エクアドル国会解散:ギジェルモ・ラッソ、不要不急政策の提出、権限乱用か

5月18日、自らの横領疑惑から逃れることを目的とし、自らの大統領職と引き換えに国会解散をした共和国元大統領ギジェルモ・ラッソ(Guillermo Lasso)が、またも自らの都合により政策を振り出そうとしている。

国会解散後2度目の「緊急経済法令」が提出されたのは2023年5月23日(火)のこと。「生産的発展のための投資の誘致と促進に関する法律令(Atracción y Fomento de Inversiones para el Desarrollo Productivo)」は分野の発展、雇用の創出、自由な市場の促進のための投資の誘致と促進を目指すものだ。自由貿易地域とは、経済活動の発展のために税や関税の優遇措置が与えられる地理的な特別地域のことをいい、工業化と輸出可能な供給を増加・促進し、国家生産の競争力を高めることを目的としている。

この概念は新しいものではない。事実1991年に制定された「自由貿易地域法」により、国土に20以上の自由貿易地域が誕生している。その後、ラファエル・コレア政権時代の2010年になると自由貿易区は経済開発特別区(Zonas Especiales de Desarrollo Económico:ZEDE)に取って代わられ、国が唯一その創設を許可された。一見経済のためによく見える本政策だが、必ずしも対象地区が繁栄するわけではない。実際、Zedesとして設定されたヤチャイ(Yachay)やパシフィック・レフィナリ(Pacific Refinery)が繁栄することはなかった。

元生産大臣フリオ・ホセ・プラド(Julio José Prado)は23日に先駆け自由貿易地域は、新規企業と多国籍企業のみが対象となると説明をしている。自由貿易地域からのインセンティブは新規企業であればそこに立地させることができると言うものであり、また、多国籍企業による同地区への投資で出費をセーブできることにある。

 

 

ラッソが提示した法令が受け入れられれば以下のような利点を享受できる。

1. 事業開始後10年間は所得税を免除する(所得発生年が初年度となる)。国境地帯のフリーゾーンの場合、15年間免除する。
2. 最初の10年間の免除後、フリーゾーンの設立期間中の所得税を10%減免する。
3. 関税、特別消費税(Impuesto a los Consumos Especiales:ICE)、児童開発基金(Fondo de Desarrollo para la Infancia:Fodinfa)など、外国貿易のための税金を免除。  
4. 投入物、原材料、資本財の取得にかかる付加価値税(Impuesto al Valor Agregado:IVA)の税率を0%とする。 
5. ZEDEや自由貿易区の管理者や運営者が、その認可された活動に関連する商品やサービスの輸入のために海外で行った支払いについて、外貨出国税(Impuesto a la Salida de Divisas:ISD)が免除される

政府は将来的に同地区がエクアドルの輸出製品の約30%を開発することを期待しており、これは50億米ドルから70億米ドルに相当すると考えられている。エクアドルでは、3つの自由貿易地域と4つの経済開発特別区が運営されている。

 

 

自由貿易地域は1990年代から設置され始め、その数は20を超えた。2010年、ラファエル・コレア政権時代になると経済開発特別区が設立されたが、そのうち5つほどが計画のまま、もしくは失敗した。キトのZEDEの元マネージャー、フアン・セバスチアン・サルセド(Juan Sebastián Salcedo)にとって、この2つのモデルはどちらも、実際に設定された目的に対して機能していないと語る。サルセドによると、自由貿易区の場合、設定された目標と規制の両面において、国による適切な監視が必要だった。その結果、現存するのは3つだけで、キトやグアヤキルの空港のように、自由貿易地域としての性質は持っていない。ZEDEの場合はその逆で、国家に依存した場所となっており民間投資を認めてはいるものの、国家主導でしか作れない。サルセドにとって、最初に推進されたZEDEの障害は、ヤチャイのように都市全体を視野に入れていたため、非常に大きな投資が必要だったことにある。このモデルは、コレア元政権が韓国の自由貿易区にヒントを得て作った。サルセドによると、ZEDEの普及を阻むもう一つの障害は、その宣言、管理者の設置、運営に関わる官僚的なハードルである。「自由貿易地域は、国土の他の地域と比べればすべてがシンプルに運営できるはずなのに、実際はその逆となっている。自由貿易地域が機能するためには俊敏性が必要であり、超中央集権的なビジョンから脱却しなければならない」と締めくくっている。

 

これらの地帯の生産開発に必要な最低投資額は、最初の5年間で10万ドルと設定されているが、大規模な事業者については「最低投資額はない」とコミュニケでは説明されている。また、生産的なつながりを促進し、コロンビアとペルーの国境地帯におけるこの構想の展開を特別に重要視し、優先することで、これらの国境地帯における「平和の文化と社会経済開発を強化する」ことを目指しています、とも述べている。

国民議会がない際の政令振り出しについては「経済的緊急性」があれば署名することは可能だ。しかしその有効性可否ついては憲法裁判所によって審議され流必要がある。一方承認されれば直ちに発効される。先週発表された、所得税控除の拡大による拠出金の減額を目指す税制改革に関する最初の政令についても、裁判所はまだ裁定を下していない。本政令については、不要不急だとして、Twitter等SNSでも批判があがっている。

 

今回のMuerte cruzadaに関する別記事はこちらから。

参考資料:

1. Por qué las nuevas zonas francas no son para todas las empresas 
2. ¿Qué son las zonas francas y qué beneficios tienen? 
3. Presidente Lasso emite decreto de Ley para la Atracción y Fomento de Inversiones para el Desarrollo Productivo

No Comments

Leave a Comment

CAPTCHA


このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください