(Photo Presidencia de la República del Ecuador/flickr)
ギジェルモ・ラッソ(Guillermo Lasso)共和国大統領は5月17日、自らの訴追や大統領職罷免をかわすかの如く「Muerte Cruzada」の実行に署名した。「刺し違え」を意味するMuerte Cruzadaとは自らの大統領職と引き換えに国民議会を解散させることのできる共和国大統領権限を指す。エクアドル憲法第148条で規定されているこの措置は、大統領の任期の最初の3年間に1度だけ実行することが認められているもので、これに署名された後90日以内に選挙が行われる。大統領は自らの疑惑について何の根拠もないと繰り返し、自らの正当性を主張し続けてきた。しかし最終的には自らの横領疑惑を背景とした弾劾裁判が国民議会で始まった翌日に本大統領令に署名した。
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— Vilmatraca (@vilmavargasva) May 17, 2023
2023年3月、立法府行政評議会(Consejo de Administración Legislativa:CAL)は「真実、正義、汚職との闘いのための臨時専門委員会」の報告書に基づき、ラッソに対する弾劾要求を認めた。ラッソがエクアドル石油船団(Flota Petrolera Ecuatoriana:Flopec EP)とアマゾナス・タンカーズ・プール(Amazonas Tankers Pool)との間の石油輸送契約において横領をした疑いがあるとして告発したことによる。これは国家財政への損害に該当する。
大統領令にはこの決定を下した理由も記載されている。それによると、政権発足以来、立法府が封鎖されてきたこと。また、無責任な国民議会は立法府を不安定化させることに熱心であったことが書かれている。ラッソは文書を通じて「議会は憲法裁判所の判決から離れ、適正手続きを含む憲法上の教訓からも離れ、共和国大統領を告発するための新たな事実を盛り込み、判決に従って弾劾が行われうる唯一の事実からも距離を置いている。このことは、議員たちの意図が、横領という犯罪を犯したとされる大統領を罷免することではなく、むしろ政治的不和を理由とするものであることを示している」と述べ、国民議会法71条に記載されている通り憲法148条を通じて議会の解散を行うとした。憲法148条は行政府と立法府の権力争いに起因する深刻な政治危機や内乱を克服するための例外措置として設定されたもの。無責任な立法府の存在や国家機能の不均衡など、政治的危機が発生した際に使えるもので、今回がそれに該当すると政令は述べている。
水曜日早朝に国民に向けて発せられたメッセージで大統領はこの行為は「民主的な行動であり、エクアドル国民に自分たちの未来を決定する力を取り戻すことになる」と語った。深刻な政治危機と内乱の結果として振り出された大統領令に基づき、国民議会議員、大統領決定のための選挙を早期実現するよう全国選挙管理委員会(Consejo Nacional Electoral:CNE)に要請したことも語っている。
大統領は立法府の評価に関する世論調査を示し「政治的危機は、主に政治家と制度に対する正当性の危機としても現れており、市民は制度も政治家も信頼していない」と、数値を用いて説明している。その評価は立法府を55.09%が悪い、37.23%が非常に悪いと評価している。別の世論調査会社の発表では市民の国会に対する拒否感は81.69%であることも示した。
https://twitter.com/Presidencia_Ec/status/1658804683203289090
今回のMuerte cruzadaに関する別記事はこちらから。
参考資料:
1. Estas son las razones por las que el presidente Guillermo Lasso decidió firmar el decreto de la muerte cruzada en Ecuador
2. El presidente de Ecuador, Guillermo Lasso, firma la “muerte cruzada” y disuelve la Asamblea Nacional
3. Muerte cruzada: qué es y cuáles son sus efectos para el país
4. Cómo funciona Amazonas Tanker, el polémico pool en que está Flopec
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