エクアドル:全ては未来のため、2023年最大規模、最重要な投票を行う

2023年2月5日、エクアドルは今年最も重要な選挙に挑んだ。

選挙は人口1,820万人のうち1,345万人が参加するもので、市長、県知事、参議院議員の決定、そして大統領ギジェルモ・ラッソ(Guillermo Lasso)が企てる憲法改正への可否を表明するものだ。本選挙には40万9000人以上の在外エクアドル人も参加する。

午前7時に始まった投票は夕方5時に締め切られ即日開票へと移行した。以下詳細を見ていく.

https://twitter.com/Presidencia_Ec/status/1622206784407539712

 

憲法改定に向けた8つの質問(安全保障、制度、民主主義、環境分野)には「反対」票が勝利した。

ラッソはなんとしてでも、本法案を通したいと考え、さまざまなキャンペーンを実施していた。しかしその声は国民には届かなかったこととなる。

世論調査会社Cedatosの投票前日調査(468人)によると誤差は2.8%で、8つの質問に対するエクアドル人の支持率は59.1%から74.4%であった。また、開票当初は「Sí(賛成)」多数という情報も出ていた。

 

8つの質問とは以下を問うものである。

  1. [身柄引き渡し] 権利と保証の尊重を前提とし、組織犯罪に加担したエクアドル人(罪人)の引渡しを許可することに賛成ですか?
  2. [検察官の選定] 検察庁の自律性を保障し、検察審議会を通じて職員の選考、評価、昇進、教育、制裁ができるようにすることに賛成ですか?
  3. [議員定数の削減] 議員数削減と次の議員選出数への変更に賛成ですか?(人口25万人につき1人の議員と1人の追加議員、人口100万人につき2人の議員、在外者人口50万人につき1人の議員)
  4. [政治キャンペーン] 政治キャンペーンにおいて管轄区域の選挙人名簿の1.5%に相当する最低会員数の確保を義務付け、全国選挙管理委員会の監査を受けた会員名簿を定期的に保管することに賛成ですか?
  5. [CPCCSの任命能力]市民参加・社会統制評議会(Consejo de Participación Ciudadana y Control Social:CPCCS)が保持する当局の任命権をなくし、市民参加、実力主義、国民の監視を保証する公的プロセスを通じて、議会が任命することに賛成しますか?
  6. [CPCCSメンバーの任命] CPCCSメンバーの任命プロセスを変更し、国民議会が実施する市民参加、実力主義、公的審査を保証するプロセスを通じて選出することに賛成ですか?
  7. [水の保護] 保護地域の国家システムに水保護サブシステムを組み込むことに賛成ですか?
  8. [環境サービスの対価] 個人、コムニダ、プエブロ、ナショナリダが、環境サービスの創出への支援に対して、国家によって正規化された補償の受益者になることができることに賛成しますか?

 

8項目については選挙終了前まで先住民連合をはじめとした社会組織は「No」への投票を呼びかけていた。

大統領が経済発展という名のもとで自然の商品化に積極的であるのは、誰もが知る話である。一方採取主義が自然を破壊していることは事実である。しかしラッソはこの質問を通じて自然破壊の原因が先住民をはじめとした、その土地に住むものにあるということを示したかったと多くの人は分析する。

ヤスニド(YASunidos)のペドロ・ベルメオ(Pedro Bermeo)は「森林破壊をする貧しい人々は、炭を作って食べるために木を切っている人たちだと示唆している」と述べている。ラッソは#8で賛同を得ることで企業による環境サービスの提供を促進したい考えだ。これが成立すれば世界に先駆け憲法で設定された自然の権利をも侵害することとなる。もし賛成多数になれば2008年のエクアドル憲法、第74条も以下のように改変(案)されてしまう。

 

(現憲法)

共同社会、人民及び国民は、その生活を豊かにする環境及び自然の富から利益を得る権利を有する。

環境サービスは収用の対象ではなく、その生産、提供、使用および利用は国によって規制されるものとする。

 

(新憲法・案)

個人、共同社会、人民および民族は、その生活を豊かにする環境および天然資源から利益を得る権利を有する。環境サービスは、充当の対象とはならないものとする。

国家は、環境サービスの管理者として、その生産、提供、使用、利用を規制し、個人、共同体、民族、国家がその生成の支援に対して受ける補償のガイドラインと仕組みを定義する。

 

環境サービスとは、生態系が持つ機能のうち、人間や地域社会に利益をもたらすものを指しており、例えば「森林の保全を通じて達成される温室効果ガスの規制」「人間の消費、灌漑、アグリビジネスに必要な水を供給するための水質調整」「生態系に存在する遺伝資源」などを指す。一見聞こえはいいかもしれないが、この国においては自然は都合よく解釈され利用されてきた。また、その土地に住む人間に恩恵は届かない。

エクアドルの環境団体WWFのディレクターで、元環境大臣のタルシシオ・グラニソ(Tarscicio Granizo)や、Fundación Pachamamaの代表であるベレン・パエス(Belén Páez)は「この問題で提起された環境サービスを扱うことは、非常によく規制されなければならない」と言う。専門家によれば、補償の恩恵を受けるのは「最も貧しい地域社会であり、同じ年配の人々やエリート、権力者集団ではない」ことが基本だという。

パエスは本件の最大のリスクは、環境サービスが自然に関心のない人々によって投機や搾取されることを防ぐための明確な規制がないことだと述べる。先住民が「ボランタリーマーケットで、現時点では最短時間で排出量を減らすことに関心を持つ投資家と直接」交渉できるような規制を設けるなど必要だ。

ベルメオも「もし政府が本当に環境問題に関心があるなら、エクアドルの鉱山や石油開拓を止めることに賛成かどうか、なぜ我々に尋ねないのか?」と述べている。

 

8つの質問と同時に実施された(むしろこちらが本丸)23人の県知事、221人の市長、864人の都市議員、443人の農村議員、4,109人の教区議会議員、7人のCPCCSの結果については順次発表されている。

 

注目のキト市長選は当選確実とされていたPachakutikのホルヘ・ユンダ(Jorge Yunda)が負け、元UNES下院議員のパベル・ムニョス(Pabel Muñoz)の当選が確実となった。Market AsesoresやPerfiles de Opiniónが2022年10月に行った調査では他の候補者と3ポイントから10ポイントの差をつけ再選を目指すユンダが人気を博していた。

開票99.43%時点での得票率はムニェス25.20% に対しヨンダは22,20% だが、負けを認めヨンダはムニェスに祝福を送っている。なおユンダは愛するペットと共に投票を済ませていた。

https://twitter.com/lahoraecuador/status/1622248585843679234

 

エクアドル先住民連合(Confederation of Indigenous Nationalities of Ecuador:CONAIE)代表のレオニダス・イサ(Leonidas Iza)によると最終的な確定情報は出ていないものの、先住民政党であるPachakutikはピチンチャ県で躍進している。

https://twitter.com/lahoraecuador/status/1622366645816532994

 

グアヤキルの市長には開票93.54%の時点で市民革命運動(Revolución Ciudadano)から出馬しているアキレス・アルバレス(Aquiles Álvarez)が39.74%、現市長のシンシア・ビテリ(Cynthia Viteri)は30.32%となり、アルバレスの当選が決まった。

https://twitter.com/radiocentroec/status/1622560626676572162

 

第3の市クエンカ(Cuenca)は99,48%の開票時点でクリスチアン・エドゥアルド(Cristian Eduardo Zamora Matute)が 18,57% を獲得し、ペドロ・パラシオ(Pedro Palacios)が17,48% で次点を追っている。

 

なお、今回選挙においては民主主義を破壊すべく、残念な事件が起きた。

エクアドルの沿岸部の町プエルト・ロペスの市長候補だったオマル・メネンデス(Omar Menéndez)が正体不明のグループに殺害されたのだ。投票前日の話である。メネンデスはラファエル・コレア前大統領(2007~2017年)を指導者とする市民革命運動(Revolución Ciudadana)の候補者だった。41歳の候補者は2人の子供の父親で、情報通信の分野で事業を展開していた。同族会社であるIntercable社では14年以上経営管理の経験を積んでいた。選挙キャンペーンにおけるスローガンは「 Puerto López seguro para ti」で安全保障や産業の発展を訴えていた。

https://twitter.com/OmarMenendezs/status/1554115536065380353

 

米州機構(OAS)の選挙監視団「民主主義に暴力はふさわしくない」行為とし、暗殺を非難した。1月21日(土)にもサンタ・エレナ(Santa Elena)県のサリナス市長に立候補していたフリオ・セサル・ファラキオ(Julio César Farachio)も殺害されている。ファラキオが選挙運動の一環として、ホセ・ルイス・タマヨ(José Luis Tamayo)教区を遊説していた時、バイクに乗った2人組の男が彼を撃った。誰も何が起きていたかわからなかったと言う。

 

本選挙における二人目の死者を受け、セサル・サパタ(César Zapata)警察本部長は記者会見で、グアヤキル(Guayaquil)首都圏およびグアヤス(Guayas)、エル・オロ(El Oro)、エスメラルダス(Esmeraldas)、ロス・リオス(Los Ríos)、サンタ・エレナ(Santa Elena)、サント・ドミンゴ・デ・ロス・サチラス(Santo Domingo de los Tsáchilas)における投票所での警備強化を伝えた。これらの土地では昨今麻薬をめぐる抗争、政府によるマフィアとの戦いなどが激化している。

グアヤス(Guayas)県パレスティナ(Palestina)の市長候補ルイス・スアレス(Luis Suárez)も5日、自宅で銃撃された。Facebookを通じ「01:00に3発の銃声が私の家のドアに向かって発せられ、私の命と家族や隣人の平穏が脅かされた。幸いにも私たちは無傷で済んだ」と報告している。

その他、投票中におきた犯罪は選挙当日午前11時段階で60台の車と119台のバイクの窃盗、凶器の保持(銃器 84丁、ナイフ93本)などである。

「禁酒令(Ley Seca」違反者は705人だ。エクアドルにおいて選挙当日の前後(今回は2月3日(金)正午から2月6日(月)12:00)はアルコール飲料の販売、流通、消費が禁止されていた。

 

なおエクアドルにおける投票に関して言えるのは、それは義務であるということ。つまり違反者には罰金が課せられる。例えば未投票者には統一基本給の10%相当(45米ドル)、決められた投票所に行かなかった人間は基本給の15%(67.50米ドル)支払うこととなる。また、投票所での監視担当者がそこを離れれば基本給の11%から20%(4,950米ドルから9,000米ドル)までの罰金を支払う必要がある。

今回の選挙当日における投票率は80.74%だった。選挙結果は民主主義に基づき尊重されるべきと、ギジェルモ・ラッソは語っている。

 

参考資料:

1. Resultado del referendum constitucional de Ecuador de 2023 en vivo: qué gana en las votaciones, noticias y más
2. Lo que debes saber de la pregunta 8 de la consulta popular
3. Resultados EN VIVO de las Elecciones en Ecuador: ¿quién va ganando los comicios este domingo?
4. ¿Quién fue Omar Menéndez? Candidato asesinado en Puerto López
5. ESCRUTINIOS OFICIALES DEL CNE CONSULTA POPULAR
6. Pregunta #8 de la Consulta Popular: ¿Qué son las compensaciones por servicios ambientales?
7. Elecciones Ecuador 2023: Resultados de candidatos a prefectos y alcaldes ganadores por provincia

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