(Image:@TSEGuatemala/ Twitter)
ジェノサイドを二度と繰り返さないための調整委員会(Coordinadora Genocidio Nunca Más:CGNM)は、6月25日の投票に向け憲法広場(Plaza de la Constitución)でデモを行い、国民に記憶とともに投票するよう呼びかけた。同組織は、腐敗、不処罰、恐怖と無防備の状態を歴史的に維持してきた部門が、政府の三権を支配していることを指摘した。
また同委員会は、平和協定の調印以来、我々の記憶を否定し、犯罪者を保護し、正義と尊厳ある生活を求める我々の要求に対して弾圧する政府による統治が続いてきたこと、さらに今回選挙においては彼らが犯罪的で腐敗していると呼ぶ同盟、つまり民兵の関係者(家族、友人、仲間)の立候補が社会組織として推進されたとを主張している。実際カバル党(partido Cabal)の大統領候補であるエドモンド・ミューレ(Edmond Mulet)は、国内武力紛争中に子どもの窃盗と違法な人身売買に関与していたし、バロル・ウニオニスタ連合(Valor-Unionista)の大統領候補ズリ・リオス(Zury Ríos)、与党バモス党(partido Vamos)のマヌエル・コンデ(Manuel Conde)は、独裁者、人権犯罪者、大量虐殺を支持したエフライン・リオス・モント(Efraín Ríos Montt)とのつながりがある。
「このような状況に直面し、CGNMは国民に、伝統的な政党からの立候補やそれらの人物が権力の座への就くことがないように、(過去の)記憶とともに投票するよう呼びかける」とコミュニケの中で述べている。また、尊厳ある生活を築くために、大統領と副大統領の候補者を選出し、議会の代議員を選出し、左翼的、進歩的、民主的な代表を市政に参加させることを提案した。
#AHORA En el marco del Día Nacional Contra la Desaparición Forzada, que se conmemora cada 21 de junio, la Coordinación Genocidio Nunca Más realiza una conferencia de prensa en la Plaza Central | Vía @EBercian_PN pic.twitter.com/eAnOM8ydNO
— Publinews Guatemala (@PublinewsGT) June 21, 2023
CGNMがこのように呼びかける背景に社会的腐敗とそれをきっかけとした大統領選挙への投票棄権を宣言する人が増えていることが挙げられる。2019年の総選挙では棄権したものが37.84%を占めた。当時の登録有権者数は8,150,221人で投票参加有権者数は5,066,479人(62.16%)に対し、投票に行かなかった有権者は3,0008,342人もいた。なお2023年の登録有権者数は9,000,3618人で有権者の50%以上が女性である。なおグアテマラにおける投票は他国のように義務ではない。
国民市民運動(Movimiento Cívico Nacional:MCN)のホセ・エチェベリア(José Echeverría)代表は義務投票がないものの4年前の投票率は約60%と他国に比べて比較的高かったと述べた。エチェベリアは、棄権主義や投票率の上昇は、しばしば社会における感情の反映とみなされると説明した。政治的な選挙制度が正しく機能しており、市民が下すべき重大な決定がない場合は、投票率の低下が予想されるが、グアテマラのように社会的・政治的不満がある場合は、投票率が上昇する可能性があると説明している。国民市民運動は、情報を得た上で投票するよう呼びかけ、選挙までの数日間を活用して情報を得ることが重要だと考えている、とエチェベリアは付け加えた。
選挙に関する汚職と言っても間違いではないだろうこと(既存政党や今までの社会構造を変えたくないと考える犯罪者たちの力によって候補者の登録自体が承認されなかったり、登録が取り消されたり、プロセスが司法化するなど)が蔓延し、各社会団体や専門家が投票率を危惧していることに対し、最高選挙裁判所(Tribunal Supremo Electoral:TSE)のイルマ・パレンシア(Irma Palencia)は、これらの問題の結果として、棄権主義が前選挙年に比べて増加するとは考えていないと述べた。彼がいうには「4年も経過し私たちは違う時代にいるのだから、多くの教訓を得ているし、私たち市民は、未来は私たち一人ひとりが決めるものだということを自覚している」と述べ、また、「グアテマラの未来がかかっていることは誰もが知っており、私たちはグアテマラの勝利と民主主義を望んでいる。だから、私は棄権主義は信じない。今回、私たちはあらゆることがあっても、どんな期待も上回ることができると信じている」と付け加えた。
https://twitter.com/TSEGuatemala/status/1672009066514903040
グアテマラの歴史上、最も波乱に満ちた選挙のひとつとなったのは、選挙管理当局が一部の候補者の登録を拒否し、すでに登録されている他の候補者の登録を取り消し(少なくとも1件は司法判断によるもの)されている一方、グアテマラ憲法に相容れない人権犯罪者の関係者などの登録を認められているとにある。
大統領選候補者として認められなかったのは市民繁栄党(Prosperidad Ciudadana:PC)のカルロス・ピネダ(Carlos Pineda)とエフライン・オロスコ(Efraín Orozco)、民衆解放運動(Movimiento para la Liberación de los Pueblos:MLP)のテルマ・カブレラ(Telma Cabrera)とホルダン・ロダス、ポデモス党(partido Podemos)(Jordán Rodas)のロベルト・アルス(Roberto Arzú)とダビド・ピネダ(David Pineda)、ポデール党(partido Poder)のオスカル・カスタニェーダ(Óscar Castañeda)とルイス・ルイス(Luis Ruiz)だ。ピネダは5月2日に発表されたリブレの投票意向調査で1位となり、カブレラとアルスは2019年に初めて参加し、かなりの票数を獲得している。つまり大統領有力候補者が選挙戦から抹消された。大統領候補となったのはほとんどが右派である。左派または進歩的とされる3つの政党(セミジャ運動(movimiento Semilla)、ウィナク政治運動(Movimiento Político Winaq)とのURNG-Maíz連合(coalición de URNG-Maíz)、VOS党(partido VOS))に対し、右派は19政党となっている。
これまでに除外された大統領候補に加え、1,200人以上の副大統領候補、市長候補、下院議員候補もまた登録から外されている。これらの除外は、米国や米州機構などから批判されている。なおグアテマラでは連続再選が認められていないことからグアテマラとイタリアの二重国籍を持つ右派アレハンドロ・ジャマッテイ(Alejandro Giammattei)大統領は立候補していない。彼は2019年当時「残忍なギャングの掃討、移民に歯止めをかけるための貧困との戦い、吐き気がするほどの汚職の撲滅」などを掲げていた。
大統領は第1回投票で絶対過半数(50%プラス1票)を獲得できれば、そのものにきまる。もしも1回で決まらなければ最多得票の2候補が8月20日に決選投票を行う。選挙の2日前には、各政党は選挙キャンペーンをまとめなければならず、世論調査やアンケート調査の発表も行われる。
なお最新の世論調査によれば、最も支持を集めているのは保守派の人々である。元大統領夫人のサンドラ・トレス(Sandra Torres)、元外交官のエドモンド・ミューレ、そして亡くなった元独裁者エフライン・リオス・モントの娘であるズリ・リオス・ソーサである。彼らは、サルバドルのナイブ・ブケレ(Nayib Bukele)大統領の戦略のような強権政策を提供することに選挙運動の提案を集中させた。
これらの人物こそ問題があるとされており、例えばアルバロ・コロム前社会民主党大統領(2008-2012年)の元妻サンドラ・トレスは、憲法が宗教に属する候補者を禁じているにもかかわらず、福音派牧師のロメオ・ゲラ(Romeo Guerra)とともに出馬する。副大統領候補は登録前に信条を放棄し、選挙当局と憲法裁判所の両方から立候補を認められた。
グアテマラにおける過去4回の政権は、汚職の告発を伴う保守的で急進的な右派が率いてきた。2012~2015年はオットー・ペレス・モリーナ(Otto Pérez Molina)将軍、2015~2016年はアレハンドロ・マルドナド・アギレ(Alejandro Maldonado Aguirre)、2016~2020年はジミー・モラレス(Jimmy Morales)、2020~2024年はジャンマッテイ(Giammattei)だ。
https://twitter.com/TSEGuatemala/status/1672016617746862081
今回選挙に関するその他の記事はこちらから。
参考資料:
1. Coordinadora Genocidio Nunca Más hace un llamado para “votar con memoria”
2. Elecciones Guatemala 2023: el abstencionismo acecha votaciones, pero presidenciables y sectores creen que habrá participación histórica
3. AGENCIA AP: ¿Qué está en juego en las elecciones en Guatemala tras agitada campaña electoral?
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