コロンビア・ベネズエラ:両国国境で経済・貿易統合協定に調印

グスタボ・ペトロ(Gustavo Petro)とニコラス・マドゥーロ(Nicolás Maduro)はノルテ・デ・サンタンデール(Norte de Santander)とベネズエラのタチラ(Táchira)の間に位置するアタナシオ・ヒラルド橋(el puente Atanasio Girardot)で2月16日、経済・貿易統合協定に調印した。

大統領になって初めてコロンビアとの国境を訪れたマドゥーロは、妻のシリア・フローレス(Cilia Flores)、デルシー・ロドリゲス(Delcy Rodriguez)副大統領、アルマンド・ベネデッティ(Armando Benedetti)駐ベネズエラ コロンビア大使らと共に、最近完成したティエンディタス(Tienditas)と俗称されるアタナシオ・ヒラルド国際橋に一番乗りで到着した。マドゥーロ自身はこの場所を過去にも訪れたことがある。故ウゴ・チャベス(Hugo Rafael Chávez Frías)大統領の下で外相を務めていた時、当時のカウンターパート、マリア・アンジェラ・ホルギン(Maria Angela Holguin)との会談のためにこの地を訪れている。2010年のことだ。ペトロとの会談においては過去2回ともカラカスで行った。マドゥーロは国境検問所に到着した後、そのインフラを見学したり、勤務中の職員に挨拶したりしてペトロを待っていた。

この橋は国境横断における交通車両の飽和状態解消のために両国が資金を提供し3200万米ドルで作ったものだ。

 

会談は2月16日(木)午後3時に開始される予定だった。しかしペトロの大遅刻(午後5時数分前に到着)により、マドゥーロは首脳会談のために2時間近く待たなければならなかった。ペトロの遅刻はノルテ・デ・サンタンデの地域活動委員会(Juntas de Acción Comunal de Norte de Santander)との会談による。コロンビア政府はこの土地の人々と対話が必要だった。政府は「コロンビア、コロンビア、生命の大国(Colombia, potencia mundial de la vida)」という政策の実施を進めたいと考えており、そのためには地元の協力が必要となるからだ。この政策はクリーンエネルギー、接続性のあるコミュニティづくり、第三次産業や農村部のための道路建設を進めると言うもので、ペトロは説明の中でこの国家開発計画は「コミュニティにクリーンエネルギーを創出してもらうことで、地球上の生命を守ることへの貢献とともに、自らの収入を生み出す」ものだと語っている。また、大手通信事業者が届かない地域や近隣に光ファイバーネットワークも敷設したい次第だ。

 

アタナシオ・へラルド橋の中央に建てられたプラットフォームに到着したペトロは、両国間の商業的発展のための統合強化を可能にする法的枠組みの深化を確立する協定に署名した後、両国の関係は「決して閉ざされてはならないものだった」と述べている。また、すべての中南米諸国間の関係改善のプロセスも再開するべきだと語った。マドゥーロ大統領に対しても「過去の外交的ないざこざを繰り返してはならない」と伝えている。式典場はサッカーのピッチを模した緑のカーペットが敷かれており、そこに引かれた白い線は、コロンビアとベネズエラの国境を示すものである。両者は解放者シモン・ボリバルが描かれた騎馬絵を背景に、国旗を挟んで会談を行った。

マドゥロは本会談を受け、8月7日にペトロが政権についたこと(詳細はこちら)で実現したコロンビアとの国交回復を振り返り、「我々の関係は、政治・外交対話(…)、経済・商業・人口の新しいダイナミズムを帯びてきている」と述べた。グスタボ・ペトロが大統領に就任して以来、マドゥーロほど多く会談した大統領は他にいない。

 

本協定は元を正せばベネズエラがアンデス共同体(Comunidad Andina de Naciones:CAN)から脱退したことにある。ベネズエラは2006年にカルタヘナ協定を非難し脱退し、そのためCANの貿易利益を補完する協定が必要となった。2011年11月28日に当時のフアン・マヌエル・サントス大統領とマドゥーロが「商業的性格を有する部分的範囲合意書 #28(acuerdo de alcance parcial de naturaleza comercial #28)」署名し、2012年10月19日に発効していた本協定はニコラス・マドゥーロを「独裁者」と呼ぶイバン・ドゥケ(Iván Duque)政権とニコラス・マドゥーロ政権の関係断絶に伴いおかしくなった。貿易関係は膠着状態に陥り、協定も膠着状態で公式なる停止していなかったものの、現実には条約が効力が失われたようなものだった。コロンビア初の左派大統領が2022年8月に誕生するとカラカスとの外交・通商関係が再確立された。前任が崩壊させた二国間協定の活性化させるためにペトロとマドゥーロはこの地で再会した。

この自由貿易協定は両国にとって重要性が高い。なぜなら両国間の貿易の法的枠組みが確立されるとともに、関税の特恵待遇が与えられるからだ。両国間の取引(輸出入)の大部分は関税0%となる。これは、2006年から2010年まで行われていた二国間貿易を模すもので、最も長い国境を共有する両国の経済にとって非常に有益なものである。

 

ペトロは調印の際「この橋は貿易で満たされるだけでなく、人々が行き来することができる。私は、一方から他方へ投資しようとする大資本のことを指しているのではなく、それらの家に住む人々の小さな資本のことを話しているのだ」と強調していた。

今回の合意の目標は、今年の貿易額を18億ドルとすることにある。この数字は二国間関係が最悪だった2020年の2億2200万ドルの8倍となるが、それでも2008年に達成した過去最高の70億ドルを大きく下回る結果とも言える。「2023年には、貿易額は増加傾向を続け、17~18億ドルに達する見込みだ」と、共同声明を通じて発表している。

 

現在のベネズエラは2011年の状況とは大きく異なる。当時は560億ドルの石油収入があり、必要だった物品をなんでも輸入で揃えることができた。当時は衣類、自動車、食品などあらゆる種類の商品の85%までが輸入されていた。しかし現在は某国による「封鎖と経済的・商業的迫害」によりベネズエラの外貨獲得は深刻な状態となっている。経済の状況は底辺だった時と比べると随分とよくなってはいるものの・・・とマドゥーロは述べた。また演説の最後に、マドゥーロはペトロに、ノルテ・デ・サンタンデールとタチラの市長と知事で構成される経済圏の設立を提案している。これは「コロンビアとベネズエラの国境にある莫大な富と経済力を統合するための最初の大きな一歩」となるからだ。

この会談は、カルロス・エドゥアルド・マルティネス(Carlos Eduardo Martínez)を新しい在コロンビア・ベネズエラ大使として任命することが承認された矢先に決定した。彼は現在ELNとの交渉の席でベネズエラの代表を務めており、6ヶ月の任期も持たなかったフェリックス・プラセンシア(Félix Plasencia)の後任であった。

本協定はまだ2国間の商業ルールの草案であり詳細は別途定める必要がある。

 

参考資料:

1. Presidente Petro se reunirá con Nicolás Maduro en frontera con Venezuela
2. Petro y Maduro consolidan en la frontera la nueva dinámica comercial
3. Presidente Petro le propone a la Acción Comunal una alianza con el Gobierno para avanzar en la implementación de la política ‘Colombia, potencia mundial de la vida’
4. Nicolás Maduro y Gustavo Petro firmaron acuerdo de integración económica y comercial

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