エクアドル:マリア・ベレン・ベルナルの失踪とその夫警部補の逃亡

(Photo: Twitter @BelenBernal2009

仲間からBelén Bernal(ベレン・ベルナル)と呼ばれているマリア・ベレン・ベルナル・オタバロ(María Belén Bernal Otavalo)は、刑事事件を専門とする弁護士である。彼女はキトの北にある高等警察学校(Escuela Superior de Policía)に行って以来、つまり9月11日(日)未明から消息不明である。検索エンジンやソーシャルネットワークでは彼女に関する情報が多く検索されている。

容疑者は彼女が2017年10月17日に結婚したヘルマン・カセレス(Germán Cáceres)警部補だ。ベルナルとカセレスは、首都キトの南東に位置する農村部の小教区コノコト(Conocoto)に息子イサック(Isaac 、13歳)と一緒に暮らしていた。

指名手配されているへルマン・カセレスは警察学校で教官として働いていた。イサックは、捜索用に開設したツイッターのアカウントを通じて、母親と最後に会ったのは父だと述べている。

 

ベレン・ベルナルは34歳、法律事務所Defensa Penal Groupに勤務している。中央大学(Universidad Central)法学部で法律を学んだ彼女は2021年10月、性的虐待の罪で禁固3年の判決を受けた元オンブズマン、フレディ・カリオン(Freddy Carrión)を弁護した。また、2021年11月29日に死亡した弁護士アレハンドロ・パリス(Alejandro Páliz)に関する裁判でも活躍した。首都圏交通局( Agencia Metropolitana de Tránsito:AMT)のパトカーが突然Uターンしたことで、アレハンドロはバイクのブレーキをかける時間もなく衝突、命を落とした。彼の死はAMTに責任があると彼女は主張していた。

 

ベレン・ベルナルの夫は警部補だ。エクアドルにおける犯罪に関わる国家警察は少なくない。2018年から2022年上半期までに1,898人の警察官が、違反行為や犯罪を犯したとして逮捕されている。この国では毎日少なくとも一人の警察官が逮捕されている。2022年、重大な違反で逮捕された警察官の数は倍増しており、9月にもグアヤキルで警察の作戦を模して実行されたビル強盗事件でも現役の警察官2人を含む5人が逮捕されている。先月末も、クエンカで警察官3人が、殺害された男性の家からゴミ袋を持ち出しており、犯罪に関与した疑いで逮捕されている。

警察学校の寮の横の階段からは既にベルナルの財布と靴が見つかっている、一方夫の部屋には茶色のシミがあった。ベルナル家の弁護士の説明によると、カセレスは妻の失踪を報告するため、失踪から24時間以上経過した12日月曜日17時に検察庁に出向いている。翌日には証人喚問が行われるとともに、供述をしたカセレスは法律で定められた最長拘束時間の後、検察庁から釈放されている。この日検察庁は国家警察に予備調査を命じている。カセレスのその後の消息はわかっていない。現在、警察が大規模な捜査をしている。

ベレン・ベルナルは日曜日の早朝に警察学校に入ったことが防犯カメラで確認されているものの、警官は彼女の入校を記録していなかった。さらにカセレスが日曜の早朝に警察学校を出るのに使用した車(ベレン・ベルナルが乗ってきたものだが)にはルミノール反応があったにもかかわらず十分な捜査もなされていなかった。

 

この事件に関して内務大臣パトリシオ・カリージョ(Patricio Carrillo)による不用意な発言「このような行為が起こったことを非常に残念に思う。人間的で、不合理だが、それが人間なのだ」は非難されている。女性を侵害する行為が「非合理的だが人間的」として表現されているに等しく、何千人もの女性が日常的に経験している組織的な暴力を国家警察を管轄するものが止めようとしているようにも見られない。彼は暴力をほとんど偶発的な出来事として扱っており、フェミシディオが何百人もの女性の命を奪い続けているという事実を完全に無視している。そして、これがエクアドル社会の構造的な問題であることもまた無視している。人権擁護団体はこのように語っている。今年8月までにこの国ではフェミシディオで245人の女性が殺されているが、これは2014年にカウントを開始して以来、最も多い数字となっている。UN Womenによると、エクアドルの女性100人のうち65人が人生で少なくとも1回は暴力を受けたことがあり、100人のうち33人が性的暴力の被害を受けている。

人民の安全を保証すべき機関のトップがこのような状態で、また、ベレン・ベルナルの失踪から4日たってようやく、警察大学のすべての活動の停止と徹底的な捜索の開始を命じたのもまた非難されている。大臣のこのような命令は社会的、メディア的圧力があったから実行された。

 

大統領ギジェルモ・ラッソ(Guillermo Lasso)は警察の行動に疑問を呈すとともに、彼女の居場所につながる情報を提供する者に報奨金を提供することを発表した。また、女性に対する暴力の解決に向けて捜索活動の強化を命じた。また警察学校の管理責任者であるフランシスコ・スマラガ(Francisco Zumárraga)の解任も求めている。

 

参考資料:

1. ¿Quién es María Belén Bernal?
2. Las indignantes palabras del ministro Carrillo sobre María Belén Bernal
3. María Belén Bernal: la desaparición de una abogada en una escuela de la policía que causa indignación en Ecuador
4. Caso María Belén Bernal: Prisión preventiva para cadete de la Policía

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