2月18日、ブラジル、アルゼンチン、メキシコ、チリの4カ国はイスラエルによるヨルダン川西岸地区への新たな入植を非難した。同国は軍事占領下にあるこれらパレスチナ地域においても9つの入植地を作り「合法化」することを決定している。4カ国は侵略者ベンジャミン・ネタニヤフ(Benjamin Netanyahu)のの計画は、パレスチナ国家の樹立を妨げる恐れがあると述べ、イスラエルを非難するとともに、パレスチナ樹立への支持を再確認した。
イスラエルの新政権は12月に発足したが、同国史上最も右派的とされている。国連は2016年12月の国連安保理決議番号2334により、ヨルダン川西岸におけるあらゆるユダヤ人入植地を国際法上、違法とみなしている。一方、同政権はこの土地に1万戸の住宅を建設するとともに、それを正当化していることを発表している。ラ米4カ国はこの事象を国際法の「違反」であると考え、ブラジル外務省が発表した共同声明ではイスラエルのこの決定に「深い懸念」を表明している。共同声明は、ブラジル外務省が「これらの一方的な措置は、国際法および国連安全保障理事会の決議に対する重大な違反である」し、「両国政府は、イスラエルとパレスチナが安全で国際的に認められた国境を共有し、平和に暮らしたいという両国民の正当な望みを尊重する、二国家解決策の実現性を損なういかなる行動にも反対することを表明する」と発表した。
イスラエルは1967年のアラブ諸国との戦争でヨルダン川西岸と東エルサレムを占領し、それ以来、そこに数十の入植地を建設し、現在47万5000人のイスラエル人が280万人のパレスチナ人の中で生活している。一方パレスチナ人は自らの国家樹立に向け、これらの領土を要求している。国際社会の大半はこの考えを支持しているが、2国家解決は両者の交渉によって達成されなければならず、パレスチナ人は武力暴力による目標達成を放棄しなければならないとしている。しかしイスラエルとパレスチナの和平交渉は、イスラエルが「入植地の自然増加」と呼ぶものを止めることを拒否したため、何年も停滞している。
ブラジルでは1月1日に左派のルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルバ(Luiz Inácio Lula da Silva)が大統領に復帰し、極右のジャイル・ボルソナロ(Jair Bolsonaro)前大統領が去ったことで4年間にわたるイスラエルとの協調体制は終わった。ルラは南米の大使館をテルアビブから争点のエルサレムへ移すことも提起している。チリのガブリエル・ボリッチ(Gabriel Boric Font)大統領もイスラエル占領に批判的で、外交的な衝突を起こしたこともある。
「アルゼンチン、ブラジル、チリ、メキシコの各政府は、イスラエルとパレスチナに対し、暴力のさらなる拡大を促すような行為や挑発を控え、紛争の平和的解決に向けた交渉を再開するよう求める」と4カ国の声明にはある。
アラブニュースによると日本はイスラエルと緊密な防衛関係を築こうとしており、中東和平プロセスにおける中立的な存在としての評判は落ちている。
中東におけるこのような重大な国際秩序違反について日本のメディアが取り上げることは少ない。
イスラエルは2月19日午前0時22分、イスラエル軍が、占領するゴラン高原(シリア領クナイトラ県)の方向からダマスカスや近郊の住宅地を含む数カ所を狙って空爆を行っており、兵士1人を含む5人が死亡、市民15人が負傷している。シリア国営放送が掲載した映像では、ダマスカス県カフルスーサ区にある10階建てのビルが攻撃で大破し、低層階の構造がつぶされる様子が映し出されていた。同国におけるシリアへの攻撃は初めてではなく侵犯行為を繰り返している。1ヶ月前にもイスラエルは、ダマスカス国際空港をミサイルで攻撃し、兵士2名を含む4名が死亡している。イスラエルの攻撃は正当化しており、その背景にレバノンのヒズブッラーに代表される「イランの民兵」、パレスチナ諸派の封じ込め作戦がある。もちろんこうした攻撃もまた、明白な国際法違反である。イスラエルはほぼ10年にわたり、隣国シリアでイランが支援する武器の移送や人員の配備が疑われる場合に空爆を行ってきた。イスラエル政府高官は、特定の作戦に対する責任を認めることはほとんどない。
なおトルコもまたシリア・トルコ両国で発生した大地震(2月6日発生)発生の翌日から分離主義テロリストとみなしているクルド民族主義勢力の民主統一党(Democratic Union Party:PYD)の支配地域への攻撃を再開している。
イラン外務省のナセル・カナニ報道官は、今回の攻撃について、「彼ら(イスラエル)は、シリア国民が最近の破壊的な地震の影響に直面している時に、その痛みと苦しみを悪化させようとしている」と述べ、国連安全保障理事会に今回の攻撃への対応を要請した。レバノンのヒズボラに率いられるイランの代理民兵は、現在シリア東部、南部、北西部の広大な地域と首都近郊のいくつかの地域で勢力を握っている。一方のアサド大統領は、イラン軍が内戦でアサド大統領のために活動していることを公式に認めたことはなく、テヘランは軍事顧問を派遣しているだけだと述べている。
2月18日、Syrian Arab News Agency(SANA)や反体制系NGOのシリア人権監視団は、米軍(有志連合)が違法に駐留するグリーン・ヴィレッジ(Green Village)基地を擁するウマル油田が、ロケット弾による攻撃を受けたと伝えている。
In the evening of February 18th, a rocket attack targeted Coalition Forces at Green Village in northeast Syria. pic.twitter.com/nPRWu3qxZG
— U.S. Central Command (@CENTCOM) February 18, 2023
今年に入ってから、50人近くのパレスチナ人が殺害された。そのほとんどは軍隊との衝突によるものだが、自衛隊が調査している状況下では、それほど明確なものではないものもある。
参考資料:
1. Argentina, Brasil, Chile y México, contra la expansión de la colonización israelí
2. Brasil, Argentina, México y Chile condenan nuevos asentamientos israelíes
3. イスラエルに接近する日本は、中東和平プロセスにおいて中立的であるという評判を維持できるのだろうか
4. Several killed in Israeli raids on Syria’s Damascus: State media
5. Brazil, Argentina, Chile and Mexico jointly condemn Israeli settlement announcements
6. Comunicado Conjunto dos governos da Argentina, Brasil, Chile e México sobre a expansão de assentamentos israelenses na Cisjordânia
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