通信塔を迂回させて電波が届かないようにすることで、ネットからの鎖国を求めている。 自分たちの住む地域の近くに通信塔が建てられることで、伝統的な生活様式の変化や、インターネットを使いたくなり若者のモラルが脅かされる危険性もあると主張している。レバク(Lebak)地区の役人ブディ・サントソ(Budi Santoso)は「基本的には、バドゥイ族の人々が望むことを常に受け入れたいし、彼らの伝統と地元の知恵を維持する必要がある」と述べ、インドネシア情報省と話し合い、彼らの要求に応じることに合意したと語った。
サントソは、ネットビジネスを始めたバドゥイ族がインターネットを必要としている一方、訪問者や観光客がウェブにアクセスし、バドゥイ族に不適切と思われるコンテンツを表示することを懸念していると述べた。また、保守的でイスラム教徒が多いインドネシアにおけるインターネットの自由は、論争の的となっている。
政府はギャンブルやポルノを禁止し、インターネットプロバイダーには不適切と判断したコンテンツをフィルタリングするよう求めている。 しかし、そのようなコンテンツを扱う違法なウェブサイトが横行しており、悩みの種になっていることも確かだ。
欧米のメディアから「アジアのアーミッシュ」と呼ばれるバドゥイ族は、テクノロジーやお金、伝統的な学校教育を拒否し、森の中で暮らすことを選択している。 彼らは首都ジャカルタから車で数時間かかるバンテン州に住み4,000ヘクタール(9,900エーカー)の領土に3つの村を持つ。政府は1990年、この地域を文化財保護区に指定している。ジャワ島の住む26,000人のバドゥイ族は、テクノロジーを部分的に取り入れるグループと、現代生活の装飾を避ける神聖なグループに分かれている。
2023年6月1日付のこの手紙には、タントゥ・ティルジャロ・トゥジュ(Tangtu Tilu Jaro Tujuh)やジャロ・パマレンタ (Jaro Pamarentah)、カネケス(Kanekes)村のジャロ・サイジャ(Jaro Saija)村長など多くのバドゥイ伝統長老が署名している。ジャロ・サイジャは、「バドゥイ族の集落がインターネットの電波から解放されることを望んでいる」と述べ、またインターネットが及ぼす影響を「教育的でなく、伝統に反するネガティブなコンテンツによってバドゥイの人々の生活が影響を受け」ることを危惧している。
事実バドゥイに住む55歳のサンタ(Santa)は、インターネットに簡単にアクセスできるようになったことで、バドゥイ族の習慣や文化に反するコンテンツを作る人が増えたことを目の当たりにしている。
インターネットがもたらすポジティブな面の一方ネガティブな面は確実に存在しており、それは先住民のみならず非先住民である人間も感じるところが大きい。伝統を守るとしている人々にとってはなおさらに、それがもたらす衝撃は大きいと想定される。
バドゥイの男は農作業、女は機織りを生業とし、その牧歌的な風景に心は釘付けとなる。外国観光者がその生活を垣間見れるのは「外バドゥイ(外界との接触が可能な地域)」であり「内バドゥイ」はインドネシア人のみが踏み入ることが許される。そこではカメラの持ち込みすらも禁じられている地域だ。
バドゥイの領土まではジャカルタから2時間の列車(ランカスビトゥン駅下車)と2時間の車旅で到着することができる。村の入り口までは車を降りたロータリーからは約1時間のハイクが必要だ。深夜、早朝は冷え込むことから宿泊施設が必要とはなるが、集落に観光客向けロッジは存在しない。そのため個人交渉でホームステイ先をさがすこととなる。依頼に基づき食事も用意してくれるから心配も無用だ。その一方ガイド付きのローカルツアーも存在はする。
先住民がどのような生活を送っていきたいか。どのような未来を目指すのかについては、部外者が介入する問題ではく、外部の人間が好き勝手な発言をすべきものでもない。彼らが自決権に基づき決定すべき内容だ。それは誰が何を言おうと間違いのないことである。
参考資料:
1. Baduy Tribe People Request Internet Blank Spot in Their Area
2. Baduy people request internet blackout – Archipelago – The Jakarta Post
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