エクアドルは押収したコカインをコンクリートとして利用する取り組みを始めた。これはエクアドルにおけるコカインの押収率が激増したことと、押収物の保管場所の不足によるもので当局が押収した麻薬の代替出口となる。公式発表によると過去2年間、エクアドルでは400トン以上のコカインが押収されている。
Ecuador is recycling seized bricks of cocaine into concrete for use in construction. pic.twitter.com/C4x2jtnaCl
— DW News (@dwnews) February 19, 2023
国連薬物犯罪事務所(UNODC)の最新版「世界薬物報告」によると、エクアドルは世界で3番目に麻薬の押収量が多い国です。押収量が多いことと、生産量、流通量は紐づかないものの、麻薬大国コロンビア、ペルーに接していること、輸送のための海岸を持っていること、隣国においては米国含め麻薬取締に対するテンションが高まっていることもあり、輸送の経由拠点として昨今エクアドルが利用されている。ただし、エクアドルにおいても量は少ないもののコロンビアと接するスクンビオ県などの森林地帯においてはコカインの生産もされている。2月20日(日)にもエクアドル軍はスクンビオス県で、コカインペーストの加工工場を摘発し、破壊している。軍によると、この研究所は「1カ月あたり約2トンの生産能力があり、推定25〜30人を収容する能力があった」。なお、本オペレーションにおいてはエクアドル人が逮捕されており、同時に約15,000リットルのアセトン、378リットルの留分、カービン銃、16口径のカートリッジ4本、電子レンジ9台、塩化カルシウム15袋、酸5缶、秤4個、真空包装機、発電機、110ガロンのディーゼル、ピックアップ・トラック、ガスボンベ2本、滑車2個が押収されている。
上述の通り、麻薬が多く押収されることでその焼却に多くのコストがかかっていた。わずか数トンのコカインが押収されただけで、この国の焼却能力はあっという間にオーバーしてしまう。当局は、焼却を待つために数週間から数カ月間コカインを保管せざるを得なかった。焼却処分はエクアドルで従来から使用されている方法ではあった。しかしそれにも非常に特殊な機械が必要だった。一般的な焼却炉で「コカインはうまく焼却できない。その目的のためだけに、2つの保管庫を持ち、排気ガスや不要な物質の生成を排除するために高温に達することができる焼却炉で燃やすことが重要」だからだ。1トンのコカインを燃やすのに12時間もかかっていた。
一方の麻薬のカプセル化は効率も良い。当局によると1時間当たり1500キロを破壊することができる。時間が早く処理できるということは、各種リスクを軽減できるということにつながる。例えば横流し、押収物を狙った窃盗、暴力だ。事実キト、グアヤキル、テナで警察が押収した薬物を保管する倉庫で強盗未遂事件が相次いでいた。押収した物質を迅速に破壊できないことには情勢不安をも生み出してしまう。コンクリートの素材となるためにコカインブロックは廃棄物処理場で重機を使って塩酸コカイン状にされる。粉末にされたコカインはエクアドル内務省麻薬取締局次長(subsecretario de control de drogas del Ministerio del Interior)のエドムンド・メラ(Edmundo Mera)によると「粉末状のコカインをセメント、塩、化学促進剤などと混ぜ、スラリー状に」し、この液状の混合物を型に流し込んでコンクリートブロックを作る。数時間放置して乾燥させると完全に硬化する。その結果固形ブロックの材料からコカインを取り出すことは不可能となり、また土壌に染み込んだり回収されることもない。「カプセル化」と呼ばれるプロセスは当局が実施する。廃棄物処理場には期限切れの医薬品やゴミなど他の廃棄物とともに、毎週何百もの麻薬のブロックが届く。キト郊外の工場では、すでに350トン以上の麻薬が処理されており、このプロセスには欠かせない投入物になっている。コンクリートは建設や舗装に使われる予定だ。
破壊のスピードの迅速さはコスト削減にもつながる。法律では、薬物破壊の際には裁判官の立ち会いが義務付けられている。プロセス時間の大幅短縮は当局における本来業務の回帰にもつながるとともに、この作業に必要な設備や人員、押収したものを守るための警備など、さまざまなコストに対する投資資金が少なくて済む。また、厳しい環境規制に従った厳格な焼却プロセスが必要である一方カプセル化は環境上も安全な方法であるというメリットもある。なお内務省によるとカプセル化に伴うプロセスを監督し、汚染のリスクを最小限に抑えるために環境管理者を雇った。
政府は押収した物質を迅速かつ安全に廃棄する方法を模索していた。そのような中「麻薬をコンクリート化する」という画期的なアイデアが見つかり、実行に移したというわけだ。国連薬物犯罪事務所もこれまで、薬物や薬物加工に使用された有害物質の処分方法としてカプセル化を推奨してきたものの、これほど大規模にコカインを破棄した国はエクアドルが初めてだという。欧州薬物のカプセル化は、ラテンアメリカ諸国の政府にとって麻薬撲滅の将来に影響を与える可能性がある。エクアドルは、このプロセスがいかに効果的であるかを実証するためにその役割を担っている。
昨年2022年10月14日の時点で、エクアドルは合計180トン近くの麻薬を破棄しており、今年押収されたものの61%がカプセル化技術を使って破棄されたと、メラは述べている。
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参考資料:
1. Usan cocaína en Ecuador para hacer hormigón, ante las altas tasas de decomiso y la falta de espacio para guardarla
2. Cocaína en concreto: el método pionero de destrucción de drogas en Ecuador
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